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永久磁石の用途・応用シリーズ(11)

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【家庭用電子レンジと永久磁石の話】

多忙な現代人が大いに重宝している電子レンジ。この電子レンジにも永久磁石が重要な役割を果たしています。また、電子レンジは電磁気の科学を巧みに使った実用製品として、一般家庭にまで普及させた見事な応用例でもあります。今回はこの電子レンジの原理の概要を説明しながら、永久磁石の役割についてもご紹介します。

1.水分子を振動加熱する電波(マイクロ波)の利用

電子レンジは第二次世界大戦中に英国で開発されたレーダーの技術を応用した製品です。

1947年に米国のレイセオン社が最初に商品化をして、日本では1961年シャープが業務用に発売したものが第一号だったようです。電子レンジという呼び方は日本だけで、米国ではマイクロウェーブ・オーブン(Microwave oven)が正しい呼び名になります。

その心臓部のマイクロ波を発生するマグネトロンは1916年米国GE社のハルが開発し、その後1927年に東北大学の岡部金治郎博士によって現在の原型が作られました。ただ、岡部博士の成果が日本より先に、英国、米国のレーダー実用化という状況になったことは日本にとって大変残念なことでした。

下図に構造の概略図を示しましたが、電子レンジは、マグネトロン発振器から放出される2,450MHz(2.45GHz)のマイクロ波によって、食品中に含まれる水分(H2O)を振動させて加熱調理します。

水分子の中の水素原子(H)はプラス(+)の電荷を持ち、酸素原子(O)はマイナス(-)の電荷を持つため、振動するマイクロ波のマイナスのエネルギーには水素部分が、プラスのエネルギーには酸素部分がそれぞれ交互に引き寄せられ、マイクロ波の振動(周波数)分だけ振動させられます。そしてこの時に熱を発生するのです。2,450MHzという周波数は1秒間に24億5000万回プラスとマイナスが入れ替わるので、水も同じ回数振動することになります。なお、マイクロ波は地上通信や衛星通信、レーダー、放送などに使われているので、電子レンジのマイクロ波がこれらに妨害を与えないように国際的に専用周波数を決めているのです。

また、電子レンジ内部では、ガラスやセラミックスはマイクロ波を透過し、金属は反射します。したがって、マイクロ波は食品の水分に必ず当たるため、効率良くエネルギーを吸収できます。

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2.マイクロ波をつくり出すマグネトロンと永久磁石

一般的に、電波の周波数が1,000~30,000MHz(1~30GHz)の周波数帯をマイクロ波と呼びます。このマイクロ波発振装置には、マグネトロンの他にクライストロンや進行波管などがありますが、高出力のマイクロ波(レーダー、電子レンジ用等)は、ほとんどがマグネトロンによるものです。

電子レンジ用マグネトロンは前図(写真)のような外観であり、構造は右図のように、真空管に封入された空洞共振器付き陽極ブロックと陰極をフェライト磁石が挟んでいます。陽極と陰極の間には数千ボルトの高電圧がかけられ、陰極フィラメントからは熱電子が放出されます。陽極ブロックには共振器となる空洞部分が複数作られています。

マグネトロンは磁電管とも呼ばれ、その名のとおり磁気の効果を利用した発振器です。陰極から放出された熱電子は、モーターの原理を表現するフレミング左手の法則(磁界の方向、電流の方向、力の方向)と関連があるローレンツ力を永久磁石の磁界によって受け、さらに陽極電圧による電界によって吸引力を受けて、図のようならせん運動をしながら陰極の周りを周回して陽極に達します。

電子が陽極の空洞付近を通過するとき、電子の荷電により空洞に共振した高周波振動が誘起され、さらにこの振動が持続されます。この高周波振動の周波数(発振周波数)は空洞の構造、寸法等によって決定されます。

このようにして発生したマイクロ波は、陽極の空洞に結合した回路と出力アンテナを通してマグネトロンの外に誘導されます。

以上のように、電子レンジの心臓部であるマイクロ波発生に永久磁石が重要な役割を果たしていることがお分かりかと思います。

最後に高性能フェライト磁石の出現が電子レンジ用小型マグネトロンの進歩に大きく貢献してきたことを付け加えておきます。

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