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電池の基礎シリーズ(16)
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5.燃料電池用水素製造と水素供給インフラ
(5-1) 中・小型・家庭用燃料電池のための水素製造
PEFC家庭用燃料電池(2013年7月号参照)、PAFC病院・ホテル用コージェネレーションシステム(2013年8月号参照)などの中小型燃料電池で使用される水素は、改質器を使って都市ガスやLPGのような炭化水素やメタノールなどのアルコール類からつくられます。
改質器内ではメタンは触媒の存在下で水蒸気との反応で水素および一酸化炭素に改質されます。この反応は大きな吸熱反応のため外部から反応熱を供給する必要があります。通常は、改質器バーナで原料燃料や電池燃料極排ガスを燃やすことによって与えています。改質器は二重管を用いた構造が多く採用されており、改質管外側から加熱し、内側の触媒層に熱を供給することによって触媒層での改質反応が進行します。触媒層内では、さらにCO変成反応がほぼ平衡状態まで進行し、一酸化炭素から水素と二酸化炭素が生成します。
都市ガスやLPGには付臭剤として硫黄化合物が添加されていますが、この硫黄化合物は改質触媒の被毒となり、改質性能の低下の大きな要因となります。そのため、改質器に入る前に脱硫器を設置し除去しています。
一方、改質器出口の改質ガスには高濃度の一酸化炭素が含まれます。この一酸化炭素は電池触媒(白金触媒)の被毒となり性能低下をもたらすため、電池入口において改質ガス中の一酸化炭素は一酸化炭素変成器によりリン酸形燃料電池の場合は約1%以下まで低減されています。なお、リン酸形(PAFC)に比べて作動温度の低い固体高分子形(PEFC)では一酸化炭素の影響が顕著であり、改質ガス中の一酸化炭素濃度は10ppm程度まで低減される必要があります。
改質方式には水蒸気改質方式の他に、外部からの熱供給がいらない部分酸化方式、さらに、両方式の中間的なATR(オートサーマル)方式があり、効率、起動時間、コスト等が異なるため、それぞれの目的にあった使い分けが必要になります。水蒸気改質方式は改質効率が高く、部分酸化方式は起動時間が短いという特徴をもっています。
(5-2) 燃料電池車(FCV)用の水素製造とインフラの整備
(5-2-1)国内の取り組み状況
燃料電池自動車の登場は、水素インフラの問題に火をつけました。燃料電池自動車ができてもどこで水素を入れられるのか、インフラがなければ燃料電池自動車は普及しないだろうという議論です。自動車用の水素インフラは、ガソリンスタンドにならって水素スタンドと呼んだり、新規性を出すために水素ステーションと呼んだりしていましたが、最近は水素ステーションで統一されてきています。
家庭用の場合は都市ガスの配管があり、LPGや石油も配送網ができているので、既存のインフラを使うことができます。そのため、設置場所で水素を作る改質が主な問題となるので、インフラに関する論議はありません。
自動車も同じように車上改質が俎上にのぼり、各社は試作車で取り組みましたが、結局は純水素を搭載することでスタートを切りました。メタノール改質を中心に燃料電池車の開発を続けてきたダイムラークライスラーは、車上改質方式に見切りをつけています。水素インフラの構築が困難なことから、新しいガソリンを作って既存のガソリンスタンドを利用しようというガソリン改質も技術的な困難に直面して、見通しがどうなるかはっきりしません。
そのため、水素インフラに対する要求は一層強くなり、日本では現在、JHFC(水素・燃料電池実証プロジェクト)で精力的な実証試験が行われています。欧米でも日本とは違う形で実証試験が行われています。興味深いのは、天然ガスのパイプラインに水素を混ぜて送ることが考えられており、自動車の燃料にこの混合気体を使うことや、出口で水素を分離して取り出すことが研究されています。長期的には、パイプラインを水素インフラとして使うことが想定されているのです。
日本では、パイプラインそのものが欧米に比べて未整備であり、天然ガス用のパイプラインが徐々に作られている状態です。国内におけるパイプライン網の構築は、水素インフラの重要な部分を担うと考えられますが、コストの問題なのか、水素エネルギー社会を作るという総合的な視点が弱いためか、検討されているという話はほとんど聞きません。
そこで、ハード的な水素インフラというと水素ステーションに集約されています。水素ステーションを建設するための技術面における開発とともに、ソフトインフラとしての標準化や規制の再点検、建設コストの検討などが進められています。水素ステーションは単独で作られるにせよ、既存のガソリンスタンドなどに併設されるにせよ、2005 年から規制緩和が始まっていますので、新たな展開が予想されます。それがどのようなものになるのか具体的にはわかりませんが、国の施策として位置づけ、次第に公共事業的なものになっていかなければ、燃料電池車そのものの普及も難しいことになるでしょう。
■水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)の実例
水素・燃料電池実証プロジェクト(呼称:JHFCプロジェクト Japan Hydrogen & Fuel CellDemonstration Project)は、経済産業省とNEDO独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が推進する、水素インフラと燃料電池自動車の技術実証を行う国のプロジェクトです。
JHFCプロジェクトでは、各種原料からの水素製造方法、現実の使用条件下での燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の性能、環境特性、エネルギー総合効率や安全性などに関する基礎データを収集・共有化し、本格的量産と普及の道筋を整えていきます。
プロジェクトには、国内外の自動車メーカー8社が開発した6種類のFCV(燃料電池自動車)と、燃料電池バス、水素エンジン自動車が参加しています。これらの自動車は、首都圏や中部・関西地区で公道走行試験を行い、走行性能、信頼性、燃費等の市街地走行データなどを取得し評価しています。また、FCVの認知向上のため一般市民向けに試乗会を開催するなど、理解促進活動を日本各地で積極的に行っています。
(1) JHFC 横浜・大黒水素ステーション
JHFC 横浜・大黒水素ステーションは、JHFC パーク内にあるオンサイト改質型の水素供給設備です。コスモ石油(株)が独自に開発した脱硫ガソリンを原料に、同社が長年にわたり蓄積してきた水素製造技術を用いて高純度の水素を製造し、高圧に加圧して燃料電池自動車に充填しています。また、ステーションの隣には、(財)日本自動車研究所が運用する燃料電池自動車のショールームとガレージが設置され、燃料電池自動車の普及活動の拠点となっています。
(2)JHFC 横浜・旭水素ステーション
よこはま動物園ズーラシアの近くにあるJHFC 横浜・旭水素ステーションは、日本初のナフサ改質型の水素供給施設です。地下タンクに貯蔵されたナフサから高純度の水累を裂造し、燃料電池自動車に高圧水素として充填する仕組みになっています。石油業界では、石油精裂の過程で硫黄などの不純物を取り除くために、ナフサなどの石油から大量の水素を製造していることから、新日本石油(株)が長年にわたり培ってきた水素裂造技術が、ステーションの随所に応用されています。
平成20年度には、ブレクール機能付70MPa充填設備を増設し、70MPaでの充填試験を開始しました。
(3)JFHC 有明水素ステーション
JHFC 有明水素ステーションは、液体水素と圧縮水素の両方を供給できる液体水素オフサイト型ステーションで、現在、日本で唯一液体水素を供給できる施設です。
水素を製造する装置を持たす、製造工場から液体水素をタンクローリーで運んで、タンクに貯蔵し、液体水素または気化させた圧縮水素を供給します。
タンクには、液体水素で130台、圧縮水素で200台分の大量の水素が貯蔵可能です。
(5-2-2) 海外の取り組み状況
燃料電池車を早期に大量に普及させようとすると、どうしても燃料供給インフラの整備をどうするか、という問題になります。ガソリン改質を提唱する立場は、こうした問題を背景にしていますが、ここでは水素のインフラについて考えてみましょう。
まず製造の問題ですが、水素は自然界に水となって大量に存在しますが、水素単体としてはほとんど存在しません。そこで、何らかのエネルギーを使って水素を製造するわけです。循環型社会、再生可能エネルギーとして水素をとらえれば、自然界のエネルギーつまり太陽光、太陽熱、水力、風力、地熱、バイオマスなどが上げられます。アイスランドでは国内の全エネルギーの70%、全電力の99.9%が水力と地熱でまかなわれており、その電力で水素を生産しようという計画があります。同様にカナダも水力資源に恵まれています。カナダからヨーロッパ各国へ水素を輸出する計画として、ユーロケベック・水力・水素パイロットプロジェクト(EQHHPP)があります。この計画は資金面の問題もあり実現できませんでしたが、水素の輸送方法の検討、液体水素の貯蔵タンクモデル試験、自動車などでの利用技術開発など将来の水素社会に向けた基礎を築きました。
太陽エネルギー利用による水素製造の計画では、PORSHE計画(Plan of Ocean Raft System forHydrogen Economy)があります。この計画は世界最大の太陽エネルギー入射海域であるポリネシアに、巨大な海洋筏を浮かべ、太陽集熱、タービン発電、海水淡水化、水電解、水素液化の流れで水素製造を行うというものです。
またSWB計画(Solar-Wasserstoff-Bayern:太陽‐水素‐バイエルン)は中部ヨーロッパの太陽放射レベルで、太陽電池による発電から水電解を行い、水素‐酸素発生に基づくエネルギーシステムを築こうという計画です。太陽光発電ではこの他、米国のクリーンーエアーナウ計画やパームーデザートプロジェクトなどがあります。
以上、今月は燃料電池車の動力源である水素エネルギーとその水素インフラについて勉強してみました。ハイブリッド車に続いて、高性能二次電池を搭載した電気自動車が実用化し始めましたが、本稿で勉強してきたように、さらにその先は燃料電池自動車の時代に入ると予想されています。
一方、将来・未来のどのタイプの自動車にも高性能電気モーターが必要であり、永久磁石の果たす役割は益々重要になってきています。
今月まで16回にわたり「電池の基礎シリーズ」を配信させていただきましたが、来月よりより広範なエネルギー関連の話題を新シリーズとして登場させる予定です。引き続きNeoMag 通信をご愛読いただければ幸いです。
(参考資料)
「公益財団法人水素エネルギー製品研究試験センター平成23 年度第1 回公開セミナー」資料
「JHFC/水素・燃料電池実証プロジェクト」 ホームページ
「トコトンやさしい燃料電池の本」 燃料電池研究会(日刊工業新聞社)
「よくわかる最新燃料電池の基本と動向」 PEM−DREAM 著 秀和システム
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