世界一 日本の「都市鉱山」


[日本経済新聞電子版2017年4月28日配信]

スマホや家電に金6800トン・銀6万トン埋蔵 五輪全メダル分回収狙う

2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、リサイクルした金などでメダルを作ろうと、4月から携帯電話などの回収を始めた。携帯電話や家電には、金銀銅だけでなく多くの金属が使われ、再利用できれば自然の鉱山を上回る資源になると期待されている。こうした「都市鉱山」に、どれくらいの資源が眠っているのだろう。

小型電子機器の回収ボックスに不要になった携帯電話を入れる人たち(3月24日、都庁)

大会組織委は今月、「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」をスタート。NTTドコモやプロジェクトに参加する全国の自治体を窓口に、携帯電話やスマートフォン、ゲーム機など小型家電の回収を始めた。先行して開始した東京都ともあわせ、リサイクルした金、銀、銅で、五輪とパラリンピックのメダル約5千個すべてを作るのが目標だ。

金銀銅で8トン集める

メダルに必要な量は、ロンドン大会の実績を参考に金が10キログラム、銀が1230キログラム、銅が736キログラムと見込んでいる。ただ加工時のロスなどがあるので実際には4倍程度を用意する必要があり、19年春ごろまでに金銀銅合計で約8トンを集めるとしている。

都市鉱山からのリサイクルによるメダル造りを提案したひとりで物質・材料研究機構エグゼクティブ・リサーチ・アドバイザーの原田幸明さんは「五輪が一般の人たちに都市鉱山を知ってもらうきっかけになれば」と説明する。23日には物材機構が携帯電話などからリサイクルした金などで試作したメダルを一般公開した。

物材機構の試算によると、日本の都市鉱山に眠る金は6800トンと世界の埋蔵量の約16%、銀は約6万トンで約22%にあたる量が存在。国別の“埋蔵量”としてはともに世界一だ。銅も約8%にあたる3800万トンが存在し、2位につけている。

この量は、それぞれ世界全体の需要の3年分前後をまかなえる量に相当する。埋蔵量の評価は探査の進捗状況や市場価格などに左右されて変化するが、都市鉱山の埋蔵量からみると日本は世界有数の資源国といえる。

メダルに使う金銀銅以外にも、都市鉱山の活用が期待される金属は少なくない。鉄などに比べると使用量は少ないが産業的に重要なレアメタルや、一時期、主要な産出国の中国が輸出を制限して価格が高騰した希土類元素(レアアース)はその代表だ。

物材機構の試算では、蓄電池などに欠かせないレアメタルの一種、リチウムは世界の年間消費量の約7年分が都市鉱山に存在。自動車の排ガス浄化装置などに使われているプラチナなど白金族元素は6年分弱が埋まっている。磁石に必要なネオジムなどレアアースも全体で2年半分に相当する量が推定され、リサイクルできれば、いざというときの備えとして有効だ。

携帯電話などに含まれる金属の割合が自然の鉱石より高いことも、都市鉱山の強みのひとつだ。携帯電話などに含まれる金属は、100グラム当たりで合計10グラム程度。大半は銅で、金などの貴金属やレアメタルなどは合わせて1グラム程度だが「自然の鉱石に比べて10倍から100倍くらい割合が高い」と原田さんは説明する。

金の場合、携帯電話などに含まれる割合は0.03%程度。一方、自然の鉱石1トンから採れる量は平均して3~5グラムで、割合は0.0003%程度しかない。産業にも広く利用されている銅は1%前後の鉱石が使われてきたが、最近では0.2%程度と含有率の低い鉱石も利用されるようになってきた。

大量の鉱石を採掘しても取り出せる金属はごく一部なので、掘った鉱石の大半はごみとして捨てられることになる。加えて金属の鉱石にはヒ素や放射性物質などの有害物質が含まれることが少なくなく、その処理も環境上、大きな問題になる。

採掘よりごみ少なく

都市鉱山を利用すれば、大規模な採掘による環境への悪影響や、採掘した鉱石から出る大量のごみや有害物質を抑えることが期待できる。金属のリサイクルに詳しい東京大学教授の岡部徹さんは「コスト面ではまだ自然の鉱石に勝てない金属が多い。しかし環境問題を考えると都市鉱山を使う意味は大きい」と話す。

携帯電話や廃家電から金属を回収するビジネスはすでに存在するが、利益が確保できるのは金などごく一部。その他の金属は、金などを回収する時の副産物として取り出されているのが大半だ。リサイクルのコストを下げる技術開発は欠かせない。

原田さんは「都市鉱山が一般に認知されることで、企業でも取り組みが進めば」と期待する。東京五輪に向けた取り組みは、資源小国と言われてきた日本が変わるきっかけになるかもしれない。

(小玉祥司)
Category: リサイクル, レアアース, レアメタル. Bookmark the permalink.