希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

ネオジム磁石に含まれるネオジムってどんなもの?

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数ある永久磁石の中でも、特に強力な磁力を持つものがネオジム磁石です。これは、ネオジムと呼ばれる鉱物と鉄などの化合物を磁石の原料としたもので、磁力の強さや安定性などから医療機器やモーター類などに広く使用されています。今回は、ネオジム磁石の主原料の1つであるネオジムについて詳しく見ていきましょう。

 

■レアアースと呼ばれる希土類元素

ネオジム(Nd)とは、元素周期表の60番目に位置する元素で、レアメタルに指定された元素の中の希土類元素(レアアース)の一種とされています。最初に発見は化学者であるウェルスバッハ氏によって1885年に見つけられました。

 

ネオジムの名前の由来は、ラテン語で「新しい」の意味を持つ「Neos」と、ギリシャ語で「双子」を示す「didymos」を組み合わせたネオジジミウムからきています。銀白色をした鉱物で、採取されるときは粘土鉱物に吸着した状態です。ネオジム磁石として鉄やボロンなどと一緒に用いられます。その他の用途として医療用のYAGレーザーに用いられることがあります。

 

■ネオジムを加えると磁石は強力になる

主流の磁石の中では、ネオジム磁石が最も大きな磁力を誇るとされています。この磁力はネオジムを含む希土類元素の特性によるものです。磁石の材料にネオジムを含めることで、鉄原子の磁極を一定方向に固定させ磁力を強めます。

 

■希土類と呼ばれるが実際の存在量は多い

希土類元素(レアアース)は、その名のとおり地球上に存在する鉱物の中でも比較的希少な物質です。石灰などの土類でもあるため、希土類とも呼ばれています。しかし希土類元素は必ずしも希少というわけではありません。ネオジムは、鉛やコバルトといったメジャーな鉱物よりも多く存在していることが判明しています。採取量の多い鉱物であるネオジムは、磁石の材料として次世代産業への応用が期待されているのです。

 

■ネオジムはモナズ石に多く含まれている

ネオジムが多く含まれている鉱物として、モナズ石が挙げられます。モナズ石はリン酸塩鉱物に数えられ、粒状もしくは短柱状で褐色がかった石です。名前の由来はギリシャ語で「孤独」「単独」といった意味を持つ「monazeis」からきているといわれています。一般的なモナズ石は、希土類元素の一種であるセリウムを多く含みますが、ネオジムやランタンの割合が多いモナズ石も一般的です。

 

その場合は、化学組成の示し方に違いがあります。セリウムを多く含むモナズ石は(Ce,La,Nd,Th)PO4、ネオジムモナズ石は(Nd,La,Ce)PO4となります。

 

■ネオジムの確保は今後の大きな課題

今後の工業製品などあらゆる産業において、ネオジム磁石の応用はさらに拡大していくことが予想されます。一方で、原料となるネオジムの確保に関しては課題が生まれているのが現状です。

 

・主な産地は中国

ネオジムをはじめとする希土類元素を含む鉱物の採取は、主に中国で行われています。日本に出回っているネオジムの8割近くは、中国からの輸入です。そのため、生産量の枯渇が懸念されています。また、中国では、ネオジムなどの輸出を管理、制御する動きが高まっており、価格が高騰している傾向です。今後はネオジム磁石の需要を考えた、新たな対策が求められています。

 

・ネオジムのリサイクルが行われている

ネオジムの供給に課題が残る中、リサイクルの動きが注目されています。ネオジムのリサイクルは、磁石の製造過程で排出されるものから高品質なものを利用して磁石の原料に変えます。さらに使用済みのネオジム磁石のリサイクルについても徐々に進められている傾向です。2010年のネオジムリサイクル状況はわずかであったものの、2015年頃より増加傾向にあります。

 

2025年には、国内のネオジム供給量に対してリサイクルの割合が6~10%を超えると予想されています。ネオジム磁石を使用した自動車や電化製品からの回収技術も向上しつつあることから、今後も注目が寄せられています。

 

・新しい磁石の開発も進んでいる

ネオジムに代わる原料を使用した磁石の開発も進められています。2016年には、ネオジムをはじめとした希土類元素を全く使用しない磁石を開発。実用化に成功しました。ネオジムに代わる原料となるNdFe12Nxは、新しい磁石のために人工的に合成された化合物です。この化合物を使用した磁石は、ネオジム磁石と同等の磁気異方性を発揮します。新しい磁石が普及することで資源の枯渇化に対応できるだけではなく、コストダウンにつなげることも可能です。

 

■磁石以外にもさまざまな用途がある

ネオジムは、YAGレーザーの添加物としても用いられています。YAGレーザーとはイットリウムとアルミニウム、ガーネットの結晶を媒体としたレーザーです。これにネオジムを添加したNd:YAGレーザーは主にスポット溶接や彫刻、レーザーメスなどに用いられます。また、ネオジムは超伝導体の材料や防塵ガラスなどにも使用されています。

 

ネオジム磁石の有用性は、技術の進歩によってどんどん高まる傾向です。一方で資源量の限界やコストなどの面を考慮し、ネオジムに代わる磁石の開発も進んでいます。しかし、高い磁力を持つネオジム磁石はこれからも私たちの生活には欠かせない身近な磁石として用いられるでしょう。