スマホの次は「音声」「視線」 見えない主役の時代


[日本経済新聞電子版2017年1月23日配信]
藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)
例年、年明け早々に、電化製品を中心とする民生機器やその関連技術の大規模な見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」が開催される。その年の電化製品などのトレンドを見通すのに最適なイベントだ。
LG電子はアマゾンの音声操作を組み込んだ冷蔵庫を発表した(米ラスベガス)=ロイター
今年、会場や同時期に行われるメーカー各社の発表を通じて目立ったのは「AI(人工知能)」「自動(運転)車」「VR(仮想現実)」、そして「音声インターフェース」といったキーワードだった。
今年もモバイルの生命線である高速無線回線技術の「5G」は話題に上ったが、昨年までの数年間、イベントの中心だったスマートフォン(スマホ)の存在感がきわめて薄くなった。
消費者が目を向ける主役がスマホである時代は、過ぎ去ったように見える。だが、主役不在かといえば、そうではない。むしろ、スマホを継ぐ次なる主役は「目に見えない」存在へと転じたといえそうだ。
端的な例は「音声インターフェース」だ。その分野で先頭を走る米アマゾン・ドット・コムは、人の声による指示に対して音声で応えたり、あるいはネットワーク上のさまざまな機器を操作したりするインターフェースの「アレクサ」を開発。まず自社の家庭用スピーカー「エコー」に搭載した。
複数の人間(家族)が家庭の照明器具やテレビ、ステレオなどをコトバで操作することから始まり、宅配料理を注文するといった外部サービスとの連携が次々に可能になった。
今年のCESでは、自動車メーカーの米フォード・モーターが車載システムに、LG電子が冷蔵庫に搭載するなど、幅広い民生機器メーカーがアレクサ対応を発表した。以前からあった電化製品が、目に見えないインターフェースの追加でその利用体験を変化させようとしている。
それが音声インターフェースであり、その背後にある人工知能というわけだ。アマゾンは昨年の年末商戦で、同社のエコーをはじめとする「AI家電」の販売が前年比で10倍近くになったと発表している。
ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。
米アップルの「iPhone」が発売から10年の節目を迎えた。スマホの革新的要素は、パソコンの基本だったキーボードとマウスによる操作を、指先による操作で置き換えたことだった。
音声インターフェースはスマホに搭載され、検索をはじめとする各種の操作で、それまでの指先による操作を不要にしつつある。
音声インターフェースだけが「スマホの次」と決まったわけではない。「視線」も可能性を秘めている。たとえば、交流サイト大手の米フェイスブックは、最近になり視線追跡技術のベンチャーのアイ・トライブ社を買収した。
同社はユーザーの視線を追跡し、その結果から電子機器を操作できる技術を持つ。VRや新たな広告表示に応用できそうだ。
「AR(拡張現実)」技術も有望だ。たとえば、ARを用いれば、実際に存在しないモノを机上に表示して操作したりでき、これも新たな市場を広げる可能性がある。
手元のスマホを指先で操作することに縛られていたサービスやメディアの発想を、見えない主役の登場が変えようとしているのかもしれない。
[日経MJ2017年1月23日付]
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