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地球の科学と自然災害(15)<津波-その4>

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今月は4回目の「津波」シリーズおよび「地球の科学と自然災害」の最終回として、「大津波への備え」について読者の皆様とご一緒に考えてみたいと思います。

[津波-11]日本列島の津波危険地域

過去の津波記録や津波予測により、日本列島における危険な地域としては、三陸海岸、東海・東南海・南海沿岸、日本海東部沿岸などがあげられます。

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中央防災会議では今後起こるであろう海底地震の規模とその切迫度について、調査会等で想定を行っています。また、南海トラフ巨大地震の被害想定等の公表を受け、特に人命を守る観点から、その最大の課題である津波避難対策をはじめハード・ソフト両面からの総合的な地震防災対策の推進を図るため、議員立法により平成25年11月、「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」の改正がなされ、「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」と名称を変えました。

[津波-12]大津波への備え

<大津波からの避難>

東日本大震災では多くの町が大津波に襲われました。先進国での被害だったため、建物や土木構造物の津波被害について、これまでとは比較にならないほどのデータが残されました。どんな建物に避難すれば生き残れるか、どんな行動が命を救ったか、多くの犠牲と引き換えに得られたデータは、次の大津波に備える人類共通の貴重な財産でもあります。

【1】避難は鉄筋コンクリート造3階以上

鉄筋コンクリート造3階以上の建物は10メートルの津波でも約半数が持ちこたえる――。国土交通省が行った東日本大震災の津波被災調査であきらかになり、ある程度の高さのある丈夫な建物が津波避難ビルとして有効であることが裏付けられました。

調査は浸水被害を受けた青森から千葉の6県62市町村の計23万棟の建物を対象に実施、建物や樹木に残った痕跡などから津波の浸水深を100メートル四方ごとに調べ、建物の構造や階数別に被害状況を分析しました。

その結果、木造2階建ての場合、浸水深3メートルで5割、6メートルになると9割以上の建物が流失するか全壊していました。鉄筋コンクリート造3階以上の建物では、浸水階より上の階にいる人が危険になるほどの損壊が生じる割合は低いことが分かりました。

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東北大の越村俊一教授(津波防災工学)によると、津波による建物破壊の原因は、(1)流れの力(2)水につかった建物を浮かび上がらせようとする浮力(3)漂流物の衝突などがあります。

流れの力は速度と浸水深で変わります。衝突物の有無や流速の測定は難しく、壁などに残った痕跡でわかる浸水深と、被害の関係が調べられてきました。越村教授は「東日本大震災で非常に密なデータが得られた。詳細な被害予測に生かすとともに、さらに詳細な解析を続けて、次の津波への備えに役立てたい」と話しています。

内閣府は南海トラフ巨大地震の被害想定での津波による死者数を算出するため、越村教授らが調査した2004年のスマトラ島沖地震の津波被害をもとに、浸水深別で津波に巻き込まれた人の死亡率を推計しました。浸水深60センチで約3割、1メートルで10割と見積もりました。ただ、単純化しており、死亡率がゼロの20センチ以下なら「安全」というわけではありません。

津波に人はどれだけ耐えられるのか。独立行政法人の港湾空港技術研究所は、成人男女20人に大型水槽に入ってもらい、津波と同じように水を流して立っていられるかなどを調べました。

すると、約30センチで女性の6割が転倒したりよろけたりして、40センチでは女性の9割、70センチになると全員が普通に立っていられなかったということです。

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有川太郎・上席研究官は「津波が数十センチと聞くとたいしたことがないように思われがちだが、実は命に関わる危険性が高い」と強調しています。

津波は、川で流れの中を歩いたり、海水浴の海岸で波に足をとられるのと同様に考えることはできません。越村教授は「同じ深さの川を渡るのとは違う。流れは強く、走って逃げている時や予期せず身構えていない状態では、踏ん張ることができない。くるぶしぐらいの津波でも、足をすくわれて逃げられなくなることがある」と指摘しています。

【2】早く、高い所へ逃げる心構え必要

津波は沖合ではジェット機並みの速さ、沿岸部まできてもオリンピックの短距離走選手並みの速さで押し寄せます。素早い避難が大切だ。第1波が最も大きいとは限らず、地形によっては周囲より波が高くなる特徴もあります。気象庁が予想する津波高を過度に信じるのは禁物です。強い揺れやゆっくりとした長い揺れの地震があったら、できるだけ早く、高い所へ逃げる心構えが必要です。

※日常の備えは、実際にどれだけの効果があるのか。

内閣府は、東日本大震災で被害にあった東北沿岸の住人1万人以上にアンケートを実施し、避難者の備えと行動が、安全に逃げられた割合をどれだけ変えたのかを調べました。

調査データを再集計したところ、日常の備えの有無や避難開始時間の違いで、津波が来るまでに安全な場所に避難できていた人の割合が違うことがわかりました。

日々の備えでは、津波避難訓練に参加していたと答えた1704人のうち、53.6%が、足元まで津波が来たり、津波にのみ込まれる寸前になったりせずに無事逃げ、安全な場所から津波到達を見ていました。

家族らを捜さずに各人がてんでばらばらに逃げる「てんでんこ」すると決めていた人たちでは47.6%。その他の備えをした人も50%前後だった。日ごろの備えをしていなかった人たちは36.0%にとどまりました。

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大きな揺れがあっても、周囲の状況で避難行動が鈍る心理がうかがえた。地震発生時に「津波が来る」と聞いた人と、「来ない」と聞いた人では、津波に追いつかれず到達までに安全な場所に逃げられた人の割合に20ポイント以上の差がありました。

揺れてから避難を決断するまでの時間を見ると、5分以内に避難を始めた人は64.7%が安全に逃げられましたが、30分以降になるとその割合が半分以下になり、約7割が津波に巻き込まれたり、のみ込まれる寸前になったりしていました。

津波は発生時にどこにいるかが、流されるかどうかを決める大きな要因になります。内閣府担当者は「そうした運の要素が大きい中でも10~20ポイントの差がついた。避難の重要さがわかる」と指摘。調査対象が生存者のみであることから「犠牲者の存在を考えれば、避難による結果の差は実際にはさらに大きいはず」とみています。

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※6割が自宅で津波に被災/石巻市

東日本大震災の津波の犠牲者について、東濃地震科学研究所(岐阜県瑞浪市)の三上卓・副主任研究員が宮城県石巻市で死亡時の状況を確かめたところ、62.3%が自宅で被災し、自宅以外にいた人は37.7%でした。

調査では、石巻市の死者・行方不明者約3500人のうち、これまで約29%にあたる1012人の死亡時の状況を特定しました。自宅で犠牲になった人の内訳は、「逃げなかった」が最も多い28.4%で、「体が不自由・付き添い」が14.7%、「迎えを待っていた」が6.1%などでした。

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【3】訓練で判断力高め悲劇の再現防げ

東日本大震災から6年が経ち、津波への恐怖も徐々に風化しつつあります。それぞれの地域で行われる津波避難訓練への参加率も低下しているのが現状のようです。

訓練は一度参加して終わりではなく、繰り返さなければ意味がありません。防災は知識だけでなく、行動で理解し、判断力を高めることが大切だからです。さもないとまた地震が起きたとき皆が一斉に車で避難し、渋滞で逃げ遅れるなどの悲劇が再現されてしまうでしょう。

この震災で津波のイメージが限定されつつあることも心配です。津波被害は地震の起き方や季節、時間帯によってさまざまに変化することを忘れてはなりません。また津波高10メートル、20メートルなどの大きな数字ばかりが印象に残ってしまったため、1メートルの津波を「危険でない」と勘違いしてしまう弊害も生まれているようです。

津波は単なる「水」ではなく、漂流物という「凶器」が混入しています。水の勢いもわれわれが思う以上に強く、数十センチでも人は流され、命を失う危険性が高いのです。

津波は常にわたしたちの想定を超える。それを前提に訓練は毎回、条件を変えて行うなど、より実践的なものにすべきです。祭りやイベントと併せて開催して参加率を上げるのも良いでしょう。「いま津波がきたらどうする?」を想像し、日々備えることが命を救うのです。

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【4】避難3原則

■迅速な津波警報・注意報の必要性

群馬大の片田敏孝教授(災害社会工学)は避難のポイントを分かりやすく「3原則」にまとめて各地で伝えています。そんな防災教育の舞台だった岩手県釜石市では、東日本大震災時に小中学生が自ら率先し避難、大人たちの避難も促した。市内の約3千人の小中学生のほとんどが津波による被害を免れ、「釜石の奇跡」と呼ばれました。

(1)その状況で最善を尽くせ

「ここまで来れば大丈夫」な場所などない。より高く、早く逃げよ。

(2)想定にとらわれるな

「ハザードマップの浸水想定域外だから」「防波堤があるから」と安心せず、常に想定以上の災害を考えろ。

(3)率先避難者たれ

「いざ」と思ったら真っ先に避難せよ。そんなあなたを見て、多くの人も逃げ出す。

以上で15回に渡ってお伝えしてきました、「地球の科学と自然災害」のシリーズを終了させていただきます。自然災害は、人類が地球の科学をより深く知ることにより未然に防ぐことも可能です。また、私たち個人においても、「地球の科学」を少しでも理解しておけば、どこかで災害に遭遇した時に役に立つことがあると思います。

 

今回のNeoMag通信のシリーズが、読者の皆様の自然災害に対する「準備・心構え」を見直すきっかけになれば幸いです。

次回からは「宇宙の科学」についてのシリーズを予定しています。どうぞご期待ください。

<参考・引用資料>

「気象庁」ホームページ

「消防庁」ホームページ

「文部科学省 地震調査研究推進本部」ホームページ

「独立行政法人の港湾空港技術研究所」資料

「東濃地震科学研究所」資料

「内閣府調査」資料