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風力発電の基礎シリーズ(3)
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今月は日本の風力エネルギーのポテンシャルはどのようなレベルなのか、またその活用状況はどのようになっているのか、また風力発電のシステムにはどのような種類があるのかということについて勉強してみたいと思います。
1.日本列島の風力エネルギー分布
日本は、夏には太平洋高気圧の縁に位置し、冬にはシベリア高気圧からの北西季節風にさらされるために、マクロ的には風に恵まれた地域と言えますが、年間平均で見るとさほど風は強くありません。一方、春の突風や秋の台風などにも襲われ、ときには風が強過ぎるほどになります。
さらに、日本は狭い国であるにもかかわらず、国土のほぼ70%が山岳丘陵地であることから、地形が複雑で、それに応じて特別な風が吹いています。これを“局地風”と呼んでいます。このうちで“だし”は主に日本海側、“おろし”は主に太平洋側の内陸の風になります。国内外の局地風を研究した吉野正敏は、次図に示すような日本の局地風マップを作成しています。
このマップと、その地域の地形とを比べることで、局地風常襲地の地形的特長が明らかになります。局地風は山脈の風下側のふもとで強く、特に地峡の出口で強くなります、この種の風を“おろし風”、あるいは“地峡風”と呼びます。
では、風力発電を行うための風は吹いているのでしょうか? 1990年代にNEDOにより、全国各地の気象官署や21kmメッシュ(網目状)で設置されているアメダス気象観見所の風速データに基づく「風況マップ」が作られました。これは統計的な地形因子解析により、観測点以外の風速分布を推定したものです。
さらに、2003年にはNEDOからLAWEPS(局所的風況予測モテル)と呼ばれる数値流体力学(CFD)に基づいて開発された新しい風況マップか公開され、従来より細かな500mメッシュで、高度70mまでの年平均風速、風配図、風況曲線、ワイブルパラメータなどの情報が利用できるようになりました。この結果、日本には十分風が吹いていることが判りました。
日本風力発電協会の調査では、日本でも陸上で25GW、洋上で56GW、合計で81GWの風力発電が利用可能とされていて、次図一覧のように国内の大型風力発電所は徐々にではありますが増加してきています。しかしながら、これでもなお国内の風力発電の利用はほとんど手付かずといっても過言ではありません。
2.日本の風力発電の問題点と今後
発電機の小型、大型問わず、日本では欧米諸国に比して普及が進んでいません。理由として、台風に耐えうる風車を施設すると欧米と比較してコストが上がることや、大量の風車を設置できるだけの平地の確保が困難なこと、元々日本ではクリーンエネルギーとして太陽光発電を重視してきた歴史があることなどが挙げられます。また、今までの日本はフランス同様に原子力発電への依存度がすでに大きいために風力への依存傾向は弱く、対照的にアメリカやドイツは原子力発電所の新設を政策的に停止しているため風力発電への依存度を増しています。
日本では、電力会社は風力発電事業に消極的のようですが、自治体による「自治体風車」や市民グル−プによる「市民風車」等のプロジェクトの取り組みが進んでいます。
日本国内での風力発電(出力10kW以上)の累計導入量は2007年3月時点で約1400基、総設備容量は約168万kWであり、発電量は標準的な原発(100万kW前後)の数分の1となります。2007年度は前年度に比べて導入量が半分以下に落ち込んでいます。1基あたりの出力を見ると、2007年度では設備容量1MW以上の機種が大部分を占めるようになりました。日本における風力発電会社トップは、ユーラスエナジーホールディングス(旧トーメンパワーホールディングス)(東京電力と豊田通商の合弁)。海外機の独擅場であった2MW以上の大型機については、国産機の開発も進んでいます。風力発電設備の大部分は輸入品であり、2007年度の国産機の割合は設備容量ベースで16%、基数ベースでも23%となっています。
一方、中小の発電事業者、機器メーカーが生き残りを目指して奮闘する中、国内の風力発電事業を拡大する手だてとして一様に指摘するのが「政府による抜本的な支援策」です。その中でまず必要なのが導入目標の設定で、政府は10年度までに300万キロワット(08年度188万3000キロワット)まで拡大する方針を掲げていますが、その先は未定であり、この点が太陽光発電とは大きな違いとなっています。
それ以上にネックとなるのが、90年代半ば以降、推進してきた「電力自由化」とのからみです。例えば、事業者が電力会社に売電するうえでの障壁となっている系統強化について、「電力会社任せではなく、国の責任で整備してほしい」という声が根強いように、再生可能エネルギーの普及は国策として推進する必要があるのではないでしょうか。
このような状況の中、大地震、大津波による福島第一原発の大事故が、今までの原子力発電路線の大幅な見直しをせまっています。そして、今までCO2削減等の環境問題に対する「お付き合い程度の風力発電」が、環境問題以上の重要度で、“より安全な国民のエネルギー”として急速にクローズアップされてきています。風力発電が国民の支持を得る国策として大きく動き始めざるを得ない状況となってきたのです。
3.大型風力発電システム
風力発電は、風の運動エネルギーを風車(風力タービン)により機械的な回転力に変え、この回転を増速歯車で高い回転に変えて発電機を回して発電するものです。回転を上げないで、発電機の方の極数を増やすことにより増速歯車を使わない方式もあります。
大型風車の場合には発生した電力を、図に示すように電力会社の電力網に連系して使うことになります。この場合には発電した電力は、電力ケーブルを通じて昇圧変圧器に接続し、ここで電圧を上げてから系統制御盤を経由して送電網に投入します。
また風車の運転情報は、光ケーブルを通じて現地のウィンドファーム事務所にリアルタイムで伝えられるようになっています。さらに、現地事務所ばかりでなく風力発電事業者の本社でも、国内だけでなく海外で運転されている風車の運転状況がリアルタイムで把握できるようになっています。
風車の制御は、タワーの上のナセルと呼ばれる大きな箱の上に付いている風向計と風速計の情報に基づいて、風速により風車の羽根の角度を変えて回転数制御を行い、風向に応じて風車回転面を風の方向に向けるようにしています。
一般に、風は地上から上空へ向うほど強くなるため、風車の高さはできるだけ高くしたほうが有利になります。また、風車により風から取り出せるエネルギーは、風車のブレードが回転してできる面積(受風面積あるいは掃過面積)に比例し、風速の3乗に比例して増大するため、風速が2倍になると風車で取り出せるパワーは8倍になります。風力発電装置はできるだけ大きな風車を、少しでも風の強いところに建てるのが望ましいと言えます。
ここでは発生した電力を電力系統に接続する系統連系方式について述べましたが、小型風車では系統連系を行わず、独立した電源として蓄電池に蓄えて使うという方法が一番多く用いられています。
次回は中・小型風力発電システムと風力エネルギーの取り出し方を中心に勉強してゆきたいと思います。
(参考資料)
「トコトンやさしい 風力発電の本」牛山 泉 著(日刊工業新聞社)
「風力発電機ガイドブック(改訂版)」金綱 均、松本文雄 共著(パワー社)
「ウィキペディア・フリー百科事典」
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