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地球の科学と自然災害(10)<竜巻−その2>

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今月も「竜巻」についてのお話となります。前回は「竜巻の定義」、「竜巻と気象状況」、「竜巻発生のメカニズム」などについて勉強してきました。今回は竜巻の発生しやすい季節、地域、世界的な竜巻の災害例、記録などについて調べてみました。

[竜巻-6] 竜巻が発生しやすい時間帯*引用「竜巻のふしぎ」共立出版

竜巻は発達した積乱雲に伴って発生するので、夏の雷雨と同様、日中の気温が高い時に発生しやすくなります。また、上空の冷たい空気と地上の暖かい空気との気温差が広がるほど大気が不安定になり、空気が上下に激しく対流し、雲が成長するのです。つまり、地上の気温が上がる昼から午後にかけての時間帯が雷雨の発生しやすい時間帯、つまり竜巻が発生しやすい時間帯となります。

例えば、日本の竜巻の発生が多い時間帯は11時から18時の間となります。このうち最も多いのは地上の気温が最も高くなる13時から14時の間です。一方、アメリカでも15時から19時の間がピークです。このように竜巻は昼間に発生することが一般的なのですが、夜間に発生することもまれにあります。夜間は就寝中の人が多かったりするため、竜巻の被害が大きくなる傾向があります。

[竜巻-7]竜巻が発生しやすい季節*引用「竜巻のふしぎ」共立出版

竜巻が発生しやすい時間帯はどの地域でもほぼ同じですが、発生しやすい季節は次図のように異なります。アメリカでは圧倒的に5月と6月が多いのに対し、日本では9月と10月、イギリスでは2月となっています。このように多発する季節が異なる理由には、竜巻発生時の気象状況の違いが関係しています。

地球の科学と自然災害-画像28

アメリカの竜巻は空気の寒暖差によって発生する積乱雲によるものが多いため、冬の寒気と暖気が入り混じる春が竜巻が発生しやすい環境となります。日本の竜巻は台風に伴う積乱雲によって発生することが多いため、台風が日本に近づきやすい夏の終わりから初秋にかけて最も多くなります。イギリスの竜巻は冬に大西洋上で急速に発達した低気圧が通過する際に発生することが多いようです。

[竜巻-8]竜巻が発生しやすい地域*引用「竜巻のふしぎ」共立出版

次図の世界の竜巻発生分布を見ると、アメリカ中央部の大平野や各国の海岸線に竜巻が集中していることが分かります。これらの場所に共通するのは平野であることです。平野で竜巻が多く発生する理由は、山などの起伏によって空気の流れが邪魔されないため、異なる温度や湿度を持った空気の流れが正面衝突し、上昇気流によって親雲が発達しやすくなるからです。逆に、高層ビルが密集した都会では風が乱れるため、竜巻が発生しにくいとも言われています。

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<アメリカの竜巻>

条件さえ揃えば、竜巻は地球上のどこにでも起こり得る気象現象です。ただし、発生場所に関しては偏りがあるようで、発生しやすい場所とそうでない場所があります。

例えば前図から中緯度帯に竜巻が出現しやすいことが分かります。また、この地域はアメリカの穀倉地帯のような、農業が盛んな肥沃な土地と重なるのです。これはなぜでしょうか。

農業が盛んということは、雨が降りやすい、つまり雲が発達しやすい場所にあたります。そして暑すぎず、寒すぎずという温暖な気候の下では、極地方からの冷たい空気と、熱帯地方からの暖かい空気が適度に混じりあい、竜巻が発生しやすいのです。結果として、人間と竜巻の好む場所は同じということになります。残念ながら、私たちは竜巻と熾烈な縄張り争いをしなければならない運命にあるようです。

竜巻が最も発生しやすい国は、もちろん竜巻大国アメリカです。世界の年間竜巻発生数は1500個と言われますが、その約4分の3にあたる1250個ほどがアメリカで発生しています。2番目はカナダで、年間約100個の竜巻が発生しています。

<ヨーロッパの竜巻>

ヨーロッパは竜巻とは無縁なように思えますが、意外にも年間約170個の竜巻が発生しています。ただし、ヨーロッパはアメリカよりもずっと北に位置しているので暖かな空気がそれほど入らないため、ぜい弱で短命な竜巻が多いです。

気象学者の二コライードーツェク博士によると、ヨーロッパ各国の年間竜巻発生数(水上竜巻を除く)は、多い順にイギリス(33個)、オランダ(20個)、イタリア(15個)、ドイツ(10個)、フランス(8個)となります。単純に竜巻発生数だけを見ると、ヨーロッパはアメリカにまったく及びませんが、面積あたりの発生数を見ると、オランダが世界一となります。つまり、オランダにいる方がアメリカにいるよりも竜巻に遭遇する確率は高いのです。海よりも低くて平らな土地が広がるオランダは、水車だけでなく竜巻も発達させていたのです。

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<アフリカの竜巻>

前図に戻ると、アフリカに空白の地域が目立ちます。実際にはこれより多くの竜巻が発生していると予想されますが、気象観測所や目撃情報が少ないために記録が少ないのです。ただし、南アフリカは記録が比較的多く、強い竜巻が発生することもあるようです。

<日本の竜巻>

「竜巻発生数の世界一はアメリカ」というのは、あまり本質を突いた話ではありません。数が多い理由には国土の広さも大きく影響しているからです。つまり、単純に国全体の竜巻発生数ではなく、一定而積あたりの発生数を比較する必要があります。そうするとイギリスやオランダの方がアメリカよりも発生数が多くなります。

このように面積あたりの発生数を見ると、意外と日本も竜巻が発生しやすい国ということが分かります。アメリカと日本の年間竜巻発生数(水上竜巻を除く)は、それぞれ1250個(1991〜2010年)と25個(2007〜2013年)で、アメリカでは日本の50倍の竜巻が発生していることになります。しかし、アメリカの面積が日本の25倍あることを考慮すると、日本の竜巻発生数はアメリカの50%になります。日本では台風や地震の陰に隠れてあまり目立たない竜巻ですが、面積あたりの発生数は意外と少なくないのです。

■日本での竜巻が発生しやすい地域

それでは日本国内での竜巻が発生しやすい地域をみると、発生東北から北陸地方にかけての日本海側沿岸、関東平野、東海地方の沿岸、九州と四国南部沿岸、そして南西諸島に竜巻は多く発生していて、特に海に近い平野部での発生が顕著です。

都道府県別の竜巻発生数(1961〜2013年の合計)をみると、最も多いのは沖縄県(79個)、次いで鹿児島県(60個)、北海道(59個)、宮崎県(52個)、高知県(49個)となります。この竜巻発生数を都道府県の面積で割った面積あたりの発生数にすると、次表の全国竜巻発生ランキングのようになり、1位は沖縄県、2位は東京都、3位は千葉県、4位は宮崎県、5位は埼玉県、6位は高知県・・・・となります。ちなみに2位の東京都は小笠原や八丈島などの島しょ部を含んでおり。竜巻のほとんどがこれらの島々で発生しています。島しょ部を除くと7位になります。

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■日本の竜巻の発生原因

日本国内の竜巻の発生原因には地域差がありますが、多い順に(1)前線、暖気や寒気の移流、(2)低気圧、(3)台風となっています。沖縄や九州南部で竜巻が多い理由は、台風の影響です。千葉県などの関東平野で多い理由は、台風の影響のほかに、アメリカの竜巻街道と同じように、海から吹き込む暖湿な空気と北からの冷たい空気とが交わりやすいという条件を満たしているためです。

■日本とアメリカの竜巻の違い

国土が狭く山が多く、周囲を海に囲まれている日本では、南北の寒暖差がアメリカほど極端ではないことなどから、両国で発生する竜巻の規模には大きな差があります。

過去に日本で発生した最も強い竜巻はF3(秒速70〜92メートル)ですが、アメリカではF5(秒速約142メートル)と言われています。F3とF5の間には、藤田哲也博士の言葉を借りて言うと、「強烈な被害」をもたらすものと「想像を絶する被害」を生むものくらいの差があります。また、日本の竜巻の平均移動距離は平均3.3キロ、それに対してアメリカでは8キロにも及びます。その結果、アメリカの竜巻は日本の竜巻よりもはるかに長寿命です。

このように竜巻発生数、強さ、大きさ、移動距離などの違いから、日本での竜巻による年間死者数の平均は0.5人なのに対し、アメリカでは平均80人、多い年には500人以上も犠牲になっています。

面積あたりの竜巻発生数の差は極端に大きくはありませんが、竜巻の規模は比較にならないほどの差があるのです。

[竜巻-9]世界の竜巻被害の記録*引用「竜巻のふしぎ」共立出版

<世界一長い距離を駆け抜けた竜巻−1925年アメリカ>

約1世紀を経た今でも、塗り替えられることのない竜巻の世界記録があります。それは1925年3月にアメリカで発生した、史上最長の距離を猛スピードで駆け抜けていったF5の竜巻です。この竜巻はまた、アメリカ史上最多となる死者も出しました。

イリノイ州にあるウェストーフランクフルトという小さな炭鉱の町では、その日も1500人を超える炭鉱夫たちが地下で作業を行っていました。15時過ぎのこと、頭上で轟音が響いたかと思うと、突然電気が消えたのです。何か起こったのか訳も分からぬまま地上に出た男たちは、目の前の変わり果てた光景に目を疑いました。そこにあるはずの家々は吹き飛ばされてなくなり、街は壊滅的な状態に一変していたのです。被害者の多くは女性と子供で、死者は127人にも及びました。

この竜巻はアメリカのミズーリ州・イリノイ州・インディアナ州を移動したため、「トライステート(3州)竜巻」と呼ばれています。3時間半という長時間にわたって猛威を振るい、最終的には695人が死亡、約2000人が負傷、1万5000棟もの家屋が破壊されました。また、352キロという長距離を移動した竜巻として今日でも世界一の記録とされています。

<史上最多の竜巻を発生させた嵐−2011年アメリカ>

年間1250個の竜巻が発生するアメリカですが、たったの4日間でその約4分の1にあたる343個の竜巻が発生したことがあります。それは2011年4月25〜28日のことで、一連の嵐によって発生した竜巻の史上最多記録となっています。アメリカ南部と東部での死者は3321人、1年に二度くらいの頻度でしか発生しないとされるEF5の竜巻が、この時は四つも発生しました。また、EF4の竜巻がアラバマ州にある「タスカルーサ」という、日本語読みだと何とも楽観的な名前の町を直撃し、多くの被害者を出したのです(次図)。

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<最も多くの死者を出した竜巻−1989年バングラデシュ>

一つの竜巻による最多死者数は、アメリカでは前述の695人、日本では9人(2006年11月7日、北海道佐呂間町)ですが、世界史上最多の死者を出したのは、1989年4月にバングラデシュを襲った竜巻です。半年間にわたる干ばつが続いていたこの地に、竜巻は突如出現しました。人口が密集する地域で家屋が簡素な造りであったこと、そして竜巻の襲来を知らせるシステムがなかったことから被害は甚大なものとなり、最終的には約1300人が死亡、1万2000人以上が負傷をしました。

バングラデシュの竜巻発生数はアメリカより少ないにもかかわらず、竜巻による年間死者数の平均は179人(1967〜1996年)と、アメリカの80人よりもずっと多いのです

<その他の竜巻世界記録>

  • 最も大きい竜巻:幅4.2キロ(2013年5月、アメリカ−オクラホマ州)
  • 最も風の強い竜巻:秒速142メートル以上(1999年5月、アメリカ−オクラホマ州)
  • 最も気圧の低い竜巻:850ヘクトパスカル(2003年6月、アメリカ−サウスダコタ州)
  • 一つのハリケーンから発生した竜巻の史上最多数:117個(2004年9月、アメリカ東海岸。ハリケーン・アイバンによる)

<日本の最近の竜巻被害>

最近では2012年5月6日に起こった茨城県つくば市の竜巻が記憶に新しいでしょう(次図)。この時は竜巻の強風によって住宅がコンクリート製の土台ごとびっくり返り、家の中にいた中学生1人が亡くなりました。この住宅の柱や土台は基礎部分に非常にしっかりと固定されていたため、基礎ごと家が持ち上げられてしまったのです。

地球の科学と自然災害-画像33

ところで、日本の竜巻一つあたりの被害家屋数は平均30棟で、死者数は0.5人と言われています。家々が密集しているために被害家屋は多いのですが、この死者数と被害家屋数は、大雨や地震といった他の災害に比べると低いものになっています。これは日本の竜巻がそれほど強力ではないことが関係しています。とは言え、局地的な破壊力は自然災害の中でも最大級だということを忘れてはいけません。

以上、今月は竜巻の発生しやすい時間帯、季節、地域および世界の竜巻被害の記録などについてお話をしました。次回は竜巻の最終章になりますが、竜巻被害から身を守る方法、竜巻・台風以外の強風などについて調べてみることにします。

<参考・引用資料>

「竜巻 メカニズム・被害・身の守り方」 小林文明 著 成山堂書店

「竜巻のふしぎ」 森田正光 森さやか 著 共立出版

「ウィキペディア」フリー百科事典