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おもしろい宇宙の科学(2)<宇宙の姿-その2>

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先月は宇宙の基礎編として「宇宙と地球の境界線」、「宇宙の誕生」、「ビッグバン」、「宇宙の果て」などについて勉強してきました。いずれ「太陽」、「惑星」、「銀河」、「ブラックホール」などのおなじみの興味あるお話にしたいと思いますが、その前にもう少し宇宙の姿・仕組みについて勉強してみましょう。

[宇宙の姿-6]宇宙の年齢と膨張

2001年6月に打ち上げられたNASAのWMAP衛星は宇宙誕生から約38万年後の物質のムラを精密に調べ、宇宙に存在する物質の量を導き出しました。ここから現在の宇宙が進化するように計算された宇宙の年齢は137億歳と結論されました。さらに、2009年5月にESA(欧州宇宙機関)が打ち上げたPlank衛星によりさらに精密測定・計算した結果、2013年3月「宇宙年齢は138億歳」と訂正され、この年齢が現在最も有力な年齢と言われています。(ただし、最近の専門書の中でもまだ137億歳と記述しているものもあります。)

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実は宇宙の年齢は、1999年の時点では120億歳でほぼ確定といわれていました。10億年以上の差はなぜ生じたのか。そこには科学者も想像できないような事実が潜んでいたのでした。

この120億歳という年齢は、女性物理学者のウェンディ・フリードマンらがハップル宇宙望遠鏡で行った研究成果でした。そもそもハッブル宇宙望遠鏡は、宇宙の年齢を決めること、すなわちハッブル定数を求めることを最優先課題とする望遠鏡です。宇宙の年齢を決めるには、宇宙の膨張速度を決めれば良く、膨張を逆算すれば、はじまりがわかり、年齢を計算できるからです。

フリードマンらは、18個の銀河から800個のセファイド型変光星を選び出し、観測を行いました。セファイド型変光星は、周期的に輝きを変える星で、同じ周期をもつものは、本来同じ明るさをしています。見かけの明るさと本来の明るさをくらべることで、地球からどのくらい離れた星かを計算できるのです。後退速度は、速く遠ざかる星が放つ光ほど、波長が伸びるという赤方偏移を利用して正確に求められます。後退速度を天体までの距離で割ったものがハップル定数であり、この定数を使えば宇宙の年齢が計算できることになります。

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1999年、彼女らは1Mpc(326万光年)離れた星の後退速度を秒速70kmと割り出し、ハッブル定数を70km/s/Mpc と決め、そこから宇宙の年齢を120億歳としました。

彼女らが使ったセファイド型変光星は、素性がよく知られている1億光年以内のものでした。ところが、宇宙は50億~70億年前から膨張速度を加速させていたことが、ハッブル宇宙望遠鏡の別の観測から明らかになりました。1億光年以内の星から求めた後退速度は、宇宙が加速膨張をはじめた後の値です。それ以前の宇宙膨張速度がもっと緩やかであったことを考慮すると、宇宙の年齢はさらに大きな値になるのです。

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この当時、彼女らを含め多くの科学者が、宇宙の膨張速度はビッグバン以来、ほぼ変わらないと考えていました。ここに大きな見込み違いがあったわけです。

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ハップルは、他の銀河か天の川銀河から遠さかる方向に移動しているということを発見しましたが、私たちはいまや天の川銀河(太陽系が位置する)が銀河の中心ではないことを知っています。

したがって、天の川銀河自体もある場所から遠さかっていることになるはずです。逆にいえば、すべての銀河が進む方向かわかれば、その基点となる場所、すなわち「宇宙の中心」もわかることになるのです。

しかし、現代天文学では「宇宙の中心はない」と考えられています。よくたとえられる例ですが、銀河が風船の表面に描かれた点だと考えてみましょう。風船を膨らませると、点(銀河)はお互いに離れてゆきます。このとき風船を立体としては考えずに、表面にある点の動きたけを見てみますと、表面に風船の中心というものは存在しないように見えます。要するに、宇宙にも中心かないことになるのです。

また、風船に描かれた点(銀河)の数は変わらないため、隣り合っている点はどんどん離れてゆく一方となります。こうして膨張を続ける宇宙がやがてどうなるか、いくつもの仮説はあるものの、いまだに推測の域を出ていません。

[宇宙の姿-7]宇宙に充満する物質・エネルギー

宇宙には恒星や惑星、小惑星などの天体をはじめ、ガスや塵など、さまざまな物質が存在します。では、そうした「目に見える」物質以外の部分はどうなっているのでしょうか。

宇宙の天体と天体の間には「何もない空間」が広がっているように見えます。ところが、この部分には本当に何もないわけではなく、見えない存在である「ダークマター」(暗黒物質)「ダークエネルギー」(暗黒エネルギー)というもので占められていると言われています。たとえば、私たちの周りには空気が満ちていますが、私たちはその存在を目で確認することはできません。それと同様に、私たちの目には見えないだけで、実際の宇宙には物質とエネルギーが満ちあふれ、本当に「何もない空間」というのは存在しないと考えられているのです。

ただし、ダークマターもダークエネルギーも、まだ存在そのものは確認されていない架空の物質、架空のエネルギーです。だが、これらが存在すれば、宇宙における不思議な現象も説明できるうえ、ビッグバン宇宙論と実際の観測結果も合致することになります。

あくまでも仮想的な物質とエネルギーなのでその存在を否定する意見もありますが、現時点では有力な説であり、多くの研究者がダークマターとダークエネルギーを見つけようと真剣に取り組んでいるのです。

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そもそも、ダークマターとダークエネルギーは、どのようなことからその存在が仮定されたのでしょうか。

太陽系を取り巻いているとする「オールドの雲」の提唱者であるヤン・オールトは、1927 年に恒星の運動から銀河の重さを推測しようとして、運動が行われるためには質量が足りないことに気づきました。これが「ミッシング・マス(失われた質量)」問題と呼ばれ、のちにダークマターが仮定されるきっかけとなったのです。

その後、1960 年代に行われた銀河の回転速度の観測で、銀河の内側と外側の回転速度かほぼ同じことが判明しました。本来、星の数が多い(つまり全体の質量が多い)内側の回転速度は速く、星が少ない(質量が小さい)外側の回転速度は遅くなるはずなのだが、両者の速度が同じということは、質量を持った「見えない物質」が存在するからに違いない、という推測が成り立ちます。そこで、その見えない物質をダークマターと呼ぶようになりました。

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一方、観測結果では宇宙が膨張しつづけているにもかかわらず、膨張を加速するために必要なエネルギーが見つかりません。そこから、同じように「未知のエネルギー」、すなわちダークエネルギーが存在するはずだと考えられました。ダークエネルギーの存在を仮定すると、ビッグバン宇宙論と現在の観測結果が一致するようになるため、この仮定も広く受け入れられるようになったのです。

ちなみに、「ダーク」というと「悪役」「悪者」といったイメージがありますが、ダークマターとダークエネルギーは「暗くて見えない」という程度の意昧でつけられているだけで、決してネガティブなイメージで語られているわけではありません。

[宇宙の姿-8]宇宙からのメッセージ

宇宙が観測可能になるのは、宇宙の晴れ上がり以降になります。それ以前は、原子核から分離した自由電子の動きに邪魔されて、光子は直進できずに散乱してしまいます。光は遠くまで届くことができず、曇ったような状態です。この曇天が晴れ上がるのが、宇宙誕生の約38万年後になります。

このときの光が観測できるはずだと、ビッグバン宇宙を提唱したジョージ・ガモフは予言しました。同時に超高温・超高圧のビッグバン宇宙の熱が宇宙膨張によって冷え、現在は5K(約-267℃)か7K(約-265℃)くらいになっているはずだとガモフは予言したのでした。

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ガモフの予言は、偶然実証されることになりました。 1965 年、ベル研究所で通信衛星の研究をしていたロパート・ウィルソンとアルノ・ベンジアスは、通信用のアンテナをつくっていた。そのアンテナがキャッチする電波の中に、角度を変えようと何をしようと変わらない“雑音”がありました。その強さはつねに一定で、どこを向いても消えることがなかったのです。

「何かはわからないが、とても重要なメッセージを宇宙から受け取っている」と二人は感じました。世紀の大発見でした。この“雑音”こそがビッグバンの名残、ガモフが予言した熱エネルギーが冷えた残りかすだったからです。その電波のエネルギーを温度に換算すると約3Kでガモフの予言にほぼ一致しました。このビッグバンの名残は、3Kの宇宙マイクロ波背景放射(CMB)と呼ばれるようになり、宇宙誕生からわずか38万年後に放たれた光の波長が伸びて現在マイクロ波として観測されたものだったのです。

[宇宙の姿-9]宇宙マイクロ波背景放射(CMB)

発見当初どこを向いても同じだと考えられていたこの宇宙背景放射に実は小さなムラがあることがわかったのは1992年のことです。衛星COBEが宇宙背景放射の温度が正確には2.73Kであること、また全天を観測した結果、温度は一様ではなく小さなムラがあることなどを明らかにしたのです。

[宇宙の姿-6]でも触れましたが、さらに、2001年に打ち上げられた電波天文観測衛星WMAPや2009年のPlankは、COBEより詳細に宇宙背景放射を観測しました。得られた宇宙背景放射のムラは、初期宇宙の物質のばらつきです。物質が濃い部分はさらに周囲の物質を集め、星や銀河、銀河団をつくりました。小さなものから大きなものへと、宇宙は進化したのです。

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[宇宙の姿-10]ダークマター(暗黒物質)の候補

ESAが2009年に打ち上げた天文衛星「Plank」による「宇宙マイクロ波背景放射」の観測によれば、宇宙を構成する物質のうち、私たちが知っている水素やヘリウムなどの物質はわずか4.9パーセントにすぎず、あとはダークマターが26.8パーセント、ダークエネルギーが68.3パーセントという割合になります。つまり、宇宙のほとんどは正体不明の物質やエネルギーで占められていることになるのです。

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宇宙を観測すると、銀河は均一に広がっているのではなく、密な部分と何もない部分とに分かれます。また、「宇宙の大規模構造(宇宙の泡構造)」を見ると、何もない空間が泡のように広がっていることがわかります。宇宙かこうした構造になっているのも、ダークマターによる影響と考えられています。

この見えないけれど存在するとされる謎の物質ダークマターの正体として、ニュートラリーノアクシオン、ダークフォトン、グラビティーノといった素粒子の名が挙がっています。2015 年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏もニュートリノ検出に携わったことで有名な「スーパーカミオカンデ」がある東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設では、ダークマターを直接観測するための「XMASS実験」が進められています。この実験では、バックグラウンドノイズ(観測対象以外の余計な信号など)のほとんどない地下で、液体キセノンを使った検出器で直接ダークマターを見つけ出す試みが行われています。この実験でダークマターの検出に成功すれば、その正体を暴くことができるかもしれません。

 

以上、今月は「宇宙の姿」についての2回目のお話でした。“宇宙は膨張し続けている”ことや“宇宙には未知の物質やエネルギーが充満している”ことなどを勉強しました。難しい内容ばかりですが、宇宙を知る上で重要な知識となりますので、大まかでも結構ですので覚えておいてください。

次回も引き続き「宇宙の姿」についてのお話となります。

 

<参考・引用資料>

「知識ゼロからの宇宙入門」渡部潤一、渡部好恵 、ネイチャープロ編集室 発行元:幻冬舎

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「宇宙の秘密がわかる本」宇宙科学研究倶楽部 発行元:株式会社学研プラス

「NASA」ホームページ