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エネルギー資源の現状と将来(3)<石油-その1>

先月までは石炭資源の話でしたが、今月からは石油資源についての勉強をしてみたいと思います。石油も化石燃料に違いはありませんが、その性質、形態、用途は他の化石燃料とは異なる特徴を有しています。人類にとって重要なエネルギー源である石油について、常識的な情報から一歩踏み込んで調べてみるのも面白いのではないでしょうか。

2.石油(Petroleum)

(2-1) 石油(原油)の成因と石炭との違い

■有機成因論

石炭と石油とは水と油のように全く異質の根源物質からなるエネルギー資源で石油は海成の動物(プランクトンを主)を根源とし石炭は植物を根源物質とすると考えている人が案外多いのではないでしょうか。

しかし最近では、石炭・石油はともに植物群に由来する堆積性の有機物が主な根源物質であるとする説が有力となっています。

すなわち石炭も石油も植物がバクテリア作用・圧密化・地熱による変性・続成作用など同様の地質学的過程をたどって生成するというものです。しかし両者にはたしかにある差異があり、それは石炭が固体として堆積の場にじっとしているのに対し石油は液体で生成した場所から移動して多孔質な貯溜岩にたまる点にあります。また根源物質にもある種の違いがあると言われています。

石炭・石油のもとになる植物性の根源物質には次のような3つのタイプがあります。

第1のグループ 藻類のように低分子の糖質・脂質・アミノ酸など比較的低分子の脂肪族からなるアルギニット・タイプのもの
第2のグループ 花粉・胞子のようなクチン質・樹脂質に富むタイプのもの
第3のグループ 木質の主成分であるセルローズ・リグニンなどに由来するタイプのもの

これら堆積度有機物の種類と堆積直後の最初の分解作用とが、石油型になるか石炭型になるかを決めるのです。石炭の根源物質は主に高級植物に由来するリグニンやセルローズからなり、泥炭化作用の間に酸素の供給が少なく生化学的フミン作用(微生物による分解作用)を受けます。一方石油の根源物質は藻類・バクテリア・植物性プランクトン等の低級植物で、セルローズ以外に蛋白質・脂肪などに富み、嫌気水陸の環境下でリピッドが生じます。これはフミン質(腐植物質)よりも水素に富み、芳香族炭化水素が少なく、脂肪族炭化水素に富んでいます。そして、地表付近で地下水などに接触して軽質の炭化水素成分を失い重質成分が残り、高粘度化(ビチューメン化)します。これが石油前駆物質と考えられている高分子化合物の集合体・ケロジェンです。

つまり石油は前記の第1と第2のタイプの有機物から生成され易く、石炭は第3のタイプのものから生成され易いわけです。

これら堆積度有機物は堆積作用をうけ次第に地下深く埋没されてゆくにつれ地温勾配にしたがう熱を供給されて熟成してゆき一方はビチューメン化作用を他方は石炭化作用をうけます。前者はガスまたは原油のような流動的な炭化水素を生成する過程であり、後者は固体残留物の芳香族化と縮合が進行する過程となります。

(1)ケロジェンの形成

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(2)熟成・石油、ガスの生成

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(3)石油、ガスの移動・集積(背斜トラップ)

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■無機成因論

石油「無機」由来説は、1870年代、元素の周期律表で知られるロシアの化学者メンデレーエフが唱えたのが始まりで、旧東側諸国では従来から定説とされていた学説でした。ただし、旧西側諸国では、定説とされてきた石油「有機」由来説に真っ向から反対するものであったため長く顧みられることがなく、その後トーマス・ゴールドが 取り上げたことで、西側諸国でも脚光を浴びることとなりました。近年、この説を支持する研究者も急増しています。 天文物理学者であるゴールドの説く石油無機由来説は、「惑星が誕生する際には必ず大量の炭化水素が含まれる」「炭化水素は地球の内核で放射線の作用により 発生する」「この炭化水素が地球内部の高圧・高熱を受けて変質することで石油が生まれる」「炭化水素は岩石よりも軽いので地上を目指して浮上してくる」というものです。

無機成因論の根拠としては「石油の分布が生物の分布と明らかに異なる」「化石燃料では考えられないほどの超深度から原油がみつかる」「石油の組成が多くの地域でおおむね同一である」「ヘリウム、ウラン、水銀、ガリウム、ゲルマニウムな ど、生物起源では説明できない成分が含まれている」などが挙げられます。 また、生物起源論が根拠としている、石油中に含まれる炭化水素の炭素同位体比を調べた結果、炭素数の少ない炭化水素ほど、質量の軽い炭素同位体を含む割合が多くなるという傾向は、地下から炭化水素が上昇する過程で、分子の熱運動により重い同位体が分離されたと説明することも可能だといわれています。

この無機由来説に基づけば、一度涸れた油井もしばらく放置すると再び原油産出が可能となる現象を説明することができます。また超深度さえ掘削できれば、日本はもちろん世界中どこでも石油を採掘できる可能性があることになり、膨大な量の石油が消費されたとしても、掘削技術の問題さえ解決されれば枯渇する危険性はほぼ皆無であるとされています。

したがって、日本は領海および排他的経済水域(EEZ)面積では世界第6位の海洋大国であり、石油や天然ガスが無機成因論で生成されるとすれば、掘削技術が進歩した将来には、日本は世界有数のエネルギー資源大国になるかもしれないということです。

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(2-2)石油(原油)の埋蔵状態と地層の関係

有機成因論や無機成因論による根源論はともかく、原油は通常、深度数千メートルの地下の地層にある隙間(孔隙)に存在しています。

海や河川などに堆積した砂や泥の粒子は、粒子間に隙間を持ち、その隙間に水を蓄えています。長い年月と共に、さらに砂や泥の粒子が堆積して埋没した地層は、深度を増すと共に隙間を失っていきます。岩石の単位体積に対する隙間の割合を孔隙率と言います。孔隙率は地層の埋没によって減少しますが、地層を構成する岩石の種類によって異なり、地下数千メートルでも条件さえ良ければ20~30%の孔隙率を保つ事ができます。これら孔隙率の大きい岩石を貯留岩と呼びます。最も一般的な貯留岩としては、砂の粒子が固結した砂岩やサンゴ礁を起源とする炭酸塩岩などがあげられます。

根源岩から生成された油やガスは、貯留岩の孔隙でもともと存在している水と共存する事となりますが、これら油やガスは水よりも比重が軽いため、孔隙中をより浅い方へと移動します。油田やガス田が成立するためには、貯留岩中を移動した油やガスが特定のエリアに集まる必要があり、このような地質構造をトラップと言います。最も分かりやすいトラップとして、地層がお椀を伏せた形状を示す、背斜型トラップがあげられます。ここでお椀の役割をするのが、帽岩と呼ばれる、孔隙率の小さい、低浸透性の地層です。帽岩は油やガスをトラップした後にも断層などにより破壊されることなく保存される事が重要です。

地下数千メートルは、地上に比べると、温度・圧力が非常に高い世界です。そのような、高温・高圧の環境下で、油やガス・水はまさに地層の隙間に押し込まれていると言えます。この為、油田で坑井が掘削されると、地上との圧力差により油が地上まで噴き出します(自噴)。噴出した油は地下の高温・高圧から開放され、油に溶け込んでいた天然ガスが遊離して出てきます。

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(2-3) 有機成因論による原油の埋蔵場所の条件

石油や天然ガスはサウジアラビアに代表される中東地域に多く存在しますがなぜでしょうか。以下、有機成因論での解説になります。

約2億年前の三畳紀に超大陸パングアが分裂した際、テチス海と呼ばれる広大な海が出現しました。テチス海は現在の赤道付近に位置し、温暖な気候により石油や天然ガスの元となる植物や微生物が大量に発生していたと言われています。また、約2億万年前のジュラ紀から白亜紀にかけては、中東地域で一般的に貯留岩となっている炭酸塩岩や帽岩となる硬石膏が大規模に発達した事も重なり、油田やガス田を形成する条件が整っていた事が主たる要因と言えます。

油田やガス田は、中東に限らず、条件さえ整えばどこにでも成立します。その条件とは、(1)良質な根源岩の存在と熟成、(2)高い孔隙率を持つ貯留岩の存在、(3)トラップまでの油の移動経路、(4)トラップの形成と油・ガス集積とのタイミング、(5)帽岩の存在と保存、などです。

油田やガス田の成立には、これら5つの要素のうちの一つでも欠けることは許されません。一般に貯留岩となる砂岩や炭酸塩岩は、堆積盆地と呼ばれる過去の一定期間に沈降を持続し、堆積物が厚く溜まっているエリアに存在します。堆積盆地は、河川などからの砂の供給があり、温暖な地域ではサンゴ礁が発達します。また、根源岩となる植物や微生物などの有機物が堆積しやすい環境にもなっていて、トラップを形成する為の地質構造運動も活発です。

世界の油田・ガス田分布図を眺めると、その存在が陸上や大陸縁辺部に限られ、太平洋や大西洋の中心には存在しない事が分かります。これら海洋性地殻は年代的にも若く、根源岩熟成や貯留岩発達の観点から、条件が整っていないと言えます。

日本ではこれまで新潟から秋田にかけての日本海側に油田やガス田が見つかっています。日本はユーラシア大陸縁辺の火山列島なので、世界的にも数少ない火山岩を貯留岩とする油田やガス田が成立しています。

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次回は中東地域の原油と無機成因論の関係など、引き続き「石油」についてのお話をさせていただきます。

 

<参考・引用資料>

「トコトンやさしい石炭の本」 日刊工業新聞社

「トコトンやさしい天然ガスの本」 日刊工業新聞社

フリー百科事典「ウィキペディア」

米国石油地質家協会(AAPG)研究会議報告 中島敬史 IEEJ:2005年7月掲載

石油技術協会ホームページ

J-POWERホームページ

JOGMECホームページ