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地球の科学と自然災害(11)<竜巻-その3>

【竜巻から身を守る方法】

今月は「竜巻」の最終章として、「竜巻から身を守る方法」についてのお話です。大きな竜巻に遭遇する機会はめったにありませんが、万が一遭遇した時はとっさにどのように行動したら良いでしょうか。その万が一のためにも、あらかじめ必要最小限の知識を身に着けておくことは決して無駄ではないと思います。

[竜巻-10] 竜巻発生の前兆   *引用「竜巻のふしぎ」共立出版、他

竜巻-その1でもお話をしましたが、スーパーセル竜巻は巨大積乱雲(スーパーセル)とメソサイクロンが竜巻に先行して存在します。このスーパーセルとメソサイクロンをキャッチすれば、竜巻の発生を予測することが可能です。アメリカでは、トルネードーチェイサーがスーパーセルを追いかけて、竜巻発生の瞬間を観測しています。この情報は直ちに、気象局や地元のテレビ局などに伝えられ、竜巻警報に役立っています。

竜巻が発生する際には「突然、空が真っ暗になった」「大きな霊が降ってきた」といった目撃情報がよく聞かれます。竜巻予測の精度が高いとは言えない現状では、「自分の命は自分で守る」という考え方から、目の前に起こる竜巻発生の前兆を自分たちで発見して、防災につなげることが大切です。 ここでは、私たち個人が、目や耳など、五感を使ってわかる竜巻の前兆現象をまとめてみましょう。(次図参照)

地球の科学と自然災害-画像34

<前兆-1> 空が急に暗くなる

竜巻の親雲が近づいてきている可能性があります。雷を伴って雨が激しく降り出したり、突風が吹いたりすることもあります。また発達したスーパーセルが夕暮れ時に発生している場合、空が緑色に見えることかあります。この理由として、夕焼けの赤い光が背の高い厚い雲に反射して緑に見えるという説がありますが、まだ完全には解明されていません。

いずれにしろ、空の色の変化は重要なシグナルと言えるでしょう。

<前兆-2> 雷鳴が聞こえる

スーパーセルでは落雷も集中します。通常の積乱雲では数10回から数100回なのに対して、スーパーセルでは数100回から数1000回、事例によっては10000回に達することもあります。雷鳴、雷光は避難のサインです。竜巻も怖いですが、屋外では落雷の直撃、側撃からも身を守りましょう。落雷は、スーパーセル内の対流性の強エコー域に集中しますが、弱い雨が降っている周囲の層状性エコー域からもしばしば発生します。積乱雲の中心(強雨域)から数10km離れた、かなとこ雲からの落雷も起こりますから要注意です。

<前兆-3> 雹(ひょう)が降る

強い上昇気流である竜巻の隣で、強い下降気流(ダウンバースト)が生じるのが、スーパーセルの特徴であり、この強い下降気流が生じているときに、突然パラパラと小石大の雹が降ることがあります。特に空の低い所に、垂れ下がるようなこぶ状の雲(乳房雲)がある時は注意が必要です。雹の落下速度は、直径1センチでは時速30km、直径5センチでは時速120kmにもなるため非常に危険であり、海外では多くの人命を奪っています。

1917年6月29日に埼玉県熊谷市で降った雹は直径約30センチ、重さ3.4kgの巨大なものでした。この雹は複数の雹がくっついて大きくなったもので、非公式ながら世界一の大きさと言われています。

<前兆-4> 物が巻き上げられて回転する

空から垂れ下がる漏斗雲の下で(もしくは漏斗雲は見えなくとも)、木の葉や土ぼこりが筒状に回りながら上に向かって巻き上げられる現象が見られることもあります。これは明らかに竜巻の初期段階で、その後竜巻が発生する確率は高いでしょう。

<前兆-5> 轟音が聞こえる

竜巻は車の速さくらい(時速40~50キロ)の速度で移動しながら、その道中で様々なものを破壊して吹き飛ばします。そのため、かなりの轟音を立てながら駆け抜けていきます。この轟音は目撃者の証言によると、走行中の貨物列車の走行音、滝つぼに水が流れ込む音、100万匹のハチがブンブン飛んでいる音などと例えられています。

<前兆-6> 耳がキーンとする

竜巻の内部はその周囲よりも、数10ヘクトパスカルも気圧が低いので、接近時に急に耳鳴りを感じることもあります。エレベーターや列車がトンネルに入った時に耳がキーンとすることがありますが、それに近い感じでしょう。ほかにも、急な気圧の変化に伴ってトイレの水が逆流する、といったこともあるようです。

竜巻が、大雨時や夜間、建物に囲まれて広く空が見渡せない場所で発生している場合、それを発見できないこともあります。前述したような竜巻の前兆を知っておくと良いでしょう。

[竜巻-11]竜巻から身を守る   *引用「竜巻のふしぎ」共立出版、他

2013年7月8日、東京都北区の荒川付近で釣りをしていた男性4人が落雷に遭い、1人が死亡、2人が重傷を負う痛ましい事故が起こりました。実はその中に1人だけ、軽傷で済んだ男性がいました。なぜ彼だけが大きなダメージを受けなかったのでしょうか。

この男性は、高い木から3メートル以上離れた所で身を伏せて嵐が過ぎるのを待っていました。それに対して、ほかの3人は大雨を避けるために木の直下で雨宿りをしており、不幸にもその木に雷が落ちたため感電してしまったのです。

このように同じ状況下にいても、適切な避難行動を取れるか取れないかによって、生死が左右されてしまうことがあります。これは竜巻からの避難の場合でも同様です。竜巻のように、日本では発生件数が少ない災害に関しては、適切な避難行動があまり知られていないという問題があります。

竜巻が近づいてきた際に「何をしたら良いか分からず立ち尽くしてしまった」「窓ガラスを手で押さえて負傷した」など、危険な行動をとってしまう人もいるのです。以降では、適切な避難行動とはどういったものかを見ていきましょう。(次図参照)

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<身を守る-1> 屋内にいる時に竜巻が近づいてきたら

竜巻による負傷の主な原因は、飛来物や割れたガラスによるものです。これらのリスクを減らすために、屋内にいる時は「窓を閉じる」「カーテンを引く」「雨戸やシャッターを閉める」、そして「窓のない部屋に避難」することが重要です。

また、家屋の2階部分は吹き飛ばされる恐れがあるので、1階で壁に囲まれた部屋や、比較的頑丈な造りである「トイレ、クローゼット、階段下などに逃げる」のが賢明です。「小さく身を丸めて、腕で頭を抱える」ようにして、頭部を防護しましょう。この時、「布団などで頭をおおう」とさらに良いです。「お風呂場の浴槽に逃げ込んで、その上に蓋をする」のも安全と言えます。

いずれにしろ、日本の家屋は竜巻を想定して作られているわけではないので、「我が家の頑丈な場所」を知っておくと良いでしょう。

<身を守る-2> 屋外にいる時に竜巻が近づいてきたら

屋外にいる時に竜巻が近づいてきたらどうすれば良いでしょうか。屋内にいる時よりもかなり危険な状況と言えます。まずは「鉄筋コンクリートなどの頑丈な建物の中に入る」ことです。間違っても「風に弱い物置やプレハブ小屋には避難しない」ようにしてください。プレハブ小屋は飛来物によってさらに危険になります。2006年11月7日の佐呂間町の竜巻では、亡くなった9人全員はプレハブ小屋の中で竜巻に遭遇してしまったのです。

また竜巻が相当遠くにいない限り、車で避難することはかえって危険となります。竜巻が発生する時は同時に大雨の危険もあり、また渋滞などに巻き込まれると逃げ場を失ってしまいます。竜巻が車を横転させたり、吹き飛ばしたりすることは珍しくありません。まずは「車から降りて、すぐに安全な場所に避難する」ことが重要ですが、もし周りに逃げ込める頑丈な建物などがなければ、「水路などのくぼんだ所で、頭や首などを守りながら身を伏せる」ようにしましょう。

[竜巻-12]竜巻の予測   *引用「竜巻のふしぎ」共立出版、他

年々進化を続けている天気予報ですが、以前は困難だとされていた竜巻予測も行われるようになりました。よく耳にするものとして、2008年から気象庁で発表されるようになった「竜巻注意情報」があります。これは竜巻などの突風が起こりやすい気象状況になった時に発表されます。そして2010年からは、日本全国を10キロの格子に分けて10分ごとの竜巻の発生しやすさを予測する「竜巻発生確度ナウキャスト」も発表されるようになっています(次図)。

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<ドップラーレーダー>

竜巻予測はどのように行われているのでしょうか。

まず竜巻発生の前兆となる、スーパーセルの中にあるメソサイクロンを探し出します。その検出に一役買うのが、「ドップラーレーダー」と呼ばれる装置です。

これは、救急車が近づいてくる時と遠ざかっていく時とて音が変わるように、音源と観測者の位置関係で音が変わる性質「ドップラー効果」を利用したものです(次図)。

渦であるメソサイクロンの中では、レーダーに近づく風の向きと遠ざかる風の向きが存在しています。レーダーから出された電波は、雨粒子に当たると跳ね返ってくる時に波長が変化するので、風に流される雨粒子が近づいているのか、遠ざかっているのかを判断できます。メソサイクロンがないと一つの風向きの信号しか検出されないため、二つの風向きの信号がある場合はメソサイクロンの存在が予測されるのです。

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<竜巻予測精度の向上に向けて>

気象庁は約20基のドップラーレーダーを設置していますが、直径が数キロのメソサイクロンを捉えるためには、その数は十分とは言えません。このため、関東地方では「X-NET」と呼ばれる、大学や研究所が連携したプロジェクトが行われています。またドップラーレーダーのほかにも、3次元的なデータを集めることが可能な「フェーズドアレイレーダー」や、雲の粒の動きを把握できる「ドップラーライダー」などの新しい装置も開発されています。

さらに、ボランティアの力を借りて、竜巻に遭遇する危険を未然に防ごうという計画もあります。これはアメリカやカナダにならって数年後には開始される予定の「スポッター制度」です。

「スポッター」とは気象の監視人として登録されたボランティアのことで、スポッターが空の異常を見つけると、気象庁に伝えるようなしくみになっています。竜巻は小さな気象現象なので、観測は結局のところ、人の目に頼らざるを得ません。こうした気象現象を監視する目が増えることは、竜巻観測に大きな効果があると期待されています。

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以上で3回に渡った「地球の科学と自然災害・竜巻シリーズ」は今回で終了します。竜巻の発生原理やその威力、過去の災害例、竜巻から身を守る方法などについて勉強してきました。普段はあまり自分自身が受ける災害だとは考えていなかった読者の皆さんも多かった筈です。どうかこれを機会にご家族の皆さんと「竜巻に遭遇したらどうするか」話し合ってみてください。

<参考・引用資料>

「気象庁」ホームページ

「竜巻 メカニズム・被害・身の守り方」 小林文明 著 成山堂書店

「竜巻のふしぎ」 森田正光 森さやか 著 共立出版

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