東大、道路からインホイールモータへの走行中ワイヤレス給電に成功

[マイナビニュース2017年4月05日配信]

東京大学は、同大学大学院新領域創成科学研究科の藤本博志准教授らの研究グループが、東洋電機製造、日本精工と共同で、道路からインホイールモータ(IWM)に直接、走行中給電できる「第2世代ワイヤレスインホイールモータ」を開発し、世界で初めて実車での走行に成功したことを発表した。

走行中給電を行う第2世代ワイヤレスIWM

世界初となる同技術は、クルマのホイール内部に駆動モータを配置するIWMタイプの電気自動車へ、道路に設置したコイルから「磁界共振結合方式」でワイヤレス給電するもの。

電気自動車の「従来のガソリン車などに比べ充電1回あたりの航続距離が短い」という課題をクリアするため、バッテリの搭載量は必要最小限にとどめ、足りない分のエネルギーを道路に設けたコイルから走行中にワイヤレスで送って補う「走行中給電」の実現に向け、世界的に多くの研究が行われている。これまで検討されてきた走行中給電の多くは、道路に設けたコイルから車体の底に装着した受電コイルに電力を送り、車載バッテリへ給電をするものであった。

今回、同研究グループが開発した「第2世代ワイヤレスIWM」は、道路のコイルから車体のコイルへ給電するのではなく、道路のコイルからIWMに直接、走行中ワイヤレス給電するもの。これにより、安全性、環境性、快適性に優れる電気自動車を実現するという。

走行中給電を行う第2世代ワイヤレスIWM

走行中給電では、道路のコイルとクルマの受電コイルの相対位置が走行状況によって変化する。「第2世代ワイヤレスIWM」では、送受電コイルの位置ずれに強い磁界共振結合による方式を採用し、車体に上下運動が生じても道路と受電コイルとの距離は一定に保たれるようになっている。

また、電気自動車は減速時のエネルギーを回収できるうえ、走行中給電が加わるとIWMではエネルギーの出し入れが頻繁に行われることから、IWMに蓄電デバイスを内蔵することで、安定的な動作と高効率化を可能となっている。蓄電デバイスには、大電力を扱うことができ、充放電回数が多くても劣化しにくいリチウムイオンキャパシタを採用している。

さらに、ワイヤレス給電を構成する変換器全てにSiCを採用したのに加え、モータの回転軸とホイールの回転軸をずらした新しい構造のオフセット軸減速機を内蔵したハブ軸受ユニットによって小型化を実現し、1輪あたりのモータ出力が12kW(4輪すべてに装着すると48kW)と、実験車両のベースである市販の電気自動車と同等の走行性能が得られるということだ(実験車両は前輪2輪のみ装着)。また、車載バッテリに走行中給電する方法と比べて1つの道路側コイルから送る電力は小さくできるので、道路側設備の簡易化にもつながるという。

走行中給電コース

なお、走行中給電は、高速道路において走行中給電で得たエネルギーのみで走行したり、車載バッテリを充電しながら走行したり、あるいは、市街地の信号のある交差点付近で給電してIWMにエネルギーを蓄え、発進時の加速エネルギーとして使うといった利用法が考えられる。ほかにも、路線バスや空港・工場といった決まったルートに走行中給電設備を設置して、このルートを走行する車両のバッテリ搭載量を大幅に減らすことも可能となる。同研究グループは、今回提案した走行中給電の新技術が、IWMの普及と実用化の大きな後押しとなり、究極の電気自動車としてクルマ社会の安全・安心や地球環境の保全に貢献することを期待しているということだ。

高効率動作を可能としたエネルギーマネジメント技術
走行中給電コース
カテゴリー: エネルギー, 技術, , 開発 | 東大、道路からインホイールモータへの走行中ワイヤレス給電に成功 はコメントを受け付けていません。

「ムーアの法則、いまだ健在」米インテルが主張

[日本経済新聞電子版2017年4月06日配信]

あらゆる電子機器に組み込まれている半導体の進化はなお続いており、当社は依然として半導体製造技術のリーダーだ――。半導体最大手の米インテルはこう強調した。

■「半導体の集積度は2年で倍増」の法則

半導体の集積度が2年で倍増することを示したグラフ

インテルは「ムーアの法則(同社のゴードン・ムーア名誉会長が1965年に予測した、半導体の集積度は2年で倍増するという法則)」に沿って事業を営んでいる。同社のステイシー・スミス上級副社長はサンフランシスコで開催されたイベントで、回路線幅が10ナノ(ナノは10億分の1)メートル(nm)の製造プロセスへの移行を発表。ムーアの法則は順調だと強調した。

スミス氏は「当社のトランジスタ1個あたりの製造コストはこれまでよりもやや速いペースで下がっている」と表明。「ムーアの法則は健在だ。当社はさらに大きなステップに踏み出しつつあり、業界を3年リードしている」と語った。

半導体業界はこの数十年間、ムーアの法則と共に歩んできた。この進化により、かつては1部屋全体分のコンピューターを駆使していた演算能力が、スマートフォン(スマホ)1台で可能になった。あらゆる産業が半導体産業と同じような進歩を遂げていたら、1ガロンのガソリンで太陽まで行き、1平方キロメートルの土地で世界の全人口を養い、光の速さの300倍で移動できただろう、とスミス氏は話す。

米半導体大手クアルコムは先に、韓国サムスン電子が生み出した10nmのプロセスを新製品「スナップドラゴン835」に採用することを明らかにした。だが、インテルは自社こそが世界最先端の半導体製造技術を持ち、競合他社よりも1世代先を進んでいると固く信じている。

1nmには結晶格子にシリコン原子を4個しか配置できない。10nmのプロセスでは、回路は10nmしか離れていない。ちなみに、ウイルスの大きさは約100nmだ。

米インテルのゴードン・ムーア名誉会長

生産・業務・販売部門の上級副社長であるスミス氏は記者会見で、インテルはリードを奪われてはいないと強調。ライバルによる新たな10nmの製造プロセスは、インテルが3年前に導入した14nmのプロセスと同水準だと一蹴した。

インテルでシニアフェローを務めるマーク・ボーア氏もこのイベントで、ライバルが10nmのチップに搭載できるトランジスタの集積度は、インテルの14nmの集積度と同じだとの見方を示した。インテルは年内に「正真正銘の」10nmチップ発売を計画している。これはつまり、インテルの製造コストは常に30%低いという意味になる。

ボーア氏は「各社は好きなノード名をつけられる。ノード名の意味が失われているという点では、われわれも同意できる」と皮肉った。

半導体工場を新設するには約100億ドルの費用がかかる。工場に設備を備えるにはさらに約70億ドルが必要だ。インテルがこの5年間で製造施設に投じた額は500億ドルに上る。

スミス氏によると、10年前には最先端の半導体工場を保有する企業は18社あった。今ではインテル、米グローバルファウンドリーズ、サムスン電子、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)の4社しかない。

グローバルファウンドリーズの幹部であるアラン・マトリシー氏は声明で「当社に続き、他社も低電力の22nmプロセッサを採用していることをうれしく思う。当社は2年近く前、無線やバッテリー駆動のインテリジェントシステム向けに22nmのFD-SOIプロセス「22FDX」を導入した。プレーナ型やFinFETではなくFD-SOIを選んだのは、性能、パワー、利用分野が総合的に最も優れているからだ。当社のプロセスは生産に適しており、顧客からの引き合いも強い。モバイルやすべてのモノがネットにつながる『IoT』、自動車など急成長している分野で50社以上から積極的な働きかけがある」と述べた。

インテルは世界全体に10万人の社員を抱える。米国では5万人が働き、製造部門の社員は3万人に上る。2011~15年の米国での投資額は70億ドルで、米国内総生産(GDP)に年900億ドル貢献している。

By Dean Takahashi

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

カテゴリー: その他, 開発 | 「ムーアの法則、いまだ健在」米インテルが主張 はコメントを受け付けていません。

カーナビの精度向上へ…「みちびき2号機」公開

[YOMIURI ONLINE2017年4月06日配信]

日本周辺の高精度な位置情報を提供できる準天頂衛星「みちびき2号機」が完成し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センター(茨城県つくば市)で5日、報道陣に公開された。今後、種子島宇宙センターに輸送され、打ち上げを待つ。

準天頂衛星は、軌道が南北方向に傾いており、地上からは天に8の字を描くように見える。この軌道は日本上空に長時間とどまることができ、ビルの谷間や山間部でも電波を届かせやすく、位置情報の提供に適している。2010年に初号機が打ち上げられ、米国の全地球測位システム(GPS)を補完する形で、すでに利用されている。

2号機は本体がマイクロバスに近い大きさで、燃料を含めた重量は約4トン。初号機に比べ、太陽電池パネルなどの性能が向上したという。

国は今年度中に計3基の打ち上げを計画しており、来年春には初号機を合わせ4基体制が実現する。誤差数センチ以内の極めて正確な位置情報が得られるようになる。内閣府の担当者は「スマホやカーナビの精度向上といった身近な分野をはじめ、安全な自動運転の実現、航空輸送や農作業の無人化などの新技術まで、幅広い利用が期待される」と話している。

カテゴリー: その他, 開発 | カーナビの精度向上へ…「みちびき2号機」公開 はコメントを受け付けていません。

窓の閉め忘れをスマホで確認 家庭にもIoT広がる

[日本経済新聞電子版2017年3月16日配信]

あらゆるものがネットにつながる「IoT」を家庭などで使えるサービスが広がっている。室内に取り付けたセンサーの情報をみたり、ネットの情報を基に機器を動かしたり。うまく使えば生活を変える可能性もある。センサーなどの機器開発やネットワーク周辺の環境が整ってきたこともあり、安い価格で使えるサービスも出てきている。

ITベンチャー、ストロボの業天亮人社長

■冷蔵庫の閉め忘れも感知

家の戸締まりをスマートフォン(スマホ)で確認――。IT(情報技術)ベンチャーのストロボ(東京・文京)が提供する「リーフィー」は取り付けたセンサーの状況を基に窓の開閉を感知、センサーと通信することで手元のスマホから窓の開閉が一目でわかる。

センサー本体と磁石の距離が一定の距離より近づいていれば窓は閉まっている、離れていると開いていると判断する。センサーとスマホの通信には近距離無線通信のブルートゥースを採用。窓の開閉のほか、例えば冷蔵庫の開けっ放しを防ぐといった使い方もできる。

4月には外出先からLINEで戸締まり状況を確認できるサービスを始める。センサーと別に中継機器を用意することで、センサーの情報をまとめて通信し、家の外に送れる。LINEのボット機能とも連携しており、チャットの画面でつぶやくと室内のセンサーから戸締まりができているかわかる。

同社の業天亮人社長は「スマートホームが普及しない背景には価格が高い、使い方が難しいといった課題がある」と語る。家の中でネットを使う場面が増えるためには、安価で簡単なサービスが必要だという。サービス価格の詳細は詰めているが、通信するセンサーの個数により980~2000円程度の複数プランを用意する予定。一人暮らしの人でも使いやすい料金も設定する。

スマホで解錠するスマートロック「アケルン」や落とし物を捜せる「マモリオ」など、生活の様々なシーンで使えるIoTサービスが増えている。拡大の背景の一つにはセンサーや通信機能を持つ関連機器が安価に作れるようになっている点がある。

ストロボの場合、センサーは1つ1980円。外から見るための中継機器も5000~1万円程度と手ごろな価格だ。OEM(相手先ブランドによる生産)を使わず、自社で製造工程を管理している。製品開発に関する知見は必要だが、創業間もないベンチャーでも十分に開発できる時代になっている。クラウドファンディングなど資金調達の手段も広がる。

ヤフーのマイシングスではきっかけとなる条件を設定することで様々な動作を「自動化」できる

ネットに接続する家電が増えていることで、幅広い機器やサービスを同時に扱えるIoTのサービスも広がる。ヤフーが提供する「マイシングス」は、アプリから「きっかけ」を設定すると、条件を満たしたときに自動的に「動作」を実行できる。例えば「降水確率が50%以上」のときに「照明を青色に変える」といった過程を「自動化」し、いちいち端末を操作しなくても実現できる。

同社のネットサービスのほか、ネット連携家電などつながる機器やサービスは合わせて50を超える。ハードウエアとネットサービスをつなげるプログラムは非常に難しいイメージがあるが、実は意外と短期間でできるようだ。フィリップスの照明機器「ヒュー」と連携するときは、わずか数カ月で実現したという。

ネットワークとの接続機能の環境が整ってきていることが大きい。ネットにつながる家電の多くは、ウェブサービスと同様、プログラム連携の仕様「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」を開発。「ユーザー認証の仕組みなどはほぼ標準化され、各社が近しい形で開発している」とマイシングスのサービス責任者の中村浩樹氏は説明する。標準となる仕様がなければ技術者が一つ一つのプログラムを接続させるのに膨大な時間がかかってしまう。

野村総合研究所によるとIoT市場は2022年に3兆2000億円と、15年の約6倍に拡大すると予測される。LINEのように普段使うサービスと連携するほか、音声認識のような機能が手軽に使えるようになると、身近なIoTサービスはさらに増えていきそうだ。

(企業報道部 諸富聡)

カテゴリー: その他 | 窓の閉め忘れをスマホで確認 家庭にもIoT広がる はコメントを受け付けていません。

南極の海氷面積、急に減少して史上最小…北極も

[YOMIURI ONLINE 2017年3月27日23日配信]

最小面積を記録した3日の海氷。南極大陸(約1400万平方キロ・メートル)の周辺に約200万平方キロ・メートルだけ残る(NASA提供)

2016年9月1日の南極大陸周辺(NASAの動画から)
昨年8月末、南極大陸の周辺に広がっていた海氷(NASA提供)

【ワシントン=三井誠】米航空宇宙局(NASA)は22日、これまで微増傾向にあった南極周辺の海氷面積が3月3日、1979年の観測開始以来の最小を記録したと発表した。

NASAの研究者は「南極でも地球温暖化の影響がついに表れたのか、年ごとの変動の結果なのか、今後のデータを見る必要がある」と指摘している。

人工衛星で観測した南極周辺の海氷面積は、昨年9月から急減。南半球の夏に当たる今月3日に211万平方キロ・メートルとなり、過去最小だった97年より18万4000平方キロ・メートル小さかった。この減少幅は、北海道(約8万平方キロ・メートル)の面積の2倍を超える。

また、減少傾向が続いている北極周辺でも、年間で最も大きくなった時点の面積が、今冬(3月7日)は観測史上最小を記録。南北両極の海氷面積の合計も2月13日、史上最小となった。

カテゴリー: その他 | 南極の海氷面積、急に減少して史上最小…北極も はコメントを受け付けていません。

理研など、高品質な酸化亜鉛が磁性伝導電子を持つことを発見

[マイナビニュース2017年3月17日配信]

理化学研究所(理研)は3月16日、非磁性半導体である「酸化亜鉛」の伝導電子が、磁石の性質(磁性)を持っていることを発見したと発表した。同成果は、理研 創発物性科学研究センターのデニス・マリエンコ研究員や川﨑雅司グループディレクターらによるもの。詳細は国際科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。

同成果は、理研 創発物性科学研究センターのデニス・マリエンコ研究員、川﨑雅司グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科 教授)、アンドレイ・ミシェンコ上級研究員、永長直人グループディレクター(東大大学院工学系研究科 教授)、サイード・バハラミー ユニットリーダー(東大大学院工学系研究科 特任講師)、マックスプランク微細構造物理学研究所のアーサー・エルンスト研究員、東北大学金属材料研究所の塚﨑敦教授らで構成される国際共同研究グループによるもの。詳細は国際科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。

シリコンやGaAsにMnなどの磁性元素を少量混ぜることで作られる磁性半導体は、電気的に磁性を制御できる不揮発性メモリなどの次世代半導体素子として期待されているが、磁性元素は半導体中の電子を散乱するため、電子の移動速度が低下してしまい、スイッチング速度が低下するという課題があった。

今回、研究グループは、2015年に川﨑グループディレクターらが開発した高品質な酸化亜鉛の単結晶薄膜を元に。酸化亜鉛の伝導電子に磁性を持たせることに挑んだという。具体的には、電子が磁性を担っていると、磁場を加えていないときでも磁化が磁場と同様な働きをし、電子を軌道を曲げ、結果として、試料の端に電子が蓄積される「異常ホール効果」の測定を行ったという。その結果、加える磁場が大きくなるにつれてゼロ磁場からホール抵抗が上昇し、ある大きさの磁場で飽和するという異常ホール効果の振る舞いと一致、伝導電子が磁性を持つことが示されたとするほか、測定されたホール抵抗は、温度が低いほど大きくなること、ならびに磁性元素を混ぜた磁性半導体に比べて、酸化亜鉛中の電子の移動速度は2~3桁高い値を維持できることから、酸化亜鉛が不揮発かつ高速なエレクトロニクス素子応用に有望な材料であることも分かったという。

さらに、観測された異常ホール効果の磁場依存性と温度依存性を理論的解析により検討を行った結果、酸化亜鉛に含まれる少量の結晶欠陥(欠陥)が小さな磁場によって磁性を示し、伝導電子に影響を与えていることが分かったという。これについて研究グループは、従来の非磁性半導体では、このような欠陥のみでは異常ホール効果は観測されず、必ず意図的に磁性元素を混ぜる必要があったが、酸化亜鉛は元々、電子間の反発が強く磁石になりやすい性質があるため、少量の欠陥のみで十分に強い影響を受け、伝導電子が磁性を持ったと考えられると説明している。

なお、研究グループでは、今回の成果について、従来の半導体では困難であった磁性と高速制御の両立という問題に対して、解決の手掛かりを与えるものと考えられると説明しているほか、亜鉛は資源として豊富に存在するため安価であり、酸化亜鉛は無害であるため環境負荷の小さい物質であることから、今後、動作温度の向上やデバイス化を進めることで、現在のメモリ素子の一部を置き換える材料として、低消費電力デバイスへの応用にも期待されるようになるとコメントしている。

カテゴリー: その他, 技術, 開発 | 理研など、高品質な酸化亜鉛が磁性伝導電子を持つことを発見 はコメントを受け付けていません。

中低速リニア、中国で続々 投資額1兆円規模

[日本経済新聞電子版2017年3月08日配信]

中国で時速100キロメートル前後で走る「中低速リニア鉄道」の建設ラッシュが始まった。インフラ建設大手の中国鉄建や鉄道車両世界最大手の中国中車などが推進し、湖南省で年内にも正式営業を開始する。北京市、広東省などの約10都市で建設計画が進み、総投資額は1兆円規模に達する見込みだ。地下鉄に比べて建設費が安く、騒音も小さい。中国政府は国内でリニア鉄道を新たな都市交通網として普及すると同時に、海外輸出もにらむ。

「すーっと動いてびっくりした」。湖南省長沙市の空港と高速鉄道の駅を結ぶリニア鉄道に乗車した上海市の会社員、謝来昇さんは笑顔を見せた。車輪が地上のレールなどと接触することがないため、速度をあげても振動は小さいままだ。

同リニアは中国鉄建や中国中車のグループ会社などが出資する湖南磁浮交通発展が開発し、2016年5月に試運転を始めた。全長約19キロメートルで投資額は43億元(約710億円)。設計最高速度は時速約100キロメートルだが、実際は70キロメートル程度で運行する。今年中に正式営業に乗り出す見通しだ。

中低速リニアの特徴が騒音の小ささだ。同社幹部は「車内の騒音レベルは小声で話す程度で会話に大声が必要ない。モノレールより騒音が小さく、近隣住民の理解も得られやすい」と胸を張る。

自動車の急増により渋滞問題が深刻化する中国で都市交通の整備は急務だ。都市部では地下鉄建設を進めてきたが、地下を掘る必要があるため建設費は1キロメートルあたり5億~8億元と高額になる。一方、リニアは地上の道路上に建設できるため、1キロメートルあたり2億~3億元で建設できるという。

湖南省長沙で試験運転を始めた時速70キロメートル程度で運行するリニア鉄道

中国が独自技術とする中低速リニアは磁石を使って車両を8ミリ浮かせ、前進する。10センチ浮かせる日本方式と異なり、強力な磁石や液体ヘリウムを使う必要がない。「建設費を地下鉄の半分から最大3分の1まで削減できる。鉄道敷設に必要な面積も小さい」と湖南磁浮交通発展幹部は言う。

こうした利点から、中国全土でリニア建設の計画が急拡大している。中国鉄建はリニア建設を加速するため、16年10月に全額出資の中鉄磁浮交通投資建設を設立。広東省清遠市政府と中低速リニアの建設で合意した。全長30キロメートルで投資規模は約100億元。18年末の開業を見込む。

旧鉄道省系の鉄道インフラ建設大手の中国中鉄は120億元をかけて、北京市郊外に全長20キロメートルのリニア建設を進める。年内の開業見通しだ。

中鉄は新疆ウイグル自治区ウルムチ市や、四川省成都市と徳陽市の間でもリニア建設を構想する。中鉄磁浮交通投資建設は「技術を磨き、安全性の確保とコスト低減を進めて、国内各地で実績を積んでいく」と意気込む。

車両メーカーも増産に向けて動きだした。中低速リニアの車両開発や製造を手掛けるのは、中国中車のグループ会社だ。長沙のリニア向けには中車傘下の湖南省の製造子会社が、北京のリニア向けには傘下の河北省の製造子会社が供給する。中国全土のリニア建設計画の具体化に伴い、車両の生産能力を拡大していく方針だ。

<参考:NeoMag通信2013年10月号>

本記事による中国のリニアモーターカーは以下の参考資料の中の“常電導リニア”の技術範疇と推測されます。

*磁気浮上式リニアモーターカー

磁気浮上式リニアモーターカー(磁気浮上式鉄道)とは、磁力の反発・吸引力により浮上し、リニアモーターで駆動する移動車両の総称です。推進にはリニアモーターが用いられ、高速化が可能です。

実用車両では車両側に超電導電磁石、軌道側に通常の電導磁石を使う“超電導リニア”(リニア中央新幹線)と、車両側、軌道側共に通常の電磁石と一部永久磁石を使う“常電導リニア”(ドイツ・トランスラピッド、上海・トランスラピッドなど)があります。その他、読者の皆様が特に関心があると思われます永久磁石を主体とした“永久磁石式リニア”があります。しかしながら、この永久磁石式リニアは、まだ実験小型車両、アトラクション車両などに限って利用されているだけのようです。

これらの磁気浮上式リニアモーターカーは、浮上にも駆動にも磁気を使うので、原理や設備の面から相性が良いのですが、駆動だけでなく浮上 にも新技術を用いるため、技術的ハードルが高く、また浮上式車両であっても、停車・低速時や緊急時のために車輪を装備していることが多いのが特徴です。

カテゴリー: リニア, 開発 | 中低速リニア、中国で続々 投資額1兆円規模 はコメントを受け付けていません。

核融合発電に向け重水素実験開始

[YOMIURI ONLINE 2017年3月08日配信]
モニターに映し出された重水素のプラズマ

核融合発電の実用化を目指す基礎研究をしている自然科学研究機構・核融合科学研究所(岐阜県土岐市下石町)は7日、核融合発電の実用化に必要な1億2000万度の超高温を実現するため、重水素を使った新しい実験を開始した。

核融合は、小さな質量の原子核が融合して、別の種類の原子核に変わる反応で、太陽の内部で起きているといわれている。核融合発電は、この反応の際に放出されるエネルギーを利用する。同研究所は、これまで水素を使って、電子と原子核がばらばらになったプラズマの生成実験を繰り返し、2013年に達成した9400万度が最高温度だった。

この日午後4時過ぎ、研究所内に設置された直径約13メートルのドーナツ形をした実験施設「大型ヘリカル装置」内に、重水素を送り込む装置を起動する赤いボタンを竹入康彦所長が押した。2分33秒後に薄いピンク色をした「ファーストプラズマ」の様子が制御室のモニターに映し出されると、研究者らから「おー」「やった」などと歓声が上がった。初年度は7月7日まで行われるが、5月初旬には、目標の1億2000万度を目指すという。実験は9年間を予定している。

一方、住民グループ「多治見を放射能から守ろう!市民の会」(井上敏夫代表)はこの日、同研究所正門横で抗議集会を行い、約50人が「実験反対」のシュプレヒコールを上げた。同会は先月8日、「重水素実験は、放射性物質のトリチウムや中性子などが発生する危険な実験」として同研究所に抗議文を提出している。

同研究所では、13年度に土岐、多治見、瑞浪の地元3市や県と安全確保などについて協定を締結。研究所内にトリチウムの除去装置を設置したり、周辺の大気中や河川などに放射線量の測定場所を設け、放射線量をホームページで公開したりしている。

◆核融合科学研究所=1989年に名古屋市で設立され、97年に土岐市へ移転。実験施設「大型ヘリカル装置」では現在、水素などを使って核融合に必要な高温プラズマを強力な磁場で閉じこめ、安定した状態に保つ研究を進めている。

カテゴリー: エネルギー, 技術, 核融合, 開発 | 核融合発電に向け重水素実験開始 はコメントを受け付けていません。

アルマ望遠鏡 132億光年彼方の銀河に酸素と塵を検出

[マイナビニュース2017年3月09日配信]

アルマ望遠鏡の最遠方記録が更新

英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのニコラス・ラポルテ氏らの研究グループはこのほど、アルマ望遠鏡を使った観測により、地球から132億光年の距離にある銀河A2744_YD4で酸素と塵が放つ電波を検出した。同成果についての詳細は、米国科学誌「Astrophysical Journal Letters」に掲載された。

銀河A2744_YD4は、ハッブル宇宙望遠鏡によって最初に発見された天体で、手前にある銀河団エイベル2744の「重力レンズ」効果によって増光されていることから、銀河の光や電波を詳しく分析するのに適している。

同研究グループは今回、同銀河に含まれる塵が放つ電波を検出。また同時に取得されたデータのなかに酸素が放つ電波も発見した。同電波は、もとは電離された酸素が放つ波長88μmの赤外線だが、赤方偏移により波長830μmのサブミリ波となってアルマ望遠鏡に届いたもの。赤方偏移から、A2744_YD4までの距離は約132億光年と計算された。これは、塵や酸素が検出された最遠方記録であった131億光年からさらに1億光年記録を更新する結果である。

さらに同研究グループは、観測された塵からの電波をもとに同銀河に含まれる塵の総質量が太陽の600万倍であること、星の総質量が太陽の20億倍であることを導出。また同銀河では、1年間で太陽20個分に相当するガスが星になっていることも明らかになった。これは、A2744_YD4における星の誕生が、天の川銀河と比べておよそ10倍活発であることを示しているという。

また塵は、星の内部で作られた元素が星の死によってばら撒かれる過程で作られるものであるため、星の誕生のペースと観測された塵の総量を比較することで、同銀河の塵が蓄積するのに必要な時間が約2億年であったことも明らかになっている。つまり同銀河のなかでは、観測でとらえた132億年前の時期よりも2億年前、現在から134億年前に活発な星形成活動が始まったということを示している。

今回の成果について同研究グループは、「銀河A2744_YD4は、単にアルマ望遠鏡で観測された最も遠い天体、ということにとどまりません。非常に大量の塵を検出できたことは、星の死によってまきちらされた塵による『汚染』がこの銀河の中ではすでに進んでいることを示しているのです。同様の観測を進めることで、宇宙初期の星の誕生をたどり、銀河における重元素増加の開始時期をさらに昔までさかのぼることができるでしょう」とコメントしている。

今回観測された132億光年彼方にある銀河A2744_YD4の想像図 (C) ESO/M. Kornmesser
カテゴリー: その他 | アルマ望遠鏡 132億光年彼方の銀河に酸素と塵を検出 はコメントを受け付けていません。

[磁石付く塗料] 中ペン塗装店 画びょう不要、壁美しく

[日本経済新聞電子版2017年3月07日配信]

冷蔵庫に磁石でいろんなメモをベタベタ貼り付けている家庭は多いだろう。壁に磁石が付けば、もっと広いスペースを使える。創業93年の老舗塗装会社、中ペン塗装店(青森県八戸市)は、磁石がくっつくように鉄の粉を混ぜた塗料を開発し、2016年に特許を取得した。サッと塗るだけで壁が「掲示板」に早変わりする。

開発したのは、クロスやコンクリート、ボードなどの上から塗るだけで磁石が付く磁気吸着塗料。一般の塗料と同じように、ローラーやこて、吹き付けで塗れる。4月にも「マグピタウォール」の商品名で塗装店などに販売する予定だ。

磁石が付く塗料の着想は30年以上前に遡る。きっかけは塗装の仕事で訪れた先々でテープを貼った跡や画びょうの穴で汚くなった壁を目にしたことだ。幼稚園や保育所、老人福祉施設などでは、危険防止のため画びょうを使わない施設も増えつつあった。

「磁石がくっつく壁なら、いつまでもきれいに使えて安全だ」。中村昭則社長はそう思って独自に磁石吸着塗料の開発に着手した。八戸市には金属関係の工場が多い。いろいろな鉄粉を調達しては塗料と混ぜ合わせ、試作品を作っては建築関係の見本市に出展した。来場者からは塗料より壁紙(シート)がいいという意見が多く、まず08年に鉄粉を入れた壁紙シートを「マグピタシート」の商品名で発売した。

さび防止に苦心

だが、本命は塗料だ。技術支援機関の青森県産業技術センター(青森産技)に相談し、10年ごろから同センター八戸地域研究所の佐々木正司機械システム部長(当時同研究員)と共同開発に乗り出した。

塗料に鉄の粉を混ぜるので、普通ならさびの発生が避けられない。さびを防ぐ添加剤を使う必要があった。

どんな添加剤を使うのか。鉄粉と塗料と添加剤の最適な配合割合や重量比は何か。鉄粉の最適な直径は――。鉄粉の種類を変え、混ぜ方を変えては試作を繰り返すなど、完成まで試行錯誤の連続だったという。

特許取得に4年

中ペン塗装店と青森産技は共同研究を経て12年3月、特許庁に特許を共同申請。16年8月に「磁着性塗料用混合物および磁着性塗料」として特許を取得した。磁石がくっつく塗料はこれまでもあった。特許取得まで4年以上かかったのは「配合の仕方が既存製品と違うことを客観的に示すのに苦労したため」(佐々木部長)という。

「マグピタウォール」の価格は未定だが、中村社長は「1キログラムあたり5000円前後する既存品の半分以下にしたい」と話す。自社ブランドでの販売のほか、塗料メーカーに商品化の権利を供与することも検討したいという。中村社長は「私の夢はマグネットの付く壁を世界に広げること」と話している。

(青森支局長 森晋也)

カテゴリー: その他, 開発 | [磁石付く塗料] 中ペン塗装店 画びょう不要、壁美しく はコメントを受け付けていません。