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地球の科学と自然災害(5)<火山−その3>
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近年、大規模な地震による被害推定とそのための備えなどは、テレビ、刊行物などで盛んに伝えられています。例えば首都圏直下型地震、東海・東南海・南海巨大地震などについては読者の皆さんも見たり聞いたりすることが多いと思います。これらの大規模地震についての勉強は別の機会に譲ることとしまして、今月は地震と関連する大規模火山噴火の地域への影響、被害予測などについて、国内における歴史上の大噴火の痕跡をたどり、身近な富士山を例にとって調べてみることとしました。
[火山-5]国内の大規模火山噴火の痕跡
■都会に残された火山灰の地層(箱根火山)(*本当にわかる地球科学・抜粋)
東京世田谷に「等々力渓谷」という景勝地があります。等々力渓谷で見られる地層は、下から泥岩層、傑層、ローム層で、それぞれ海、川、陸上でできた地層です。泥岩層はかなりしまった緻密な地層なので、水を通しにくく、台地に浸透した水は、泥岩層の上の層を通って湧水となるわけです。
武蔵野台地をつくっている地質は、この3点セットの地層になります。一番上をおおう関東ロームと呼ばれる赤土は、火山灰や塵や植物の遺骸などが積もった風成層です。
その赤土の中に、白っぽい地層が見えます。これが東京パミス層(東京軽石層)です。何やら東京土産の名前のようですが、じつは箱根火山の由来になります。かつて都市化が進行している最中には、造成によって地層が露出することが多かったようです。
おかげで、東京パミス層の厚さが調べられて、箱根に近づくにつれて次第に厚くなっていくことがわかりました。箱根に近い小田原あたりでは4mにも達するといいます。箱根に近づくほど厚くなる火山灰層ですから、噴出源が箱根山だと推測できるわけです。
等々力渓谷のような静かな場所で地層を眺めていますと、なんだか静かに空から火山灰が降ってくるような気がしてしまいます。しかし、火口から70kmも離れた場所に軽石を吹き飛ばすような噴火は相当な規模の噴火だったはずです。
約6万年前、箱根山は大噴火を起こして火山灰を撒き散らしただけでなく、高温の火山噴出物と火山ガスの混合物が火山の斜面を駆け下りる火砕流が横浜まで達していたらしいのです。大噴火の痕跡は、地層の中にくっきりと残されているということです。
■シラス台地をつくった火山(姶良カルデラ)(*本当にわかる地球科学・抜粋)
かつて日本全土を火山灰がおおうような巨大噴火があった痕跡も地層の中に残されています。大部分が無色透明な火山ガラスからなる白っぽい火山灰が、北海道を除く日本全土で見つかっています。
火山灰層の厚さをたどっていくと、関東や中部地方で10m以上、近畿・中国・四国・九州北部で20m以上、九州南部で50m以上となり、噴火した火山は鹿児島県の中央部だと推測できます(次図参照)。
それなら桜島だと思ってしまいそうですが、少し違います。桜島は火山本体というより大きな火山の一部にすぎません。巨大噴火を起こした火山は、陥没して姶良カルデラをつくりました。そこに海水が入り込み、錦江湾になりました。その後、姶良カルデラの南の縁で、小規模な火山噴火が起こってできたのが桜島です。現在も活発に活動する桜島ですが、姶良カルデラの歴史からすれば小規模なものといえます。
姶良カルデラをつくった巨大噴火のときにまき散らされた火山灰を姶良Tn火山灰と呼んでいます。ちなみに、「Tn」は丹沢のことで、もともと丹沢で見つかっていた火山灰をたどっていくと、姶良カルデラにたどりついたということです。
姶良カルデラをつくった巨大噴火で放出された火山灰は、偏西風に乗って数日から数か月の間に日本中に降り積もり、大地を真っ白にしたことでしょう。そんな巨大噴火というのは、どれはどの威力だったのでしょうか。
噴火の凄まじさを感じることができるのは、鹿児島県で見られるシラス大地の崖です。何十mもある崖をつくっている堆積物が、たった1度の噴火でできたというのは、にわかに信じがたいほどです。
シラス台地の堆積物は、噴火で上空に舞い上がった火山灰が降下したものではなく、火砕流による堆積物です。
姶良カルデラ周辺では厚さが100m以上もあり、100km以上離れた場所にまで到達していますから、まったくもって想像を絶する規模だったといえます。
[火山-6]富士山の噴火の可能性とその被害
■宝永噴火をしのぐ大噴火の可能性も(*地震と火山・抜粋)
富士山は、しばしば噴火を起こす活発な火山の1つです。有史以来、相当数の噴火が記録されています。近年もわずかな噴気などが確認されていますが、大噴火は1707年にさかのぼります。富士山南東斜面に火口ができ、噴出物によって宝永山が出現するとともに、江戸市中などに大量の火山灰が降りました。これを「宝永大噴火」といいます。これに先立って、1703年にM8.2の元禄関東地震があり、さらに1707年にはM8.6の宝永地震が発生していました。
1703年の元禄関東地震後に富士山が鳴動を始め、宝永大噴火が起きたのは、1707年の宝永地震のわずか49日後のことです。大地震の被害を受けたばかりの江戸の町に、昼も暗くなるほどの火山灰が降り注ぐことになりました。富士山の麓の村々の被害はさらに深刻でした。田畑は火山噴出物に厚く覆われて耕作ができなくなり、飢饉へとつながりました。
約300年前の宝永大噴火から現在まで、富士山の内部にはマグマが溜まり続けています。(次図参照)。その量は東京ドーム240杯分といわれています。
■宝永地震は南海トラフ地震への教訓(*地震と火山・抜粋)
宝永地震は東海地震や南海地震など南海卜ラフに関連する連動型の地震と考えられています。近い将来発生する可能性がある南海トラフの五連動地震が、このときと同様の影響を富士山のマグマ活動に及ぼし、噴火を誘発する恐れがあります。
なお、噴火は突然に発生するわけではありません。液体のマグマや地熱流体が揺れ動くことにより、ゆらゆらとうごめく微弱な低周波地震がマグマだまりの上方で観測されます。マグマが上昇し、噴火の直前には岩盤が破壊されて高周波の地震である火山性の有感地震が発生し、最後に、火口の直下で火山性微動が起こります。
地震の予知は困難ですが、噴火は時期が迫れば、火山性のさまざまな地震の観測により比較的高い確率で予知できます。ただし、活動が活発化しているのは富士山だけに留まりません。日本に110個ある活火山のうち、20個ほどの火山が、東北地方太平洋沖地震や次の南海トラフでの連動地震によって、噴火が誘発される可能性もあります。
■絶対に噴火しない「死火山」はない(*地震と火山・抜粋)
かって、火山活動の有無もしくは頻度によって火山を分類する「死火山」「休火山」「活火山」という呼び名が存在しました。火山ではありますが、有史以来噴火活動がないものを「死火山」、有史以降の活動記録はありますが噴気を上げていないものを「休火山」などとしました。
木曽の御嶽山は。数千年まえには一旦活動を休止していましたので「死火山」に分類されていました。しかし、1968年頃から噴気を上げ始め、1979年には水蒸気爆発を起こして火山灰を降らせました。そして、2014年には2007以来の噴火を起こし、噴石や火山灰などにより多くの犠牲者を出しました。こうした一連の火山活動は、御嶽山が活火山であることを証明したのです。
ハワイ諸島などのホットスポット上の火山を除くと、決して噴火することのない「死火山」は存在しません。現在では「活火山」以外の用語は学術的には使われていません。すなわち火山は「活火山」と「活火山ではない」の2つに分類されることになっています。
■0.3km3のマグマが一気に放出(*地震と火山・抜粋)
火山の寿命を100万年とすれば、有史以来の数千年は、ほんのわずかな期間に過ぎません。富士山は生まれて10万年、火山としてはまだ幼い子供同然なのです。
宝永噴火以来の300年間の休息の間にも、マグマはしっかりと富士山の地下に溜まり続けているのです。そのマグマの量は、およそ0.3km3にもなると推定されています。これらが、もし一気に噴出すれば、流れ出した溶岩は太平洋まで到達するかもしれません。
次図は静岡県が作成した“富士山火山広域避難計画”からの抜粋です。
*第1次避難対象エリア:火口が出来る可能性の高いエリア
*第2次避難対象エリア:火砕流、大きな噴石、溶岩流(3時間以内)の到達範囲
*第3次避難対象エリア:溶岩流(3〜24時間以内)の到達範囲
*第4次A避難対象エリア:溶岩流(24時間〜7日間以内)の到達範囲
*第4次B避難対象エリア:溶岩流(7日間から40日間以内)の到達範囲
■北へ東へガラス質の火山灰が降る(*地震と火山・抜粋)
<火山灰と偏西風>
日本の火山噴火では、火山灰が東の方向に多く降り積もります。なぜなら、日本列島の上空1000〜1万mでは、偏西風が西から東へ定常的に空気の流れをつくっているからです。
富士山のマグマは主に玄武岩質なので、粘り気が少なく、溶岩は緩やかに流れる傾向があります。しかし、前回の宝永噴火(1707年)はプリニー式の大噴火でした。火山灰を含む噴煙は20km以上の高さにまで噴き上いられ、成層圏に達しました。火山灰は上空で偏西風にのって、江戸市中や横浜の空を暗がりに変え、やがて数cm〜10cmもの火山灰が広い範囲に降り積もりました。
次図は火山灰の降灰マップです。季節によって地表の風向きは変化するため、火山灰の到達範囲もまた変化します。しかし、偏西風の流れは大きく変わることはないので、火山灰は富士山の東に拡散することになります。内閣府によれば、東京都内全域に数cmの厚さで火山灰が降り積もると想定されています。富士山に近い横浜市ではさらに厚く、10cmほどになると考えられます。
<火山灰の性質>
火山砕屑物はほぼ同成分ですが、粒の大小によって呼び名が変わります。火山灰は、火山が噴出したもののうち、直径2mm以下のものを指します。粒が小さいということは、当然重さも軽いということになります。火山岩塊(火山弾など)や火山礫は大きく重いため、噴火口の近くに降下します。ところが、火山灰には非常に微細な粒子も含まれ、成層圏まで達します。
マグマが噴出するときに、発泡して急激に冷やされながら砕かれたものが火山灰です。このためガラス質の石基の割れ目が尖り、前図のように、斑晶はそのままの形で残っています。
つまり、火山灰はガラス質から成る「できたての岩石」であることから磨滅していません。そのため、角が鋭利に尖った形状をしており、少量であってもさまざまな支障をきたします。
自動車のフロントガラスや人の目の角膜など、あらゆるものを傷つける危険性が指摘されています。また、機械装置の奥や電子基盤に入り込み、静電気によって航空機のジェットエンジンに吸い込まれます。さらに、熱によってガラス質の成分が融けることでエンジンをストップさせることもあります。このように富士山の噴火による降灰が日本経済を脅かすことになるかもしれません。
 
以上勉強してきましたように、いつかはわかりませんが、必ず富士山のマグマが噴出する日が来ます。富士山の地下深くに眠っているマグマは、いつでも噴火の「スタンバイ状態」にあるのです。
富士山は1万年以内には100%噴火します。そして、これまでの活動周期から推測すれば、噴火はそう遠くない未来に起こり得るのです。
 
今回で「火山」の章は終了とします。次回、地球の科学と自然災害(6)からは「台風」についてそのメカニズムや地球科学との関連、過去の災害、将来起こり得る脅威などについて調べて行きたいと思います。
<参考・引用資料>
「本当にわかる地球科学」 鎌田浩毅 監修・著、西本昌司 著 日本実業出版社
「なぜ起こる巨大地震のメカニズム」 木村政昭 監修 編集工房SUPERNOVA 編著 技術評論社
「パーフェクト図解・地震と火山」 鎌田浩毅 監修 学研
「富士山火山防災対策協議会」ホームページ
フリー百科事典「ウィキペディア」
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