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世界のエネルギー資源の現状と将来(4)<石油−その2>
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先月は石油(原油)の成因についてのお話をしました。その中で石炭・石油はともに植物群に由来する堆積性の有機物が主な根源物質であるとする説「有機成因論」が現在主流であること、また一方では炭化水素は地球の内核で発生し、この炭化水素が地球内部の高圧・高熱を受けて変質することで石油が生まれるという「無機成因論」が注目され始めていることなどの概要を勉強しました。無機成因論については大方の読者は初めて聞く話だと思いますので興味を引くのではないでしょうか。
今月は引き続き「無機成因論」について、中島敬史氏の米国石油地質家協会(AAPG)研究会議報告(IEEJ:2005年7月)を基にさらに詳細に調べてみましょう。
(2-4) 無機成因論と原油の埋蔵場所
無機成因論(無機起源説)は「宇宙起源説」「マントル起源説」とに大別できます。前者は、地球創生期に地球外天体で生成された石油が隕石により運ばれ、地球内部に取込まれたという学説で、後者は地球深部(上部マントルや地殻深所)で無機的な反応により炭化水素が形成し続けているという学説です。
上図のように、海や湖に沈積した有機物の存在に頼らずとも石油・ガスが生成し得る、という説が無機起源説であり、現在主流である有機起源説と対極を成す考えなのです。そして、今日までに、石油の無機起源説を示唆する多くの状況証拠が世界中から報告されています(上図 参照)。
無機起源説を唱える研究者の中では、両者のうちマントル起源説を支持する研究者が多いようですので、以下、マントル起源説(=無機成因論)を中心にした記述です。
従来は、砂岩や泥岩、炭酸塩岩(石灰岩や苦灰岩)などから成る堆積層が試掘の対象であり、その下位に厚く分布する基盤岩に達する直前で掘り止めることが常識とされてきました。それでも、堆積層を掘削中に堆積盆地の基底まで掘り進んでしまい、偶然に基盤岩中の原油胚胎を確認する例がありました。ウクライナ科学アカデミーのKitchka氏によると、商業的な埋蔵量を有する基盤岩油・ガス田は、南極大陸を除く全ての大陸に分布しており、その数は450 以上に及びます。(Kitchka 2004)
イエメンのMasila 堆積盆やベトナムのCuu Long 堆積盆では、基盤岩中に膨大な原油が発見されるケースが次々と発生したため、最近では、基盤岩を意図的に掘削する傾向にあります。またマレーシアでも、2005年マレー堆積盆で生産中のMalong油田(堆積層を油層とする)で、その地下深部の結晶質基盤岩が250m掘削され、基盤岩部分から相当量の原油産出が確認されました。
またイエメンの石油大臣は、同国で探鉱する石油会社に対して異例の勧告をしました。試掘井は堆積層のみならず、その下位の基盤岩も深く追掘するよう、勧めたのです(2005年6月27日付WPA)。このことから基盤岩油田は、もはや偶然に発見されるものではなく、また特殊な地質状況にのみ発見される油田とは言えない状況になりつつあると言えます。
これら基盤岩油田のなかには、結晶質基盤岩の上面から基盤岩内部に数百m入った部分から深部にかけて原油が胚胎しているという油田(下図参照)も存在し、最近ではベトナム沖で、基盤岩上面から基盤岩内部で垂直方向に2,000m間以上も原油が連続して胚胎し、油層の下位に分布するはずの水層が未だ確認できないケース(油層が延々と地殻深部まで続くケース)も現れてきました。これらは従来の有機成因論だけでは容易に説明できません。
このように、これまで石油探鉱の対象と見做されていなかった結晶質基盤岩にも大量の原油が胚胎していることが、世界中のあちこちで確認され、基盤岩油田の存在が無視できない状況になるに及んで、英国地質学会(The Geological Society, London)は2001年2月に「結晶質基盤岩中の炭化水素」と題するシンポジウムを開催しました(Petford N. and McCaffrey K.J.W. (edited) (2003), Hydrocarbons inCrystalline Rocks, SpecialPublication 214, The Geological Society, London, 242p)。
シンポジウムでは、Schutter(2003)が、火成岩中に油・ガスが胚胎する例が世界100ヶ国で見られることを紹介した他、Koning(2003)は、インドネシアや米国、ベネズエラにおける大規模な基盤岩油田や基盤岩ガス田の地質状況を紹介し、基盤岩油田がもはや偶然の発見ではなく、石油が基盤岩中に分布するのは地質的に必然性があって集積した結果である、と報告しました。さらにPotter & Konnerup-Madsen(2003)が、コラ半島に分布するヒビナ・アルカリ火成岩貫入岩体やレボゾノ火成岩貫入岩体に含まれる流体包有物中に高濃度の炭化水素(原油を含む)が含まれること、及びその炭素同位体組成比が重いことから、これらの炭化水素は無機成因であると報告しました。
同論文では、これら無機起源の炭化水素は、カンラン岩の蛇紋岩化作用で形成した水素と二酸化炭素を含む熱水とがフィッシャー・トロプッシュ反応により形成された、と結論しています。さらに火成岩貫入岩その他で観測されるガス徴において、メタン(C1)エタン(C2)、プロパン(C3)、ブタン(C4)、ペンタン(C5)の量が、グラフ上、対数直線上に分布すること(炭素数に応じて級数的に減少)から、これらの炭化水素は、生物によりランダムに生成されたとは考え難く、物理化学的なプロセスで無機的に形成されたことを示す、と述べています。
このように、無機成因論を示唆する現象は俄かに世界の石油探鉱関係者の関心を集めていて、「石油の起源」に関する議論が今後、活発化することは必至な情勢となっています。
<フィッシャー・トロプッシュ反応>
二酸化炭素に富む熱水流体と、還元環境下にある水素が結びついて、水と炭化水素を合成する反応、例えばnCO2 + (3n+1)H2 = CnH(2n+2) + nH2O などの反応。
(2-5)無機派の論理展開
無機成因論支持者による発表は、炭素と水素の同位体組成比、プレート境界と石油システム、熱水起源の炭化水素、蛇紋岩と海底メタンアノマリー、原油中の微量金属、流体包有物、水素化合物など、多岐分野に及びましたが、これらは以下のような一本のストーリーとしてまとめることができます。
上部マントル及び地殻深部において、上部マントルの主要構成岩であるカンラン岩が蛇紋岩化する過程で水素が発生します。水素は、地殻深部に存在する熱水流体中の二酸化炭素と接触し、フィッシャー・トロプッシュ反応により炭化水素(油・ガス)が無機的に生成しています。地殻深部で生成された炭化水素は熱水中に含まれ(hydrothermal hydrocarbon)、地殻を構成する結晶質基盤岩(花崗岩や片麻岩)中に発達した垂直方向の断裂やプレート境界を経由して上方移動し、基盤岩中で割れ目が集中する部分に集積して「基盤岩油・ガス田」を形成します。
また基盤岩中の断裂を経由して、堆積盆地内に滲出した炭化水素は、堆積層内に油・ガス田を形成します。その結果、炭化水素が堆積盆地内に滲出する箇所では、油ガス胚胎層が垂直方向に幾重にも重なって分布する結果となります。また地殻深部で生成された石油が堆積層内を通過する際、堆積盆地の底部に分布する有機物に富む泥質岩から、有機成因論の根拠としているバイオマーカーを取り込むのであろうと考えられています。
(2-6)無機成因論とペルシャ湾岸の油田
ペルシャ湾からイラク内陸部に至る世界最大の産油地域において、油田が直線状(北西−南東方向)に配列しますが、この配列方向はちょうどアラビアプレートとユーラシアプレートの境界線に平行しています(下図左参照)。これは、地殻深部で無機的に生成された油・ガスが、プレート境界に沿って上昇・移動した結果とも考えられます。
さらにプレート同士の圧縮と横ずれの応力を受けて、プレート境界方向(北西-南東方向)に雁行する南北方向の開口クラック(基盤岩の展張割れ)が生じ(図右参照)、そのクラックを通じて地殻深部由来の原油が上昇した結果、世界最大のガワール油田が形成された、との説明もあり、南北方向に伸長した構造の同様の油田が、付近に未発見で残っている可能性も指摘されました。
(2-7)無機派の統一見解と今後の課題
無機派の発表は、いずれも上部マントルや地殻深部で炭化水素が生成していることや、その生成にはカンラン岩が関与していること、並びにそれら無機的に生成された炭化水素が熱水中に含まれ、地表近くまで垂直上方に移動したこと、について同調的でした。これらの報告はまた、前述の米国科学アカデミーの報告に掲載されたScott et al.(2004)の室内実験結果(上部マントル付近の温度圧力条件下で無機的に油ガスが生成することを確認したものとも整合的と言えます。
これまで異端として扱われてきた学説も、新しいデータが加わることにより矛盾のない新説として生まれ変わることがあって良いのではないでしょうか。
無機成因論が仮に正しい場合、(1)まず探鉱対象が堆積盆地に限定されず、平面的および深度方向に大幅に拡大され、地球の石油資源量は大きく増大する可能性もあり、その場合、石油資源枯渇論は霧消します。(2)次に探鉱の狙いどころが大規模な断裂やプレート境界付近となるため、これまで探鉱が活発ではなかった地域にも油田の発見が進み、石油賦存の地域偏在性が薄まります。(3)特に、我が国のようにプレート境界が集中した火山国は、探鉱対象地域として最も有望な地域に転ずることになるかも知れません。このように我が国にとり無機成因論は、計り知れないほど大きな経済的効果をもたらす可能性が高いのです。
我が国で発見された油・ガス田の多くはグリーンタフと呼ばれる火成岩中に油・ガスを胚胎している他、近年では、深成岩から成る基盤岩を貯留層とするガス田も発見されています。今後、我が国では古くて新しい「石油の無機成因論」も視野に入れた研究が必要ではないかと思います。是非、読者の皆様も今後もその動向に注目していてください。
次回は石油探鉱、石油掘削などに関する最新技術についてのお話をさせていただきます。
<参考・引用資料>
「トコトンやさしい石油の本」 日刊工業新聞社
「トコトンやさしい天然ガスの本」 日刊工業新聞社
フリー百科事典「ウィキペディア」
米国石油地質家協会(AAPG)研究会議報告 中島敬史 IEEJ:2005年7月掲載
石油技術協会ホームページ
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