スマートフォン(スマホ)は、ほとんどの現代人が常に携帯している日常の通信、情報ツールです。このスマホの中には、多くの種類のネオジム磁石が重要な部品として使われていることはご存じでしょうか?よく知られているスピーカー、イヤホンの他にも、10種類近くの機能部品の中にネオジム磁石が入っています。本章では、このスマホの中のネオジム磁石の様々な役割をご紹介したいと思います。
<スマホの中のネオジム磁石>
スマホ内部でネオジム磁石が使われている場所や主な機能部品をまとめると、以下になります。
次図の磁石や部品の形状や場所は、標準的なスマホの一例になります。
■スピーカー・イヤホン: 電気信号を音に変換するために、コイルと永久磁石が組み込まれています。
■バイブレーション(振動)モーター: スマートフォンを振動させるための駆動部分にネオジム磁石が使われています。
■カメラユニット(オートフォーカス・手ぶれ補正・ズーム): オートフォーカスや光学式ズーム、手ぶれ補正のために、レンズを精密に動かすアクチュエータとしてネオジム磁石が利用されています。
■MagSafe(iPhoneなど): 背面に円状に配置されており、ワイヤレス充電器やアクセサリーを正確な位置で固定するために使われます。

スマホ内部のネオジム磁石がある場所の一例(色分けで表示)
<スピーカー・イヤホン・ヘッドホン>
■役割
スマホのスピーカー・イヤホン・ヘッドホンは磁石+コイル+振動版で音楽や通話の音を出します。
■仕組み
ダイナミック式のスピーカー・イヤホン・ヘッドホンは、電気信号を磁力で振動に変えて空気を震わせる「電磁誘導」の原理で音を出しています。具体的には、音声電流が流れるコイルと磁石の反発・吸引力で振動板を高速で動かし、その振動が波(音波)となって耳に届く仕組みです。小型ながら高性能なボイスコイルとネオジム磁石で音を再現しています。 複数スピーカーのスマホも多くなっています。

なお、近年のスマホのマイクは、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)マイクがほとんどで、半導体技術で静電容量を音圧で振動変化させる機構のため、永久磁石は使っていません。また、ブザーはセラミックの圧電素子(ピエゾ素子を使っていますので、やはり、磁石は使っていません。
<振動モーター>
■役割
着信や通知でスマホを振動させます。ERM型振動モーターとLRA型振動モーターがあります。
■仕組み
(1)ERM(Eccentric Rotating Mass)振動モーター
モーターの中にネオジム磁石があり、回転する重り(偏心重り)で振動を作るモーターで安価なため、広く利用されています。

ERM振動モーター(コイン型・円筒型)
(2)LRA (Linear Resonant Actuator)振動モーター
ネオジム磁石の磁力とバネの力を利用して重りを直線的に往復運動させ、振動を発生させるリニアモーターデバイスです。従来の回転式モーター(ERM)に比べ、応答速度が非常に速く、精細な「触感」を表現できるのが特徴で、上級・中級機種に採用が増加しています。

LRA振動モーター(コイン型・角柱型)
<オートフォーカス(AF)>
■役割
スマホのオートフォーカス(AF)は、センサーが被写体との距離を測定し、レンズを物理的に動かしてピントを合わせる機能です。複数の方式を組み合わせたハイブリッドAFが一般的になっています。
■フォーカス方式と仕組み
スマホカメラには主に以下の3つの技術が使われています。いずれの方式も、レンズを精密に動かすために、ネオジム磁石を組み込んだ「ボイスコイルモーター(VCM)」が使われています(次図参照)。
(1)位相差AF(PDAF)
レンズから入る光を分けてピントのズレを計算する方式です。非常に高速で動体の撮影向きです。
(2)コントラストAF
画像の明暗差(コントラスト)が最も強くなる位置を探す方式です。精度が高いですが、レンズを前後に動かして探るため、位相差AFに比べると速度は遅めです。
(3)レーザーAF / ToFセンサー
赤外線レーザーを放出し、跳ね返ってくるまでの時間で距離を測る「Time of Flight(ToF)」技術です。 暗い場所やコントラストが低い壁などでも、瞬時に正確な距離を測定できます。

iPhone13のカメラユニット・オートフォーカス部分(エンジニア大学より
<手ぶれ補正>
■役割
スマホの撮影時の手ぶれによって撮影画像がぼやける症状を防ぎ、鮮明な画像にします。
■手ぶれ補正方式と仕組み
スマホの手ぶれ補正機構には、主に光学式 (OIS)、電子式 (EIS)、そしてその両方を組み合わせたハイブリッド方式の3種類があります。これらは、物理的なパーツを動かして揺れを打ち消すか、ソフトウェアで画像を加工して安定させるかという仕組みの違いがあります。
(1)光学式手ぶれ補正 (OIS: Optical Image Stabilization)
ジャイロセンサーが揺れを検知し、レンズやイメージセンサーをネオジム磁石とコイルのVCMで物理的に動かし、光軸のズレを補正します。暗い場所での撮影や静止画に強く、画質劣化がほとんどありません。内部に駆動装置が必要なため、カメラ部分が大型化しやすい傾向にあります。

iPhone13のカメラユニット・手ぶれ補正部分(エンジニア大学より)
(2)電子式手ぶれ補正 (EIS: Electronic Image Stabilization)
撮影した映像データをもとに、ソフトウェアで画像のズレを補正します。
物理的な装置が不要なため、端末を小型化できますが、補正のために画像の周辺部を切り取る(クロップする)ため、画角が狭くなったり、画質がわずかに低下したりすることがあります。主に動画撮影で効果を発揮します。
(3)ハイブリッド手ぶれ補正
光学式と電子式の両方を同時に使用します。
<ズーミング>
■役割
ズーミング(Zooming)は、カメラのズームレンズを用いて焦点距離を変化させ、被写体を連続的に拡大・縮小撮影する操作です。デジタル機器では画面の拡大縮小操作を指したりします。
■ズーミング方式と仕組み
スマホのズーム機構は、主に画質を維持する「光学ズーム」と、画像を拡大する「デジタルズーム」、それらを組み合わせた「ハイブリッドズーム」に分類されます。薄型端末で高倍率を実現するため、光を90度屈折させて横向きにレンズを配置する「ペリスコープ(潜望鏡)構造」が近年のトレンドになっています。
(1)光学ズーム (Optical Zoom)
オートフォーカスや手ぶれ補正と同じカメラユニットで、ネオジム磁石のVCMにより、レンズを物理的に動かして焦点距離を変え、画質を落とさずに撮影できます。最新のペリスコープ式は、プリズムで光を屈折させ、内部でレンズを横に並べることにより、薄さを維持したまま焦点距離を拡大させ、高倍率を実現しています。
最近のスマホの光学倍率では、通常モデル・2倍〜3倍程度(iPhone 16、Galaxy S24、Pixel 9 など)、ペリスコープモデル・5倍~8倍(iPhone 17 Pro Max、Galaxy S25 Ultra 、Pixel 10 Proなど)の性能があり、専用カメラにも劣らない高性能モデルが登場しています。


スマホのペリスコープ(潜望鏡)構造カメラユニット(りんご堂ブログ、他)
(2)デジタルズーム (Digital Zoom)
レンズは動かさず、撮影した画像の一部をソフトウェアで切り出し、引き伸ばします。倍率を上げるほど画質が荒くなりますので、画素数の少ないカメラはズーム倍率をあまり大きくできません。
(3)ハイブリッドズーム (Hybrid Zoom)
光学ズーム、デジタルズーム、AI処理を組み合わせます。光学ズームの画質を維持しつつ、デジタルズームの倍率で綺麗に撮れます。スマホ各社の最新ハイエンドモデルでは40~120倍ズームも登場してきました。ペリスコープによる光学ズームの革新と画素数の増加やAI処理とともに、ハイブリッドズームが全盛となっています。どうやら、スマホはカメラ性能の競争になってきたようです。例えば、iPhone 17 Pro Max は40倍、Galaxy S25 Ultra 、Pixel 10 Proは100倍、Xiami 15 Ultra は何と120倍など、少し前のモデルでは考えられないズーム倍率になってきました。
<方位の計測・コンパス>
厳密には「磁石」そのものではありませんが、周囲の磁場を検知する磁気センサーが永久磁石の性質(磁界)を利用して、電子コンパスとして地図アプリなどで北を指し示す方位を特定します。
<スマホの固定>
iPhone 12以降の「MagSafe」など、充電器、スマホリング、ケースなどのアクセサリーを磁力で正確な位置に固定するためにネオジム磁石を使用します。
<まとめ>
以上のように、ネオジム磁石はスマートフォンのあらゆる機能に携わっています。スピーカーやイヤホン、振動モーターはもちろんですが、最先端のオートフォ-カス、手ぶれ補正、ズーミングを担う精密なカメラユニットには欠かせない素材となっていることがおわかりになったことと思います。
(参考・引用資料)
「iPhone13Proの技術仕様を分かりやすく解説。レンズアクチュエータ編」エンジニア大学
「スマホのカメラレンズが複眼の理由は?」りんご堂中古整備店ブログ
「スマホで光学10倍ズーム!コンデジを駆逐するペリスコープレンズとは!」UZUMAX YouTube
「望遠最強スマホはどれ?100倍ズームで比較してみた結果【Galaxy S25 Ultra VS Pixel 10 Pro VS Xiaomi 15 Ultra】」ワタナベカズマサ YouTube
その他、AIによる各種調査資料

