セルラー通信が起こす革新 – スマートメーターが真にスマートになるとき


[マイナビニュース2016年12月22日配信]
<1> 広がるスマートメーターの活用
スマートメーターは、エネルギーの消費抑制とコスト削減を実現するために世界的に欠かせないツールとなってきています。国内外での傾向として、行政、エネルギー事業者、システムインテグレーター、デザインハウス、OEMメーカーなど複数のステークホルダーが、住宅地や商業・工業地域で電気・ガス・水道といった公共事業にこの新しいテレメトリシステムを展開しています。
このような変化は電力業界から始まりました。従来の検針員による赤外線通信などによる自動検針(Automated Meter Reading:AMR)から、いわゆるスマート検針(Advanced Metering Infrastructure:AMI)への転換が急速に進んでおり、これにより、時間帯によって変動する料金プランの提供などが可能になりました。現在、そうしたスマートメーターの応用範囲は、ガス・水道のメーターや自動配電、さらには電子制御サーモスタット(PCT)などのホームエリア・ネットワーク(HAN)上の機器の遠隔監視など、テレメトリの分野にまで広がっています。
スマートメーターの仕組み。検針員が個別に家々を訪問しなくても、通信により、利用状況のデータを事業者に送信することを可能とする
通信技術の進化と相まって、自動請求やエンドユーザーの使用状況データの生成、そしてメーター機器の改ざんによる不正使用の排除と収益の確保など、消費者と事業者の双方にメリットがもたらされています。また、この技術革新により、業界に新たな可能性がもたらされ、メーター市場のバリューチェーン全体が急速に変わりつつあります。
スマートメーターの導入がもたらすメリットの例
現在、スマートメーターは、電気事業者が停電対策やグリッド電圧の最適化を実装するために使用されたり、水道事業者が水道網の漏水対策を強化するために活用したり、ガス事業者が新しい供給方式を導入する際に使われたりしています。これらの改善は、エネルギー配分の全体的な改善、資源の無駄の削減、高精度なネットワーク配電の制御につながります。つまり、事業者の運用コストが削減され、消費者に還元されるということにつながります。ABIリサーチによると、2020年までに世界中で導入されるスマートメーターの数は、電気メーターが7億8000万台、ガスメーターが1億5000万台、水道メーターが9000万台に達する見込みです。これは大きな市場機会となりますが、実際に実装する際には、各国のエネルギー規制当局による指示に則り、どの通信技術を選択するか、熟考が必要となります。
スマートメーターを実現するためには、なんらかの通信モジュールを搭載する必要がある
 
<2> スマートメーターをワイヤレスで接続する際に必要な前提知識
セルラーによる通信 – 継続的な革新がスマートメーターを産業向けIoTに変える
これまでメーターシステムには、電力線通信(PLC)や各社独自の通信規格、ライセンスの不要なRF帯を使用する無線技術が使用されてきましたが、近年、新しく批准されたセルラー規格が世界的に注目を集めつつあります。
これは各政府がオープンな仕様に基づく技術の使用を義務付けた結果です。事業者も既存のセルラー網を活用することで、大規模に展開する際の総所有コスト(TCO)を削減したいと考えるようになってきています。実際に、独自ネットワークの設計と展開に新たな投資を行わないことで、設備投資(CAPEX)と運用費(OPEX)を削減することができます。これにより、事業者は、プライベート・ネットワークを独自に設計・設置し、その運用や保守にリソースを割く必要がなくなり、中核事業に集中することができます。
オープンなセルラー規格は、特に複数のサービスを提供する事業者に対し、相互運用性、カバレッジエリア、データ通信量、その他の分野で付加価値をもたらします。たとえば、AMIのプラットフォームは、電気・ガス・水道といった複数のメーターシステムを運用する事業者によって利活用されます。また、ゴミの回収、スマートパーキング、都市の環境監視など、自治体で採用されている自動遠隔監視システムとスマートメーターを複数組み合わせる場合にも、同じことが言えます。
このような事案では、独自の無線技術を選択することは、エンジニアに困難を課すことになります。一方で、セルラー通信を採用する場合は、その規格がオープンな仕様に基づくため、スマートメーター機器各種や複数のOEMメーカー間で相互運用性が担保されるという本質的なメリットがあります。したがって、セルラー技術は、ネットワーク設計における複雑な手間の軽減につながり、無線信号の衝突や干渉の回避によるサービス品質を確保するのに有効です。
スマートメーターを設計する上でもう1つ重要なのはセキュリティです。事業者が独自の複雑なネットワークを長期にわたって運用しなくてはならない点を考慮すると、日々進化・多様化していくサイバー攻撃に対応できる、柔軟なセキュリティ対策が求められます。
「どんなシステムも完全に安全だなんて信じない」。1983年のSF映画「ウォー・ゲーム(WarGames)」で主人公が述べたセリフです。これはもはや、SF小説や映画の中だけの話ではありません。今後何百万台ものスマートメーターが導入されて、運用開始から10年、15年以上が経った時、スマートメーターがハッキングされるという最悪の状況を想像することは難しくありません。故障やスマートメーターのファームウェアに対する悪意のある攻撃は、何百万台もの機器を同時にダウンさせ、広範囲にわたって、全国の供給網に大規模な被害を引き起こす可能性があります。
したがって、AMIでは長期にわたってセキュリティを保証する必要があり、そのために、スマートメーター機器ではファームウェア(スマートメーターを制御する組み込みソフトウェア)の無線アップデート(Over-the-air:OTA)ができる事が必須です。ファームウェアが壊れた場合や、安全でなくなった場合は、新しいファームウェアをワイヤレス接続で送信できる必要があります。ワイヤレス接続により、エンジニアを現場に派遣する必要はなくなります。
真のスマートメーターを実現するためにはセキュリティを担保する必要がある
エンジニアの派遣はメンテナンスコストの増大につながるだけでなく、セキュリティ侵害が起こり、数百万台のメーターのアップデートが必要な場合は対応が追い付かず、現実的ではありません。
低帯域幅を利用する省電力無線ネットワークのほとんどは、1日に数百バイトの情報をそれぞれの機器に送信できる程度のダウンリンクレートしか持ち合わせていないので、OTAによるファームウェア・アップグレードは困難です。
<3> 進化し続けるIoT向けセルラー通信規格
一方、もともと携帯電話用に開発され、現在ではセルラーによるM2M技術でもサポートされている、無線ファームウェア・アップグレード(FOTA:Firmware On-the-air)機能を使えば、キャリア・ネットワークを介して効率的にモジュールのファームウェアを更新することができます。
これらのメリットにより、セルラー技術は大規模な展開が進んでおり、メーター・システムにおいては、エンドツーエンドのネットワークを提供しています。住宅および商業ネットワークの大部分では2G汎用パケット無線サービス(GPRS)ソリューションを使用して展開されており、産業用スマートメーターは主に3G技術に基づいています。
事業者が近距離無線プロトコル(ワイヤレスM.Bus 169MHzや自社技術の低消費電力広域無線技術など)をベースとしたポイント・ツー・マルチポイント・ソリューションを導入した場合でも、ローカルのHANにあるデータ収集機から、事業者のデータ管理システムへ接続する際には、セルラー通信が使用されます。
また、セルラー通信は、スマートメーター・ゲートウェイと呼ばれるスマートメーターの通信ハブにも採用されています。これは、AMIの形態の1つで、住宅や商業ビル、マンションの電気メーターまたは独立したゲートウェイ機器と、事業者のバックホールMDMにセルラー通信を介して接続することができ、多くの欧州諸国や日本で展開または計画されている技術です。ゲートウェイ機器は、ISMワイヤレスRF(欧州のW.Mbus 868、日本のWi-Sun 920Mhz、およびZigbee)経由で、家庭内の他のメーターやシステムとの接続に使用されます。
コスト効率が高く、データの転送速度も十分なため、世界中のスマートメーターには2Gおよび3G接続が一般的に使用されてきました。しかし、将来の展開を見据え、事業者のエコシステムはすでに4G LTE接続に移行中です。この移行は2つの要因によるものです。第一の要因は、LTE技術によって提供される製品およびインフラストラクチャの運用期間の長期化です。第二の要因は、AMI向けに帯域幅、遅延および消費電力性能が最適化された、Cat 1、Cat M1、NB-IoTといった新しいLTEの仕様の登場です。
まとめ
実証済みのセルラー通信用モジュールがあれば、製品化までの期間を短縮し、メーター市場における革新的なソリューションを生み出すことが可能になります。LTE Cat 1、Cat M1、NB-IoTは、今後さらにエキサイティングな展開を遂げるでしょう。スマートメーターも同時に進化し、複数の新しいカテゴリのスマートIoTセンサ間で効率的なワイヤレス接続ができるようになるでしょう。これにより事業者は、従来のインフラコストやタイムラインと比較し、より低コストで、より早いペースで新しいビジネスモデルの実証実験ができるようになります。
u-bloxでも、ガス・水道およびスタンドアロン型の電気メーター機器に使用する2G対応モジュールや3G対応モジュール、スマートゲートウェイシステム向けのCat 1/Cat M1対応モジュールといった、スマートメーター・システムをグローバルに実現するセルラー・モジュールの提供を進めてきました。こうしたモジュールは、過酷な温度/湿度/振動のある環境下での動作など、産業用途で必要とされる堅牢性を満たすATEX認定セルラー製品やISO16785に基づいた製造なども提供するなど、高い品質と信頼性の実現に取り組んできたほか、NB-IoTといった先端技術への対応も進めることで、スマートメーターのネットワークやグリッドの設計・運用・保守の簡素化、ならびにスマートメーター導入のTCO削減などへの貢献を目指しています。
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