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風力発電の基礎シリーズ(6)
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先月は風力発電機の種類と特徴について、風車の種類別の観点からお話をさせていただきました。今月はさらに、風車の羽根の構造と回転する原理や実際の風力発電機の内部構造などについて勉強してみたいと思います。
1.風車が回る原理
風車の種類で述べたように、色々な形状の風車がありますが、プロペラ形は一番効率が良いとされていて、また手作りの場合にも主としてこのプロペラ形を利用するので、この回り方を知っておく必要があります。風車の動作については、先月号で述べたように抗力形と揚力形があり、それぞれ風エネルギーを機械(回転)力に変える方法が異なります。ここでは精緻な理論を学ぶのではなく、感覚的に理解できる解説にとどめたいと思います。
風の力をどのように使って風車は回るのか、その1つは風が物に当たることによって、押す力があり、2つ目は持ち上げる力があります。風車はこの2つの力のいずれかを使います。まずこの押す力を抗力といい、抗力によってどのように風車が回るか、次図をもとに考えてみましょう。
(1−1)抗力で回る風車
(1)のような十字に張った板の中心に回転できる軸(棒)のある構造を考えます。
この場合は上下の板(以下は翼と呼ぶ)を押す力が同じになってしまい、回ることができませんが、(2)のように下側のみの風をついたてなどでさえぎると、風の押す力に差ができて、矢印の方向に回り始めます。次に少し翼の形を改良した(3)の場合は、風に向かって凹の形をした上側の翼に受ける力の方が、下側の風に向かって凸の形をした翼より、押す力が大きくなり矢印の方向に回ります。さらに、(4)は少し加工して翼の形をお椀の形にした場合であり、この形になると風が当たる方向でその押す力は、4倍程度の差が生じるので、やはり矢印の方向に回わることが分かります。
このように,風が風車の翼を押しながら通過してゆき、風車を回すわけですが、ここで注意する点は、翼の動く(移動する)速さは風の速さより速くなることはないということです。したがって、抗力で回る風車は低速形であり、且つ、弱い風で回り始め、軸を回す力(トルクと呼ぶ)が大きな風車となり、用途も重いものをゆっくり回す仕事に向いています。
(1−2)揚力で回る風車
次に持ち上げる力を揚力といい、この力で風車が回る仕組みを次図で見てみましょう。
風車の羽根を翼と呼び、図の左上のように、翼にある方向から風が当たると、その風の流れる速さが上と下では異なります。この場合に早く流れる風の圧力が遅く流れる風の圧力よりは小さくなる(これは“エネルギー保存則”と呼ばれる)結果、翼を矢印の方向に持ち上げる力が生じます。飛行機などが浮かび上がって飛ぶことができるのもこの力によるもので、これを揚力といいます。
ここでは、風車の回り形には2つの方式のあることを知っておいていただきたいと思います。風車の翼の片方は、回転軸に固定されているために、図中の右のように回転する力となります。このような仕組みで回る風車を揚力形風車といいます。この揚力は風の進む速さに比べて数倍から10倍以上もの速さで翼を回すことができるために、揚力形風車は高速で回ります。回り始める力は弱いのですが、高速で回るので出力(卜ルク×回転数)も大きく、今日の風力発電に多く用いられています。
揚力形プロペラ風車の場合を少し詳しく考えてみると、次図になります。回転するローター(翼が組み合わされて回る構造)を考えると、水平軸では風車は回転していても、中央(hub : ハブ)に近いほど進む速さは遅く、先端に行くに従ってその移動する速さは大きくなることが理解できると思います。これは各半径で進む速度(周速度)が異なるからです。したがって、風車は正面から風を受けていますが、回転している翼から見れば次図のように翼の動く方向の速度と、正面から受ける風の速度の合成(ベクトル和)の方向から吹いてくる相対的な方向の風を受けていることになります。その結果、ハブに近い翼はピッチが大きく、翼先端方向に進むに従ってピッチは小さくなっています。受ける風速も絶えず変化しますので、揚力を最大にするためには、風速や回転数でピッチを変化させ運転することが必要であることがわかると思います。
回転力と回転数に対して最適ひねり角があることが予測できます。また、羽根の断面、すなわち翼型も飛行機のプロペラと同様に風車の性能に大きな関係があるといわれています、実験の結果では、前面のひねり角ほど大きな関係はなさそうです。
回転時に空気抵抗の少ない流線形であるならば、実際には問題がないようです。風車の出力は、風車の直径の2乗に比例し、風速の3乗に比例するといわれます。そして、回転数は直径が大きくなると少なくなります。このように、出力と回転数はプロペラの長さが関係してくるので、目的に応じて設計しなければなりません。
風車の羽根枚数と回転数や出力との関係は、羽根枚数を多くすると回転力は大きくなりますが、回転数は少なくなります。同様に、プロペラの幅を増すと回転力は大きくすることができますが回転数は小さくなります。これも最適の値が存在します。手作りという立場から考えれば、プロペラ形風車では2枚羽根のものが作りやすいといえます。
2.風車の全体構造と内部構造
(2−1)全体構造
風力発電の風車で現在圧倒的に多いのは3枚ブレード(羽根、翼)のプロペラ形で、高いタワーの上にナセルと呼ぶ大きな箱が載っていてその先にプロペラ形のローターが付いています。このナセルの中に発電機や増速機さらには変圧器など重要な要素が入っています。ナセルとタワーの間には風向制御のための歯車が付いていて、風向に応じてナセル全体を回転させて風車回転面を風の方向に向けるようにしています。また、風の強さに応じて風車ブレードの角度を変化させる、可変ピッチ機構も組み込まれています。 さらに、どのような発電機を使うのかも重要な問題です。現在一番多く用いられているのは風車の回転数を増速歯車で1500回転や1800回転に高めて誘導発電機を回す方式です。増速機で回転を上げないで風車の回転を直接に多極の同期発電機に伝える風力発電機もあります。この方が部品点数も少なく、故障の原因になりやすい増速機を除くことができる利点がありますが、大直径で重い発電機になることから現在ではまだコスト高になります。
一方、現在は水平軸のプロペラ形が多く用いられていますが、垂直軸のダリウス形風車などもメカニズムが簡単で部品点数も少なく、重量部分は地上近くに設置できて安定性もあります。また、何と言っても方位制御を必要としないことから、風向変動の大きなところでは将来性があると言えます。
(2−2)内部構造
次上図は大型風力発電装置でもっとも一般的な、3枚羽根のプロペラ形風車のナセルの内部構造図を、また、次下図は垂直軸ダリウス形風車の内部構造図を示しています。
ここでは各構成要素について簡単に説明しましょう。
(1)タワー:高さ50〜100mくらいが普通です。高い位置では地表近くに比べて、強く乱れのない風が吹きます。タワーの内部は、発電した電気を送る電線や、ナセルに上がるためのはしごや簡易エレベーターが付けられています。
(2)ナセル:増速機や発電機など、風車の本体を納めておく場所で、防水や防音の役目も果たします。メンテナンスのため人の入れるスペースが設けられています。
(3)ブレード:羽根は軽く作る必要があるため、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用い、内部は空洞で微風から回転を開始し、台風のような強風にも耐えられるようになっています。風車の直径が大きくなるほど、回転は遅くなります。
(4)ハブ:ブレードを回転軸に取り付けている部分で、可変ピッチ方式の風車では、風に対するブレードの角度を調整するための装置がこの中に入っています。
(5)増速機:風車の回転を発電機が必要とする高い回転数まで高める役目をします。増速機を持たず、多極の発電機を風車のゆっくりした回転で直接駆動するダイレクトドライブ方式もあります。
(6)発電機:大型風車では出力数百kWから3000kWくらいまでのものが付けられ、1基の大型風車で数百軒から2千軒分の電力を生み出せます。
(7)ヨー制御モーター:ナセルとタワーの取り付け部分に複数個ついています。風車の回転面を常に風の方向に向けるために、ナセルの上の風向計で風の方向を検知し、この制御モーターでナセルごと首を振るようにしています。
(8)制御装置:風速や風向にあわせて風車の運転方法をピッチ制御や発電機や制御モーターに指示するコンピュータです。
以上、今月は風力発電機の風車が回る原理が抗力形、揚力形に分けられこと、またプロペラ形のブレード(羽根、翼)の回転原理を詳細に学んできました。さらに、風車の構造についても、その概要を知ることができました。次号では、風車の回転制御方法や発電機の種類等について、勉強したいと思います。
(参考資料)
「トコトンやさしい 風力発電の本」牛山 泉 著(日刊工業新聞社)
「風力発電機ガイドブック(改訂版)」金綱 均、松本文雄 共著(パワー社)
「マイクロ風力発電機の設計と政策」 久保 大次郎 著 (CQ出版社)
「ウィキペディア・フリー百科事典」
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