希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

レアメタルの基礎シリーズ(10)
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レアメタルは、多くの場合、他の金属元素とともに鉱物(天然に存在する元素および無機化合物)に含まれています。たとえばインジウムはスズや亜鉛とともに錫石(Sn02)や閃亜鉛鉱(ZnS)に含有されます。このようなレアメタルを含有する鉱物が濃集した岩石を「鉱石」と呼び、鉱石がある程度の規模(数十m〜数百m)を持つものを「鉱体」と呼びます。さらにこの鉱体が複数集合し経済的に採掘されるものを「鉱床」と呼ばれます。
レアメタルは、レアメタルを含む鉱床からの鉱石を分解・精錬することにより供給されます。レアメタルが用いられた工業材料や製品からのレアメタルのリサイクルも行われていますが、リサイクルにより再生産されるレアメタルの量は、一部の元素を除いて世界の需要を十分まかなうに至っていません。したがって、現在の日本や世界の増加するレアメタルの需要に対応するにはレアメタルを含む鉱床の開発が不可欠となっています。
1.資源開発・探査地域の選定
レアメタルの調査対象地域の選定については、レアメタルの種類により大きく異なります。レアメタルの多くは特定の国章地域が圧倒的な生産量を占める場合が多く、したがって、資源は「偏在」していると思われがちですが、その偏在には2通りの意味があります。1つは鉱床そのものが偏在していて、その偏在した国以外ではなかなか鉱床が発見できない場合です。もう1つは、レアメタル鉱床は世界各地に存在しますが、経済的な要因で、ある特定国のみが開発を行っている場合です。白金族元素は前者、希土類やタングステンは後者に相当します。後者の場合は資源の探査や開発を熱心に行えば資源の偏在をある程度緩和することができます。
先端産業で材料として利用されるインジウムや重希土類は、需要の伸びが急激であるため、資源として全世界に埋蔵量がどのくらいあるのか、どのようなタイプの鉱床に含まれているのかなど不明な点が多いのです。このような元素については、すでにこれらの元素が存在するとわかっている地域や鉱床タイプについて資源量評価や探査を行うとともに、新たな供給源として、これまで目的とするレアメタルの報告のない地域や全く異なるタイプの鉱床の調査を行い、レアメタルの供給源の拡大を図っていく必要があります。さらにレアメタルの需給バランスの逼迫は急に起こるので、資源の開発には急を要する場合が多いのです。
わが国では、このような資源探査・開発は民間企業が中心になって行っていますが、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が資源エネルギー庁の委託を受けて、鉱物資源の安定確保のために、リスクの高い段階での調査を実施しています。
2.資源探査の手順
レアメタルなどの金属資源開発は、一般に下記に示す段階を経て行われます。
(1)調査対象地域選定
まず対象とする鉱種が産出する世界の鉱床の分布をもとに各国の資源研究機関や地質調査機関が出版している地質図、鉱物資源図、鉱物資源データベースを収集し、それをもとに調査対象地域(国)を決定します。さらに過去の調査結果を参照して調査対象地域を絞り込みます。
(2)リモートセンシング調査
既存資料が十分でなく新たに調査対象地域を選定する場合や、対象とする鉱床の地形、地質、地化学的特徴が十分把捉されている場合には、リモートセンシングを用いた断層などの地質構造の把握や熱水変質帯の抽出など有望調査地域の絞込み作業が必須となっています。
(3)地質調査
絞り込まれた有望地域に対して地質調査を実施し、地質図を作成し、採取した岩石の分析を実施し、鉱体が存在する可能性の検討を行い、鉱床有望地域をさらに絞り込みます。
(4)物理調査
地表に露出した鉱床は、現在ではほとんどすべてがすでに発見されていると言っても過言ではなく、地表には露出していない地下に存在する鉱床をいかに発見するかが鍵になってきます。このような地下の情報を取得するため、地化学探査や物理探査(電磁・放射能・磁力・重力等)を実施します。地化学探査とは、地表の土壌や岩石を収集し、目的とする元素や、目的とする元素と同様の化学的挙動をする元素がこれらの試料にどの程度含まれているかを測定することにより、地下の鉱体の位置を推定する探査法です。物理探査は、空中や地表から地下の物理情報を測定し、電磁、放射能、磁力や重力などの物理情報を得るために実施します。多くのレアメタル鉱体は、金属元素を多く伴っているので、化学情報や物理情報の異常域として認識されます。
(5)ボーリング調査
地下に有望な鉱体が存在すると推定された場合には、ボーリング調査を行い、地下の岩石を直接採取・分析することにより、鉱床の有無・規模・形態・品位(目的とする元素の含有量)を明らかにします。これらの結果をもとに、調査対象の鉱床が開発可能かどうかを技術的、経済的に評価します。開発可能と判断された場合には、インフラや鉱山設備を建設し、生産の準備を開始することになります。非鉄金属鉱床を開発する場合、地域の選定から予察的なボーリング調査まで2〜5年程度の期間が、密度の高い詳細なボーリング調査から開発準備までにさらに5年程度の期間が必要で、実際に鉱石が生産されるまでには最短でも10年程度の期間が必要といわれています。
3.白金族元素資源
白金族元素は、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)の6元素からなる。このうち、プラチナやパラジウムは自動車排気ガス抑制のための触媒や燃料電池などに使用され、将来大幅な需要の増大が見込まれています。20世紀初頭までの200年間は漂砂鉱床(砂白金)が白金族元素の主要な供給源であり、しばしば金とともに採掘されてきました。砂白金の回収は1700年代半ばにコロンビアで始まり、1822〜24年にロシアでも開始されました。しかし20世紀初頭の銅ニッケル硫化物鉱床の発見・開発とともに白金族元素は硫化物鉱床から回収されるようになり、砂白金の生産は急激に減少しました。
現在の白金族資源の分布は、多くの金属資源の中でも最も偏在しているといっても良く、南アフリカ共和国の埋蔵量が63,000トンで世界の約90%を占め、次いでロシアが6,200トンで世界の埋蔵量の約9%に相当します。その両国の資源はブッシュフェルト(雨アフリカ共和国)とノリルスク・タルナフ鉱床地域(ロシア)に賦存していて、ブッシュフェルト鉱床地域からはプラチナとパラジウムを、ノリルスク・タルナフ鉱床地域からはパラジウムを主として産出しています。白金族元素は南アフリカ共和国を中心に71,000トンの埋蔵量が見込まれていて、この量は2006年の生産量の150倍近くに相当します。したがって白金族元素が数年のうちに急に枯渇することは考えられませんが、今後の需要の伸びに対応して、ますます価格が上昇することが予測されます。
4.希土類元素(レアアース)資源
希土類元素はその地殻存在度(希土類元素合計で約200 ppm)が他の金属元素(銅:55 ppm、鉛:13 ppm、亜鉛:70 ppm)に比べて高いにもかかわらず、希土類元素を鉱床の主体鉱種とするものは比較的少ないのです。その理由は、(1)希土類元素はマグマの分化過程でさまざまな鉱物に分配され濃集しにくい、(2)マグマの分別過程の末期に比較的濃集するが濃集比は低い、(3)希土類を主として含む鉱物は炭酸塩またはリン酸塩鉱物であり、これらの鉱物が濃集する岩石は限られている、(4)他の鉱物資源に比べてその開発利用の歴史が浅く、中国以外の地域では探査活動が十分行われていない、等によります。希土類鉱床では、地殻の平均存在度と比べると、約5倍から300倍、希土類が濃縮して鉱床を作っています。希土類鉱床は銅や他の金属鉱床と比べると鉱床となるための濃縮率に大きな多様性が認められますが、これは(1)含まれる希土類の種類、(2)希土類を含有する鉱物からの希土類の回収の容易さの点で、希土類鉱床のタイプにより大きな差異があるためです。
希土類元素を含有する鉱物は、軽希土類元素に富み重希土類元素に乏しいもの(バストネサイト、燐灰石、褐廉石)と軽希土類・重希土類元素両者ともバランス良く含まれるもの(ゼノタイム・フェルグソナイト)に大別されます。さらにモナザイトのようにこれらの中間的組成を持つものも存在します。したがって、希土類鉱床が軽希土類元素に富むか、比較的重希土類元素に富むかは、鉱床に含有される鉱物種により決定されます。
現在、世界の希土類埋蔵量は8,800万トンと見積もられており(USGS,2007)、年間生産量(12.3万トン)の715倍も存在します。したがって希土類元素の需要が今後増大しても、希土類資源が枯渇することはないように見えます。しかしながら、この見積もりどおりに必ずしも資源が開発・利用できるわけではありません。たとえば、この見積もりには漂砂鉱床中のモナザイトが含まれていますが、モナザイトにはトリウムが含まれ、環境上の問題から、インド以外では漂砂モナザイトからの希土類の生産は行われていません。さらに現在の希土類の生産は中国が世界の90%近くを占めており、それらは主として内モンゴル自治区のバヤンオボーや四川省のマオニューピン、華南地域(江西省、広東省、湖南省)のイオン吸着型鉱床から生産されています。中国は近年、自国産業の育成、環境保護、資源保護のため希土類の生産・輸出の制限を行っています。
一方で世界の希土類の需要は増加しており、資源供給が不安定化し、希土類資源の価格、その中でも希土類磁石に用いられるネオジウムやジスプロシウムの価格は急上昇しています。
したがって、先月号でお話をしました、レアメタルの使用量の削減(Reduceリデュース)、再利用(Reuseリユース)および回収(Recycleリサイクル)や代替材料の開発などと並行して、層状マンガン鉱床や海底熱水鉱床などの新鉱床の探索や、採掘されていない鉱床での鉱山稼働、あるいは採掘を休止している鉱山の再稼働が活発化してきています。
以上、今月はレアメタルの資源開発を中心に解説をいたしましたが、予定を変更して、来月号をレアメタルシリーズの最終回にさせていただきます。
(参考資料)
「よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み」 田中和明 著(秀和システム)
「レアメタル 技術開発で供給不安に備える」(独)産業技術総合研究所
レアメタルタスクフォース編 (工業調査会)
「ウィキペディア」 フリー百科事典
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