世界初、熱を電気に変換効率100倍 – 1000倍 


[産経ニュース2017年4月24日配信]

理論を実証 阪大・産研、室温発電「1分子熱電素子」実現に期待

1分子接合の熱電計測の様子を表したイメージ図。高温の電極(金色)と低温の電極(青色)のすき間に1分子の熱電素子が接合している(大阪大学産業科学研究所提供)

高温の物質が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換して利用することにより、工場の廃熱を活用するなどして地球環境の保護や省エネに役立てる。このような視点から研究開発が進んでいる熱電素子は、その材料の一方を高温にし、他方を低温にして温度差を付けることによって電圧が発生するという原理を応用している。すでに1977年に打ち上げられた無人宇宙探査機、ボイジャー1号の電池にも採用され、現在も稼働し続けている。

■体温で発電…バイオセンサー電源など期待

ところが、体温で発電するなど幅広い用途で実用化するには、さらに熱電効率を高める技術開発が必要で、それが大きな課題だ。そのため、金属や有機化合物などさまざまな材料の分子の構造を設計したり、薄膜をつくったりする開発研究が盛んだ。さらに最近になって薄膜のような複数の分子の集合体ではなく、他の分子の影響が少ない1分子を単独で使うなら格段に性能の向上を図れることが理論的にわかってきて大きな期待がかかっている。しかし、その性能について実際に実験を行い、具体的なデータで明らかにするという研究に不可欠な手段が見つかっていなかった。

大阪大学産業科学研究所の筒井真楠准教授、谷口正輝教授らの研究グループは、1分子の熱電素子の熱電変換の性能の変化を詳細に測定する実験に世界で初めて成功した。分子と、温度差をつくる電極との接合の状態の影響を調べるもので、その結果、平均値の比較で100倍~1000倍も性能を向上できることが実証され、1分子熱電素子の実現への突破口を拓くことになった。この成果は米科学誌「サイエンティフィックリポーツ」(電子版)に掲載された。

これまでの方法では、1分子の熱電素子を安定な状態で構造を保持しにくいことがネックになっていた。そこで研究グループは、電極にする金の細線を切断して、分子の大きさに相当するナノ(10億分の1)メートルサイズの隙間をつくり、そこに1分子を挟む形で接合するという方法(図参照)を開発した。この方法ではピコ(1兆分の1)メートル以下の精度で隙間の距離を調節できるので、電極と接合した分子との距離を引き離したり、縮めたりしたときに熱電変換の性能がどのように変化するかを調べることで、接合部分の形状による効果を室温で測定できる。

電極と強固な化学結合をつくるイオウ(S)を含んだベンゼンジチオールという有機化合物などを使った実験では、電極と分子の間の距離を離せば離すほど分子の電子の状態が大きく変化し、熱電性能の指標である無次元性能指数(ZT)が100倍~1000倍も向上することが明らかになった。

筒井准教授は「今回の成果で、高性能の1分子熱電素子を開発するために必要な分子設計の手がかりが得られることになります」と期待する。1分子熱電素子は室温で使えるので体温で働くバイオセンサーの電源などの用途が考えられている。

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