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電池の基礎シリーズ(14)
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さて、「電池の基礎シリーズ」も最終段階に近づいてまいりました。そこで、残りの数回は話題の“燃料電池自動車”についての最新動向をお伝えしてゆきたいと思います。
3.燃料電池車(FCV)の特長と課題
(3-1)燃料電池車の特長
これまでの電気自動車(EV)は、バッテリに電気を蓄え、使い切ったら充電して再び走るという方式でした。この方式は、バッテリに蓄える電気の量が限られ、一回の充電で走ることが出来る距離が短くなってしまうという問題があります。おまけにフル充電には6〜8時間ぐらいかかり、連続して走ることはできません。このため、電気自動車の用途は通勤や市内の配達といった近距離の移動用に限定されてしまい、せっかくの無公害車を大量に普及させるには問題がありました。
燃料電池車はモーターで車を走らせるという点では、電気自動車の一種と考えることができますが、電気は燃料電池で発電して得られます。発電には燃料となる水素を供給すればよいわけですから、水素を一杯積んでおくことができれば長距離走行も可能となります。また、水素を消費してしまっても、水素を補給すれば良いわけで、場合によっては水素の補給時間は5分ぐらいでできてしまうので、すぐにまた走り出すことができます。
ここで、燃料電池車の優れた点を以下にまとめてみました。
(1)有害な排出ガスがゼロ、または少ない
電気自動車(EV)と同様にモーターで走行しますので、水素を直接燃料として使用する直接水素方式のFCVの場合、走行時に発生するのは水蒸気のみです。大気汚染の原因となる二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、浮遊粒子状物質(PM)はまったく排出されません。ただし、発電や水素をつくる過程のどこかで二酸化炭素が発生しますが、全体の効率が高いので、その量は今までのエンジン車に比べってずっと少なくなります。また、ベンゼンやアルデヒドなどの有害大気汚染物質の排出もありません。
(2)エネルギー効率が高い
現時点で、ガソリン内燃機関自動車のエネルギー効率(15〜20%)と比較して、2倍程度(30%以上)と非常に高いエネルギー効率を実現しています。 燃料電池自動車は、低出力域でも高効率を維持できるのが特長です。
(3)多様な燃料・エネルギーが利用可能
天然ガスやエタノールなど、石油以外の多様な燃料が利用可能なため、将来の石油枯渇問題にも十分に対応できます。また、太陽光やバイオマスなど、クリーンで再生可能なエネルギーを利用して水素を製造することにより、環境への負荷を軽減します。
(4)騒音が少ない
燃料電池は電気化学反応によって発電するため、内燃機関自動車と比べて騒音が低減できます。車内の快適さはもちろん、都市全体の騒音対策にも効果が期待されます。
(5)充電が不要
長時間の充電が必要な電気自動車と違い、ガソリン内燃機関自動車と同様に短時間の燃料充填が可能です。また、1回の充填による走行距離も電気自動車よりも長く、将来はガソリン内燃機関自動車と同程度になると考えられています。
(3-2)燃料電池車の課題
各種燃料電池車共通の課題もあります。エンジン車に比べると、重くて、車載スペースを余分に必要とします。価格もまだまだ割高です。充電スタンドや水素供給ステーションといったインフラでも、ガソリンスタンドに比べるとゼロに等しい状態です。
これらの課題に対して、メーカーでの技術開発は勿論のこと、国や自治体による開発支援や公用車への率先導入、優遇税制や駐車場の優先使用など普及促進策も積極的になされています。
(3-3)燃料電池車の各種基本システム
ひとくちに燃料電池車といっても、その内容には色々な方式があります。燃料電池の種類は固体高分子形が主流ですが、リン酸形やアルカリ形の燃料電池も使われることがあります。
(1)水素直接形燃料電池車システム
最も議論が盛んなのが燃料の選択です。水素を燃料にするのが燃料電池での発電には最も簡単で性能も良いといえます。水素を車に積むには、圧縮して高圧で貯蔵する方法、水素吸蔵合金という特殊な合金に水素を吸い込んで蓄える方法、低温に冷却して液体で貯蔵する方法があります。最近はカーボンナノチューブやケミカルハイドライドという新しい材料に水素を蓄える技術も研究されています。
(2)メタノール改質形燃料電池車システム
メタノールは液体なので水素に比べるとエネルギー密度が高く、輸送や貯蔵も容易になります。メタノールから水素を作るには300度C程度に加熱して触媒で反応させる改質という方法があります。この改質の方式には水蒸気と反応させる水蒸気改質法、空気と反応させる部分酸化法、これら二つを適度に組み合わせたオートサーマル法という方式があります。最近は改質しないでメタノールで直接発電するダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)も研究されています。
(3)ガソリン改質形燃料電池車システム
ガソリンは供給スタンドがどこにでもあり、インフラを新たに整備する必要がありませんが、改質するには800〜1000度Cぐらいの高温にしなければなりません。また微量に含まれるイオウ分が改質触媒に影響を与えるという問題もあります。最近は改質しやすくイオウを含まない合成燃料(GTL:ガスートウーリキッド、CHF:クリーンーハイドロカーボンーフュエルと呼ぶこともあります)の研究が始められています。
(4)電源システム
電源システムでは、燃料電池単独で発電する方式と補助電源とのハイブリッド電源とする方式があります。補助電源には、ニッケル・水素、リチウムイオンなどのバッテリのほか、電気二重層コンデンサ(キャパシタとも呼ばれます)が使用されることもあります。
(3-4)各種燃料電池車システムの詳細
次に、全章で取り上げました各種燃料電池車システムについて、それぞれのシステムを詳細に検証 してみましょう。
(1)水素直接形
燃料に水素を使用する方法が最も簡単で、高性能な燃料電池車になります。排出されるのは水蒸気を含んだ排空気(酸素濃度は半分程度低下します)だけで、バッテリ電気自動車と同じゼロ−エミッション車になります。したがって、現段階ではこの水素直接形が最も実用に近いといわれています。
水素は高圧容器、水素吸蔵合金、液体水素などで車載貯蔵され、圧力調整弁を介して供給されます。固体高分子形燃料電池では、電解質である高分子膜を常に湿った状態に保つ必要があるため、供給水素に加湿します。加湿の方法はバブリング(水素を水中でブクブクさせる)やポンプで直接供給する方法もありますが、水分のみを通す半透膜の片側に水素、反対側に水を流して加湿するという膜方式が最も一般的に用いられます。膜加湿器はスタックと構造が似ており、一体に組み込まれることが多いようです。
空気も水素と同様に加湿して供給しますが、供給量が水素の5倍程度も必要なため加湿器が大きくなってしまいます。このため、スタック内で発生した水分で自己加湿させるといった方法で、加湿器を必要としないシステムにする試みがされています。
自動車用では出力を高めるため、通常コンプレッサを使って1.5〜3.0気圧ぐらいまで空気を加圧します。加圧すればするほど燃料電池の出力は大きくなりますが、反対にコンプレッサの駆動負荷が大きくなり、実効出力としてはそれほど上がりません。そこで、運転条件に合わせて最適な流量・圧力になるようにコントロールします。
水素や空気はスタックの出口付近でも十分な反応を行わせるため、反応に必要な量よりも多めに供給します。水素は1.2〜1.3倍、空気は2〜2.5倍程度送られます。スタックで使い切らない水素は循環ポンプなどで再び供給口に送られます。こうして水素は全て消費されますが、循環を繰り返すうちに水素中の不純物の濃度が高くなっていくので、時々、外にパージして新鮮な水素に入れ替えます。
排空気の中には燃料電池の反応によって発生した水蒸気が含まれます。この水蒸気を冷却して水分テキスト ボックス: を回収し、加湿に必要な水として利用します。
以上のように、水素直接形は燃料に水素ガスを使い、水素をタンクで運搬しながら走行する自動車ですから、効率が良い反面、安全性に対する様々な考慮が必要になります。
次回は、水素直接形システムの水素タンク、水素貯蔵およびその安全性についての最新技術を調べてみましょう。
(参考資料)
「JHFC/水素・燃料電池実証プロジェクト」 ホームページ
「トコトンやさしい燃料電池の本」 燃料電池研究会(日刊工業新聞社)
「よくわかる最新燃料電池の基本と動向」 PEM−DREAM 著 秀和システム
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