東大、印刷エレクトロニクス技術を用いて極薄で軽量なモーターの作製に成功

[マイナビニュース2017年5月29日配信]

東京大学は、同大学大学院情報理工学系研究科の川原圭博准教授と新山龍馬講師らの研究グループが、印刷エレクトロニクス技術を用いることで、薄くやわらかく軽量なモーターを作製することに成功したことを発表した。この研究の詳細は、シンガポールで開催されるロボットとオートメーションに関する国際会議にて、現地時間5月30日に発表される。

印刷エレクトロニクス技術を用いることで実現した、薄くやわらかく軽量なモーターの原理の図(出所:東京大学Webサイト)

ロボットの関節を曲げ伸ばしするための駆動源は、金属材料や永久磁石を使った硬くて重くかさばる電気モーターが主流となっている。硬い構造材料をやわらかい材料で置き換えた、安全な「ソフトロボット」を目指して、空気でゴム材料を膨張させて駆動力を得る空気圧式モーターが提案されているが、電気制御するためにポンプやバルブが別途必要である。

研究グループは、印刷技術を活用し、電子回路やセンサーなどを製造する「印刷エレクトロニクス技術」を用いることで、薄くやわらかく軽量なモーターを作製することに成功した。

同モーターは、小さな袋に低い温度で沸騰する有機溶剤であるアセトンや3MTM NovecTM 7000などの液体が封入されたもので、低い温度で沸騰する液体が入ったプラスチックフィルムの袋を、導電インク技術を用いて印刷したヒーターで加熱することにより、袋の内部で液体が気化・膨張し、モーターの駆動力を得る仕組みになっている。そして、自然冷却によって繰り返し動作し、ヒーターだけでなく配線やタッチセンサー、アンテナなども合わせて印刷し、モーターとの一体化が可能だということだ。

昆虫の軽量かつやわらかな動作を再現するソフトロボットの応用例を示す蝶々を模した例(出所:東京大学Webサイト)

ロボットの関節を模した駆動実験では、このたび開発されたモーターは、大きさが80mm×25mm、重さは約3gと非常に軽量でありながら、最大約0.1N・mの回転力を発生させ、最大動作角度は90度に達した。

このモーターの作製には、数万円以下の安価な装置と数十分程度の作業時間しか必要とせず、やわらかく薄いという特徴を生かして、工業用途だけでなく家庭や学校教育現場など、さまざまなシーンでの活用が期待されると説明している。

植物のやわらかさをもつソフトロボットの応用可能性を示すタッチセンサーとモーターの一体化によって実現した、ハエトリソウを模した例(出所:東京大学Webサイト)

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東工大、最も高い転移温度を示す鉄系超伝導物質で新たな反強磁性相を発見

[マイナビニュース2017年5月24日配信]

東京工業大学(東工大)は5月23日、鉄系超伝導体中で最も高い超伝導転移温度を示す砒酸水素化鉄サマリウム(SmFeAsO1-xHx)のSmサイトとHサイトへの同位体置換に成功し、新たな反強磁性相を発見したと発表した。

同成果は、東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所 飯村壮史助教、元素戦略研究センター 松石聡准教授、細野秀雄教授、大学院生の岡西洋志氏らの研究グループによるもので、5月15日付けの米国科学誌「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」オンライン版に掲載された。

高温超伝導物質である鉄系超伝導体の超伝導転移温度は、常圧下では SmFeAsO1-xAx(A=H or F)が示す58Kにまで向上しており、これは銅酸化物系を除くと最も高い値となっている。

磁気モーメントや磁気構造を調べるための手段のひとつである中性子回折法は、鉄系超伝導物質の発見当初から用いられてきたが、Smは全元素中でガドリニウムに次いで高い中性子吸収係数を持つため、SmFeAsO1-xAxからの回折中性子数が極端に少なく、その磁性に関しては研究が進んでいなかった。

今回、同研究グループは、吸収の大きい天然のSmを吸収の小さな同位体(154Sm)に置換することで、154SmFeAsO1-xAxの中性子回折および反強磁性構造の決定を試みた。また、同研究グループが開発した水素置換法を適応することで、従来から用いられていたフッ素よりも5倍量以上の電子を注入した物質の作製にも成功したため、その磁気特性も調べた。

この結果、過剰に電子を注入すると、鉄ニクタイド中で最も大きな磁気モーメントを持つ反強磁性相が現れることが明らかになり、より局在化したスピンが高温超伝導の発現に重要であることがわかった。今後、反強磁性相の発現機構を詳細に解析することにより、高い超伝導転移温度を持つ高温超伝導物質の材料設計が可能になると考えられる。

明らかになった154SmFeAsO1-xDxの電子相図(出所:東工大Webサイト)
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すべてを見通すカメラ(下) 顔の一部で人物識別 複数カメラでリアルタイム追跡

[日本経済新聞電子版2017年5月25日配信]

撮影シーンや周囲の状況までを瞬時に把握できる、人間の知性を備えたカメラ技術の開発が活発化している。けん引するのは、市場成長が著しい自動車やドローン、そして監視カメラや産業用ロボットといった非民生分野だ。

監視カメラの分野では、肉眼では見えにくい状況で、カメラの設定を自動調整したり、撮影した画像を見やすく処理したりする製品の開発が盛んになっている。例えば、パナソニックが2017年3月から販売を始めた監視カメラの新製品「i-PRO EXTREMEシリーズ」は、撮影した場面を自動で認識し、人が見やすい画像を撮れるように各種設定を自動調整する機能を備える(図1)。

図1 パナソニックは、さまざまな場面を認識して、見やすい画像を撮れるように各種設定を自動調整する「iA」機能を搭載した監視カメラの新製品「i-PRO EXTREMEシリーズ」を2017年3月から順次発売している。例えば、移動中の自動車のナンバープレートを読める形で撮影するために、シャッタースピードを高める(a)。夜間に、後方車両のヘッドライトに照らされて見えにくくなった車両のナンバープレートの画像を見やすく調整する(b)。暗い場所でも服や自動車の色を識別できるように、明るくかつ低ノイズに画像処理する(c)。逆光時、歩行する人の顔を識別できるように補正する機能も備える(d)。なお、(b)のナンバープレートには一部モザイク処理を施している(写真:パナソニック)

例えば逆光時、歩行する人の顔を識別できるように補正する機能を備える。同社従来品も逆光補正機能を備えていたが、露光時間を短くして撮影した画像と長くした画像の2枚を組み合わせることで、逆光を補正していた。この方法だと、2枚の画像を撮影する間、つまり2フレーム間に対象物が高速移動すると、残像が出てしまう。そこで、1フレーム内で逆光補正を行うようにし、その残像を抑制したという。

次世代の監視カメラシステムに向けては、カメラを意識せずに動いている多数の被写体の顔をリアルタイムに認証する技術や、複数の監視カメラに映った対象人物を追跡するカメラ技術の開発が盛んだ(図2)。

図2 監視カメラ向け画像認識技術の開発競争が活発化している。例えばNECは、4Kカメラでも、同カメラより画素数が少ないフルHDのカメラで撮影した場合と同程度の認識精度と認識速度を維持しながら、数百人規模の群衆での顔認証を実現する顔検出用のハードウエアアクセラレーターを開発した(a)。加えて、同社はフルHDのカメラで撮影した画像から、10m先にいる人の視線の方向を認識できる技術を実現した(b)。日立製作所やキヤノンはそれぞれ、複数の監視カメラにまたがって対象人物を追跡し、その移動経路を地図上に表示する技術を開発している(c、d)

例えばNECは、多数の被写体が映った監視カメラの動画から顔認証を行う技術の開発に注力している。同認証は、カメラの設置場所や画質などの環境条件や被写体の動作条件の影響を受ける。このため、カメラの前に立ち止まり、静止した状態で撮影して行う顔認証よりも高度な技術が必要になる。

そこでNECは、大きく2つの技術を改善した。1つは、顔が部分的に隠れていても、認証できるようにしたこと。状況にはよるものの、目の周辺の特徴量で判別しているので、両目が見えれば認証できるとする。場合によっては、片目しかカメラで捉えられない状況でも、認証できるという。

もう1つは、ディープラーニング(深層学習)の強化である。これにより、顔の向きがカメラに対して正面ではなく、ずれた場合でも認証できるようになった。現状では、正面に対して左右40度ほどずれていても、認証できるという。

現在、フルHDの監視カメラが主流だが、今後は4Kのカメラの導入も進む見込み。顔認証する場合、10画素前後など、ある一定の画素数が必要になる。そのためカメラの画素数が増えるほど、一度に認証できる顔の数を増やすことができる。

ただし、画素数の増大に伴い、顔認証の処理負荷は高まる。そこでNECは、顔の照合前に実施する顔検出に向けてハードウエアアクセラレーターを開発した。同アクセラレーターを利用することで、4Kカメラでも、フルHDのカメラで撮影した場合と同程度の認識精度と認識速度を維持しながら、数百人規模の群衆での顔認証を実現できるという。

■複数のカメラで人物追跡

複数の監視カメラに映った対象人物を追跡する技術に関しては、例えば日立製作所やキヤノンがそれぞれ取り組んでいる。いずれも、複数の監視カメラにまたがって対象人物を追跡し、その移動経路を地図上に表示できる。

日立製作所の技術では、特定の人物の全身画像から特徴量を抽出し、過去に蓄積した特徴量のデータベースと照合することで、その人が映っている画像を、複数のカメラ画像の中から高速に検出する。顔が映っていない人でも識別できるように全身画像を用いた。

今回、見え方が異なっていても同一人物を識別できる特徴量を生成するために深層学習を活用した。具体的には、あらかじめ用意した多数の人物画像を使って、深層学習を適用したニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network )に学習させる。そのDNNに追跡したい人の画像を入力し、中間層の出力を特徴量として使用することで、異なる見え方でも高い精度で識別することに成功したという。

キヤノンも、人物追跡技術の開発を進めている。同社の技術は、全身の服の色と顔でそれぞれ特徴量を抽出した後、特徴を照合することで、特定の人物を同定し、複数のカメラ映像からその人物を発見して追跡するものである。

■高速ビジョンで生産性を高める

FAの分野では、カメラ技術の改善によって、産業用ロボットを高速かつ正確に動作させて生産性を高めたり、人にしかできなかった複雑な作業をロボットに任せられるようにしたりする取り組みが盛んだ。

前者に関しては、東京大学 石川・渡辺研究室が、ソニーグループと共同で新開発した高速ビジョンチップの応用に取り組んでいる。一例が、トレーシング動作への利用である。同動作は、溶接・溶断、シーリング、レーザー加工、塗装・塗布といったさまざまな作業向けロボットで必要になる基本的、かつ重要なタスクである。

従来の方法では、目標軌道に対して教示点を直接教えるため、「高精度化するには低い作業速度になる」「教示作業の負担が大きい」「外部からの不確定要素に対するロバスト(堅牢)性に欠ける」といった課題があった。

こうした課題の解決に向けて、既存の産業用ロボットの手先に、高速ビジョンチップと高速な補償動作を行うアクチュエーターを備えた小型モジュールを外付けすることを想定している。つまり、高速ビジョンチップに対応した新規の産業用ロボットを利用しないというアプローチだ。既存のロボットを高性能にしながら、必要なコストはモジュール分の追加のみで済む。

汎用の産業用ロボットを使って広範囲でおおまかな位置決めを行った後、高速ビジョンチップから得られる画像特徴量に基づくフィードバックで補償機構を動かし、高速かつ高精度に位置決めを行う。これにより、ミリ秒オーダーでμmオーダーの位置制御が可能になるとする。このとき、産業用ロボットに教示するポイントは従来よりも少なくて済むので、教示作業の負荷を軽減できる。

ここで大きな課題になるのが、高速ビジョンシステムのサイズと消費電力である。これまではカメラの他に、グラフィックボードと画像処理(センシング)用のパソコンが必要になる上、消費電力は数百Wと大きかった。

そこで、撮像素子とセンシング用の演算器を1チップ化した高速ビジョンチップをソニーグループと開発。既存の産業用ロボットに1000フレーム/秒のビジョンチップを搭載したカメラと、並木精密宝石の2軸の補償機構を取り付けたシステムを試作し、トレーシングを可能にした(図3)。

図3 東京大学 石川・渡辺研究室のグループは、高速ビジョンチップを搭載したカメラと、2軸の補償機構を産業用ロボットに適用した。同ロボットを利用し、白いボードに描かれた線(目標軌道)の上をなぞって動くデモを見せた。従来の高速ビジョンシステムで用いていたカメラに比べて、ハードウエア構成が簡素になった上、消費電力の低減や軽量化が可能になった。このデモでは、カメラや補償機構を取り付けた産業用ロボットに対して、ラフな教示作業を行ったが、外部カメラを利用することで教示作業を不要にできる(写真:東京大学)

■高速に把持位置を検出

画像認識技術の改善によって、従来は人にしかできなかった複雑な作業をロボットで可能にするための技術開発が進みつつある。例えば、三菱電機と中部大学のMPRG、中京大学のグループは、これまで人間でしか実行できなかった、倉庫内の棚から物を取り出したり、箱から物を取り出して棚に入れたりするロボットシステムを共同開発した。

開発したロボットシステムでは、三菱電機製の垂直多関節型ロボットを利用。加えて、同社の高速な把持位置検出技術で各商品(アイテム)の把持位置を見つける。その後、把持位置周辺のRGB画像を切り出す(図4)。

図4 三菱電機と中部大学、中京大学のグループは、倉庫内の商品棚から物を取り出したり、箱から物を取り出したりするロボットを開発している。2016年6月には、ロボット関連の競技会「Amazon Picking Challenge(APC)」に出場している。APC向けに開発したロボットでは、各商品の把持位置を検出した後、把持位置周辺のRGB画像を切り出す。同画像をCNNに入力し、各把持位置の商品の種類を識別する。この手法を利用することで、54個中、50個を正しく識別できた。識別率は92.5%と高い(写真:中部大学)

同画像だけをCNNに入力し、各把持位置のアイテムを識別する。検出した把持位置だけに認識処理を実行するので、処理負荷を低減しやすく、効率的な識別が可能になる。この手法を利用した結果、識別率92.5%という高い値を達成した。

(日経エレクトロニクス 根津禎)日経エレクトロニクス2017年5月号の記事を再構成]
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すべてを見通すカメラ(上) 人の知性超えるカメラ 車載や監視、FAがけん引

[日本経済新聞電子版2017年5月24日配信]

イメージセンサーや画像処理技術、画像認識技術といったカメラ技術は、これまで人間の眼(視覚)を超えることを目標に進化してきた。今後は、撮影シーンや周囲の状況までを瞬時に把握できる、知性を備えたカメラ技術が開発の主戦場になる。けん引するのは、市場成長が著しい自動車やドローン、監視カメラ、産業用ロボットといった非民生分野だ。

イメージセンサーの世界シェアで首位を独走するソニーグループが、2017年第1四半期に新たな事業部を立ち上げた。それが、監視カメラやドローン、産業用ロボットといった非民生分野におけるセンシング用途に向けたイメージセンサーを手掛ける、ソニーセミコンダクタソリューションズの「センシングソリューション事業部」である。

図1 車載向けイメージセンサー第2世代品の特徴は、LEDフリッカーを抑制しつつ、HDRでダイナミックレンジ110dBを達成できること。加えて、感度も高く、0.1luxという暗い環境下でも撮影が可能とする。自動車の機能安全規格「ISO26262」の「ASIL-C」に対応する(左)。自動車の前方カメラだけでなく、電子ミラー向けカメラへの採用を狙う(右)。同ミラーに利用した場合、後方にある車両のヘッドランプを個別に識別できる水準だという(写真:ソニー)

これまでソニーは、スマートフォン(スマホ)やデジタルカメラといった民生機器向けイメージセンサーに注力し、高いシェアを誇ってきた。加えて2015年には、車載事業部を立ち上げて、車載カメラ向けのイメージセンサーにも力を入れている。

例えば、2017年4月には、同年5月のサンプル出荷、2018年3月の量産を予定する第2世代製品を発表した(表、図1)。「LEDフリッカー」と呼ばれるちらつき現象の抑制と、広いダイナミックレンジを両立させた。今後のソニーの車載イメージセンサーの「基盤になる製品」(ソニーセミコンダクタソリューションズ 車載事業部 車載事業企画部 統括部長の北山尚一氏)と位置付ける。

表 LEDフリッカーの抑制と広いダイナミックレンジを実現した、ソニーグループの車載向けイメージセンサー第2世代品の仕様

ここにきて新たに発足させたセンシングソリューション事業部は民生、車載に続く「もう1つ(第3)の柱」(同事業部 事業部長の吉原賢氏)を育てるために発足させた、ソニー“肝いり”の組織である。この事業部で開発するのは、距離や偏光、特徴量などを取得できる、これまでのイメージセンサーとは一線を画すものばかりだ(図2)。

図2 イメージセンサーの金額ベースの世界シェアで首位のソニーグループは、同センサーの新たな用途開拓に向けて新たな事業部を2017年に立ち上げた。それとともに、従来よりも多様な情報を取得できるイメージセンサーを開発している。例えば、さまざまな偏光状態や波長の光を捉えられるイメージセンサー、距離画像センサー、高速なセンシングが可能な高速ビジョンチップなどである(写真:左から2番目と3番目はソニー)

■見通すカメラが求められる

非民生分野のイメージセンサー開発にソニーが注力する背景には、スマホやデジタルカメラの市場成長の鈍化がある。一方で、車載カメラや監視カメラ、産業機器に利用されるマシンビジョン用途の非民生機器の市場は、民生分野のカメラに比べて高い成長を期待できる。例えば車載カメラ市場の場合、IHS Markit Technologyの調べによれば、2016年の5200万台弱から2020年に約2倍に相当する1億台を超えるまでに成長するとみている(図3)。

図3  IHS Markit Technologyの調べによれば、2016年に5200万台弱だった車載カメラは2020年に1億台を超えるという。2016年から2022年は、年率平均18%程度のペースで数量が伸びるとみている(図:IHS Markit Technologyのデータを基に日経エレクトロニクスが作成)

成長分野として期待を集める非民生分野において、イメージセンサーや画像処理技術、画像認識技術といったカメラ技術に求められるのは、人が見たままの画像を撮影したり、見た目にきれいな画像を表現したりする視覚的な機能ではない。撮影したシーンの状況やその意味まで見通すことができる、いわば「知性」を備えたカメラ技術である。

知性を備えたカメラを実現するために、例えばイメージセンサーでは、2次元のカラー画像に加えて、距離や波長、偏光、高速フレームといったさまざま情報を取得するための技術開発が活発化している(図4)。認識の手掛かりになる情報を増やすことで、画像認識を高度化できるからだ。

図4  イメージセンサーや画像処理技術、画像認識技術といったカメラ技術は、これまで人間の知覚を超えることを目標に開発が進められてきた。技術開発のけん引役となる主要なアプリケーションは、スマホやデジタルカメラだった。これからは、自動車やドローン、監視カメラ、FA機器といった産業機器がけん引役となる。そのため、人の知性を超えることが開発目標になる

画像処理では、後段で実行する画像認識が正確かつ高速になるような技術、画像認識では人間を超える状況判断を可能にする人工知能(AI)技術が重要になる。特に最近では、ディープラーニング(深層学習)を適用した画像認識技術の研究開発が盛んだ。

以降では、自動車の先端事例を紹介しよう。

■信号・道路を含む運転シーン全体を認識

自動車分野では、自動運転に向けたセンシング技術の開発が盛んである。ただし、センサーごとに得手・不得手が存在するために、1種類のセンサーだけでなく、複数種類のセンサーを組み合わせる、いわゆる「センサーフュージョン」により完全自動運転を目指す方向が主流になっている。車載センサーとしてカメラが得意とするのは、車両や歩行者などの対象物の識別である。そこで、その識別をより人間の認識に近づける研究が進んでいる。

例えばデンソーは、深層学習を適用したニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network )による画像認識に力を入れている。DNNの適用により、人や自動車のみならず、信号や道路などを含む運転シーン全体を認識できる(図5)。画像の画素ごとに、どのクラスのオブジェクトに属しているのかをラベリングする「セマンティックセグメンテーション」が可能になる。

図5 デンソーは、センサーごとに得手・不得手があるので、安全性の向上や自動運転にはセンサーフュージョンが必要とみる(a)。カメラの場合、車両や歩行者などを識別しやすい特徴がある。加えて、画像認識技術の改善も図っている。その方策として開発に力を入れているのが、ディープラーニングを適用したニューラルネットワーク(DNN)である。DNNにより、運転シーン全体を認識できるようになり、自動運転時に求められる「走行するためのフリースペースの認識」や「歩行者や自動車の動き予測」などを実現しやすくなる(b)(図:デンソーの資料を基に日経エレクトロニクスが作成)

現行の市販車に搭載されている車載カメラシステムでは、個々の自動車や人、白線などを認識している。こうした個別の認識に比べて、運転シーン全体を認識することで、その結果から「事故を予測して未然に防ぐなど、人に近い振る舞いが可能になり、安全性が高まる」(デンソー)とみている。

■骨格検出と顔向き推定をリアルタイムに

自動運転で求められるのは、周辺を捉えるカメラ技術だけではない。車内カメラでも、高度な認識が必要になる。例えば「レベル3」相当の自動運転では、自動車側で自律運転ができない状況になった場合に、人手による運転に切り替える必要がある。このとき、運転手がうたた寝をしていたり、本を読んでいたりすると、スムーズな切り替えが難しい。そこで、運転手の状況をリアルタイムに把握する必要がある。その実現に向けた画像認識技術の研究開発も盛んである。

運転手の状況を高い精度で把握するには、深層学習を適用した「畳み込みニューラルネットワーク(DCNN:Deep Convolutional Neural Network)」が向く。だが、処理負荷が大きくCPU(中央演算処理装置)でのリアルタイム処理が難しい、タスクごとに個別のDCNNを用意しなければならない、といった課題がある。

そこで中部大学工学部の「Machine Perception and Robotics Group (MPRG)」は、1つのDCNNにIR(赤外線)画像と距離画像を入力することで、運転手の骨格検出と顔向き推定の2つのタスクを実行できる手法を開発した(図6)。2つのタスク向けにそれぞれDCNNを用意し、計2つのDCNNを別途実行する場合に比べて、2つのタスクを1つのDCNNで実行する方が演算負荷を軽減できる。

図6 1つのCNNで骨格検出と顔向き推定を同時に実行。中部大学工学部の「Machine Perception and Robotics Group (MPRG)」は、ディープラーニングを適用した畳み込みニューラルネットワーク1つで運転手の骨格検出と顔向き推定を実行できる手法を開発した。同手法をGPU、あるいはCPUで実行すると、いずれの半導体でも、骨格検出と顔向き推定にそれぞれニューラルネットワークを用意する場合に比べて処理時間を約半分にできる(図:MPRGの資料を基に日経エレクトロニクスが作成)

実際、今回の手法をGPU(画像処理半導体)、あるいはCPUで実行したところ、2つのタスク向けにそれぞれDCNNを用意する場合に比べて、骨格検出はほぼ同等の認識精度、顔向き推定はやや劣る精度で、2つのタスクの合計処理時間を約半分にできた。

CPUの場合でも34.1ミリ秒と、30フレーム/秒弱の撮影であればほぼリアルタイムに骨格検出と顔向き推定を実行できる水準である。

(日経エレクトロニクス 根津禎)
[日経エレクトロニクス2017年5月号の記事を再構成]
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室温で動作する生体磁場検出用センサで従来素子の1500倍の出力 – 東北大

[マイナビニュース2017年5月22日配信]

東北大学は5月22日、室温で動作する、高感度・高分解能の強磁性トンネル接合(MTJ)生体磁場センサの高出力化に成功したと発表した。高出力が期待できる新材料および新素子構造を適用することにより、従来のMTJセンサと比較して、1500倍の出力向上を実現しているという。

同成果は、東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻 安藤康夫教授らのグループによるもので、5月22日~23日に行われる「Biomagnetic Sendai 2017」の本会議およびそのサテライトミーティングにおいて論文発表される。

MTJ素子は、厚さ数nm以下の絶縁体あるいはトンネル障壁を2枚の強磁性体の電極で挟んだ構造をしており、心磁計、脳磁計への応用が期待されている。MTJ素子を利用したセンサは室温動作が可能であり、密着型で小型化できるという点がメリット。加えて、MTJ素子の出力は素子の大きさに依存しない、すなわち微細に加工しても感度が劣化することがないため、センサ素子を体表面に密着させ、素子の占有密度を向上させることで、空間分解能を向上させることが可能となる。

同研究グループはこれまでに、低ノイズのMTJ素子と低ノイズ回路を開発することにより、MTJセンサで測定したデータを数百回積算することで、心臓磁場の検出に成功していた。しかしながら、心磁場をリアルタイムで計測する、または、より微小な脳磁場を検出するためにはセンサの感度が大幅に不足していることが課題となっていた。

今回の研究では、新材料開発、集積化技術の向上、磁束収束構造の適用により、従来センサ素子の1500倍に及ぶセンサ出力上昇を達成。これまでに開発を終えている低ノイズアンプと同素子を組み合わせることにより、約15倍の感度向上が期待できる。これは、心磁図測定に際してデータを繰り返し積算する必要がなく、リアルタイムで計測することが可能な感度となる。

また、同技術を用いることで、超低磁場室温核磁気共鳴(NMR)の観測にも成功した。現段階ではプロトンの磁気共鳴信号の観測のみであるが、同研究グループは、今後、MTJセンサを使用した画期的な磁気共鳴画像診断法(MRI)の実現へとつながる可能性があると説明している。

MTJセンサを用いた室温心磁計・脳磁計の概念図 (出所:東北大Webサイト)
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地磁気逆転の痕跡 千葉に、 77万年前の地層から発見

[日本経済新聞電子版2017年5月14日配信]

方位磁石のN極は北を、S極は南を示す。当たり前のようだが、過去には逆を向く時代が何度もあった。地球の磁場(地磁気)が、長い歴史の中で逆転を繰り返してきたからだ。最後の逆転が約77万年前に起きたことを示す痕跡が千葉県の地層で見つかり、日本の研究チームは「チバニアン(千葉時代)」の命名を目指し、5月末に国際学会に申請する予定だ。 

初夏の強い日差しの下で、涼しげな川のせせらぎが響きわたる。東京から鉄道で2時間あまり。房総半島を南下し、最後は30分ほど歩いて千葉県市原市を流れる養老川にたどりついた。目当ては川岸の崖に露出する「千葉セクション」と呼ばれる地層だ。

この地層には磁石の性質を持つ鉱物が含まれ、地磁気の変化の歴史を刻む。国立極地研究所と茨城大学などは付近を調べ、火山灰の精密な年代測定から「最後の地磁気逆転」が約77万年前に起きたことを突き止め、2015年に発表した。従来は約78万年前と考えられていた。国際的評価が固まるまで時間がかかる可能性はあるものの「逆転の時期がより正確にわかった」と茨城大の岡田誠教授は話す。

千葉セクションはかつて海の底にあったが、地震活動などで隆起し、現在は地上でその姿を見ることができる。地層中には鉱物や火山灰のほか海洋プランクトンの微化石など、貴重な資料が詰まっている。こうした場所は世界にもほとんど存在しないという。

研究チームの成果が注目されるのは、千葉の名を冠した地質年代の誕生につながる可能性があるためだ。地質学では生物の生息状況や気候の変化に応じて、約46億年に及ぶ地球の歴史に115の区分を設けている。時代の境界がよくわかる地層をもとに、年代名を定めるのが通例だ。

約258万~約1万年前までの「更新世」と呼ばれる時期は4つの時代に細かく区分されている。このうちの2つはそれぞれの時代の境界がわかる地層があるイタリアの地名から名前が付いている。該当する地層がなく命名されていない時代の一つが約77万~約13万年前で、これがチバニアンになる可能性がある。

研究チームは千葉セクションを年代名の基準となる候補地として、5月末に国際地質科学連合の専門部会に申請を出す予定だ。認められれば日本の地名が初めて採用されるケースとなる。現生人類ホモ・サピエンスがアフリカに現れたのが約20万年前とされており、「現生人類はチバニアンに出現した」と今後いわれるようになるかもしれない。

ただ、イタリアにも当時の気候などがよくわかる候補地が2カ所ある。日本も植生や気候の状態を示す花粉のデータなどをそろえて対抗する考えだが、これまでの実績などからイタリアが有利との見方もある。来年にも1カ所に絞られる見込みで、千葉の「逆転」に期待がかかる。

地磁気逆転は世界で同時に起こるため「時代の目盛りとしてちょうどよい」と極地研の菅沼悠介准教授は説明する。これまでも地球の歴史や成り立ちを解き明かす上で重要な道しるべとなってきた。大陸や地球表面のプレート(岩板)が移動していることも、岩石の分析などに基づく地磁気の調査ではっきりわかった。地磁気は太陽風などから地球を守る役目も果たす。

では、地磁気はどうして生まれ、なぜ逆転するのか。理解を助ける装置が神戸市の人工島ポートアイランドの神戸大学の施設内にある。陰山聡教授らが仮想現実(VR)の技術を使って作った。

画像が立体的に見える眼鏡を装着すると、目の前に大きな地球が現れる。普通は目に見えない地磁気が可視化され、手を伸ばせば触れられそうな臨場感だ。地球内部の様子ものぞくことができる。

陰山教授は「地球は巨大な発電所だ」と語る。スーパーコンピューターを駆使して地磁気を長年研究してきた。地球深部にある外核は、高温でどろどろに溶けた液体状の鉄でできている。この鉄がらせん状の複雑な対流を起こし、回転によって発電機のように電気を作っているという。

地球の中心付近では西向きにリング状の電流が流れ、巨大な電磁石のように地磁気を生み出している。液体の鉄が起こす対流の複雑な作用によって電流が東向きに変わると、地磁気の南北が逆転すると考えられる。

逆転に至る過程で、この磁石の働きがほぼゼロになる時期があるという。少なくとも過去200年間、磁石の力は弱まり続けてきた。最後の逆転から約77万年が経過しており「そろそろ次が来るかもしれない」との考えもある。「地磁気逆転の仕組みをわかりやすく解明したい」と陰山教授は意気込む。

(生川暁)

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産総研など、元禄型関東地震の再来間隔が最短2000年ではなく500年と発表

[マイナビニュース2017年5月12日配信]

産業技術総合研究所(産総研)は、東京大学大学院理学系研究科の小森純希氏(修士課程2年生)と安藤亮輔准教授、産総研の宍倉正展研究グループ長(理学系研究科兼任教授)らの研究チームが、相模トラフ沈み込み帯では元禄関東地震(1703年)と似たタイプの地震(元禄型関東地震)が、過去約6300年間に少なくとも5回、500~2800年の間隔で起こっていたことを明らかにしたことを発表した。この研究成果は「Earthand Planetary Science Letters」 オンライン版に5月16日に掲載される。

1923年大正関東地震(緑枠)と1703年元禄関東地震(赤枠)の震源域の概要。矢印は今回の調査地域(出所:産総Webサイト)

沿岸の地下で巨大地震が発生すると地面が隆起するため、波打ち際の海底が陸上に現れ、階段状の地形である海岸段丘が形成される。過去の巨大地震は海岸段丘という地形とそれを構成する地層中の化石の年代として記録され、従来、海岸段丘の年代は、試料採取が比較的容易な自然の崖面から得られる化石を用いて推定されてきたが、その正確性はよく分かっていなかった。

同研究チームは、50cm解像度のデジタル地形情報の取得、解析から段丘地形を正確に把握した上で、従来にないちゅう密なボーリング(掘削)調査を行い、地中から多数の地層の試料を採取することで、段丘の地下構造を正確に把握した。得られた地層試料を手作業で丹念に分析することで、地下の地層の重なり方を3次元的に明らかにするとともに、多数の状態の良い貝化石を取り出すことに成功したという。

堆積性の海岸段丘のでき方。波打ち際に貝などの生息する地層が発達する(上)。地面が隆起すると貝などは干上がり土壌などが堆積し段丘構成層を覆い隠す(下)(出所:産総Webサイト)

また、加速器質量分析(AMS)を用いた年代測定により、それらの年代値が高精度で明らかになった。その結果、段丘を構成する地層を明確に同定し、再堆積の影響を見積もることが可能となり、海岸段丘の形成年代をより正確に推定することに成功したという。さらに、50cmという高分解能航空レーザー測量を行い微細な地形構造を解析し、年代測定の結果と統合することで、従来ひとつの段丘面と考えられていた沼I面の中に、もうひとつの段丘面が存在していることも発見したということだ。

こうして得られた海岸段丘の形成年代は、約6300年前、5800年前、3000年前、2200年前、西暦1703年(元禄関東地震)の順となり、元禄関東地震の段丘面(沼IV面)以外の全ての段丘面の年代値が若くなる方向に更新され、得られた年代の間隔は最短で500年、最長で2800年という結果となった。

この結果は、2000~2700年(平均約2300年)間隔とされていた従来の推定値と比較すると、最短の発生間隔が1/4程度になり、ばらつきも大きくなっている。このことは、元禄型関東地震が想定されている間隔よりも高頻度で発生しており、またその繰り返しパターンも規則的ではない可能性があることを示唆しているとのことだ。

千倉地域の海岸段丘の分布とその形成年代。線は過去の海岸線。数値は従来の年代値(上)と本研究で更新された値(下)。(出所:産総Webサイト)

なお、今後の詳細な地形解析から未知の巨大地震による隆起の痕跡が見つかる可能性があり、従来の類型には当てはまらないタイプの地震が検出される可能性も残されているとし、関東地震の繰り返しパターンについては今後も調査・検討が必要だと説明している。

また、従来の海岸段丘の年代値に基づいて行われた国の長期評価については、将来の地震発生確率などの見直しが必要になると考えられるという。今後は調査範囲を広げ、より詳細な過去の地震の発生パターンの解明を目指すとともに、一連の地震発生過程を計算機シミュレーションで再現するなど、定量的研究も進めていくとしている。

ちゅう密ボーリング調査の概念図。それぞれの段丘面について複数箇所のボーリング調査を行い地下に埋没した段丘構成層から試料を採取(出所:産総Webサイト)
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特定の周波数の音でガラスの結晶化が急速に進展する現象―阪大が発見

[マイナビニュース2017年5月11日配信]

大阪大学(阪大)は5月2日、コロイドガラスと呼ばれる材料に対して特定の周波数の音を与えることで、結晶化が急速に進展する現象を発見したと発表した。

同成果は、大阪大学大学院基礎工学研究科 中村暢伴助教らの研究グループによるもので、5月2日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

固体を加熱すると固体中にはさまざまな周波数の原子振動・分子振動が励起され、これらの振動によって結晶化が引き起こされる。したがって一般的に、原子や分子がランダムに配置したガラスを結晶化させる場合は、熱処理が使われる。

コロイドガラスとは、水溶液中において1μm程度の大きさの微粒子が集まってできた集合体。その微粒子は、ガラス内部の原子配置のようにランダムに配置しているが、すべての現象がゆっくりと生じる点が特徴となる。そのため、コロイドガラスでは原子・分子振動に相当する微粒子振動の周波数が低く、既存の装置を使ってアモルファスの結晶化を検証することが可能となる。

同研究グループは今回、この特徴を利用して、周波数を変えながらコロイドガラスに振動を与えるという実験を行った。この結果、今回のサンプルにおいては、75Hz付近の振動が結晶化を急速に進展させることが明らかになった。この現象は、過去に提案されている結晶化理論では説明することができないため、メカニズムの解明が今後の課題となる。

コロイドガラスの結晶化の模式図(上)と実験結果(下)。30、70Hzでは振動を与えても変化がみられないが、75Hzの振動を与えたときのみ短時間に結晶化が進行する (出所:阪大Webサイト)

今回の成果について同研究グループは、音を使って結晶化を引き起こす手法の実現可能性を示すものであり、熱処理にかわる新しい超高強度材料作成手法につながることが期待されると説明している。

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オルドビス紀末大量絶滅の地層から水銀の凝集、大火山噴火が原因か―東北大

[マイナビニュース2017年5月11日配信]

東北大学は5月11日、5大大量絶滅のひとつであるオルドビス紀末大量絶滅を記録した2カ所の地層から水銀の濃集を発見したと発表した。

同成果は、米国アマースト大学 デイビッド ジョーンズ博士、東北大学大学院理学研究科 海保邦夫教授らの研究グループによるもので、5月1日付の米国科学誌「Geology」に掲載された。

5度の生物の大量絶滅のうち、後半の3つの大量絶滅の原因は大方明らかになっているが、最初の2つの大量絶滅は未解明のままとなっている。4億4500万年前~4億4300万年前に起こった最初の大量絶滅では、カンブリア爆発とオルドビス紀大放散を経て形成された珊瑚礁と頭足類、海サソリ、筆石類、三葉虫、腹足類など多様な動物群が大きな影響を受け、科の1/5、属の半数が絶滅した。

オルドビス紀末の生物化石群(出所:東北大Webサイト)

今回、同研究グループはその大量絶滅を記録する中国とアメリカの地層から堆積岩試料を採取し、元素分析を実施。水銀の濃集を発見した。水銀の濃集は、異なる時代の3回の大火山噴火時にも認められており、今回発見された濃集も同様に、大火山噴火によりマントル中に起源を持つ水銀が空高く放出され世界中に堆積したものと考えられるという。

大火山噴火では、成層圏に放出された大量のSO2ガスが硫酸となり地球を覆い、太陽光を反射することで、地球規模の寒冷化が起きる。また、この時期の前後の地球は氷床がない温暖期で、この時期のみ氷床があったことから、それがこの大量絶滅に関係していると考えられていた。したがって今回の発見は、大規模火山噴火が寒冷化を招き、氷床発達と大量絶滅を引き起こしたことを示唆しているものであると言える。

今回の成果から、5度の生物の大量絶滅のうち3度は大規模火山噴火によるもの、1度は小惑星衝突によるものであると明らかになったことで、同研究グループは、残りひとつの大量絶滅の原因の解明が待たれるとしている。

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地球は、どう、動いてる? どこでもサイエンス102/102

[マイナビニュース2017年5月10日配信]
東明六郎
[2017/05/10]

人類はながいこと、地球は動かないという「天動説」を信じていました。一方、現在の私たちは、地球が動いていることを知っています。16世紀にコペルニクスが唱えた「地動説」ですなー。というか「説」ではなく、事実として知っているわけです。じゃあ、地球は、どう、動いているのでしょうか。ざっくりご紹介いたしましょう。

地球は動いている。でも、そのショーコはあるのか? これはなかなか難題です。かつてジョン・レノンによって「fool on the hill(直訳すると”丘の上の馬鹿者”という感じでしょうか)」といわれたガリレオは、「それでも、地球は動いている」と言って、1616年と1636年の2回、友人の! ローマ教皇ウルバヌス8世も参加した異端審問、つまり宗教的にまちがっている発言ケシカラン裁判にかけられ、2回目の裁判のあと、当初は終身刑、後に軟禁を命じられました。

つまり、指定の場所からでるな、ということですな。これ、わりと引きこもり体質な私でもかなりキツイです。まあ、3日で草が生えますな。ガリレオは1642年、つまり蟄居6年目に亡くなっています。失意の果て…でもなかったみたいですが、1564年生まれですから77~78歳…かなり長生きやん…で亡くなっています。

さて、ガリレオはなーんで異端審問にかけられたかというと、まあ、地動説を支持し、それを本に書いたからですな。キリスト教の旧約聖書には、神様が「太陽とまれ」と命令したとかいう記述があって、地球が動くのだとこれとあわないとかいうのがよくある説明です。実際は、口が悪かったので「あいつ、あかんやつや」とチクられたからみたいですね。

さて、その口実をあたえた地動説ですが、ガリレオは、望遠鏡で金星を見て、確信をもったとされています。以下の写真はガリレオのスケッチなんですが、金星が満ち欠けをし、しかもほぼ満月状態が一番小さくなるんですね。これは、地球の周りを金星と太陽がまわる天動説だとありえない照射角度なんですな。えーっという方は、いちおう中学校の理科で習うことなので、考えてみてくだされ。ちょっとした頭の体操になりますよ。

ガリレオによる金星の満ち欠けのスケッチ
(出所:世界天文年2009 Webサイト、(C) Museo Galileo)

さて、その後、遠方の星が周期的に場所を変える、つまり地球が太陽のまわりをまわる証拠が発見され、地動説が正しいことは確定するわけでございます。ただ、それだけで終わりはしませんでした。太陽も動いていたのです。そう、地球や木星など太陽系の星をつれてです。

その動き方を、映像にしたものが数年前に話題になりました。こちらですな。

The helical model – our solar system is a vortex
https://youtu.be/0jHsq36_NTU

実際に、太陽系は地球の公転とほぼ直角に近い方向に動いています。進行方向はおおむね、おりひめ星(ベガ)の方で、ググり用に専門用語を出すと「太陽向点」といわれています。

そして、その動きは、大きくは太陽が銀河系の中を回転するような動きになります。実際には少々上下に波打つような動きでして、だいたい2億年で一周することがわかっています。この銀河系の中を回転というのは、銀河系の中心に太陽がないらしいというのがわかった、20世紀の初頭に考えとしてでてきましたが、実際に確かめたのはヤン・オールトというオランダの天文学者です。宇宙好きの人は、太陽系を取り巻く彗星の巣、オールトの雲の提唱者でもあるというといいですかね。ほかにも、1930年頃に銀河系の回転の研究からダークマターの存在を初めて示唆した人でもありますよ。20世紀で最も偉大な天文学者とされているのですが、まあ、天文ファン以外にはあまり知名度はありません。

さて、地球は太陽のまわりをまわり、その太陽は地球をひきつれて銀河系の中をまわっている。ここまではいいでしょう。でも銀河系そのものも動いているのでございます。

いまハッキリしているのは、銀河系全体が、アンドロメダ銀河という巨大銀河と衝突コースにのっているということですな。一直線にアンドロメダ銀河の方向に突っ走っているってわけです。この衝突については、NASAなどが映像を作っています。

Milky Way – Andromeda Collision Animation
https://youtu.be/mzgGhpAu2_I

ざっと30億年後には衝突するのですが、星どうしは、ほとんどぶつからないとわかっています。ただ、派手にはじき飛ばされたりはしますね。そうなると、それまでの動き方とはまったく違ってしまう可能性だってあります。

さらに、アンドロメダ銀河や銀河系そのものも、全体として銀河のグループを作っていて、それがおとめ座方向にある「おとめ座銀河団」に引き寄せられていることがわかっています。ちなみに、おとめ座は、5月半ばに夜八時、南の方向です。あっちに向かっているのでございますな。

さらにさらに「おとめ座銀河団」は「うみへび・ケンタウルス座超銀河団」に引き寄せられています。よりデカイ軍団の配下というわけですな。おとめ座より、ちょいと南西よりの方向でございます。

そして、さらにさらにさらに「うみへび・ケンタウルス座超銀河団」は、「グレートアトラクター」という1.4億光年離れた巨大な引力限にひきよせられています。

いちおうその様子をしめした絵があります。ハワイ大学のサイトの下の方の緑の絵ですな。
http://edd.ifa.hawaii.edu/

銀河系はMilky way、おとめ座銀河団がVirgo Cluster、グレートアトラクターはGreat Attractorでございます。

しかし、なんですな。地球は太陽のまわりをまわり、太陽は銀河系のまわりを波打つようにまわり、その銀河系はアンドロメダ銀河と衝突しつつあり、その銀河系とアンドロメダ銀河などのグループはまとめて、おとめ座銀河団に引き寄せられ、それがさらにうみへび・ケンタウルス座超銀河団にひっぱられ、さらに、グレートアトラクターにひきよせられる。

いやー、複雑でございます。いっそのこと地球がとまっていたほうが、簡単ですな。神様は簡単なのを好むんじゃなかったのかね(違。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。
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