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電池の基礎シリーズ(10)

先月号では燃料電池の概要と動作原理および基本構造などについてお話をしました。今月からは、各種燃料電池の特徴とその構造、また燃料電池の種類ごとの実際の用途などを詳細に勉強して行きたいと思います。

2.実用化されている各種燃料電池の原理と構造

(1)固体高分子形燃料電池・PEFC(Polymer Electric Fuel Cell)

(1-1)固体高分子形の発電原理

固体高分子形は、動作温度が100℃以下で、常温でスタートでき、且つ小型・軽量であるということから、家庭用、電気自動車用、携帯用として現在最も有望と言われています。

燃料極に水素、空気極に酸素を入れて、高分子膜を電解質として用いる固体高分子形の動作原理は、以下のような基本的な反応で成り立っています。

電池の基礎シリーズ-画像130701

単セルで0.7V程度の電圧を取り出し、発電効率は40%弱です。

膜側の面に触媒をつけた2つの電極で膜を挟み、一体化して製造する方法がとられています。これを膜/電極接合体(MEA)と呼んでいます。食塩電解技術として発展してきた高分子膜は、このような形で固体高分子型の心臓部になっています。

実際の固体高分子形燃料電池(PEFC)は電解質に水素イオン伝導性の高いフッ素樹脂系高分子膜を用います。この高分子膜の両側をカーボンペーパーに白金などの触媒を塗布した一対の電極で挟み、さらにカーボンなどのセパレーターでサンドイッチ構造にしたものです。下にこのPEFCの原理図を示します。

電池の基礎シリーズ-画像130702

燃料極では供給された水素が触媒上で水素イオンと電子に分かれます。空気極では供給された酸素が高分子膜を移動してきた水素イオンや外部回路を移動してきた電子と反応して水になります。

燃料には純水素以外に、メタノール、ガソリンなども用います。この場合には水素ガスを主成分とする燃料に改質すると、改質ガス中には1%ほどの一酸化炭素が含まれます。この一酸化炭素が白金や白金の合金に吸着し、白金触媒上で水素のイオン化を妨害し、電池性能を低下させます。そのため、改質ガスから一酸化炭素を除く必要があります。現在最良と考えられる白金-ルテニウム触媒を用いても一酸化炭素濃度を100ppm以下にする必要があります。

PEFCに用いられる高分子膜は陽イオン交換膜で、テフロン系の主鎖にエーテル結合を介して側鎖が結合し、その末端にスルホ基(スルホン酸基)がついたものです。

このスルホ基が集まって親水性の領域(クラスター)を形成し、この中を水素イオンが水分子を2ないし3個引きつれて移動します。このため、高分子膜はいつも水で湿っている必要があります。(右下図参照)

左下図はPEFC発電システムと他の内燃機関との発電効率を比較したものです。PEFCの効率は規模によって異なりますが内燃機関に比べて高いことがわかります。PEFCは家庭用定置型電源や自動車用移動電源として最も期待されています。

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(1-2)固体高分子形の構造

固体高分子形燃料電池(PEFC)の単セルはスルホン酸基やカルボニル基を持つふっ素樹脂系イオン交換膜(15~200μm)の両側にアノード(燃料極)およびカソード(空気極)をそれぞれ接合して一体化した構造になっています。電解質として使われるパーフルオロ系膜としては、デュポン社のナフィオン膜、旭硝子(株)のフレミオンや旭化成工業(株)のアシプレックスが良く知られています。このようなイオン交換膜を電解質に採用しているPEFCは以下のような特徴を持っています。

(1)電解質の散逸がない

(2)電極間の差圧制御が容易

(3)作動温度が低く短時間で起動できる

(4)小型・軽量化が可能(高電流密度)

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しかし、電解質である膜が高いイオン伝導性を維持するためには、常に加湿されている必要があり、この加湿方式としては、内部加湿と外部加湿があります。内部加湿方式にはセルに供給する燃料を入口部で加湿する加湿部を電池と一体化した方式と多孔質セルセパレータの背面に直接冷却水を供給する直接方式があります。

PEFCでは膜の加湿とともにカソードで生成する水および膜内を移動する水を含めた総合的な水管理が電池性能と寿命にとって極めて重要になっています。膜が乾燥するとイオン伝導性が悪くなるとともに、酸素と水素が直接反応するクロスリークが生じ、膜が破損します。逆に水分が過剰になるとフラッディング現象が生じ、ガスの拡散阻害による電圧低下を招きます。

膜加湿の均一性の保持が重要であり、加湿量、ガス流速、ガスフローパタンなど改善が行われています。また、電池触媒のCO被毒をさけるため、改質ガス中のCO濃度低減も重要です。

(1-3)固体高分子形の実用例

<セルとセパレーター>

■セルをはさみこむように配置されているのが、セパレーター。炭素板や電気を通す性質を持った樹脂(じゅし)でできています。その表面には細かいみぞが刻まれていて、そこを水素や酸素が通り、電極に供給されます。

■発電のときに発生する熱は、冷却(れいきゃく)水などによって回収されます。

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■単セルとセパレーターを積み重ねたものが、セルスタックです。直列に接続することで、高い電圧と、大きな電力が得られます。

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<固体高分子形のシステム>

例えば、下図のような家庭用のPEFCシステムは、都市ガス等の燃料から「水素ガス」をつくり、空気中の酸素と化学反応させて発電します。

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燃料改質装置:都市ガスなどの燃料は、水素を主成分としたガスに改質され、一酸化炭素などは除去されます。

PEFCスタック:水素と、空気供給装置から供給される酸素により、直流電気が作られます。

インバーター:直流電気を交流に変えます。電力会社との接続のための“系統連系機能”(※)も備えています。 燃料電池で発電した電気だけでは足りない場合などには、この“系統連系”した電力会社の電気を利用します。

排熱回収装置:スタックや燃料改質装置から排(はい)熱を回収して、温水(約60℃)をつくります。

貯湯槽(そう):回収したお湯を貯めて、必要に応じて給湯します。

バックアップバーナ:貯湯槽(ちょとうそう)内の温水だけでは足りない時は、バックアップバーナーで加熱して給湯します。

以上、今月は「固体高分子形燃料電池・PEFC」についてお話をしましたが、来月は「リン酸形燃料電池」について調べてみましょう。

 

<参考・引用資料>

「トコトンやさしい2次電池の本」 細田 條 著(日刊工業新聞社)

「よくわかる最新燃料電池の基本と動向」 PEM-DREAM 著 秀和システム

日本ガス協会ホームページ

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