希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

モータの基礎と永久磁石シリーズ(3)

【巻線界磁式DCモータ】

下図のようにDCモータ(直流モータ)では磁界を発生させる方法として、永久磁石を使う方法と、巻線(電磁石)を使う方法があります。永久磁石界磁式については先月号でその原理を説明しましたが、今月は永久磁石式ではなく、下図※印のついた巻線界磁式DCモータについてのお話をいたします。実は古くから直流モータは巻線界磁式が広く普及していましたが、近年、急速に永久磁石の高性能化が進んだため、現在では中・小形モータの主流は永久磁石式に移ってしまいました。しかしながら、永久磁石式では設計・製作が難しい工業用大形直流モータに関しては、まだほとんどが巻線界磁式となっていますので、その原理、基本構造を理解しておくことは無駄にはならないと思います。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像301

1.界磁コイル(巻線)

大形DCモータでは、より強い界磁磁束を発生する必要があるため、コイル(電磁石)を使います。そして、コイルに流れる電流を調整することで、発生する磁束量の調整を行なったり、抵抗器で電圧を変化させたりして回転速度やトルクを制御しています。また、コイルを使って界磁磁束を発生させると、電機子に巻かれたコイルとの接続方法によって、性能(特性)の異なるDCモータを構成できます。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像302

2.電機子コイル

大形のDCモータでは、電機子コイルの数を増やして始動トルクを増し、電機子鉄心の形状を円柱に近づけて回転ムラを抑えます。ただし、小形モータのように回転子の突起にコイルを巻きつける方法では、コイルの数を増やせません。そこで、下図のように円柱の電機子鉄心に溝(スロット)を設け、そこにコイルを埋め込んで、回転するコイル(電機子コイル)を作ります。

スロットに埋め込むコイルは、あらかじめ型取りをして巻いておきます。これを型巻コイルと呼びます。型巻コイルは、整流子を通して相互に接続し、電機子コイルを構成します。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像303
モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像304

3.界磁コイルの接続方法と特徴

(直巻モータ)

このモータでは、界磁コイルと電機子コイルを直列に接続します。負荷によって回転速度が変わり、低速では大きなトルクですが、負荷を下げると高速になります。電機子コイルに直列に抵抗を接続し、加える電圧を調整して回転数を制御するか、界磁コイルに並列に抵抗器を接続し、抵抗器へ電流を分流させて界磁電流を調整し、磁束を変化させて回転数を制御します。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像305
(分巻モータ)

このモータでは、界磁コイルと電機子コイルを並列に接続します。負荷が変動しても、回転速度が大きく変化しない特徴があり、このような特性を一般的に分巻特性といいます。

界磁コイルに直列に抵抗器を接続し、界磁電流・磁束を調整して、モータの回転数を制御しています。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像306
(他励モータ)

このモータでは、界磁コイルと電機子コイルを別の電源に接続します。両コイルの電流を個別に制御することによって、広い範囲の速度制御が可能です。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像307

以上、今月は永久磁石を使わない巻線界磁式DCモータについて解説させていただきましたが、磁束を種々制御しながら、モータを効率良く回転させる基本は永久磁石式でも巻線式でも同じです。

さらに詳細な原理、構造を知りたい方は、下記の図書などを参考にしてさらに理解を深めていただきたいと思います。次回からは同期モータ、ブラシレスDCモータなどについて解説いたします。

(参考資料)

「小型モータのすべてがわかる」 見城尚志、佐渡友茂、木村 玄 著 (技術評論社)

「よくわかる最新モータ技術の基本とメカニズム」 井手 萬盛 著 (秀和システム)

「トコトンやさしいモータの本」 谷腰 欣司 (日刊工業新聞社)

「自動車用モータ技術」 堀洋一、寺谷 達矢、正木良三 著 (日刊工業新聞社)

「NeoMagホームページ」