[磁石付く塗料] 中ペン塗装店 画びょう不要、壁美しく


[日本経済新聞電子版2017年3月07日配信]

冷蔵庫に磁石でいろんなメモをベタベタ貼り付けている家庭は多いだろう。壁に磁石が付けば、もっと広いスペースを使える。創業93年の老舗塗装会社、中ペン塗装店(青森県八戸市)は、磁石がくっつくように鉄の粉を混ぜた塗料を開発し、2016年に特許を取得した。サッと塗るだけで壁が「掲示板」に早変わりする。

開発したのは、クロスやコンクリート、ボードなどの上から塗るだけで磁石が付く磁気吸着塗料。一般の塗料と同じように、ローラーやこて、吹き付けで塗れる。4月にも「マグピタウォール」の商品名で塗装店などに販売する予定だ。

磁石が付く塗料の着想は30年以上前に遡る。きっかけは塗装の仕事で訪れた先々でテープを貼った跡や画びょうの穴で汚くなった壁を目にしたことだ。幼稚園や保育所、老人福祉施設などでは、危険防止のため画びょうを使わない施設も増えつつあった。

「磁石がくっつく壁なら、いつまでもきれいに使えて安全だ」。中村昭則社長はそう思って独自に磁石吸着塗料の開発に着手した。八戸市には金属関係の工場が多い。いろいろな鉄粉を調達しては塗料と混ぜ合わせ、試作品を作っては建築関係の見本市に出展した。来場者からは塗料より壁紙(シート)がいいという意見が多く、まず08年に鉄粉を入れた壁紙シートを「マグピタシート」の商品名で発売した。

さび防止に苦心

だが、本命は塗料だ。技術支援機関の青森県産業技術センター(青森産技)に相談し、10年ごろから同センター八戸地域研究所の佐々木正司機械システム部長(当時同研究員)と共同開発に乗り出した。

塗料に鉄の粉を混ぜるので、普通ならさびの発生が避けられない。さびを防ぐ添加剤を使う必要があった。

どんな添加剤を使うのか。鉄粉と塗料と添加剤の最適な配合割合や重量比は何か。鉄粉の最適な直径は――。鉄粉の種類を変え、混ぜ方を変えては試作を繰り返すなど、完成まで試行錯誤の連続だったという。

特許取得に4年

中ペン塗装店と青森産技は共同研究を経て12年3月、特許庁に特許を共同申請。16年8月に「磁着性塗料用混合物および磁着性塗料」として特許を取得した。磁石がくっつく塗料はこれまでもあった。特許取得まで4年以上かかったのは「配合の仕方が既存製品と違うことを客観的に示すのに苦労したため」(佐々木部長)という。

「マグピタウォール」の価格は未定だが、中村社長は「1キログラムあたり5000円前後する既存品の半分以下にしたい」と話す。自社ブランドでの販売のほか、塗料メーカーに商品化の権利を供与することも検討したいという。中村社長は「私の夢はマグネットの付く壁を世界に広げること」と話している。

(青森支局長 森晋也)

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