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ネオジム磁石の寿命ってどれぐらい?

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永久磁石として知られているネオジム磁石ですが、本当に永久的に使用できるのでしょうか?ここではもし寿命があるのであればどのくらいなのか、また寿命を延ばすためには使用方法や環境においてどのような点に注意したら良いのかについてご紹介していきます。

 

■永久磁石と呼ばれるネオジム磁石、実際の寿命は?

永久磁石は磁極の向きが固定され、磁力を発生し続ける磁石です。そのなかのひとつであるネオジム磁石は、特に強力な磁力を持っていることで知られています。永久磁石の実際の寿命はどれくらいなのでしょうか?

 

・ネオジム磁石の寿命は100年以上!?

ネオジム磁石に限らず、永久磁石は使っているうちにわずかですが磁力が減っていきます。この現象は減磁といいます。

 

ネオジム磁石の減磁は他の磁石と比べて少なく、年間で-0.1~0.3%程度です。100年経過しても磁石の性能に関わるような減磁は起きにくいです。個体差はありますが、半永久的に使用できるといっても過言ではありません。そのためパソコンや携帯電話、自動車エンジンなどに利用されています。

 

・環境や使い方次第では寿命が大幅に縮まることも

しかし磁石の使用状況や保存する環境が悪いとこの限りではありません。高温状態での使用や衝撃を受けやすい環境での使用した場合、劣化のスピードは速くなる傾向です。このような使用方法は減磁しやすくなるため、ネオジム磁石でも寿命が短くなります。

 

■ネオジム磁石の寿命を縮める主な原因とは

磁石は内部の磁性分子が同じ方向を向いていることで磁力をキープしています。しかし何らかの原因によって分子の列が乱れて向きが変わる場合があります。そうなると磁力は弱くなってしまうのです。ここでは主な原因を4つ紹介します。

 

・自己減磁

磁力は通常N極から出て外界を通り、S極に向かいます。しかし外界に出るよりも磁石の内部を通ってS極に向かった方が近道となるため、その磁石の持つ磁束とは反対向きに磁場が発生してしまいます。この磁場は減磁場と呼ばれ、磁力の低下の原因となる働きがあるのです。

 

減磁界の大きさは磁石の寸法や形状によって異なりますが、薄い磁石ほど強く自己減磁するため、磁力が弱まりやすいとされています。

 

・外部磁界の影響

外部磁界とは、外部から磁石に干渉する磁界です。例えば近くに大きな電磁力を持つ機械や部品がある場合は、その磁界の影響を受けて減磁が発生することがあります。また複数の磁石同士を反発させるだけでも影響は起こります。

 

なぜなら着磁方向と逆向きの外部磁界が加わると、磁束密度が変化して磁力が弱まります。特に保磁力の小さいフェライト磁石などで起こりやすい現象とされています。そのため周辺に磁界を発生させるような装置があるような環境では、フェライト磁石以外の原材料を選定すると良いでしょう。

 

・錆びを含む物理的損壊

破損はもちろんですが、錆びによる組成変化によっても減磁します。

ネオジム磁石は錆び易い磁石材質ですので、防錆としてニッケルメッキを施しております。但し、経年劣化や温度および湿度環境によって、錆びが発生して減磁へと繋がる恐れがあります。

 

・高温による減磁

ネオジム磁石は比較的熱に弱い磁石です。基本的に強磁性の金属は温度が上がると、熱エネルギーによって磁束の密度や保磁力などの特性が変化し磁力を失います。高温で磁石の磁力が減少する事象を高温減磁といい、磁力がゼロになる温度をキュリー温度といいます。

 

キュリー温度の数値は磁石の種類によって異なります。フェライト磁石は約500℃、サマリウムコバルト磁石は約700~800℃ですが、ネオジム磁石のキュリー温度は約330℃と低めです。

高温減磁には、冷やすと磁力が元に戻る「可逆減磁」と、冷やしても磁力が元に戻らない「不可逆減磁」があります。ネオジム磁石は、不可逆減磁を起こす温度も他磁石材質と比較して低めです。そのため高温下での使用には向いていません。

 

※参考として、ネオジム磁石は、低温環境下では磁力が増加します。

低温によって減磁する磁石もあります。フェライト磁石は高温だけでなく低温状態でも減磁が発生します。なぜならフェライトは他の磁石と違い、温度が下がるほど保磁力が低下するという特性を持っているためです。そのためフェライト磁石を-20~-40℃程度の低温で冷却すると、常温に戻した時に元の磁力に戻らなくなります。

 

■ネオジム磁石を長く使う方法

少しでもネオジム磁石の寿命を長くし、正常に使用するためには、日々の扱い方が重要です。ここではネオジム磁石の保管方法について紹介します。

 

1.雨や水蒸気に触れない場所に保管

ネオジム磁石は錆びが発生しやすい性質があります。錆びると減磁しますので、湿気遮断のためにビニール袋などで密封し、雨や水のかからない場所や水蒸気に触れない場所に保管しましょう。

 

2.高温下や特殊な環境を避ける

ネオジム磁石は他の磁石と比べて熱に弱いため、できれば50℃以下の環境で使用や保管してください。また腐食性ガスや酸性、アルカリ性の強いところ、有機溶剤を使用するような特殊な環境も避けましょう。また、加工したばかりの状態で高温の鋼鉄材への使用も同様です。

 

3.磁石の向きに気を配る

複数の磁石を保管する際は、上下左右に関係なくいれるとお互いに反応し合い、磁石の向きが変わる可能性があります。また、破損の原因にもなるので、磁石の向きを揃えてから保管しましょう。

 

4.衝撃が加わらないように注意

衝撃を受けることで割れや欠けが発生するだけでなく、磁石内の磁性分子が乱れて減磁することもあります。保管時は落下する可能性のあるような場所を避けて、地面に置く際などもゆっくりと行いましょう。

 

ネオジム磁石は比較的減磁の少ない磁石ですが、どのような環境でも安定して長く使えるわけではありません。磁石の性能を落とさないためには、使用環境や保管方法に注意して大切に使うことを心がけてください。