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エネルギー資源の現状と将来(19)<再生可能エネルギー(6)-その2>

再生可能エネルギーを導入しようとする場合、まずコストが課題になります。発電装置であれば、発電コストになりますが、電気エネルギーは生活を支えるだけでなく、産業基盤を支える重要なエネルギーであり、いくら環境のためといってもコストを無視するわけには行きません。さらに、太陽光や風力、水力などの自然エネルギーはクリーンであり、環境負荷が少ないと考えがちですが、電気エネルギーを作り出す材料や装置、システムを作るためのエネルギーも同時に考慮しないと本末転倒になってしまいます。今月は再生可能エネルギーの中の「太陽光発電」についてできる限り掘り下げて勉強してみたいと思います。

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(6-5) 太陽光発電

太陽光発電とは、太陽光エネルギーを太陽電池によって電気エネルギーに直接変換する発電方法です。大気上空で地球表面が太陽光に垂直に受け取る太陽光エネルギーは1平方メートルあたり1.366キロワットで、これは太陽定数といいます。日本では1平方メートルあたり1キロワットになります。

昼夜含めてどれくらいの太陽光エネルギーが届くかというと、日本の平均日射量で、1年間では1平方メートルあたり1400キロワット時になります。日本の国土面積は38万平方キロメートルですから日本全土では、1年間に530兆キロワット時の太陽光エネルギーを受け取っていることになります。2009年の日本の総発電量は9511億キロワット時でしたから、およそ560倍のエネルギーを太陽からもらっています。

日本の総発電量に相当する太陽光エネルギーが必要な面積は約680平方キロメートルになります。つまり、およそ26キロメートル四方が1年間に受け取る太陽光エネルギーが日本で1年間に発電している電気量に相当します。これが基本になります。たとえば太陽光発電のエネルギー変換効率が10%であれば、総発電量を全て賄うのに必要な面積は10倍の6800平方キロメートルになります。これは島根県よりも少し広い面積に相当します。ただしエネルギー変換効率が倍の20%になれば、単純に必要な面積が半分になります。

下表は主な再生可能エネルギー電源の国内での導入量を示したものですが、実にその95%以上が太陽光発電設備となっています。固定価格買取制度が施行される直前の2012年6月末には太陽光発電の総設備要量は560万kWであったのが、その後2014年6月末までの間に1100万kW弱の新規設備が導入され、太陽光発電の総設備導入量はわずか2年で3倍弱にまで拡大しました。太陽光発電の1kWあたりのシステム価格は35万~40万円前後なので、4兆円もの投資が行われた計算になります。

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[1]太陽光発電の原理(産総研資料引用)

太陽電池は電子に光エネルギーを吸収させて、エネルギーを持った電子を外部に取り出します。エネルギーを持った電子を取り出す仕掛けには、「半導体」を使います。

「半導体」とは、簡単に言いますと、条件によって電気を通したり通さなかったりする物質です。この半導体にはn型半導体と、p型半導体の2種類があります。太陽電池は次図のように基本的に、このn型とp型の半導体を積み重ねた構造をしています。

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(6-2) 再生可能エネルギーが期待される理由

n型の半導体は”動きやすい”電子(伝導電子)がやや多く、接触した材料に電子が逃げ出しやすくなっています。逆にp型の半導体は伝導電子がやや少なめで、電子が足りない場所(正孔)を持っています。この2つを接合すると、n型半導体からp型半導体へと伝導電子が逃げ出して、 正孔と打ち消し合います。

電子が逃げ出した後のn型半導体は電子が足りなくなりますので、プラスに帯電します。同様に、余分に電子をもらったp型半導 体はマイナスに帯電します。このために接合部分に電界(内部電界)が生じます。内部電界は、n型半導体から逃げ出そうとする電子の流れを妨げるように働き、n型からp型へ電子が流れようとする力と釣り合った所で安定します。接合部分では電子と正孔が結びついた状態で動けなくなっていますが、そこには常に内部電界が働いています。伝導電子があれば、電界によってn型半導体へと押し流される状態になっています(次図)。

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そこで接合部分の半導体に光が当たると、光のエネルギーによって新たに伝導電子と正孔が”叩き出され”ます。 内部電界に導かれて、伝導電子はn型半導体へ、正孔はp型半導体へと移動します。その結果、電子を外部へ押し出す力(起電力)が生まれます。起電力は光を当てている間持続し、次々に電子が押し出されることで、外部の電気回路に電力が供給されます。押し出された電子は外部の電気回路を通じてp型半導体の側へ 戻り、正孔と結合します(次図)。

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まとめますと、太陽電池の仕組みは、

1.光のエネルギーを使って、半導体の内部で、動きやすい電子(伝導電子)を新たに発生させる。

2.半導体のpn接合の性質を用いて、伝導電子がエネルギーを失わないうちに、一方向に集めて取り出す。

と説明できます。 太陽電池のように、光を当てることで起電力が発生する現象は、光起電力効果(photovoltaic effect)と呼ばれます。

[2]太陽電池の分類・種類(産総研資料引用)

太陽電池は、その中に用いられている材料で分類できます(次図)。おおまかにはシリコン系・化合物系・有機系の3つに分類できます。最も広く用いられているのがシリコン系、新顔が最近量産され始めたのが化合物系、開発中ですが将来を期待されているのが有機系、と言うことができます。

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主な太陽電池の種類には、次図のようなものがあります。それぞれに特徴があり、最適な用途もそれぞれ異なります。市場でも様々な種類の太陽電池が棲み分けながら、年と共により新しくて高性能な太陽電池へとシェアが移行すると予測されています。

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[3]太陽電池の変換効率(産総研資料引用)

変換効率は面積あたりの発電量に比例し、太陽電池の種類や製造法によって大きく変わります。また、同じ変換効率ならばより安価に、同じ価格ならより高い変換効率へと、時と共に技術開発も進んでいます。現在、数多く使われているのはシリコン系で次図のように10~15%の変換効率程度ですが、それぞれの太陽電池は市場ニーズに応じて棲み分けながら、性能の向上と共に市場でのシェアが変わっていくと予測されています。

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次回は太陽光発電の課題と風力発電についてお話をする予定です。

<参考・引用資料>

「太陽電池の原理」産総研・太陽光発電工学研究センター ホームページ

「トコトンやさしい再生可能エネルギーの本」 太田健一郎 監修、石原顕光 著 日刊工業新聞社

「なっとく再生可能エネルギー」 資源エネルギー庁ホームページ

「再生可能エネルギー」 ウィキペディア