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レアメタルの基礎シリーズ(2)

先月号ではレアメタルの定義、世界的な生産量、価格の推移、主な用途など、レアメタルの概要について解説をいたしました。2回目の今月からは数回にわたり、レアメタルの用途分類および用途詳細についての解説をしてゆきたいと思います。なお、本稿では各種結晶構造についての記述がありますが、詳細については化学や金属学分野での専門的な知識が必要であるため、結晶構造についての解説は割愛させていただきます。

1.構造材に使われるレアメタル(1)

構造材は、機械構造物の部品としての強度をともない、かつ特殊な使用特性に優れている素材を用います。大きく分けて機械構造材と生体医療材としての利用方法があります。これらは主に鋼をベースメタルとして、レアメタルを適正に組み合わせて添加し、製造します。

1-1.普通鋼に添加されるレアメタル

主要レアメタルが、鋼の組織制御や鋼の材質に影響を与える主な役割を、次の図にまとめました。Mn~Wが備蓄レアメタル、Nb~Bがその他レアメタルです。備蓄レアメタルとは、国家備蓄対象レアメタルのことで、鋼の添加元素として有効に利用されていることがわかります。

鋼の組織制御には、目的とする組織そのものの性質を熱処理で制御する焼入れ性、組織の粒径を制御する結晶の微細化、そして炭化物の析出硬化による組織強化を行う炭化物生成などがあります。

組織制御の結果得られる鋼の材質は、耐食性、耐磨耗性、高温強度や低温靭性などの項目により評価します。

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1-2.普通鋼以外の構造材に使われるレアメタル

機械構造材は普通鋼以外に、特殊鋼の部類に入る超耐熱合金や超強力鋼などのほか、鋼以外をベースメタルとする低温合金や超硬合金があります。また、生体医療材料は、最近進歩している分野であり、人体に埋め込んでも問題が生じないレアメタルを選択し、かつ人体にマッチングする適度な強度に保ちます。

以下、複数回に分けて、(1)超耐熱合金、(2)低温用合金、(3)超硬合金、(4)超強力鋼、(5)生体医療材料などについて解説いたします。

(1)超高温耐熱レアメタル

超高温耐熱材料は、超合金、酸化物分散強化合金に分けられます。いずれの材料にも、ニッケルNi、コバルト Co、クロムCr、タングステンW、ニオブNb、モリブデンMoなどのレアメタルが必須です。以下、超耐熱材料の種類とその製造方法についての解説です。

■使用温度と適用材料

超高温耐熱材料は、1000℃以上の高温で構造材として使用します。1000℃近傍では、超合金(スーパーアロイ)が用いられます。超合金は、低温側から鉄基合金、コバルト基合金、ニッケル基合金の3種類に大別できます。これらの合金には、クロムやタングステンなど多種類のレアメタルを添加します。

さらに高温で使用する材料は、酸化物分散強化合金です。ニッケル基超合金に数百Å(オングストローム)のY2O3(酸化イットリウム)を機械的合金化法(メカニカルアロイング)を用いて均質分散させます。細かな酸化物が転位の移動を妨げるため、高温クリープしにくくなります。

※クリープとは、ある温度の下である応力が負荷されると、時間とともに材料が次第に変形して、破壊する現象。この破壊に至るまでの時間をクリープ寿命という。

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■超高温耐熱材料の製造方法

超高温耐熱材料は、組成だけではなく、製造方法によっても大きく耐熱特性が変化します。高温でのクリープ寿命が長い合金組織が、より優れた超高温耐熱合金です。

製造方法は、多結晶を得る普通鋳造法、加熱鋳型と冷却板で一方向凝固で鋳造する方法、冷却部を絞って一方向凝固と同時に単結晶を生成させる方法、および合金を混合し均一分散させる機械合金法(メカニカルアロイング)などがあります。凝固組織を均質かつ細かくすればするほど高温でのクリープ寿命※が長くなり、より高温で使用できる耐熱材料になります。

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■耐熱金属間化合物

耐熱金属問化合物は、ニッケル基の超高温耐熱材料で利用するレアメタル化合物です。溶質金属は、通常マトリックス(母相)のニッケル金属中に溶け込んでいます。しかし、熱処理をうまくやると、溶質金属はある結晶構造を作ります。ニッケル、コバルト、アルミニウム、タングステンなどの元素が無秩序に配置されてできたこの結晶の面心立方構造をγ相とよびます。面心立方構造のコーナーと面心に規則正しく配置されてできた面心立方構造をγ’(ガンマプライム)相とよびます。コーナーに配置される金属はアルミニウム、チタン、ニオブ、タンタルで、面心に配置される金属はニッケル、コバルト、鉄、モリブデンです。γ'相は、代表的な組成はNi3Alで、高温でも強度が高い特徴があります。合金組成をうまく制御すると、γ相とγ’相が整合して高温でも高強度な合金になります。合金組成が不良な場合は、金属間化合物不整合が生じてしまい、目的とする高温強度は確保できません。

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(2)低温用合金

低温用合金は、液化天然ガスや液体窒素、液体ヘリウムなどを貯蔵するために必要です。超低温でも靭性(ねばり強さ)を失わないためには、低温で面心立方構造の結晶を持つ金属の採用が必要です。

■使用温度と低温用合金の種類

低温用合金は、使用温度のおよその目安があります。

常用低温材は240K (-33℃)です。この領域は熱処理普通炭素鋼でカバーします。液化天然ガス(LPG)の蒸発温度は111K、液体窒素の蒸発温度は77K程度です。この領域は、9%ニッケル鋼を用います。液体ヘリウムの蒸発温度は4.2Kです。液体ヘリウムを貯蔵する合金は、高強度部材ではオーステナイトステンレス鋼および高マンガンオーステナイト鋼を使用します。低強度部材では、アルミニウム合金、銅合金およびニッケル合金を用います。低温用合金は、使用温度で面心立方格子構造である金属や合金を用います。

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■使用温度と金属の結晶構造

使用温度における金属の結晶構造は、その金属が低温用合金として使用できるかどうかの判断基準になります。

構造用材料に用いることのできる金属は、コモンメタル、レアメタルで数多くありますが、低温で面心立方構造をとることのできる主要金属は、アルミニウム Al、コバルトCo、ニッケルNiおよび銅Cu4種です。したがって、合金もこれらの金属を中心に設計されます。

同一金属でも、温度が変わると結晶構造が変化する金属を同素変態金属とよびます。主要金属の中では、チタンTi、鉄Feおよびコバルトです。このなかで、低温で面心立方格子構造になる元素はコバルトだけです。同素変態は、温度を変えるだけで組織構造が変わるため、熱処理により多彩な材質を作りこむことが可能になります。鉄と炭素Cの合金である鋼は、同素変態を巧みに利用し、目的とした材質を作りこむことができます。これを鋼の熱処理とよびます。

以上、今月は構造材に使われるレアメタルについての一回目の話になりましたが、次回も“超硬合金”、“超強度鋼”、“生体医療材料”などの構造材について解説をさせていただきます。

(参考資料)

「よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み」 田中和明 著(秀和システム)

「レアメタル 技術開発で供給不安に備える」(独)産業技術総合研究所 レアメタルタスクフォース編 (工業調査会)

「財務省貿易統計」ウェブ資料 統計情報サービス他