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エネルギー資源の現状と将来(25)<再生可能エネルギー(6)-その8>

今月は海洋エネルギーの話になります。海洋国家の日本にとって、海洋からのエネルギーは大変有意義な再生可能エネルギーとなる筈です。ところが、日本の海洋エネルギーの活用は同じような欧米の海洋国家より遅れているのが現状です。最近になってようやく海洋エネルギー利用のための実用化開発が国家レベルでも活発になってきましたので、この話題を皆さんと勉強してみたいと思います。

(6-10)海洋エネルギー

太陽光から地球が吸収するエネルギーは125兆キロワットになります。その太陽光エネルギーの一部が風、波、海流など物質の運動エネルギーやポテンシャルエネルギーに変化します。これが海洋エネルギーの源で、地球が吸収する太陽光エネルギー全体の約0.3%の3700億キロワット程度になります。もちろん最終的にはすべて熱エネルギーに変わります。太陽光とは別に月の引力にもとづく潮汐カエネルギーが30億キロワット程度で、これも海洋エネルギーに含めます。海洋エネルギーは1年間で3300兆キロワット時に相当しますが、これは2010年度の人類のエネルギー消費量140兆キロワット時の約25倍に相当します。

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[1]種々の海洋エネルギー発電

海洋エネルギー発電には、洋上風力発電や波の上下や水平振動を利用した波力発電、潮の干潮差を利用した潮汐力発電、潮汐力によって生じる海流の運動エネルギーを利用した潮流発電、海流の運動エネルギーを利用した海流発電、海水の温度差や塩分濃度差を利用した海洋温度差発電海洋塩分差発電などがあります。この中で洋上風力発電は再生可能エネルギーとして別途棲み分けをしている場合が多いので、この章では海洋エネルギーとしては取り扱わないこととします。

海洋エネルギー開発はヨーロッパが一歩先んじていますが、2008年の時点で営利目的として稼動しているのは潮汐発電だけです。実証機としては潮力発電と波力発電が、実機大モデルについては波力発電、潮汐力発電、海洋温度差発電が行われていますが、まだまだこれから開発が必要な技術です。しかしながら、すでに欧米の先進国では潮流発電と波力発電の開発プロジェクトが数多く進行中です。まだ発電規模はさほど大きくありませんが、2035年には全世界で14GW(ギガワット)の導入量に拡大して、地熱発電の3分の1に達することが見込まれています(下図)。

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国際エネルギー機関は、世界の海洋エネルギーの資源量とそれから取り出しうる発電容量を推定していますが、波カエネルギー海洋温度差エネルギーが、潮汐カエネルギー潮流エネルギーと比べて百倍から千倍もの資源量をもっていることがわかります。海洋温度差発電は、エネルギーの量としては膨大です。日本では、近海の自然環境や技術の蓄積から、波力発電と海洋温度差発電が注目されています。

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[2]波力発電

波力発電の最も優れた特徴が一日中発電できるということです。波力発電は読んで字のごとく海の波の力を使います。波の力を使うというところでは共通していますが、発電の方法は実にバリエーションに富んでいます。

世界中で広く普及しているのが「振動水柱型」です。海面の高さは波によって上下します。この上下動によって生じる空気圧を利用し、タービンを回転させて発電します。出力は30~60ワットと小さいですが、航路標識用ブイの電源として使うには十分です。

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また、打ち寄せてきた波を貯水池に溜めて、貯水面と海面との高低差を利用して発電する方式が「越波(えっぱ)型波力発電」です。波が高い場所で有利な発電方法で す。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業に採択されており、協立電機が静岡県で実用化に向けた取り組みを進めています。

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課題も色々あります。例えば、沿岸から離れた洋上に浮体式の波力発電所を立ち上げると、大規模工事が必要になり、経済性が落ちます。さらに日本の沿岸は船舶の往来が比較的多く、航行の安全性を保たなければなりません。

ところが、大量のエネルギーを確保しようとすると、沿岸近くは効率が良くありません。波のエネルギーは海の深さ(沿岸からの距離)に従って急速に増えるからです。

オーストラリアCarnegie Wave Energyの調査では、波打ち際ではほとんどエネルギーを確保できません。水深100mの地点では波のエネルギーは幅1m当たり30~50kW。水深が1000mを超え、沿岸から500kmほど離れると90kWまで高まります。したがって オーストラリアでは海中での力発電装置を開発中です。

いずれにしても、沿岸部はシステムを低コストで構築でき、運用コストも低いが、エネルギー密度に難があり、装置を大型化して設置台数を増やすことになります。外洋はエネルギー密度が高いものの構築コスト、運用コストとも高まり最初の一歩を踏み出すことが難しい、などの課題を克服する必要があります。

[3]潮汐力発電

満潮、干潮というように海面の高さは常に変化しています。この高さを利用して発電するのが潮汐力発電です。満潮時に海水を堤防内に貯めて、海面が低くなった干潮時に水門を開いて水を放出し、発電機を回します。

世界最大の潮汐力発電所は、韓国にある「始華湖(シファホ)潮汐発電所」です。2011年に発電を開始しました。発電能力を表す出力は25万4000キロワット。フランスの「ランス潮汐力発電所」は、1967年から発電しており、出力は24万キロワットあります。いずれも年間の平均潮位差が8メートル以上と地形に恵まれています。

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いずれの発電所も出力は大きいように見えますが、潮の満ち引きは一日に1、2回です。自然の原理として、一日に発電できる回数は限られているので、一日中発電しているわけではありません。また、実用化の目安となる干満の差は5メートルで、日本では有明海付近の3.5メートルが最も大きく、日本では海外のような高低差を得るのは難しいと言われています。

[4]海洋温度差発電

海洋温度差発電は、海の表層の温かい海水と深海の冷たい海水の温度差を利用する発電システムです。低温で蒸発する物質(作動流体)を温かい表層水で蒸発させてタービンを回し、冷たい深層水で蒸発した作動流体を液化させ、その繰り返しで発電させる仕組みになっています。海洋温度差発電では、その過程で栄養分を多く含んだ海洋深層水やリチウムが得られたり、水の電気分解によって水素を発生させられたりするなど、副産物も注目されています。

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[5]潮流・海流発電

例えば、東芝とIHIが2014年12月、実証研究に取り組む発表したのが水中浮遊式の「海流発電」があります。2016年以降の事業化に向けるとしています。これは黒潮に代表されるような海流を利用して発電する方法であり、発電機を海底に係留して、水面から50メートル程度の海中に凧のように浮遊させます。模型を使った試験では直径40メートルのタービン翼で1000キロワットの出力が得られる見通しになったとしています。海流は、一年中流れを止めることがありませんから、ベース電源としても期待されます。

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[6]海洋エネルギー発電の課題

第一の課題は出力です。最新の原子力発電や火力発電なら1基で100万キロワット、水力発電で有名な黒部川第四発電所は33万5000キロワットの出力があり、一日中発電できることから、電源の主力を担っています。しかし、これまでに見たように、海洋エネルギー発電はいずれも出力が小さく、また1日中発電できるとは限りません。

次にコストです。海洋エネルギー発電は、海で発電するという性格上、洋上、海上、海中と過酷で人がアクセスしにくい場所にあり、メンテナンスが困難です。陸上風力は発電機にかかるコストなどで8割を占めているのに対し、海洋発電は設置や保守メンテナンスにかかるコストが5~7割占めます。

発電コストは原子力が約9円/kWh、石炭が9.5円/kWhであるのに対し、海洋エネルギー発電の単価はざっくり40円を切ることを目標に研究が進められています。

新しい再生可能エネルギーは、風力と太陽光が主力です。次に地熱やバイオマスがあり、波力や海流といった海洋エネルギーが続くだろうと考えられています。電源が多様化することは望ましいことですが、いまのところ家庭用、産業用の電力源としては、実用にはまだまだ程遠いというのが現状です。

以上、再生可能エネルギーとしての海洋エネルギーについての活用方法と現状について勉強してまいりました。まだまだ課題は多いようですが、海洋国家日本としては将来に向けて是非活用したいエネルギーであることに変わりありません。マスコミに取り上げられる機会が少ない海洋エネルギーですが、読者の皆さんにはこれを機会にさらに目を向けていただきたいエネルギー分野だと考えます。

<参考・引用資料>

「トコトンやさしい再生可能エネルギーの本」太田健一郎 監修、石原顕光 著 日刊工業新聞社

「新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)」 ホームページ

「再生可能エネルギーの未来予測(7)」 スマートジャパンホームページ

「海洋エネルギー発電の実力はどんなもの?」 THE PAGE ホームページ