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風力発電の基礎シリーズ(10)
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ここまで、風力発電および風力発電機について、基礎的な知識を得るために9回に分けて勉強してきました。まだまだ、お伝えしたいことは残っていますが、とりあえず今月で一区切りとさせていただきます。今月は“風力発電の基礎シリーズ最終回”として、これからの世界や日本の風力発電への期待と導入計画、解決しなければならない課題などについてまとめてみることにいたします。
1.世界の風力資源量について
風力発電は、開発可能な量だけで人類の電力需要を充分に賄える資源量があるとされています。世界全体で実際に発電可能な量の見積りは文献により異なりますが、世界全体の電力需要量(14TW)の約4倍に相当するといわれています。
日本では電力需要の35GW(ギガ・ワット)程度の資源量が開発可能であると推定されています。一方、「日本では風況が悪く風力発電に向かない」などとする意見が存在していましたが、実際には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による風況調査などで設置有望地域が多く存在する可能性が示されています。日本での陸上での導入量としては、2030年までに20GW、2050年までに25GWなどの導入シナリオが提示されていて、さらに洋上(オフショア)発電まで考慮すれば、合計81GW程度まで利用可能と言われています。
2.風力発電の長所・短所のまとめ
それでは、これだけ大きな可能性がある風力発電を十分利用できるようにするには、数々の課題をクリアしてゆかなければなりません。以下に、今まで勉強してきた内容も含めて、風力発電の長所・短所をまとめてみました。
<長所>
主に環境負荷の小ささ、化石燃料の使用量削減、エネルギー安全保障、産業振興・雇用創出などが挙げられます。
  • 二酸化炭素などの温室効果ガス排出量の低減効果がある。
  • 比較的発電コストが低く、事業化が比較的容易である。
  • エネルギー自給率の向上が見込める。
  • 小規模分散型の電源であるため、事故や災害など有事の際の影響を最小限に抑え、全体の稼働率を 高くできる。
  • 工期が短く、需要総量の変動に対応しやすい。また投資してから運転開始までの利子も少なく済む。
  • 運転用燃料を必要としないため、物価変動由来(インフレなど)の事業リスクを減らせる。
  • 大規模集中型の発電所に比較して、修理やメンテナンスに要する期間を短くできる。
  • 離島など、燃料の確保や送電コストの高い地域の独立電源として活用できる。
  • 冷却水を必要としない。
  • 小型のものは需要地に隣接して設置可能であり、送電コストの低減に役立つ場合がある。
  • 個々の設備が比較的小規模で個人でも運用可能である。
  • 風が吹けば夜間を含めいつでも発電が可能である。
<短所>
主に出力電力の不安定・不確実性と、周辺の環境への悪影響の問題があり、特に設置場所の選定が重要となっています。
  • 風力原動機を設置する場所の風況が発電の採算性に大きく影響する。
  • 風速の変動に伴って、出力の電圧や力率が需要と関係なく変動する。
  • 周囲に騒音被害を与える恐れがある。
  • 現時点ではコスト面で法的助成措置を必要とする場合が多い。また、系統の拡張などにある程度の 追加費用を要するとされる。
  • ブレードに鳥が巻き込まれて死傷する場合がある。
  • 落雷などで故障したり、事故の原因になる場合がある。
  • 風車は、年々タワーは高く、ブレードは長くなる傾向にあり、それに伴い点検や補修に係るコスト を増大させる。
  • 風量によっては余剰電力を増大させる。
  • 景観が威圧的で、人によっては恐怖心、不気味さを与える。
  • 地震によって発電停止することがある。
3.風力発電の短所の克服
(3-1)洋上風力発電所・洋上水素製造所
海上に風力発電機を設置することを洋上風力発電(オフショア風力発電、海上風力発電、海洋風力発電)と呼びます。地形や建物による影響が少なく、より安定した風力発電が可能となり、また立地確保、景観、騒音の問題も緩和できるので、大型風力発電における短所をカバーする重要な方策といえます。すでに2010年末時点で、欧州を中心に3GW以上が導入されています。
水深が浅い海域において海底に基礎を建て、大規模なウインドファームを建設する例が各国で見られ、元々はデンマークを中心に建設が進められてきましたが、近年になって欧州全域に広がる勢いをみせています。英国では、2020年までに洋上風力発電設置容量33GW(Round 1、2、3 合計)導入目標という壮大なもので、ドイツにおいても、北海における国家プロジェクトAlpha Ventus 60MWを皮切りに、2009 年以降の導入加速が見込まれています。日本においても港湾内などにおける建設例が見られ、2010年3 月には茨城県神栖町にて、民間企業による2000kW風車7本が初の港湾外への設置、稼働が開始されています。
ただし、日本周辺の沖合は急激に水深が深くなる場所が多く、海底基礎方式は不向きであり、このために海上技術安全研究所などで、浮体式基礎方式を用いる研究がされています。2012年7月、長崎五島沖で環境省による浮体式洋上発電の試験が開始されました。
さらに、沖合での洋上風力発電(沖合風力発電)については、電力の陸上への送電が困難であるため、発電した電気で水素を製造し、これをタンクに圧縮貯蔵したり、有機ハイドライドに吸着させる等により輸送することが研究されており、これにより電力変動の問題も解決されることが期待されています。また、科学技術政策研究所では、2002年3月に「深海洋上風力発電を利用するメタノール製造に関する提案を発表しており、沖ノ鳥島周辺、三陸沖太平洋、北海道北西沖日本海などを有望海域として、日本の全エネルギー需要を賄えるほどの大規模なシステムなどを提唱し、その経済性等の試算を行い、実用化が可能であるとしています。
(3-2)台風、雷、バードストライクへの対策
<台風対策>
20 世紀末から始まった大型風力発電の導入初期には、台風のような強風のないヨーロッパからの輸入機が多かったこともあり、時には大きな倒壊事故などが起きました。そこで、NEDOでは、2005年より3年間かけて、日本特有の強風・乱流・雷に対する対策を検討して、日本型風車の設計ガイドラインを作りました。これにより台風などの強風に対する対策がはっきりしました。
強風対策としてのフェザーリング導入、停電中の風車のヨー制御(風向追従)の維持、風向風速計の強度アップナセルカバーの負圧対策などの対処がなされたこともあって強風での事故は減少しています。
<落雷対策>
また、風車が大型化するにつれて落雷による事故も増えてきました。日本の冬季の日本海側の雷の強度は世界でも有数の強度を持つのですが、落雷の少ないヨーロッパからの輸入風車は耐雷強度が小さいため落雷被害を受けやすく、ときにはブレードが飛散するような事故さえ起きていました。落雷が小規模なものでも、誘導雷によって風車の制御機器が被害を受けることがあります。このため設計ガイドラインに基づいて、ブレードにつけている雷を受け止めるためのレセプターを大型化したり、その数を増やしたりしています。さらに受け止めた雷を地中に逃がすためのダウンコンダクターと呼ばれる導線を太くして大電流を流しやすくする改良をすることにより、風車の落雷事故も大きく減少しています。
<バードストライク対策>
風車に野鳥がぶつかることをバードストライクと言いますが、これについてはしっかりとした事前評価が必要になります。渡り鳥については、渡りのルートを明らかにして、そのルートを避けることは言うまでもありませんが、希少種の鳥が営巣する場所の近くには風車そのものを立てないという配慮も必要でしょう。
イギリスの王立鳥類保護連盟(RSPB)は、「鳥類にとってもっとも重大な長期的脅威となるのは気候変動であること発表しています。気候の変化は地域の植生を変え、それに伴って虫の生態も変化し、それを餌とする烏が生息できなくなるためです。この脅威に比べると、ウィンドファームを適所に配置することは鳥類にとって何ら重大な危険とはならない、と結論づけています。
4.風力発電の国内送電網整備への取り組み(日本経済新聞より)
最後に、ご覧になった読者も多いかと思いますが、国内の風力発電送電網についての日本経済新聞212 年8月22日号一面の記事をご紹介します。
<風力促進へ送電網整備 官民で3000億円基金 北海道・東北に重点>
政府は風力で起こした電気を消費地に送るための送電線を電力会社、風力発電事業者と共同で整備する。官民で3000億円規模の基金を設立し、まず北海道や東北で重点的に建設する方針だ。政府は風力を再生可能エネルギーの柱と位置づけているが、発電に適した場所は都市部や工業地域から遠い。初期投資のかかる送電線を用意することで、新規事業者の参入を促す。風力発電には風が年間を通して強く吹く場所が適している。日本では北海道や東北の海沿いなどが中心で、電気を送るための送電線がないのが実情。事業者にとっては多額の初期投資が必要で、風力への参入をためらう原因になっていた。
官民で特別目的会社 (SPC)を設立し、送電線建設のための基金を運用する。基金への出資割合は国、電力、風力発電事業者が約3割ずつ。政府は5年かけて1000億円まで出資を拡大する方向で、来年度予算概算要求には約300億円を盛り込む。出資企業は北海道、東北、東京の3電力会社のほかJパワーや、豊田通商系のユーラスエナジーホールディングス、コスモ石油系のエコーパワーなどが有力で、メガバンクから融資を受ける。
重点整備する地区は北海道北部の稚内地区、南西部の苫東地区や青森県の下北半島、秋田県北西部にある合計約6ヵ所。経済産業省は整備費用を約3000億円と試算している。SPCは送電線を使う風力発電事業者から使用料を受け取り、投資を回収する。
政府は原発依存度を2030年時点で0〜25%とする3案のエネルギー政策の選択肢をまとめている。脱原発、原発維持のいずれを選んだ場合でも、再生エネは10年度実績の2倍以上となる25〜35%まで引き上げる必要がある。再生エネの中では発電コストが比較的安い風力は30年までに5%程度を目指す。
しかし11 年度の風力発電設備(出力ベース)は約250万キロワットで、発電を使う風力発電事業者か量は全体の1%に満たない。米国の約4000万キロワット、ドイツの約2700万キロワットに比べて低い水準だ。7月に始まった再生エネによる電力の全量買い取り制度でも太陽光が先行しており、風力の普及を支援していく。
経産省によると、地域独占の電力会社ができて以来、国が送電網の整備を支援するのは初めて。政府は発電部門と送配電部門を分離し、中立的な機関が送配電を担うことなどを柱とした電気事業法改正案を来年の通常国会にも提出する予定。風力用の送電線整備は電カ制度改革の試験的な動きにもなりそうだ。
電力会社は再生エネの導入に消極的だったが、送配電の投資・運営を中立化すれば、再生エネ普及の基盤整備が進みやすいとの見方かおる。一方で消費地から遠い地域での送電線建設には多額の投資や維持費が必要。コスト増は税や電気代の形で消費者や企業に跳ね返るため、再生エネ普及と負担のバランスをどうとるかが課題となる。
以上、10回にわたり、風力発電の基礎についてお話をさせていただきました。限られた紙面の中、お伝えできなかった情報も多々ありましたが、世界はもちろん、特に日本においては、風力発電が益々重要視されてきていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。発電機およびその制御技術を筆頭に、この分野での日本の技術が大きな貢献をするのはこれからだと考えています。
来月号からは次のシリーズ「乾電池から燃料電池まで、電池の基礎シリーズ」をお届けする予定です。
(参考資料)
「風力発電に関するQ&A集」 (財)新エネルギー財団 新エネルギー産業会議 風力委員会
「トコトンやさしい 風力発電の本」牛山 泉 著(日刊工業新聞社)
「風力発電機ガイドブック(改訂版)」金綱 均、松本文雄 共著(パワー社)
「マイクロ風力発電機の設計と政策」 久保 大次郎 著 (CQ出版社)
「ウィキペディア・フリー百科事典」
「日本経済新聞2012年8月22日号」
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