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おもしろい宇宙の科学(12)<太陽系-その4(火星)>

今月は水星の次に太陽に近い「金星」のお話の予定でしたが、実は昨日7月31日は、火星が大接近する日でしたので、急きょ「火星」のお話に変更いたします。すでに、弊社ホームページに「宇宙緊急速報」として掲載していますので、こちらも参考にしてください。

[火星-1]火星大接近と観測

真夜中に空が晴れていたなら、南の方角低空にひときわ赤く明るく輝く火星が見えます。7月31日、その火星が地球に5759万キロメートルの距離にまで接近しました。

2003年以来15年ぶりの「大接近」です。天体望遠鏡を使えば、極点のドライアイスなど、普段観察できないような表面の様子が都会でも観察できるかもしれません。

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昨日までは地球と火星は、日増しに距離を縮めてきていましたが、今日から火星は地球から遠ざかり始めています。しかしながら、8月中旬までは火星の観察に適しているということですから、まだ見ていないという読者も間に合いますので是非、観察・観測にチャレンジしてみてください。

国立天文台によると、東京23区内で観察した場合、最も接近する7月31日は、午後7時30分ごろから南東の空で見え始め、午後11時32分ごろに28.5度の高さで南中します。8月15日は、午後7時ごろから南東の空で見え始め、午後10時19分に27.8度の高さで南中します。

大接近している火星の見どころは表面の多彩な模様です。望遠鏡で同じ時刻に観察すると、日々の変化が楽しめます。夏休み中の子供たちや読者の中の天文ファンにとって、格好の「天体ショー」となりそうですね。大接近は、15年から17年に1度の頻度で起こります。次に、火星と地球とが6000万キロ以下の距離に近づくのは、17年後の2035年で、最接近は9月11日です。

[火星-2]火星と地球の公転軌道と周期

火星は地球の1つ外側の軌道をまわっています。太陽を1周する速度(公転周期)は、火星の687日と比べて地球の365日の方が速いので、約2年2ヶ月に1回、地球が火星を追い抜きます。この時、地球と火星が接近します。地球の軌道はほぼ円型ですが、火星の軌道は楕円形をしているので、接近したときの距離は、近いときと遠いときがあり、一定ではありません。明確な定義はありませんが、この距離の違いによって、「小接近」「中接近」「大接近」と呼び方が異なります。今年は、地球と火星との距離が5759万キロメートルと、6000万キロメートルを切る「大接近」となります。

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[火星-3]火星の内部構造と大きさ

火星は地球型惑星に分類されるいわゆる硬い岩石の地表を持った惑星です。火星も地球と同じように中心に主に鉄でできた核(コア)があります。核は直径の半分ほどの大きさで、すべてが液状化しているか、中心部が固体で周りが液状化していると考えられています。火星には、フォボスとダイモスという半径10km程度のジャガイモのようにいびつで小さな衛星が2つあります。

火星が赤く見えるのは、その表面に地球のような水の海が無く、地表に酸化鉄(赤さび)が大量に含まれているためです。直径は地球の半分ほどで、質量は地球の約1/10に過ぎないため、火星の地表での重力の強さは地球の40%ほどしかありません。火星の表面積は、地球の表面積の約1/4ですが、これは地球の陸地の面積(約1.5億km2)とほぼ等しい大きさです。火星の自転周期は地球のそれと非常に近く、火星の1日(1火星太陽日、1sol)は、24時間39分35.244秒です。また地球と同じように太陽に対して自転軸を傾けたまま公転しているので、火星には季節が存在します。

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[火星-4]火星の大気

火星の大気は希薄で、地表での大気圧は約750Paと地球での平均値の約0.75%に過ぎません。逆に大気の厚さを示すスケールハイトは約11kmに達し、およそ6kmである地球よりも高いのです。これらはいずれも、火星の重力が地球よりも弱いことに起因しています。大気が希薄なために熱を保持する作用が弱く、表面温度は最高でも約20℃です。大気の組成は二酸化炭素が95%、窒素が3%、アルゴンが1.6%で、他に酸素や水蒸気などの微量成分を含みます。ただし、火星の大気の上層部は太陽風の影響を受けて宇宙空間へと流出していることが、ソビエト連邦の無人火星探査機のフォボス2号によって観測されています。したがって上記の火星の大気圧や大気組成は、長い目で見ると変化している可能性、そして今後も変化してゆく可能性が指摘されています。

2003年に地球からの望遠鏡による観測で大気にメタンが含まれている可能性が浮上し、2004年3月のマーズ・エクスプレス探査機の調査による大気の解析でメタンの存在が確認されました。現在観測されているメタンの量の平均値は体積比で約11±4ppbです。

火星の環境下では不安定な気体であるメタンの存在は、火星にメタンのガス源が存在する(または、少なくとも最近100年以内には存在していた)という興味深い事実を示唆しています。ガスの生成源としては火山活動や彗星の衝突、あるいはメタン菌のような微生物の形で生命が存在するなどの可能性が考えられていますが、いずれも未確認です。

火星大気には大きく変化する面もあります。冬の数ヶ月間に極地方で夜が続くと、地表は非常に低温になり、大気全体の25%もが凝固して厚さ数メートルに達する二酸化炭素の氷(ドライアイス)の層(極冠)をつくります。やがて、極に再び日光が当たる季節になると二酸化炭素の氷は昇華して、極地方に吹き付ける400km/hに達する強い風が発生します。これらの季節的活動によって大量の塵や水蒸気が運ばれ、地球と似た霜や大規模な巻雲が生じます。このような水の氷からなる雲の写真が2004年にオポチュニティによって撮影されています(次写真)。また、南極で二酸化炭素が爆発的に噴出した跡がマーズ・オデッセイによって撮影されています。

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[火星-5]火星の地形

月の表と裏がまったくちがうように、火星も北半球と南半球では異なっています。北半球の平原は、南半球よりも平均5kmも高く、とても平らです。

地形は多様性に富んでいます。タルシス高原には、タルシス三山という高さ10kmにもなる巨大な火山が3つ連なります。これらは、巨大なマントルの上昇流であるスーパープルームの上昇でできたと考えられています。タルシス高原の西には、高さ25km、すそ野の直径600kmという太陽系最高峰のオリンポス山がそびえ立たちます。この山はおよそ240万年前まで火山活動していたという説もあります。ちょうど地球では人類が猿人から原人へと移り変わるくらいの時代です。

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タルシス高原からは長さ4000km、幅100km、深さ7kmにもなるマリネリス峡谷もあります。この峡谷は水の流れによるものではなく、タルシス三山ができたときに、地殻の仲長とひび割れで生まれたと考えられています。火星の南半球はたくさんのクレーターに覆われていて、月とよく似ています。

[火星-6]火星の川

火星には液体の水が存在した痕跡が多数あります。たとえば水流で砂が堆積した川の跡です。大雨のあとの学校の運動場には、水が流れた筋がたくさん残っていますが、それとよく似たものが火星にもあります。また2004年に火星に着陸した「オポチュニティ」の探査によって湖底に土砂が降り積もってできた「堆積岩」も確認されています。

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しかし、肝心の「液体の水」が火星にはありません。現在の火星は平均気温が0℃をはるかに下回り(-20℃以下)、しかも気圧も低い状態です。気圧が低いと仮に気温が0℃を超えていても液体の水は存在できません。火星にははるか昔には“水”が存在したかもしれませんが、以前とは環境が大きく変わったため存在できなくなった可能性が高いとみられていました。

しかし、そんな常識を覆すような発見がありました。直接発見されたわけではありませんが、「火星で液体の水が存在できる環境」が見つかったのです。

[火星-7]火星の水-1

火星は液体の水が存在するには気温と気圧が低すぎます。しかし、地表付近で水溶液(塩性溶液)としてなら、存在することが可能であることがわかりました。

どのようにして極寒・低気圧の火星に液体の水が存在できるのでしょうか。そのカギを握るのは「過塩素酸塩」という潮解性の物質です。潮解性というのは、大気中から水分を吸収して自分自身を溶かして水溶液になってしまう性質のことを指します。

NASAによると火星表面には過塩素酸塩が存在しており、大気中の水蒸気が溶けるとマイナス70℃でも液体の水が存在できるのだということです。

 

さらに、この水溶液は、地表付近にできた小さな隙間から大気が土壌に入り込み、過塩素酸塩が水分を吸収しただけでも発生します。また過塩素酸塩は赤道付近だけでなく極地方でも確認されているので、火星全土の表面に液体の水が存在する可能性があるといわれています。

火星を探査している探査車キュリオシティには「ローバー・環境モニターシステム(REMS)」という天候観測装置が搭載されていて、キュリオシティの周辺の相対湿度と気温を観測しています。ちなみにキュリオシティが探査している火星の赤道付近では、相対湿度は夏の日の午後に5%、秋冬の夜には100%にもなるのだそうです。

 

またキュリオシティに搭載されているDANという装置で地中の水素濃度を計測していますが、そのデータから見積もられた水の量は、過塩素酸塩が水分を保持していることの裏付けとなっています。

さらにキュリオシティのSAM(大気や岩石を分析する装置)でも大気中の水蒸気の存在が確認されています。

こうした結果から、火星の赤道付近では冬は夜間地表付近で塩水が作られ、昼間暖かくなると水蒸気として大気に戻っていく条件が整っていることが明らかになりました。

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このように、塩素酸塩の水溶液によって火星には日々の水の循環があることがわかりました。

しかしながら、この時点までは探査によって発見したのは、地表面付近に液体の水が存在できるという「状況」であり、水そのものを発見したのではありません。

[火星-8]火星の水-2

火星の水については過去前項までのような観測・探索結果の経緯がありますが、先月驚くべき観測結果が発表され、ついに“火星の水を発見”したようです。

火星の南極にある氷床の下に大量の水をたたえた「湖」が存在する可能性が高いと、イタリア国立宇宙物理学研究所などのチームが7月25日、米科学誌サイエンス(電子版)上で発表しました。「生命が生き残れる環境だ」ということです。さらに7月27日発行の米科学誌サイエンスに論文が掲載されました。

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太陽から平均約2億2800万キロ離れた火星には、地球の約100分の1の大気があり、生命の「材料」とされる有機物も岩石から発見されています。約40億年前は大量の水に覆われていたと考えられ、現在も北極や南極周辺に氷床が残っています。

 

研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)の探査機「マーズ・エクスプレス」が2012~2015年に得た南極周辺の観測データを分析して、電波の反射具合から、厚さ約1.5kmの氷床の下に、水とみられる層が幅20キロにわたって湖のように存在することを発表したのです。

 

水がある氷床の底の温度は-70℃と推定されますが、塩分が濃いことや氷床の圧力がかかっていることで液体のまま存在できているらしいのです。

[火星-9]火星の生物の可能性

液体の水が存在するのであれば、生物も…と読者の方々は期待されるかもしれませんが、残念ながら、温度が低すぎて生物の生存は無理なようだといわれています。

ところが、今まで考えられてきた常識が打ち砕かれた事で、新たな可能性が浮上してきました。それはいわゆる大きな生物の存在は難しいかもしれませんが、「地球の微生物が火星に到達している可能性がある」という事です。

前項での火星の湖を発見したイタリア国立宇宙物理学研究所のロベルト・オロセイ氏は「生命にとって好ましい環境ではないが、水中では単細胞生物などが生き残れる可能性がある」としています。

これまでの長い地球の歴史上、多くの隕石が地球に落下してきました。その時に、宇宙空間へ地球のかけらが投げ出されています。そのかけらが火星の引力によって、隕石となって到達していることが考えられます。となれば、そのかけらに付着している微生物が火星の水のある環境で、生き長らえている可能性もあるのです。地球は、どこを掘っても生物に満ち溢れています。僅かなかけらでも、何万何百万と微生物がいるわけですから、到達していても何ら不思議はありません。

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以上、今月は「火星大接近」のタイミングがありましたので、予定より早く太陽系の惑星「火星」についてお話となりました。読者の皆さん、今夜は南の空に赤く輝く火星を観測・観察してはいかがでしょうか。

 

<参考・引用資料>

「知識ゼロからの宇宙入門」渡部潤一、渡部好恵 、ネイチャープロ編集室 発行元:幻冬舎

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「宇宙の秘密がわかる本」宇宙科学研究倶楽部 発行元:株式会社学研プラス

「NASAホームページ」

「ウィキペディア」

「国立科学博物館」ホームページ