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レアメタルの基礎シリーズ(6)

近年、各種“超伝導材料”や超伝導を利用した“超伝導応用製品”がしばしば話題になっています。NeoMag通信においても、2008年後半~2009年前半のシリーズで詳細に解説いたしましたので、以前からの読者の皆様は覚えていらっしゃるのではないでしょうか。そこで今月は、超伝導の視点を変えて、使われているレアメタルを中心にお話をさせていただきます。

1.超伝導とは何か?

以前にも紹介しましたように、超伝導は“超電導”とも書かれ、前者は化学、物理の分野、後者は工学の分野で使われることが多いようです。また、超伝導材料で作られた電線は電気抵抗がほとんどゼロであるため、大量の電流を流してもほとんど熱が発生しません。また、この電線で作られたコイルに電流を流しますと、“超伝導磁石”、“超電導磁石”、“超電導電磁石”などと呼ばれる強力な電磁石になります。さらに、超伝導材料で作られた円板は、マイスナー効果によりネオジム磁石の上に浮かべることができます。

1911年オランダのヘイケ・ケメルリング・オネスによって、水銀が液体ヘリウム温度4.2K(ゼロKは-273℃)で突然電気抵抗がゼロになることを発見し、以来種々の物質の“転移温度Tc(超伝導に相転移する温度=臨界温度)”が測定されてきました。なお、オネスはヘリウムの液化と超伝導の発見で、1913年にノーベル物理学賞を受けました。その後、1933年ドイツの物理学者ヴァルター・マイスナーとローベルト・オクセンフェルトによって超伝導特有の電気抵抗ゼロ以外の現象“完全反磁性”が発見され、“マイスナー効果”と命名されました。

つまり、超伝導現象とは、

(1)物質の電気抵抗がゼロになる。

(2)マイスナー効果(完全反磁性になる=物質内部から磁力線が排除される)が現れる。

という、2つの現象が同時に起こることを指します。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像0601

2.超伝導材料の変遷

超伝導材料として使われるのは、レアメタルを中心とした単金属、金属間化合物からなる合金、酸化物です。多くの金属は、極低温で超伝導になりますが、実用で使える金属は液体ヘリウムの沸点温度4.2K(-268.8℃)で安定した超伝導を示す鉛PbやニオブNb、水銀Hgなどです。液体窒素の沸点77K(-196℃)で安定して超伝導を示す金属は、高温超伝導体と呼ばれます。複合のレアメタル組成の酸化物から構成されます。

右図は超伝導材料とTcの変遷をまとめたもので、青字が金属および金属間化合物超伝導材料で、赤字の化合物が酸化物超伝導材料です。ご覧のように液体窒素温度で超伝導体になる高温超伝導材料は、今のところレアメタル酸化物系のみとなっています。

1986年までに金属系材料で、徐々にTcが上昇してゆきましたが、酸化物材料の出現で一気に液体窒素 温度を越えてきました。1986年スイスIBM社のベドノルツとミューラーが、ランタンLa、バリウムBa、銅Cuの酸化物(La-Ba-Cu-O系)で30Kの超伝導材料を発見してから、酸化物超伝導材料が一躍注目され始め、その後種々の酸化物超伝導体が発表されてきました。特にYBCO=イットリウムY、バリウムBa、銅Cuの酸化物(YBa2Cu3O7-δ)(Tc~93K)やBSCCO=ビスマスBi、ストロンチウムSr、カルシウムCa、銅Cuの酸化物(Bi2Sr2Ca2Cu3O10)(Tc~109K)といった銅酸化物高温超伝導体 が次々に発表され、液体窒素温度77K(-196℃)で十分超伝導になる物質が生まれたのです。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像0602

3.レアメタルを利用した超伝導材料の応用

超伝導材料は、さまざまな用途への利用が研究されていますが、既に実用化されているものも数多くあります。現在の主な用途は、(1)送電ケーブルや通信ケーブルに電気抵抗ゼロを利用して、送電や通信信号の効率を高める。(2)ジョセフソン素子を利用した微小磁界の変化を計測する方法で、脳波計、心電図検出器のように、外部磁界との相互作用を利用して、微小な磁界の変化を計測する。代表的な装置はSQUIDと呼ばれている。(3)核磁気共鳴(NMR)や電子顕微鏡のように、精密磁界を作り、対象物に作用させて各種信号を取り出す方法が実用化されている。医療診断に用いるMRI(磁気共鳴断層撮影装置)はこの応用例。(4)その他、磁気エネルギー(フライホイール)を用いた電力貯蔵、直流磁界と作用させた磁気推進機構、交流磁界を使った核融合炉への応用。・・・などがあります。ただ、超伝導状態に保つためには高価な冷媒が必要であること、極低温に保つ高い技術が必要など周辺技術にまだ課題が多いのも事実です。高温超伝導体の加工技術や常温超伝導材料の探索など、今後も引き続きその進捗に目の離せない技術分野といえます。

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以上、今月はレアメタルが不可欠な超伝導材料とその応用について解説してみました。超伝導の実用化はすでに始まっていますが、さらに臨界温度Tcが高い材料の研究開発はやはりレアメタルを中心に行われています。新材料開発が進展すれば、さらに応用分野が広がり、本格的な実用化に入ってゆくと思われます。次号では、磁性材料に使われるレアメタルのお話をする予定です。

(参考資料)

「トコトンやさしい超伝導の本」 下山淳一 著 (日刊工業新聞社)

「よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み」 田中和明 著(秀和システム)

「レアメタル 技術開発で供給不安に備える」(独)産業技術総合研究所 レアメタルタスクフォース編 (工業調査会)