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世界のエネルギー資源の現状と将来(6)<石油−その4>
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エネルギー資源として現在の主役である石油について、過去3回に渡り、その将来性、開発の手順、最新の探鉱、掘削技術などについて勉強してきました。今月は石油についての最終報告として、最新の汲み上げ技術、大深度油田開発、海底油田開発などについて取り上げてみました。
(2-11)最新の石油汲み上げ・回収技術
■基本的な回収技術
石油は岩石の孔隙中に存在しており、スポンジの中の水によくたとえられます。決してプールに存在する水のようにある空間に満ち溢れているわけではありません。種類にもよりますが岩石の孔隙の割合は10〜40%程度です。また、孔隙中の石油の割合も様々で、最低でも10%程度は塩水が含まれています。このような状況で石油を効率よく経済的に生産することは単純ではなく、油層の特性に応じ、計画を慎重に練る必要があります。
最も重要なのは石油を生産するための坑井をどこに何本掘るかです。少なすぎては石油を多く取り残しますし、多すぎては坑井を掘削するための費用がかさんで経済的に見合いません。もちろん、石油を含んでいる量が少ない地域・深度に掘削しても意味がありません。また、1本の坑井からできるだけ多くの石油を生産するため、油層部において水平方向に掘削するようなことも多くなりました。
基本的に石油は油層のエネルギー(圧力)によって地表に噴出してきます(一次回収)が、坑井の周辺では大きな圧力の損失が起こるため、それを改善して油が流れやすくするように、酸(塩酸等)を圧入して、流路にあたる岩石の一部を溶かしたり、人工的に亀裂を生じさせたりすることもあります。また、非常に重質な石油の場合や生産される石油に水が混ざってきた場合には、全体の密度が大きくなるため、地表まで汲み上げることが困難になってきます。この場合には坑井内にポンプを設置して人工的に汲み上げる、あるいはガスを圧入して相対的な液柱の比重を小さくして噴出を促すガスリフト採油を行います。
残念ながら、このような努力・工夫にも関わらず、回収できる石油の量は全体の3分1程度です。即ち、3分2程度の石油は取り残されてしまうことになります。この取り残し分を回収するために、水、ガス、薬品等を圧入することがよく行われます。
■最新の回収技術(二次・三次回収法)
油層が元々持っていた自然の圧力だけでは全体の量の3分の2程度は取り残されてしまいます。第一の要因は、生産が進むにつれて油田の油層圧力が低下してしまうことです。地表まで石油を噴出させるエネルギーを失っていくのです。そこで圧力をできるだけ維持するためには、生産した石油の分だけ、逆に何かの流体を油層に圧入する必要があります。よく使われるのが、水や天然ガスです。特に水は比較的安価に入手できることから広く利用されます。油に随伴して生産される天然ガスを油層圧力維持のために再圧入することは非常に有効です。人工的にエネルギーを加えることによってさらに石油を生産する手法を二次回収法と呼んでいます。
油層の性質によっては、圧力を維持するだけでは十分な石油の回収量を得ることができない場合もあります。例えば、石油の粘性が高いため流動性が極端に低い場合(舗装の路上で見かけるアスファルトのようなものを想像してください)、加熱したり、ガスを混和させたりすることにより、流動性を高める手法もあります。圧入流体としてスチーム、炭酸ガス(CO2やLPGの圧入がよく利用されています。油層中に存在する水が物理化学的な力(界面張力、毛細管圧力等)により油の動きを邪魔してしまうようなことも起こります。この場合は、界面活性剤等の薬品や微生物等を油層に圧入することによって改善が試みられます。このように、物理化学的な性質を変化させて石油を増産する手法を三次回収法と呼びます。
このように油田から究極的にトコトン回収できる技術の進歩により可採埋蔵量が増えるのです。
回収率は油層内の油を坑井に向かって持続的に流動させる機構である排油機構や油層性状等によって大きく異なりますが、二・三次回収の適用により50%以上の回収率を達成できた油田も珍しくなくなりました。
(2-12)大深度石油開発
従来の石油開発は、陸上であれば中東の砂漠、海上であれば北海の様な水深が比較的浅い地域が中心でした。しかし、最近では新たな埋蔵量を求めて、シベリアのような寒冷地域、水深が500メートルを超える深海域を対象に石油開発が進められています。また、従来石油がないと考えられていた大深度の火山岩性の岩盤で油田が開発された例もあります。
深海域では、掘削・生産設備を海面に係留する方式が一般的です。主な深海開発地域は米国メキシコ湾で、最大水深はシェル社が開発したTobago油田での2934メートルです。生産処理施設Sparは水深2438メートルでこれも最大です。水深が深くなると、多くの資機材を載せる必要があり、生産施設も大型化します。それに伴い、据付工事も難しくなり、波で生産施設が動かないようにするために、専用の係留装置も必要となります。また、海面に生産施設を置かずに、海底に生産施設を置く技術も発達し、北海では実用化が進められています。
最近まで大深度の地下には石油は存在しないと考えられていました。しかし、前々回の「無機成因論」でも解説したように、そのような大深度の岩盤の割目(フラクチャ−)にも石油が埋蔵されていることが分かり、その回収技術が開発されています。フラクチャー貯留層は、フラクチャーが網の目となっており、一般の油ガス田とは特性が異なり、埋蔵量推定や生産計画の策定には独特のノウハウが必要となります。
(2-13)海底油田の世界的現状 (JOGMEC 資料抜粋)
作成日: 2010/8/25 JOGMEC 石油企画調査部: 伊原 賢
(JOGMEC 石油企画調査部、世界石油工学者協会SPE、各種報道資料ほか)
アメリカ、ルイジアナ州沖のメキシコ湾で、4月20日石油掘削施設の爆発事故が起きました。海底からの原油流出は3ヶ月余り続き、大量の原油流出は7月15日に、ようやく止まりました。この事故をきっかけに、広く知られるようになった「海底油田」の世界的現状について、お話します。
「海底油田の世界的現状」を理解するには、需給のファンダメンタルズ、石油資源へのアクセス、技術革新、インフラ、地政学、経済条件に注視する必要がありそうです。
今回事故が起きたメキシコ湾のような油田は「大水深油田」と呼ばれますが、ずいぶん深い海底から掘り進んでいきます。海面からの深さは300〜3000メートル。さらに掘削する深さは数キロメートルにもなります。地表と比べ厳しい環境であり、機器の修理や回収のためのアクセスが簡単にできません。それはダイバーの潜水限界が水深300メートルだからです。
大水深油田の掘削技術はいつ頃開発されたかというと、今回事故が発生した水深1500メートル(図1)での油田発見は80年代にはいってから、原油の生産は90年代後半から始まりました。2007年には水深2700メートルを超える油田からも生産が開始されました。この背景を油田開発の歴史から説明します。
1960年に石油輸出国機構OPECが発足し、70年代に入ると資源ナショナリズムの高まりの中で、中東や北アフリカの産油国の石油国有化が進みました。国際石油資本メジャーの追い出しを図ったわけです。すると、メジャーは活動の場所を求めて、70年代から政治リスクのあまりない、海に目を向けていったのです。初めは浅いところから、だんだんと深い所に移って行きました。
海底油田の開発は、油価と深いつながりがあります。86年に原油の公示価格が廃止され、市場価格の時代に入って以降、90年の湾岸戦争の時に一時1バレル=30ドル台という例外はありましたが、ほぼ20ドル以下という時代が長く続きました。その時代には、採算からいって、コストの高い深い海の油はとれなかったのです。その後、2003年のイラク戦争以降の原油価格の高騰で、水深300メートル以上の海底で原油を生産する、大水深油田の開発が一気に本格化したのです。
現代の油田開発というのはずいぶん厳しい条件の中で行われています。油田地帯と言えば中東アラブの砂漠地帯が思い浮かびますが、最近は海底油田、それも深海底油田の存在が重みを増しています。海底油田からの油の生産量は世界全体の約4割にもなります。現在、世界で脚光を浴びている代表的な大水深油田は、メキシコ湾、西アフリカ沖、ブラジル沖などです(図2)。
1983年からの統計では、世界全体で約600フィールドが発見され、内400フィールド程度が生産中で、発見から生産開始までの時間は7年弱かかります。生産期間の平均は13年弱です。大水深フィールドの総数の55%は北米で発見されています。ただ、埋蔵量では23%に過ぎません。
一方、大水深フィールド数の17%はアフリカで発見され、埋蔵量では31%にもなります。ブラジル沖では、大水深の開発により、97年には50%程度であったブラジルの石油自給率を、2007年までの10年間で100%近くまで上昇させることに成功しています。
大水深油田の開発には、技術の進歩という側面もあります。ビットと呼ばれる掘管の先端を、地質情報に応じて動かす技術の進歩や、ROV、AUVと呼ぶロボットなど、遠隔操作で深海での様々な作業をこなす機器の性能が向上しました。そして、そうした機器を駆使して、海底に広範囲に広がる油井をパイプでつないで、複数の油井の原油やガスをまとめて海上まで吸い上げる、海底仕上げの技術の成熟などが大水深油田の開発を支えています。
今度のメキシコ湾の事故で、国際エネルギー機関IEAは、2030年の段階で、規制強化によって、世界の海底油田から日量90万バレルぐらいの産出量が抑制されるだろうと推定しています。今後、中国やインドの石油消費量が大きく伸びていくと見られる中では痛手でしょう。
事故は、オバマ政権にとって最悪のタイミングで起きました。アメリカは原油流出による汚染の心配があるという理由で、80年代の前半から、海底油田の掘削を一部規制してきたのですが、オバマ大統領がこの規制を解除した3週間後に事故が起きてしまいました。そのオバマ大統領。6月に行ったテレビ演説では、この事故をきっかけとして、持論である「石油中毒から脱却しよう」と訴えました。環境に優しいクリーン・エネルギーへの移行を「攻撃的に加速する時が来た」という大統領の主張でした。
石油業界がこれだけの環境汚染を引き起こしたのだから、化石燃料からの脱却を目指す方向にアメリカが動くのではないか、というのが我々第3者の考えですが、現実にはそうは動かないようです。事故の当事者のBPに対しては、非常に厳しい懲罰的な規制がかけられるでしょうが、アメリカ社会が現実にクルマ社会で化石燃料に依存した社会である以上、海底油田の開発制限にしても、限定的な規制しか掛けられないと言うのが現実でしょう。
オバマ大統領が就任したのはまさに金融危機が始まったばかりの頃でしたが、そこからアメリカ合衆国を再生させる手段として「新ニューディール政策」ということをさかんに言いました。最終的には“脱石油”をめざすというものですが、現実問題として当分の間は石油に頼らざるを得ない、それも深海の油田開発が中心ということになると思います。その背景として、3点述べたいと思います。
まず、1バレル(159リットル)の油を深海から取るのに30ドル、難しくても40ドルで採算が取れる時代になっています。これは、中東の陸上油田の数ドルと比べれば非常に高いのですが、今、油価が1バレル70〜80ドルぐらいですから、その差額が利益になるわけで、経済的な合理性があります(図3)。
2番目に、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入は大事ですが、エネルギー投入効率が石油や天然ガスといった化石燃料に比べ非常に悪いという現実があります。これは100のエネルギーを生み出すのにどれだけのエネルギーが必要か、という割合です。石油や天然ガスは大体3ぐらいです。再生可能エネルギーの場合は10ぐらい必要です。再生可能エネルギーでまかなうとしたら、その差額を補助金や料金上乗せで埋めなければ普及しません。
3番目として、言うまでもなく、石油はエネルギーだけにつかわれているのではなく、服から化粧品、日用品、化学や機械業界まであらゆる分野で使われています。問題はエネルギーの問題に留まるわけではありません。
最後にまとめますと、「海底油田の世界的現状」を理解するには、需給のファンダメンタルズ、石油資源へのアクセス、技術革新、インフラ、地政学、経済条件に注視する必要がありそうです。
以上、JOGMEC 資料抜粋終了
以上で4回に渡った石油資源に関するシリーズをとりあえず終了いたします。
特に日本では、原子力発電の落ち込みを化石燃料の石油や天然ガスに頼ることになり、その資源の将来が大いに気になるところです。幸い、石油については大深度、大深水開発の技術が進み、さらには無機成因論により石油資源の無限の可能性も出てきました。とは言っても、まだまだ多くの問題、課題を有する石油資源については、折に触れて読者の皆様とご一緒に勉強してゆきたいと思っています。
次回からは「天然ガス」について勉強する予定です。
<参考・引用資料>
「トコトンやさしい石油の本」 日刊工業新聞社
JAPEX 石油資源開発株式会社ホームページ
J-POWERホームページ
JOGMECホームページ
石油技術協会ホームページ
フリー百科事典「ウィキペディア」
米国石油地質家協会(AAPG)研究会議報告 中島敬史 IEEJ:2005 年7 月掲載
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