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風力発電の基礎シリーズ(8)

先月号までは、風力発電の基礎として、風力発電機の種類、各種システム、内部構造、羽根の構造、安全対策の方法などについて勉強してきました。今月は風力発電に使われる発電機について、実用的なシステムで使われている発電機、あるいは自作の風力発電機に適している発電機について解説させていただきます。

1.実用発電機の種類と周辺システム

風力発電の歴史を調べてみると、19世紀末から20世紀前半にはコミュニティ用の出力規模の小さな直流発電機が使われていました。その後第2次大戦以降、出力規模も大きくなり、交流発電による系統連系方式が行われています。

現在の大型風力発電装置で使われる発電機の種類と特徴を図に示します。20世紀末の世界市場では、1000kW 程度までの中型機種が多く、(A)ギヤ付きかご型誘導発電機、(B)ギヤ付き巻線型誘導発電機スリップ可変速制御)、などが主流でした。しかし、21世紀に入り主力機種が大型化して2000kW 程度以上に移行してきたことから、その出力変動をできる限り小さく抑えたいという要求から、(C)ギヤ付き巻線型誘導発電機(2次励磁可変速制御)、(D)ギヤレス多極同期発電機(インバータ可変速制御)の2種類が主流になりつつあります。

特にドイツでは、超大型機で、(D)タイプの6000kW 機が2002 に運転を開始しており、さらに、(B)タイプの5000kW が2004年末、6000kW が2005年から運転を開始しています。その他の機種では、(A)タイプは、出力変動や効率の問題があり、徐々に使われる機種も少なくなってきています。ただし、このタイプは、機能が単純で低価格であり、かつ、山岳地域や離島における輸送問題では有利であることから、今後も1000kW 以下の装置としてのニーズは引き続き根強くあるようです。一方、永久磁石を使用するものは、冷却性能および価格の問題などがありますが、高性能ネオジム磁石を利用した発電機が小型、中型機を中心に、盛んに使用されようになってきています。

また、現在の主要機種である(A)、(B)、(C)、(D)のそれぞれのタイプの機種について、下表にその電気的特徴を記しましたが発電方式の違いにより、カットイン風速、系統接続時の突入電流、中低風速域での発電効率、定格風速以上での出力変動やカットアウト方法などが大きく異なっています。

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上表中の“フリッカ電圧”とは、系統に流れる電流が変化する時に、負荷に供給される電圧が変動し、照明がちらつく現象のことです。次図は発電機のタイプ別の代表的なシステムを示したものです。

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2.自家製風力発電システムの発電機

発電機にはいろいろな構造があり、自作するとなると、どのような構造にするかが課題です。そこで、まずは発電機の原理や、使用できる材料について調べることにしましょう。

(2-1)発電機の原理

風力発電の基礎シリーズ-画像120703

発電機は、磁界の中に銅などの金属導線の棒を置き、この棒を外力で動かすと、導線に電圧が発生するという「フレミングの右手の法則」が原理となっています。例えば、上左図のように磁界の中で電機子コイルを回転させ、スリップ・リングを介して取り出せば、極数の数をp、回転数をn(rpm)、周波数をfHzとすると、f=np/120の交流が取り出せます。逆に、電機子コイルに電流を流せば、モータとして回転させることができるわけです。

実際の発電機では、上右図のようこマグネットが回転するようになっているものが多く、磁気回路とコイルを配置し、マグネットを回転させることによって、巻き線に起電力を発生します。したがって、スリップ・リングは不要となり、構造的にはシンプルに構成できます。

上記のような発電の原理を効率よく具現化するための構造はいろいろ考えられますが、一般に次図に示すような構成です。

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図(a)のようにマグネットが回転し、外側の固定極コアにコイルが巻かれる「インナ・ロータ型」、図(b)のように外側をロータ・マグネットとして内部に固定極を殼ける「アウタ・ロータ型」、さらには図(c)のような平面状にロータ・マグネットと固定極を配置した「平面型」などが考えられます。この平面型は、多くの市販小型風力発電機にも採用されています。

自動車の交流発電機はインナ・ロータ型ですが、マグネットの部分にロータ・コイルが巻かれていて、このロータ・コイルの励磁電流を制御して磁界の強さを可変し、出力電圧を調整するしくみです。このため、回転するロータ・コイルに励磁電流を流すためのスリップ・リングが使われます。一方、自転車用の発電機はアウタ・ロータ型が使われており、非常に簡単な構造です。

このように発電機は、マグネット、コア、コイルから構成されますが、キー部品は何といっても特殊形状のマグネットとコアに使う電磁鋼板といえます。上記のいずれの構造も特殊形状のマグネットや電磁鋼板が必要ですが、特に平面型は、部品が比較的入手しやすく、個人レベルで製作しやすい発電機の構造といえます。理由は、構造に湾曲部が比較的少なく、材料を加工しやすいからです。また、マグネットも特殊な形状は必要ありません。

上記のような発電機の重要部品であるマグネットと電磁鋼板は、一般のお店で購人することは難しいと思われますが、例えば、ネオジム磁石などは、当社のような専門店を利用すれば問題ありません。

マグネット(永久磁石)は、フェライト磁石、サマリウム・コバルト磁石、ネオジム磁石などが考えられます。フェライト磁石は安価ですが、磁力が小さく、発電効率が落ちます。サマリウム・コバルト磁石は磁力が大きいのですが、工作上、機械強度が若干問題になります。ネオジム磁石は最も磁力が大きく、機械強度もまずまずで、専門店では多種の形状がそろっています。したがって、自作平面各種永久磁石型発電機の構造型発電機にはネオジム磁石が最も適しているのではないでしょうか。

(2-2)自作発電機の例

次図は平面型自作発電機の一例です。(マイクロ風力発電機の設計と製作・CQ出版社より)円柱型(ディスク型)ネオジム磁石とヨーク(電磁鋼板)、扁平コイルをうまく組み合わせたコアレス型の設計になっていて、風速が10m/sのとき、200Wの出力が得られたそうです。

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<参考・引用資料>

「トコトンやさしい 風力発電の本」牛山 泉 著(日刊工業新聞社)

「風力発電機ガイドブック(改訂版)」金綱 均、松本文雄 共著(パワー社)

「マイクロ風力発電機の設計と政策」 久保 大次郎 著 (CQ出版社)

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