家庭用洗濯機は、今や国内生産だけでも年間400万台を超えるようになり、家庭での衣類を洗浄・すすぎ・脱水する家事を機械化し、家事負担を大きく軽減してきました。
1954年に手絞り機(ローラー脱水機)が付いた洗濯機が現れたのを最初に、1960年代には二槽式洗濯機が普及し、洗濯と脱水を機械で行えるようになり、その後、縦型全自動洗濯機が普及し、洗い・すすぎ・脱水までを自動で行えるようになりました。
1980~90年代にはマイコンやセンサーが導入され、洗濯条件の自動制御が進み、さらにインバーター技術の採用により、省エネ・低騒音・高精度なモーター制御が可能になりました。
やがて2000年代にはドラム式洗濯乾燥機が普及し、洗濯から乾燥までの一体化が進み、2010年代には自動洗剤投入や高効率な乾燥機能など、さらなる自動化・省エネ化が進みました。2017年頃からはスマートフォンとの連携が実現して、機種によっては外出先からの操作や運転状況の確認が可能になっています。
最近では、AIやIoT技術を活用し、衣類の量や状態に応じて洗濯条件を自動調整する機能も登場しています。現在の洗濯機は、単に衣類を洗う機械から、家事を支援するスマート家電(IoT家電)へと進化しています。
このような洗濯機の進化の過程でネオジム磁石は、エアコンや冷蔵庫と同様に、重要な役割を果たしてきています。

<洗濯機の基本原理>
洗濯機は洗い方の変化と共に、その構造も時代と共に大きく変わってきています。中でも、洗濯効率、エネルギー効率、静粛性などが年々進歩してきました。この中で、重要な機能部品としてのモーターの進歩は、永久磁石、特にネオジム磁石が大きく貢献しています。
■二槽式洗濯機
1960年代初頭に現れた二槽式洗濯機の特徴は、「洗濯槽」と「脱水槽」が分かれていることです。手間はかかりますが、汚れを確実に落とせることから、少数派ではありますが、現在でもこの方式を好む客層も存在しています。普及率は2%、生産台数は年間8万台程度です。
但し、モーターのほとんどが「単相誘導モーター」になり、プーリー・ベルトを使って洗濯槽と脱水槽を回転させるため、永久磁石を使う機種はほとんどありません。
※特徴
・洗濯と脱水を別々に行う
・洗濯時間・すすぎなどを細かく調整できる
・構造が比較的シンプル
・頑固な汚れの洗濯に使いやすい
・洗濯物を洗濯槽から脱水槽へ移す必要がある
・現在は全自動・ドラム式に比べて少数派

■縦型全自動洗濯機
現在主流の洗濯機で、1960年代後半から急速に増加しました。2025年の普及率は乾燥機能なしが約55%、乾燥機能付きが約23%で、生産台数は合計で年間約320万台になります。二槽式洗濯機に比べ、省スペースで洗濯効率が良いのが特長です。近年はインバーター制御、ダイレクトドライブ(DD)、IPM同期モーターの採用が増加し、省エネで且つ静粛性が大幅に改善されてきています。最近の磁石埋込型同期モーター(IPMSM)ではネオジム磁石が使われていて、その1台あたりの使用量は機種によりますが、50~100gになります。
※特徴
・洗濯物を大量の水に浸して洗う
・泥汚れなどに比較的強い
・洗濯時間が比較的短い
・本体価格が比較的安い
・洗濯だけでなく、脱水まで自動で行う
・インバーター搭載機では、モーターの回転数を細かく制御できる
・コンピューター制御で、様々な洗い方ができる

■ドラム式洗濯乾燥機
横向きのドラムを回転させ、洗濯物を持ち上げて落とす「たたき洗い」を行います。
節水性が高く、洗濯からヒートポンプ式の強力乾燥を自動で行います。普及率は約20%ですが、年々増加傾向にあります。2025年の生産台数は約100万台になります。モーターはネオジム磁石を使ったIPM同期モーターが多く、ネオジム磁石タイプのネオジム磁石の使用量は縦型洗濯機より多くなり、1台あたり約150~200gとなります。しかし最近ではレアアース問題により、フェライト磁石のPM同期モーターが見直されていて、その採用も進んでいるようです。
※特徴
・少ない水で洗濯できる
・節水性が高い
・洗濯から乾燥まで自動化できる
・本体が大型・高価になりやすい
・ヒートポンプ式乾燥を採用する機種も多く、乾燥能力が高い

<AI洗濯機の登場>
最後は、モーターや永久磁石の話題とは別に、最新のAI/IoT洗濯機についての情報をお伝えします。
■スマートフォンとの連携
洗濯機のIoT化が進み、数年前からWi-Fiなどで洗濯機をインターネットにつなぎ、スマートフォンからも操作・確認できるようになりました。例えばパナソニックの「スマホで洗濯」では、
・外出先から運転開始・予約
・残り時間・運転状況の確認
・洗濯終了・エラーなどの通知
・洗剤・柔軟剤の残量通知
・洗剤の銘柄設定
などができます。2026年9月現在、ドラム式だけでなく対応する縦型全自動洗濯機もあります。

パナソニック「スマホで洗濯」より
■AIが洗濯条件を自動設定
最近の上位機種では、単にスマートフォンにつながるだけでなく、洗濯機自身が洗濯条件を判断するようになっています。
日立の「AIお洗濯」では、洗濯物の量や水温など、洗濯時のさまざまな状況をセンシングし、洗い方や時間などを自動調整します。
■洗剤・柔軟剤の自動投入
現在の高機能洗濯機ではかなり重要なIoT・自動化機能です。
洗剤と柔軟剤をタンクに入れておけば、洗濯物の量などに応じて適量を自動投入します。東芝などでも、洗濯物に適した使用量を判断して自動投入する機能が搭載されています。
さらにIoT化して、洗剤残量を検知→ スマートフォンに通知→ 購入サイトを表示→ 一部機種では自動再注文、というところまで進んでいます。東芝では、Amazon Alexaを利用した洗剤・柔軟剤の自動再注文にも対応しています。
■使う人の好みを学習
シャープの「COCORO WASH」では、洗濯後の仕上がりをユーザーが評価することで、AIが好みを学習し、次回以降の洗濯条件に反映する機能があります。つまり、
洗濯 → 仕上がりを評価 → AIが学習 → 次回の洗濯に反映
という「学習型家電」になっています。
<まとめ>
以上のように、エアコンや冷蔵庫と同様、ネオジム磁石は家庭用洗濯機の重要機能部品として大きな役割を果たしています。近年では、インバーター制御のネオジム磁石を使った埋込磁石型交流同期モーター(IPMSM)の採用により、家庭用洗濯機はますます高性能、省電力になっています。その一方、世界的なレアアース資源問題により、ネオジム磁石ではなくフェライト磁石を使った交流同期モーターも再度見直しされ、商品化され始めていますから、今後より多くの機種への採用が拡がってゆくかもしれません。

