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エネルギー資源の現状と将来(9)<天然ガス(3)−その3>
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今月は天然ガスについての最終回で、運搬・貯蔵を中心にした最新技術のお話です。
磁石・磁性に関係する皆様は日頃あまり考えたことのない領域かもしれませんが、ここでも日進月歩の技術開発が行われていることを勉強してみてください。
 
(3-9)天然ガスの各種輸送方式
天然ガスは、炭化水素資源の中で、重量あたりの発熱量が最も高い、燃焼排ガス中のNOxやSOxが少なくもっとも清浄でCO2排出が最も少ない、埋蔵量が豊富にあるなどの多くの長所を持っており、世界の一次エネルギー消費における比率が年々増大しています。
しかしながら、唯一の短所ともいえるのは、その貯蔵、運搬における非効率性にあります。その原因は、主成分であるメタンの性質、すなわち常温で気体であり、単位体積あたりのエネルギー密度が低いことによります。
これに対処するためには、天然ガスを圧縮もしくは液化してエネルギー密度を高める必要があり、天然ガスの輸送手段としてパイプラインガスボンベ、あるいは液化天然ガスLNG(Liquefied Natural Gas)による船舶・ローリー輸送があります。しかし、固体の石炭や液体の石油の輸送に比べ、多額の資金や高い技術力が必要となる問題があります。
世界における天然ガスの大規模利用は、第2次世界大戦前より始まった米国においても、戦後普及した欧州においても、主要な輸送手段としてパイプラインに基づくものでした。これに対し、遅れて60年代後半に始まった日本における天然ガスの大規模利用は、海外からのLNG輸入によって可能となりました。
現在、世界の天然ガス消費のうち9割以上がパイプラインで供給されていますが、貿易量に占める割合ではパイプラインとLNGがおよそ3対1となります。これは、長距離 になるとパイプラインよりLNGの経済性が増すこと、LNGでは供給国と需要国とが物理的に接続されるわけではなく、供給の多様化が図れること等によるものです。LNGでは液化基地、LNG船、受入基地を含めて多額の投資が必要となり、数tcf(兆立方フィート)以上の埋蔵量を有する油ガス田開発に有効となりますが、 埋蔵量がこれに満たない場合にCNG(Conpressed Natural Gas)輸送が有効となる場合もあります。
CNGでは天然ガスを約20Mpa(約200気圧)まで昇圧する代わりに、常温〜約 -30℃で輸送するため、特殊な液化プラントやLNGのような極低温仕様の貯槽が不要で設備費が安価となる長所があります。ただし、輸送効率ではLNGより劣るため、輸送に必要な隻数が増え、操業費が増大します。このため、輸送量が比較的少なく、輸送距離が短い場合に有効な手段となります。
 
(3-10)天然ガスパイプラインの敷設技術
パイプラインは「油・ガスを移送するために地上(または地下)もしくは海底面(または海底面下)に設置されるパイプを連続的に接合したシステム」と定義され、移送する対象により、石油パイプライン天然ガスパイプラインなどと呼称されます。
パイプラインの建設に当たっては移送する流体の種類、量ならびに性状、移送距離と移送区間の地形、地震等も考慮した自然条件を確認・調査し、最も安全かつ安価な経路を検討します。
パイプラインの輸送量(流量)を決定する最大の要因はパイプの直径ですが、ロシアから欧州ヘガスを輸送するパイプラインの直径は最大で56インチ(約1.4メートル)もあります。
天然ガスパイプライン網が発達している地域は北米と欧州です。北米地域ではアメリカ、カナダ、メキシコ三力国にまたがって巨大なパイプライン網ができています。欧州地域ではロシアおよび北海地域をガス源とする欧州向けラインと北アフリカ産ガス国からの欧州向けラインがあります。その他、東南アジア、南米に産ガス地区と消費地を結ぶ国際天然ガスパイプラインが敷設され、稼動しています。
また、経済発展の続く中国でも天然ガスの需要が伸びており、国内の産ガス地域である新疆ウイグル自治区や四川省から沿海部への幹線パイプラインを整備したのみならず、ロシアや中央アジアからのガス輸入のためのパイプラインの建設を計画しています。
日本国内では新潟のガス田で生産された天然ガスを首都圏や仙台地区に供給するパイプラインが主たるものですが、北海道や秋田県にも小規模なパイプラインが建設されています。
 
パイプラインの建設には、まず天然ガスの供給予測をし、それをもとにパイプの口径、最高使用圧力、通過経路及び付帯設備の検討が行われ、各種エンジニアリングを経て建設されます。環境保護など、エコロジー対策も忘れてはならない重要な事項です。
パイプラインを設計する際には、内圧、土圧、温度変化の影響、地震の影響等を考慮し、管の材質や肉厚を決定します。また、耐久性を維持するために、ポリエチレンコーティングや、電気防食が施されます。
膨大な数のパイプが溶接され一本のパイプラインとなるため、特に溶接部分に対しては、非破壊検査が厳しく行われ、最終的には、耐圧・気密試験が行われます。耐圧試験は一般に水で、気密試験は不活性ガスまたは空気を用いて行われます。パイプラインは平地だけでなく、山や谷にも敷設されるので、試験時の圧力設定に際しては、高低差による圧力差を考慮しなければなりません。さらに、敷設したパイプラインを1番悩ませるのは、凍結や腐食の問題です。そのためガスプラントでは、あらかじめガス中の湿分を除いておかなければなりません。
パイプラインを通るガスの流量や圧力は監視センターで、24時間体制で監視されます。要所要所に設置されたセンサーからのデータが、テレメトリーシステムを通して監視センターに送られます。またパイプライン沿線には、緊急遮断弁が設置されており、事故や災害などの緊急時には、遠隔操作により該当区間のガスを遮断することもできます。
町の中に埋設されたパイプラインは、詳細にその位置が把握されており、常時行われているパイプラインのパトロールとも併せ、道路工事、水道工事などで、埋設管が破損する危険を未然に防ぎます。深海の海底パイプラインの場合、洋上船から遠隔操作されるROVとよばれる無人潜水機を使って、目視検査並びに腐食電位測定などが行われます。
 
(3-11)日本のLNGチェーン
常温、常圧下では単位体積当りのエネルギー密度が低い天然ガスは、昇圧してパイプラインで輸送するか、天然ガスをマイナス-62℃で液化し容積を600分の1にしてLNGタンカーで海上輸送するしかありません。
ガス生産地から海を隔てているわが国は、パイプラインを選択する余地は一般的に少なく、1969年にアラスカからLNG輸入を開始して以来、世界のLNG産業をリードしてきました。
LNGチェーンにかかるコストの内訳をみると、おおよそガス田開発15%、液化40%、タンカー輸送30%、受入基地15%となっており、液化プラントとLNG夕ンカーでチェーン全体の約70%近くを占めています。
わが国に輸入されたLNGは、全国に28ヵ所あるLNG受入基地に貯蔵され、再ガス化してパイプラインで、あるいはLNGとしてローリー、貨車、内航船によって消費地に供給されます。28という基地数は全世界のLNG受入基地の約半数を占めており、規模の面でも266万キロリットルの袖ケ浦基地を始め大型基地が充実しています。
 
(3-12)天然ガスの地下貯蔵
ガス需要は冬季と夏季とで大きな差があるため、生産地から消費地に至る天然ガスパイプラインの年間平均稼働率(load factor)が悪くなる。このため不需要期に消費地近傍で余剰ガスを貯蔵しておき、需要ピーク期にこれを取り出すことによって、パイプラインの送ガス量を平均化することが、ガス事業の経済性を大きく改善します。このような需給調整のための貯蔵量は非常に大きいので、地下貯蔵または液化貯蔵(ピークシェービ ング用 LNG)が行われます。
特に地下貯蔵は、経済的、技術的に大容量が確保できるため、主流となっています。この地下貯蔵は消費地の近傍にいわば人工のガス田を作るようなもので、ガス鉱床が形成される条件の存在する地下の箇所、すなわちトラップをなす背斜構造などの地質構造中の孔隙{こうげき}性の地層の中にガスを圧入するものです。
消費地近傍に枯渇したかつての油層やガス層があれば好都合ですが、ガスをトラップする条件があれば滞水層であってもかまいません。圧入のためには、井戸のほかに コンプレッサーが必要ですが、取り出すときはクッションガスの自圧でパイプラインに送り込まれます。このような地下貯蔵箇所は、米国では、400カ所を超し、その総貯蔵容量は年間消費量の約1/3 (ワーキングガス量ベースでは約1/6)に達します。
フランスも水層を利用した地下貯蔵を行っており、西独では背斜構造のほか、岩塩ドームを溶解した空洞を利用した地下貯蔵も行っています。英国やオランダでは枯渇に至らない稼動中のガス田も用いています。わが国では、小規模ですが新潟県の枯渇ガス田において天然ガスの貯蔵と取り出しが実施されていますが、太平洋側のLNGの大消費地近傍においては適当な条件を持つ地質構造が見つかっていませんので、実用化されていません。最近では枯渇ガス田ではなく、岩盤掘削した空調を利用する地下貯蔵の研究も進められています。
 
(3-13)天然ガスの次世代輸送・貯蔵方式
天然ガスを大規模に貯蔵・輸送する場合、通常は、LNGとしますが、液化プラント、輸送船、貯蔵タンクなどに多額の建設費が必要なため、その適用は、大ガス田に限られ、中小ガス田への適用が遅れていました。
この問題を解決するため1990年代から、世界各国で人工的に製造した天然ガスハイドレート(NGH)による天然ガス輸送チェーンの研究が進められてきました。特に日本の造船・エンジニアリング企業は、粉状のNGHをペレット化する技術をはじめ、NGH製造・NGH輸送船・NGHガス化を含むNGH全体輸送チェーンの開発で世界を大きくリードしており、2010年代半ばの商業化をめざしています。
NGHは、天然に賦存するメタンハイドレートと基本的に同じ構造をした固体状の包接水和物をNGH製造プラント内で人工的に高速生成したもので、大気圧下マイナス20℃(家庭の冷凍庫並みにマイルドな温度)付近で安定する「自己保存効果」を利用して、LNGに比べてガスをより経済的に貯蔵・輸送できるという大きな特徴があります。この特徴から、東南アジア等に多数分布する中小ガス田の開発や焼却されることで地球温暖化の要因となっている石油随伴ガスの回収への適用が期待されます。
また、簡易な設備で天然ガスを取り扱えることから、すでにLNGを利用している電力・ガス会社はもちろん、中堅のガス会社や工場などへのクリーンな天然ガスの普及にも寄与すると期待されます。
このほかNGH技術は、パイプライン未整備地域へのNGHローリーでの都市ガス供給、食品廃棄物や下水処理時のバイオメタンガスの有効利用、CO2ハイドレートを利用したCO2の貯蔵・輸送、資源メタンハイドレート生産への応用など技術的裾野が広く、数少ない石油・ガス分野での大型国産技術として注目されています。
 
以上、3回に渡って世界の天然ガス資源について勉強してきました。天然ガスは我が国にとって重要なエネルギー資源であり、特に原子力発電が制限されている現状では、火力発電の主力エネルギーでもあり、その価格動向を含むすう勢は産業のみならず個人の生活にも直接影響してきます。エネルギーの効率活用を常に考えている永久磁石関係者の我々も、天然ガスについても常に関心を持って各種情報を収集しておきたいものです。
次回からは、非在来型化石燃料についての話題を取り上げたいと思います。
<参考・引用資料>
「トコトンやさしい天然ガスの本」第2版 日刊工業新聞社
(社)日本ガス協会ホームページ
JOGMECホームページ
フリー百科事典「ウィキペディア」
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