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おもしろい宇宙の科学(17)<太陽系-その9(土星)>

12月13日JAXA「はやぶさ2プロジェクト」は9月に「はやぶさ2」探査機から分離して、小惑星表面に着陸し、自律機能による小惑星表面撮像およびホッピング移動に成功した2台のローバ(Rover-1A、Rover-1B)に名前をつけました。2台のローバはもともと「MINERVA-II1」というJAXA のローバプロジェクトで製作された補助探査ロボットです。「はやぶさ2」本体が小惑星「リュウグウ」の地表近傍を観測しにくいために、それを補うミッションになります。

ミネルバ(ラテン語:Minerva)は、音楽・詩・医学・知恵・商業・製織・工芸・魔術を司るローマ神話の女神です。英語読みはミナーヴァ。芸術作品などでは、彼女の聖なる動物であり、知恵の象徴でもある「ふくろう」と共に描かれることが多いようです。そこで、女神の聖鳥が「ふくろう」ですので、「ふくろう」にちなんで名前をつけました。「みみずく」と「ふくろう」は微妙に違うのですが、2台のローバも微妙に違うので、両方の名をつけました。

*Rover-1A は、「みみずく」のフランス語のイブーから
イブー(HIBOU)Highly Intelligent Bouncing Observation Unit

*Rover-1B は、「ふくろう」の英語のアウルから
アウル(OWL)Observation unit with intelligent Wheel Locomotion

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なお、2台のローバの詳細はNeoMagトップページの「宇宙速報」をご覧ください。

それでは今月は太陽系の「土星」について勉強してみましょう。

[土星-1]太陽系の宝石

美しい環(リング)をもつ土星(Saturn)は、太陽系の宝石と呼ばれています。木星に次いで大きなガス惑星であり、中心には岩石や氷の核、その上に液体金属の層が、その外側を液体水素の層が覆っています。太陽系の惑星の中でも最も密度は小さく、水に浮くほどです。一方、扁平率は、太陽系で最も高く、また秒速9.8km という、すさまじい速度で自転するため、上下がつぶれ、赤道面がふくれた楕円形になっているのです。

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太陽系では木星の次に大きい惑星で、地球の9倍もあります。太陽を1mの球だとすると、土星は野球のボール くらいの大きさになります。質量は地球の95倍もあるのに、中はスカスカで水よりも軽いので、プールがあったらぷかぷか浮いてしまいます。実際には上の大気がとても薄く、中心部は岩石や水の核でできています。

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そのほか、地表の温度は平均-180°Cで、太陽から遠い位置にあるので、太陽から受け取る熱は地球の1/100ととても少なく、とても寒い惑星です。気圧は1.3気圧、公転周期は29年、自転周期は10時間39分、現在確定されている衛星は53個となります。

また、土星の大気は水素96%、ヘリウム3%、メタン0.0045%、アンモニア0.0001%となっています。木星に似ている成分です。地球に生命がたんじょうする前の成分にも似ています。

[土星-2] 土星の探査

1980年に「ボイジャー1号」、1981年に「ボイジャー2号」が土星を観測しました。2004年にはアメリカで開発され、1997年に打ち上げた「カッシーニ」が土星に到着しました。このときに土星の8本目の環を見つけました。また、土星の環の中で酸素が急にふえる現象も観測しました。

土星の環は、将来、なくなってしまうのではないか、と考える学者もいます。この観察は2008年6月末まで続き、土星を76回もまわり、7つの衛星に52回接近します。カッシーニから分離した「ホイヘンス」は、土星の衛星タイタンで、大気や温度などを調べています。

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[土星-3]土星の環(リング)

昔、ガリレオ・ガリレイが、性能のよくない望遠鏡を使って土星を見たところ、星の環がよくわかりませんでした。そのため、昔は、土星は「3つの星が集まってくっついている」「耳がある」と考えられていました。土星の白い環は、小さな氷のかけらのようなものでできています。

よく見ると環には、Dリング、Cリング、Bリング、Aリング・・・と8つに分かれていて、さらに細かい線が数多く見えます。これが氷の“つぶ”で、リングによってつぶの大きさが違います。わずかに岩が含まれていますが、土星が誕生したときに、土星に近づきすぎてこわれてしまった衛星のかけらではないかと考えられています。土星の環は幅25万kmもあるのに薄く、内側にゆくほどに薄くできてきます。Aリングで10~30m といわれています。環と環の間は「エンケのすきま」「カッシーニのすきま」といったように、発見した人の名前がついています。

土星はまんまるではなく、少しつぶれて見えます。土星の自転がとても早いのと大気などの性質に関係があるようです。また、自転軸が傾いているため、私たちは、いろいろな角度の土星を見ることになります。そのため、見るたびに土星の環が広く見えたり、細く見えたり、見えないこともあります。

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[土星-4]土星の衛星

現在、発見されている土星の衛星数は全部で65(確定数:53)、このうちタイタンを除くほとんどの衛星は氷からできています。大きさは半径数kmから最大の衛星タイタンで半径2575km、水星とほぼ同じくらいの大きさです。なお、タイタンは生命存在の可能性がある衛星として注目されています。

水の氷で覆われている衛星エンケラドスは、アルベト(反射率)が90%と太陽系で最も高い値を有します。2005年には薄い大気の存在が明らかになりました。半径249km の小さなエンケラドスが大気をとどめておくためには、火山や間欠泉などの火山活動が必要だと考えられています。

ほかにも同じ軌道を回る3つの衛星テチス、テレスト、カリプソや、衝突するほど接近するとたがいの軌道を交換し、衝突を避ける衛星のヤヌスエピメテウスなどユニークな衛星の存在が知られています。

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[土星-5]衛星タイタン

<生命誕生の手がかり>

タイタンは太陽系の衛星の中で2番目に大きい衛星です。大気圧は1.5気圧で、窒素を主成分にした大気をもちます。この大気組成は地球の原始大気に似ています。そのため、タイタンの探査は、原始的な生命や、生命誕生の謎を解く手がかりになると期待されています。地球も、誕生当初は金星や火星のように二酸化炭素が主成分の大気だったと考えられますが、生命誕生後にバクテリアや植物のはたらきで窒素主成分の大気へと変わりました。タイタンの大気中の窒素が何に由来するのか、解明が期待されています。

<タイタンの全容>

土星の第6衛星であり、よく「惑星のような衛星」としても記述され、質量は地球の月よりも50%大きく、半径は80%大きい。木星の衛星であるガニメデに次いで、太陽系では2番目に大きな衛星で、最小の惑星である水星よりも大きいが、質量はそのわずか40%しかありません。オランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスによって1655年によって、土星を公転する衛星として初めて発見され、太陽系全体でも月、ガリレオ衛星に次いで6 番目に発見された衛星です。土星半径の約20倍離れた軌道を公転しており、タイタンの表面から見た土星の大きさは5.09度で、地球から見た月の11.4倍大きな土星を眺める事ができるでしょう。

タイタンは主に氷と岩石から構成されています。宇宙時代以前の金星のように、分厚く不透明な大気によって、タイタンの極地にある液体炭化水素の湖の発見を含む、2004年からのカッシーニとホイヘンスによる探査が行われるまでは、タイタンの表面に関してはほとんど知られていませんでした。山やいくつかの氷の火山が発見されていますが、表面にクレーターはほとんど存在せず、地質学的に若い表面とされています。

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大気の大部分は窒素であり、残りのわずかな成分はメタンとエタンから成る雲や、窒素が豊富な有機煙霧の形成につながっています。また、タイタンには液体メタンの雨が降り、メタンおよびエタンの川が存在すると考えられていました。このことは、カッや湖 シーニ探査により確認されています。風や雨などの気候は、砂丘や河川、湖、海(おそらく液体メタンとエタン)、三角州といった地球と似たような特徴の地形を作り出しています。

地球では水が液体として循環しますが、タイタンではメタンが同じ役割をはたすようです。地球の水循環に似たサイクルをメタンが行います。タイタンにある液体(表面と表面下層)と濃い窒素の大気は、94K(-179.2°C、-290.5°F)という非常に低温の状況下で、メタン循環を起こしています。

<探査機カッシーニ>

カッシーニは2004年7月1日に土星に到着し、レーダーでタイタンの表面の地図を作成する観測を開始しました。欧州宇宙機関(ESA)アメリカ航空宇宙局(NASA)の共同プロジェクトであるカッシーニは大きな成功を収めた。カッシーニは2004年10月26日にタイタンの上空わずか1,200kmを飛行し、肉眼では見えない表面の明暗の斑点の、最高解像度の画像を撮影しました(前観測画像参照)。

2006年7月22日、カッシーニは初めてタイタンを目標とした近接フライバイを行い、タイタンの上空950kmまで接近し、最もタイタンに接近したフライバイは2010年6月21日に行われ、880kmまで接近しました。カッシーニによる探査で。北極付近の湖や海に、大量の液体が存在していることが明らかになったのです。

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<着陸探査機ホイヘンス>

2005年1月14日に、着陸機ホイヘンスはカッシーニから分離してタイタンに着陸し、過去のある時点で流体によって形成されたように見える多くの表面の特徴を発見しました。これによりタイタンは宇宙探査機が着陸した、地球から最も遠い天体となりました。

ホイヘンスは、現在はアディリ(Adiri)と呼ばれている地域の最東端付近に着陸しています。ホイヘンスは、暗い平野に流れ込む暗い「川」を持つ淡い丘を撮影し、現在では丘(高地とも呼ばれる)は主に水の氷から成ると考えられています。太陽からの紫外線によって、大気の上層内に生成される暗い有機化合物が、タイタンの大気から降水として表面にもたらされる可能性があります。これらはメタンの雨により、丘を洗い流され、地質学的な時間スケールを経て平原に堆積してゆくとされています。

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着陸後、ホイヘンスは、水の氷で構成されている小さな岩や小石で覆われた暗い平原を撮影しました。コントラストを強調した画像の中央下にある2つの石は、予想されていたものよりも小さく、左側にある石は長さ15cm、中央にあるのは長さ4cmであり、ホイヘンスからは約85cm離れています。岩の底には侵食の形跡があり、河川の活動による可能性が示されています。表面は元々予想されていたものよりも暗く、水と炭化水素の氷の混合物で構成されています。画像中に見える「土壌」は、炭化水素の雲からの降水によるものと解釈されています。

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<アンモニアを噴き出す火山>

ホイヘンスが得た大気のデータには、火山活動の兆候が現われていました。アルゴン40が検出されたのです。アルゴン40は、放射性元素のカリウムが壊変したもので、ほとんどのカリウムは岩石中に取り込まれるため、地下にしかありません。そのため大気中のアルゴン40は、地下からマグマが噴出した証拠と考えられています。

タイタンの火山からは溶岩の代わりに水とアンモニアが噴き出すといわれています。タイタンは、地球とはまったく異なるシステムをもっていることになります。

2004年に、カッシーニはトルトラ白斑(Tortola Facula)と呼ばれる異常に明るい地形も検出しており、これは氷の火山のドームであると解釈されました。2010年時点で、このような地形は他に確認されていません。2008年12月に天文学者は、タイタンの大気中に天候のパターンだけでは説明できない、一時的ではあるが長時間継続する異常に「明るいスポット」が2つあることを発表しました。

2009年3月に、ホテイ弧状の地形(Hotei Arcus)と呼ばれる地域で、数ヶ月に渡って明るさが変動するように見える溶岩流のような構造があることが発表されました。この変動を説明するために、多くの可能性が示されましたが、溶岩が表面の下から噴出し、表面から200m上まで上昇したとする場合が最も観測結果と一致しています。

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以上で「土星」の話は終了です。次回は「天王星」について勉強してみたいと思います。

<参考・引用資料>

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「NASAホームページ」、「JAXAホームページ」

「Wikipedia」土星、タイタン

「ススムくんの太陽系探検隊」ホームページ