希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

永久磁石の用途・応用シリーズ(8)

【クォーツ腕時計ヘの応用例】

1.ゼンマイ・歯車からIC・電子部品へ

時計が高価な精密機械から電子製品に変貌したのは、およそ40年前でした。ゼンマイと歯車から水晶発信器とIC回路の電子部品の組み合わせだけのデジタル表示腕時計に続き、それに小型モータを組み込んだアナログ表示腕時計が実用化されました。特にアナログ腕時計は当時工業化されたばかりの希土類磁石を使ったステッピングモータを組込んだ画期的なものでした。右図は世界最初のクォーツ腕時計で、1-5系サマリウムコバルトボンド磁石を利用したPM型ステッピングモータが使われていました。

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2.ステッピングモータの原理

ステッピングモータは直流電源、水晶振動子およびIC回路によって正確なパルス電流を発生させ、それによってステップを踏むように、一定角度(ステップ角)ずつ間欠的に回転するように設計されたモータです。基本的には永久磁石のロータ(回転子)と電磁石を組み合わせたPM型(永久磁石型)と、コイルの発生する磁界で強磁性体の歯車を回すVR型(可変リラクタンス型)に大別されます。
ここで、PM型ステッピングモータの動作原理と構造を右図に示します。ローターは径方向に2極着磁された磁石で、本例では周囲に4つの電磁石が配置されたモータになります。そこで右図のような極配置になるような方向に、1~4の電磁石にパルス電流をICで切り替えながら送り込むと、これに同期して磁石と電磁石間に吸引力と反発力が発生して、ローターが回転します。この場合は1回パルス電流を送り込むと、1/4回転(90°)回転し、連続パルスによって、その回転が歯車に伝達されます。

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3.時計用ステッピングモータ

右図は腕時計用のステッピングモータです。ステップ角は180°で、1回/1秒のパルス電流により1/2回転ずつ動きます。
なお、ローターに利用される永久磁石はサマリウムコバルトボンド磁石から同焼結磁石に移り代わり、最近ではネオジム焼結磁石やネオジムボンド磁石の利用が検討されているようです。

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4.その他のステッピングモータ

以上の時計用ステッピングモータはそのステップ角からみると特殊の部類に入り、一般のステッピングモータはより一層細かなステップ角を刻みます。最近ではリング形状のネオジムボンド磁石の採用によって、1周100ピッチ以上の多極着磁も可能になりました。また、1ピッチを細分化した回転が起きるように設計されたハイブリッド型(HB型)ステッピングモータも開発され、1周400ステップ以上のステップ駆動も可能となっています。

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(参考資料)

吉岡安之 著 TDK編 日刊工業新聞社 “じしゃく忍法帳”

山川正光 著 日刊工業新聞社 “トコトンやさしい磁石の本”

(社)未踏科学技術協会編 日刊工業新聞社 “おもしろい磁石のはなし”