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磁石の磁力を遮断する方法とは

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方位磁石やマグネット、磁気カードなど、日常生活の様々なところで役立っている磁石ですが、時にはその力に困ってしまうこともあります。はたして、磁石の力を遮断し、外部にもらさないようにする方法はあるのでしょうか。詳しくご紹介します。

■強い磁性体は磁力を吸収する

例えば、冷蔵庫に紙を貼りつけたい時、紙をマグネットで押さえると冷蔵庫にくっつきますよね。これは磁石から発生する磁気が紙を貫通しているからです。このように磁気は様々な素材をすり抜けて影響を及ぼしますが、中には磁石の力を遮断してしまう素材も存在します。それが強磁性体と呼ばれるものです。

 

磁石から出ている磁力を線で表したものを磁束と言いますが、強磁性体はこの磁束を吸収してしまいます。吸収率がよいため、強磁性体で磁石を取り囲むと、磁石の力は吸収され、強磁性体の外にほぼ出てきません。ちなみに、強磁性体には、外部から手を加えて磁石化するとそのまま永久磁石になる硬磁性体と、磁石の力を加えるのをやめた瞬間に元の状態に戻ってしまう軟磁性体とがあります。一般的なのは軟磁性体の方です。

 

■軟磁性体をもつ素材

・鉄

磁石の力を遮断する、身近な強磁性体と言えば鉄です。鉄は軟磁性体としての性質を持っています。例えば、磁石と鉄をくっつけると、鉄も磁石の力を帯びて釘などを引きつけるようになります。しかし、磁石を鉄から引き剥がせば、鉄は元に戻り、釘を近づけてもくっつくことはありません。これが軟磁性体の特徴でもあります。

 

磁石の遮断方法として鉄が活躍する例としては、例えば磁石を輸送するケースです。鉄で作った箱の中に磁石を入れ、その箱をさらにダンボールで梱包することで、外部に磁気をもらさない安全な輸送方法を確保しています。

 

・パーマロイ

ニッケルを主成分として作られた、パーマロイという合金も、軟磁性体としてメジャーな物質です。パーマロイという名前はそもそも、「透磁率の高い合金」という意味でつけられました。透磁率は磁力をどのくらい吸収、遮断するかの指標としても使われるものです。

 

鉄と違ってパーマロイはあまり聞き慣れないという人も多いかもしれません。パーマロイは主に工業製品で活躍しています。計測器など、精密機器はもちろん、家庭用でも電子レンジやデジタルカメラ、音響機器やブレーカーなど様々な製品にパーマロイが使用されているのです。また、電車や新幹線、リニアモーターカー、自動車など乗り物もパーマロイが使われている代表的な存在です。

 

・センダスト

センダストという合金もまた、透磁率の高い軟磁性体の1つです。センダストはパーマロイの代替として発明されました。パーマロイはニッケルを主成分としているせいで、大量のニッケルが必要になってしまいます。しかし、ニッケルは高価な上、日本では生産されていません。輸入に頼らざるを得ない状態でパーマロイを使い続けるのはリスクが大きく、ニッケルを使わない、透磁率の高い合金が求められていました。

 

そこで研究を重ねた末、仙台で開発されたのがセンダストになります。つまり、センダストは日本の事情から生まれた合金なのです。センダストは、音響機器などの磁気ヘッドや、磁気カードによく使われています。

 

・ケイ素鋼(ケイ素鉄)

軟磁性体である鉄は、そのままでも電気や磁気をよく通しますが、純鉄に少量のケイ素を混ぜ合わせることで、さらにその性質を強めます。こうしてできたのがケイ素鋼(ケイ素鉄)という合金です。ケイ素鋼はパーマロイやセンダストよりも前にイギリスで開発されました。

 

ケイ素鋼の透磁率は、軟鉄の約2倍とも言われています。このように、他の合金に比べて透磁率が高めで、電磁気特性を持っているにも関わらず安価であるという点が、ケイ素鋼の大きな魅力の1つと言えます。そのため、モーターの鉄心やリアクトルなどによく利用されている合金です。

 

■金属を利用して磁気を防いでみよう

・遮断効果を利用した工作方法

このような磁気シールド効果を利用した、子ども向けの工作を1つご紹介します。磁石にクリップや釘などを近づけると、磁石にぴったりと貼りつくはずですよね。しかし、もしこの間に鉄など、磁力を遮断する素材を挟むとどうなるでしょうか。

 

使い捨てのプラコップを2つ重ね、コップの底同士の間へ、板を差し込めるように、少しくりぬきます。その後、コップの底の片方に磁石を貼りつけ、もう片方にクリップなど磁石にくっつくものを入れて、コップの底板2枚越しに磁石でクリップをぶら下げましょう。

 

そして、くりぬいたコップの底と底の間、つまり磁石とクリップが引き合っている間の空間に鉄やアルミ、スチールなど、様々な金属を差し込んでみます。すると、鉄製など強磁性体のものを差し込んだ瞬間、クリップはすとんと落ちるというわけです。夏休みの自由研究などの題材としても、おすすめの工作です。

 

・小さな磁石なら家にあるものでも遮断できる

家庭用のマグネットなど、小さな磁石であれば発する磁気もそれほど強いものではありません。そのため、家にある他のものを利用すれば簡単に磁気を遮断することができます。身近なところでは、お菓子の箱などがよいでしょう。例えば、ブリキの缶がおすすめです。このような磁性体でできた箱の中に磁石を入れて蓋をしめた後、箱の外から磁石にクリップなどを近づけると、磁力が遮断されるためくっつきません。

 

■まとめ

磁石の磁力を遮断する鍵となるのは、鉄をはじめとする強磁性体と呼ばれる素材です。磁石にくっつく素材でもありながら、磁石を遮断する力を持っているというのはなんとも不思議に思えるかもしれません。磁石を保管する時、あるいは輸送する時や処分する時など、磁石の力を遮断したい時は、こうした強磁性体でできた箱を使うとよいでしょう。