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おもしろい宇宙の科学(11)<太陽系-その3(水星)>

小惑星探査機「はやぶさ2」が目的地の「リュウグウ」から20km位置に6月27日ついに到達しました。着陸地点を探索して、10月頃着陸予定です。初代「はやぶさ」では、イオンエンジンによる新しい航行方法を確立しながら、太陽系の起源の解明に繋がる手がかりを得ることを目的に、小惑星イトカワのサンプルを少量ですが持ち帰りました。今回「はやぶさ2」では「はやぶさ」で培った経験を活かしながら、太陽系の起源・進化と生命の原材料物質を採取・解明するため、地球からの距離約2億8000万km 離れたC型小惑星「Ryugu」(リュウグウ)を目指していました。ただし、その航続距離は太陽の周りで大きな軌道を描きながらですので、地球帰還までの往復52億kmという途方もない長旅になっています。

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さて、今月は太陽系の惑星である「水星」を取り上げてみました。

その前に惑星とは何か、以下が02006年に「国際天文学連合(IAU)」で定義された内容です。

1、太陽のまわりを公転していること。

2、自己の重力によって球形になるほど十分な質量を持っていること。より明確にいうと、自己の重力により重力平衡形状になっていること。

3、軌道上の他の天体を排除していること。

したがって、この時に従来「惑星」とされていた冥王星は惑星の定義から逸脱するために「準惑星」とされました。したがって、現時点での太陽の惑星は水星から海王星までの8惑星ということになります。

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太陽からの距離の順の8惑星

前図で分かりますように、水星は太陽の主8惑星の中で最も太陽に近い惑星です。それではその姿、特徴はどのようなものか、調べてみましょう。

[水星-1]最も小さく、クレーターに覆われた惑星

水星の英語名「Mercury(マーキュリー)」はラテン語の「Mercurialis」(古代ローマの神の使い)から由来しています。水星は太陽に最も近い惑星で、地球の月(直径3476km)よりやや大きい程度の大きさ(直径4878km)です。クレーターに覆われた地表の様子も月とよく似ています。これらのクレーターは約46億~40億年前に隕石が降り注いだ跡だといわれています。

一方、水星には比較的に強い惑星磁場と惑星磁気圏が発達していることが判明し、水星の核の大きさは惑星直径の75%に及ぶと予想されています。

また、水星の極地方には多量の氷が存在することも明らかになっています。1991年にカリフォルニア工科大学が行ったレーダー観測により、水星の北極にはレーダーを極端に拡散する地域があることが発見されました。これは、北極のクレーター群の底に氷が存在する有力な証拠とされています。

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水星の表面

[水星-2]巨大なクレーター・カロリス盆地

水星に残る最大のクレーターはカロリス盆地といいます。直径は1300km、水星の直径の4分の1の大きさにもなり、直径100km以上の小惑星がぶつかってできたと推測されています。カロリス盆地のまわりには、2000mにも達するカロリス山脈もあります。これも小惑星がぶつかったときにできたと考えられています。この小惑星衝突の時の衝撃波は、水星内部を伝わり、裏側に山と谷が入り組んだ複雑な地形をつくりました。木星や土星の衛星、月にも、巨大クレーターのその裏側にはこうした地形のあることが知られています。

ほかの珍しい地形にはリンクルリッジと呼ばれる高さ数km、長さ500kmに及ぶ切り立った崖のような地形もあります。これは水星内部が冷え、全体が熱収縮した結果、生じたしわだと考えられています。

次図はNASAが毎日1枚公開している天体写真の中で、「強調された色彩のカロリス盆地」です。水星の上に不規則に広がっているカロリス盆地は、太陽系で最も大きいクレーターの中の1つです。このクレーターは、およそ36億年前に大型の惑星が衝突したことによって作られた。幅は約1500kmもあり、この強調された色彩の写真では黄色で表されています。

この画像のデータは、水星探査機メッセンジャーが本年1月14日に水星に近づいた時のもので、DIS(Mercury Dual Imaging System)装置によって撮影されたものです。

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水星のカロリス盆地(黄色部分)(NASA提供)

このクレーターの周辺にあるオレンジ色の斑点は現在、火口であると考えられていて、水星の滑らかな平野は溶岩流であるという証拠を示しています。

NASAの水星探査機メッセンジャーの任務によって、水星は地球のように内部の大きなコアによる発電プロセスのため発生した惑星規模の磁場を持っていることや、水星の表面が冷却によってかなり収縮したことが分かっています。

[水星-3]水星では一年より長い一日

水星はとても高い密度をもっています。それは内部に水大きな金属の核があるためだと考えられています。

自転周期は地球時間で約59日、公転周期は約88日となります。しかし、水星では1日が1年より長いのです。1日の長さは太陽が南の空にいちばん高く昇る時刻(南中)から、次の南中までの時間を指します。つまり1日を夜明けから次の夜明けとするなら、水星の場合1日の長さが176日となってしまいます。昼の長さがほぼ太陽の周りを回る周期と同じ88日。夜の長さが同じく88日ということです。すると、水星は次の南中までに太陽を2周することになり、水星の1日は水星の2年、地球時間に換算すると176日となります。つまり、水星では1日が1年より長いということになります。

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水星の一年と一日

[ 水星-4] 水星には固有磁場があり、巨大な核をもつ

太陽系内の惑星のなかで地球に次いで密度の高い水星は、その直径の3分の2から4分の3にもなる巨大な核があると考えられています。水星は最も小さな惑星であり、そのため急速に冷えていくため内部は固体であると考えられていましたが、マリナー10号によって微弱ながら水星固有の磁場が発見され、その後の観測より、液体の核をもつ可能性が示唆されています。なぜ水星のような小さい惑星で核が溶けたままいられるのか、大きな謎となっています。今後、水星探査機「メッセンジャー」などの観測によりその謎が明らかにされてゆくことが期待されています。

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水星と他の地球型惑星の内部構造の違い

[水星-5]水星の地殻物質

水星の表面には、鉄酸化物の存在量が他の地球型惑星と比較しても少なく重量比1-3%程度しかありません。これが反射率の高さに繋がっています。代わって、ナトリウム分が多い斜長石や鉄をあまり含まない輝石(頑火輝石)が主に占めています。

[水星-6]水星の大気

水星は重力が小さいため、長く大気を留めておくことはできません。しかし、ごく薄く分子同士の衝突がほとんど無い無衝突大気の存在が確認されています。水星の気圧は10-7Pa(10-12気圧) 程度と推測され、その成分は水素、ヘリウムの主成分に加え、ナトリウム、カリウム、カルシウム、酸素などが検出されています。

この大気組成は一定しておらず、絶えず供給と散逸を繰り返しています。水素やヘリウムは太陽風の粒子を水星磁場が捕捉したものと考えられ、やがて宇宙空間に拡散されてゆきます。地殻で生じる放射性崩壊もひとつのヘリウム供給源であり、ナトリウムやカリウムも地殻起源です。水蒸気も存在していて、これは水星の表面が崩壊して生じたものと、太陽風の水素と岩石由来の酸素がスパッタリングを起こして生成されるもの、永久影にある水の氷が昇華して発生するものがあります。探査機メッセンジャーによる水の存在に関連するO+、OH-、H2O+などのイオン発見は、驚きをもって受け止められました。これら発見されたイオンの量から、科学者らは水星の表面は太陽風に吹き晒されている状態にあると推測しています。

[水星-7]水星の温度

表面の平均温度は 179℃(452K)ですが、温度変化は-180℃から973℃におよびます。水星は公転と自転が共鳴しているため、近日点において特定の2箇所が南中を迎え最高温度の973℃に達します。この場所は「熱極」と呼ばれ、カロリス盆地とその正反対側が当たります。遠日点では230℃程度になります。日陰部の最低温度は平均-160℃ほどです。太陽光は地球の太陽定数の4.59-10.61倍に相当し、エネルギー総計では 3,566W/m2となります。

このような高温に晒されながら、水星にはの存在が確認されています。に近く深いクレーターの中には太陽光が当たらない永久影となる部分があり、温度が-170℃以下に保たれています。これは1992年、ゴールドストーン深宇宙通信施設の70m電波望遠鏡と超大型干渉電波望遠鏡群 (VLA)が、水の氷による強いレーダー反射を観測して確認されました。この反射現象は他にも原因が考えられますが、天文学者は水の氷が存在する可能性が最も高いと考えています。2012年6月、メッセンジャーが撮影した極地の画像により、氷が存在する可能性が裏付けられたと、ジョン・ボブキンス大学などの研究チームが発表しました。この氷の量は10×1014-10×1015kg程度であり、堆積物レゴリスが覆うことで昇華から防がれていると考えられます。なお、地球の南極に存在する氷は4×1018kg、火星の南極には10×1016kg程度の水の氷があると言われています。したがって、地球の氷の1/1000程度ですが、それでも結構な量の氷であるといえます。水星の氷の起源は不明ですが、彗星の衝突もしくは水星内部からの放出で生まれたという説が有力です。

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NASA の水星探査機メッセンジャーと水星(想像図)

以上、今月は「はやぶさ2」の小惑星リュウグウ到着のトピックスと太陽に最も近い惑星「水星」について勉強してみました。

次回は「金星」についてのお話の予定です。ご期待ください。

 

<参考・引用資料>

「知識ゼロからの宇宙入門」渡部潤一、渡部好恵 、ネイチャープロ編集室 発行元:幻冬舎

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「宇宙の秘密がわかる本」宇宙科学研究倶楽部 発行元:株式会社学研プラス

「NASAホームページ」

「ウィキペディア」

「国立科学博物館」ホームページ