公差って何?これだけは知っておきたい3D CAD知識(その10)


[マイナビニュース2017年1月25日配信]
幾何公差って難しくてよくわからない…
草野多恵
こんにちは。寒い日が続きますが、みなさんお元気でしょうか。私は先週一緒に出かけていた友人が今週インフルエンザ発症と聞き、少しドキドキしている今日このごろです。マスク、うがいは欠かさないようにしたいと思っています。
さて、前回ご紹介したはめあい公差に続いて今回は、幾何公差についてお話したいと思います。設計者の方でも幾何公差は苦手とおっしゃる方が大勢いらっしゃいます。
そもそも幾何公差とはどういうものかというと。「幾何特性仕様 (GPS:Geometric Product Specification) の規格を幾何特性ごとに表現をする公差」のことです。といっても何のことやらさっぱりわからないと思います。
以下に一例を示します。
例えばこのような部品を製作したとします。
しかし実際に切削加工などによってこの部品を作った場合には、どうしても微小にずれが発生します。前回も少し触れましたが、実際にはきっちりと”30.00000…mm”といった大きさに加工することは不可能であり、かつ平面全体を正確に水平に加工できるとは限りません。また、平面が歪んでしまう可能性もあります。
具体的なイメージを図にしてみました。(わかりやすいように極端な例にしています。)
・例1:この方向から見て水平を保ちたいはずの平面が斜めに傾いてしまっている
・例2:平面ではなくなり、歪んでしまっている
このようなズレやゆがみは寸法公差同様、ある程度までは許容する必要がありますが、「最低限この程度までは許容できる」という範囲を数値で示すのが、幾何公差です。
幾何公差の種類と用途を以下に示します。
では、先に例に上げた2つの図のようにならないように制限を設けたい場合の幾何公差設定の例を次に示します。(あくまで一例であり、実際に使用する検査器具や設計の思想によって変わる場合があります。)
・例1の場合
四角で囲んだ“A”というのは、基準となる位置を示します。そして、上側の3つの領域に分かれた記号で、幾何公差を示します。この場合は下側の面が基準となる面です。「この『A』面に対して上面を『平行』に保ちたいのですが、最大限ずれても『0.01』までに押さえてくださいね。」という意味になります。
幾何公差の一覧のうち、「データム表示」に「要」と付いている幾何公差には必ず基準となる面や軸などを示す必要があります。つまり基準に対して相対的に定義するということになります。
・例2の場合
「示した面の『平面度』を『0.1』を超えないように加工してください」という意味になります。
なお、何をもって”0.1″なのかというと、以下の図のような考え方になっています。つまり、本来の設計上の平面の位置に対して、0.1mmまでの範囲に収まっていればOKということです。
以上はほんの一例ですが、実際に加工されてできあがってくる部品の形状は、絶対に理論上の数値どおりには仕上げられないので、寸法公差と同様、形状や位置関係についても許容できる範囲を指示しておくということが重要となります。
ところで、前回も少し書きましたが、製図に関連するJISの項目の内容が、2016年に大きく変わりました。特に寸法の配置方法に大きな変更があります。
従来から設計に携わっている人たちが認識している寸法には、大きく2種類あります。
(1) 形状の大きさを示すための寸法
(2) 形状の配置位置を示すための寸法
このうち(2)に関しては、幾何公差を使用することが推奨されるようになりました。
ただし、すべての位置を示す寸法を幾何公差で表さなければならないわけではなく、普通公差から外れる厳密な公差を設けたい場合に寸法に添える描き方ではなく、幾何公差を使用すべきということです。
以下に例を示します。
寸法表記の一例ですが、従来の手法で描くとこんな感じです。穴の配置位置を厳密に定義するために寸法公差を使用しています。
これを2016年に改定されたJIS規格に従って描くとこうなります。
特に変わったポイントを赤で囲みました。
まず配置位置を示す寸法に公差値を記入せず、「基準寸法」にしています。(寸法値を四角で囲むと「基準寸法」という定義になります。)そして、配置の基準となる平面3ヶ所に「データム(基準位置)」を設けて、そこからの「位置度」という幾何公差によって位置の精密な値を示しています。従来の表現方法では寸法線がどの位置から引き出されているかを読み取らなければいけないので図面を読むスキルが必要になりますが、現在の幾何公差を使用する方法では、A、B、Cの位置を確認すれば済みます。
表現したいことは実は同じです。幾何公差を使用することによって、厳密に位置を指定したい場合にその基準の位置を明確に、そして正確に表現することができるようになります。
とは言え、企業内ではJISを踏まえながら企業内のルールを設定されていたりしますし、こういった図面内での表現というのは言語と同じことなので、発信者と受信者が共通で認識できないと意味が薄れるので、「2016年にJISが変わったから、今日から全部変えないと!!」というわけにもいきません。
しかしこの表現方法は国際的には定番になってきているので、海外に部品製作を発注することがある場合はこれを知っていると知らないとでは雲泥の差になり、ものづくりをする人の国際競争力にも影響が出ることだと思いますので、今すぐ使うことはなくても知っておく必要はあるでしょう。
2016年はこのように大規模な改変があるので、JIS本の中に改定の概要が書かれています。ぜひ、ご一読されることをおすすめします。
ちょっと今回はあまり「今さら」感が出せませんでしたが、逆にこの2016年に改定については特に、知っているだけでも周りの人に自慢できる話です。機会があったら周囲の方に話してみてくださいね。
ではまた次回をお楽しみに!
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