希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

レアメタルの基礎シリーズ(11)
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今月はレアメタルシリーズの最終回として、レアメタルのリユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の大きな課題の一つであり、且つ皆様も関心をお持ちの“ネオジム磁石の回収・再利用”についての現状の状況についてお話をさせていただきます。
1.ネオジム磁石の製造工程におけるリサイクル
ネオジム−鉄−ホウ素系磁石(Nd-Fe-B磁石:ネオジム磁石)は、ハードディスクドライブやハイブリッド自動車等のモータ、MRI、音響機器などに使用され、われわれの生活に欠かせない素材です。ネオジム磁石では、ネオジム(Nd)だけでなく、希土類元素の中でも特に希少な重希土元素であるジスプロシウム(Dy)が保磁力を高める目的で数%加えられています。わが国においては、2010年に磁石に使用されたネオジムは約5,000トン、ジスプロシウムは約500トンと推定されます。
ネオジム磁石の製造工程では、切削や破損などで全体の20〜30%がスクラップとなります。下図は、希土類磁石の製造工程と発生するスクラップをおおまかに示しています。これらのスクラップのうち、研磨屑が約70%を占めていて、残りのほとんどが不良品や端材となっています。国内の磁石メーカーでは、このような磁石の製造工程で発生するスクラップを、自社内あるいは外部委託によりリサイクルしています。しかし最近では、コスト的に見合わないとの理由から海外へ輸出されるものも多いようです。
次図は、ネオジム磁石スクラップの一般的なリサイクルフロー図です。固形スクラップは、高周波真空溶解によって合金として鋳造されるのが一般的になります。このとき磁石表面にニッケルめっきなどが施してある場合、酸処理や研削などの機械的処理によって被膜を除去しなければなりません。またこの固形スクラップは、焼結によって酸化か進行していて、酸素含有量は焼結前の10倍程度に増えています。このため、一次溶解によって酸素を除去した後、本溶解(合金鋳造)を行います。
またスラッジ粉末類は、酸素、窒素、炭素といった不純物を多く含み高周波溶解には適しません。そこで、酸溶解を行った後、ネオジムやジスプロシウムを、溶媒抽出法を利用して分離精製し、シュウ酸、炭酸ナトリウム、フッ酸、フッ化アンモニウムなどを添加して沈殿物として分離します。これらを同収し、焼成して酸化物やフッ化物とした後、溶融塩電解または金属熱還元によって希土類金属として回収します。
一方、スクラップから低コストで希土類金属を回収するための新技術の開発も活発に行われていて、希土類塩化物の蒸気圧の差に基づく蒸留法、鉄の塩化物を塩化剤として用いるネオジムの回収方法、マグネシウムを抽出剤としてスクラップから金属ネオジムを直接取り出寸方法などの基礎研究が行われています。さらに、スラッジ粉末を電波吸収材として利用する研究も行われています。
2.使用済み家電製品からのネオジム磁石の回収
製造工程で発生するスクラップのリサイクルに比べ、いったん市中に出てしまった製品のリサイクルは進んでいませんが、その中でも素性のよくわかっているスクラップについては新たな展開が見られます。たとえば大型モータに使用されていた自社製磁石を切削加工することにより複数の小型焼結体を作製し、磁石として再利用することが可能となっています。また市中屑を想定した固形のネオジム焼結磁石を、液体急冷法によって磁石粉末とし、ボンド磁石として再生する研究も行われています。
さらに最近、使用済み家電製品、特にエアコンのコンプレッサや洗濯機のモータからのネオジム磁石の回収の実証実験が行われ始めました。コンプレッサモータからロータを分離し、その後磁石を回収するシステム、また、洗濯機のモータのステータとロータを分離して、その後樹脂モールドやヨークを分離、最後に磁石を回収するシステムなどが実用化一歩手前まできています。
次図は製造工程でのリサイクルおよび使用済み磁石の回収を含めたマテリアルフローをまとめたものです。現在のところ、回収したネオジム磁石をそのまま再利用することは、古い磁石の磁気特性や防錆の問題、種々の形状が混在している等の問題があり、当面難しいと考えられています。
したがって、図のように、(1)回収磁石を酸溶解して原料希土類塩に戻す、(2)回収磁石の表面処理膜(めっき等)を剥がし、溶解合金化する、この2つの方法が有力となっています。これらの方法は、家電製品からの磁石の回収後は製造工程中の磁石のリサイクルとほぼ同じフローとなります。
ハイブリッド自動車HVや電気自動車EVのネオジム磁石回収、再生についてはまだ詳細な報告はありませんが、自動車メーカーを中心に実用化開発が行われているようです。いずれにしても今後は、より多様な形態のスクラップに対応するための収集システムや分離精製技術の開発が課題となるでしょう。
以上、今回でレアメタルの基礎シリーズを終了いたします。
レアアースを含むレアメタルの問題は、日本だけでなく世界のハイテク産業の問題となっています。この問題の解決に向けて、着実に前進してゆけるよう、皆様も知恵を出していただきたくお願い申し上げます。なお、次回からは新しいシリーズでお届けする予定です。
(参考資料)
「よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み」 田中和明 著(秀和システム)
「レアメタル 技術開発で供給不安に備える」(独)産業技術総合研究所
レアメタルタスクフォース編 (工業調査会)
日本ボンド磁性材料協会(JABM)2011年技術例会(9月15日) 講演要旨
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