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ネオジム磁石の製造方法シリーズ(5)
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【ネオジム磁石の焼結・熱処理工程】
下図はネオジム磁石の製造工程です。今月はこの中の焼結・熱処理工程についてのお話をします。焼結工程の主な目的は、磁場中成形されたネオジム磁石材料の圧粉体を高温で焼き固める(焼結する)ことであり、また焼結後の熱処理は、焼結体の結晶組織を適正化し、結晶同士の境界面組織を物理的にクリーンにしてネオジム磁石の保磁力(Hcj)をできるだけ高めるために施されます。
1.焼結の原理および焼結・熱処理パターン
先月号では材料粉を磁場成形機で圧縮成形する成形工程のお話をしましたが、下図のように成形された磁石はまだ粉末が圧縮されただけのもので、相対密度は50〜60%程度に過ぎません。これを高温度での焼結により焼き固めて、相対密度をほぼ100%近くにします。
焼結により相対密度を上昇させることにより、(1)残留磁束密度Brが高くなる、(2)機械強度が増大する、(3)酸化などの腐食に強くなる、などの大きな効果が生まれます。
左下図はネオジム磁石成形体の代表的な焼結・熱処理の加熱・冷却パターンです。但しこの例では、金型離型剤、成形バインダー等の脱ガス処理(約500℃)は含んでいません。図のようにネオジム磁石は約1100℃で焼結が進行します。熱処理は一般的に焼結後950℃近傍と500℃近傍の2段階で行います。焼結・熱処理中の炉内雰囲気は、真空または減圧アルゴンガス中ですが、焼結後、および熱処理(時効処理)後の急冷時はアルゴンガス冷却となります。
右下図はネオジム磁石の顕微鏡による組織写真の一例で、灰色に見える相が主相のNd2Fe14Bといわれる金属間化合物相であり平均10μm前後の大きさで、白色がNdを多く含んだ相、黒色が空孔(穴)になります。熱処理による結晶粒界の変化はこの写真のように通常の光学顕微鏡レベルでは判別できない程の超微細組織での変化ですが、保磁力Hcjには大きな影響があります。
2.焼結・熱処理工程の工業規模での生産設備
ネオジム磁石の焼結・熱処理設備は小規模生産の場合はバッチ式の真空・雰囲気焼結炉、熱処理炉を利用する場合が多く、大規模生産の場合は連続式真空雰囲気焼結炉、熱処理炉を使います。バッチ式炉は同じチャンバー内で温度パターンに従って加熱・冷却することが特徴です。1室タイプ、2室タイプ、3室タイプなどがありますが、今のところ多くの中国メーカーはいずれかのバッチ式炉を主力にしています。大規模生産でもバッチ式のラインを導入しているメーカーもあります。
反面、日本メーカーは中国メーカーより早い年代から大規模生産をしていて、焼結・熱処理の製造技術、設備技術の進歩も目覚しく、そのためローラーハース式の連続炉が主力になっています。連続式炉の特徴は温度パターンに従って、各段階の温度の加熱・冷却を別々のチャンバーで行い、処理製品は半連続的に各チャンバーに搬送されることです。バッチ式は生産状況に応じて自由度が大きく、比較的初期投資は少なくて済む反面、ある規模以上になると生産効率は低下してきます。一方、連続式は初期投資が大きく、メンテナンスや設備管理に高度の技術が必要とされますが、昼夜を問わない24時間連続稼動が少人数で可能であり、一定規模以上になると高効率生産が可能となります。
3.焼結・熱処理工程での技術革新
  1. 材質ごとの適正加熱・冷却パターンを詳細に把握し、精密なパターンを実現する。
    • ※焼結炉・熱処理炉の精密加熱、冷却設計技術、制御技術が必要。
  2. 徹底した超低酸素、超低不純物雰囲気下による焼結・熱処理を行う。
    • ※焼結・熱処理炉は高い密閉度が要求され、高真空、高純度雰囲気が保てる高度な構造設計技術、精密製造・組立て技術が必要。
    • ※成形工程からの成形体の低酸素保管、低酸素搬送・移送技術が必要。
  3. ロット間、ロット内バラツキを最小限に抑制するための温度制御。
    • ※加熱ゾーンの温度均一性、温度安定性のためのヒーター等の設計、組立て、制御技術が必要。
  4. 安定した大規模生産
    • ※連続式炉にはローラーなどの高度の搬送技術、可動部位の耐熱技術、精密シャッター技術などが必要。
このように、焼結・熱処理工程においても、近年、設備を中心とした技術の向上は目ざましく十数年前には実験設備でしか実現できなかった磁気特性が、その後大規模生産でも可能になった大きな理由の一つがこの工程の進歩にあります。この技術分野でも、日本の設備メーカーや磁石メーカーが世界の最先端を担ってきています。次回は加工工程のお話をさせていただきます。
(参考資料)
「永久磁石・材料科学と応用」佐川眞人・浜野正昭・平林 眞 (アグネ技術センター)
「希土類永久磁石」俵 好夫・大橋 健 (森北出版)
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