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おもしろい宇宙の科学(19)<太陽系-その11(海王星)>

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、「探査機『はやぶさ2』が同日午前7時29分ごろに小惑星リュウグウへ着陸したことを確認した」と発表しました。探査機の状態は正常で、すべてが計画通りに動作した「完璧」な着陸だったということです。リュウグウ表面の物質を採取するための弾丸を発射する指令も出されており、リュウグウの砂や岩石のかけらが採取できた可能性が高いとみられます。

小惑星の砂や岩石の採取に成功すれば、2005年の「初代はやぶさ」以来、世界で2番目の快挙となります。小惑星の岩石は太陽系が46億年前に生まれたころの痕跡を残す「タイムカプセル」です。現在のリュウグウは地球から約3億4000万km離れていますが、リュウグウの岩石には、水や有機物が含まれているとされ、太陽系の誕生や生命の起源の謎に迫れる可能性が膨らんできました。

着陸は今回も含めて7月末までに計3回の予定で、2回目以降は、地表に金属片を撃ち込んで人工クレーターを作り、小惑星内部の試料回収も試みます。地球への帰還は東京オリンピック後の2020年末の予定となります。日本が誇る「宇宙探査技術」は、さらに素晴らしい成果を上げてくれることでしょう。

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今月は太陽系の中で最も太陽から遠い「海王星」について勉強してみましょう。

[海王星-1]太陽系最外周に位置する惑星

海王星は太陽系の第8惑星です。英名の「Neptune(ネプチューン)」はローマ神話に登場する海の神「ネプトゥーヌス」から付けられました。2006年8月、それまで太陽から最も遠い惑星とされていました「冥王星」が準惑星に定義されたため、海王星が太陽系最外周の惑星になりました。

したがって、昔から太陽系の惑星の順番として小中学校で教えられていた「水金地火木土天海冥」「すいきんちかもくどってんかいめい」の「冥・めい」は、惑星としてはなくなりましたので、2006年以前に義務教育を終えた社会人の読者の皆さんは気を付けてください。

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海王星の直径は約49,500キロメートルあり、地球と比べるとおよそ3.9倍の大きさになります。また、質量は地球の17倍に相当します。表面が海に覆われたような綺麗な青色をしていて、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた天然色の天王星と海王星は、まるで双子の惑星のようです。2つの惑星は海王星の方がやや小さいものの、ほぼ同じ大きさです。ガス惑星である海王星の大気成分は、85%を水素が占め、ほかにヘリウムやメタンなどを含みます。海王星が青緑色に見えるのも、天王星と同じようにメタンが赤い色の光を吸収するためです。入射する太陽光の2倍以上のエネルギーを内部から放出しているため、内部には大きな熱源をもつ可能性があります。

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[海王星-2]海王星の構造

海王星は天王星型惑星であるため、構造は天王星と似ています。海王星の大気は質量ベースで星の5-10%を占め、大気圏の厚さは星の半径のおおよそ10-20%、大気圧は 10GPaです。大気圏の下層に近づくに従い、メタン・アンモニア・水の濃度が上昇します。

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大気圏下層のより暗く高温の層は、徐々に凝縮して液体のマントルとなり、その温度は2,000~5,000Kに達します。このマントルは地球10-15個に相当する質量を持ち、水・アンモニア・メタンに富んでいます。惑星科学分野の習慣では、このような状態は高温で高密度な液体であるにもかかわらず「氷」と呼ばれます。この高い電気伝導率を持つ液体は、しばしば「水とアンモニアの海」(water-ammonia ocean)と呼ばれます。水深7,000kmの深度では、マントル中のメタンがダイヤモンドの結晶へと分解され、核に向かって沈殿している可能性があります。マントルは水分子が水素および酸素のイオンに分解されてできた「イオン水」(ionic water) の層によって構成され、さらに深部では酸素が結晶化し、水素イオンがその結晶格子の中を漂う「超イオン水」(superionic water) の状態にある層から成っているとされています。

海王星の核は、鉄、ニッケル、ケイ酸塩で構成され、地球のそれの1.2倍の質量を持つとされていて、中心の圧力は、7Mbar (700GPa) で、温度は5,400Kです。

[海王星-3]海王星の大暗斑と四季

1980年代後半にボイジャー2号がとらえた海王星には、地球とほぼ同じ大きさの「大暗斑」という、木星の大赤斑に似た大きくて暗い斑点がありました。その近くには、メタンと考えられる白い雲のようなものが浮かんでいました。この大暗斑も、台風のようなものと考えられています。

ところが、1994年にハッブル宇宙望遠鏡がとらえた海王星には、この大暗斑がありませんでした。大暗斑は大赤斑にくらべ、めまぐるしく形や大きさを変えます。大赤斑が300年以上あり続ける理由と同じように、大暗斑が消えた理由も謎のままです。

ほかの気候の特徴としては、海王星には四季があるらしいのです。海王星の南半球部分で帯状の雲や、明るい部分が増えるようすが観測されています。自転軸が公転面に対して29度傾いているため、こうした四季が生じると考えられます。低緯度地方であまり変化が起こらないのは、地球の熱帯地方と同じ理由です。しかし海王星では、1つの季節が40年以上続くことがあります。

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[海王星-4]落下する衛星トリトン

海王星には、4本の細い環(リング)が存在します。しかし、通常細いリングは力学的に長く安定して存在できないため、リングには何らかの力がはたらいていると考えられます。

これまでに見つかっている衛星の数は、つい最近発見された「ヒッポカンプ」を含めて14個になり、その中で最大の衛星トリトンは、海王星の重力にとらえられた「逆行衛星」です。海王星の自転とは逆の方向の公転軌道と、海王星の潮汐力のためにトリトンの公転半径はしだいに小さくなり、やがて海王星に落下すると考えられています。

そのトリトンの表面温度は-234℃で、現在も活動中の火山があると考えられています。

太陽系内の大型衛星の中では唯一、主惑星の自転方向に対して逆方向に公転する「逆行軌道」を持ちます。直径は2,710kmで、太陽系の衛星の中では7番目の大きさです。その逆行軌道と、冥王星に似た組成であることから、トリトンはカイパーベルトから捕らえられた準惑星規模の天体であったと考えられています。トリトンは、凍った窒素の表面と、主に水の氷から成る地殻、氷のマントル、岩石と金属からなる大きな核を持ちます。核は総質量の約3分の2を占めています。

トリトンは地質学的に活動していることが知られている数少ない太陽系内の衛星の一つです(他には木星のイオやエウロパ、土星のエンケラドゥスやタイタンがあります)。その結果、表面は比較的若く、明確なクレーターはほとんど見られません。氷の火山やテクトニクスといった地形の存在は、複雑な地質学的変遷を示唆しています。その表面の一部には昇華した窒素ガスを噴出する間欠泉を有しています。

主惑星との相対的な大きさでは、地球の月に次いで2番目の大きさです。

[海王星-5]トリトンの表面

トリトンの表面に関する詳細な情報は、全て1989年にボイジャー2号が 40,000km の距離にまで接近した際に得られました。トリトンの表面の40%がボイジャー2号によって撮影されていて、むらのある露頭や尾根、谷、溝、盆地、高原、凍った平野、いくつかの衝突クレーターといった地形が存在していることが明らかになりました。表面は比較的平らであり、観測されている範囲内の地形では高さが 1kmを超えて変化することはありません。衝突クレーターは比較的少なく、最近のクレーターの密度と分布の分析では、地質学的に見るとトリトンの表面は非常に若いことが示唆されていて、地域によってその推定年齢は600万年から5000万年と様々です。トリトンの表面の55%は凍った窒素で覆われていて、その氷のうち水の氷は15~35%、ドライアイス(凍った二酸化炭素)が残りの10~20%を占めています。表面には、生命の起源への先駆的な化学物質になるかもしれない有機化合物であるソリンの堆積物が見られます。

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[海王星-6]トリトンの氷の火山

トリトンの地殻は様々な氷で構成されていますが、その地下で起きているプロセスは地球上で火山や地溝帯を形成するものと似ています。ただし、トリトンではそのプロセスでは液体の岩石ではなく水とアンモニアがはたらきます。トリトンは表面全体に複雑な谷や尾根が存在していますが、これらはおそらくテクトニクスと火山活動によるものであるとされています。トリトンの表面における特徴の大部分は、天体衝突などの外的な要因ではなく、内部の地質学的なプロセスによって形成された内因的なものであり、その多くはテクトニクス的なものと言うよりは噴火や噴出的な性質のものです。

 

探査機ボイジャー2号は1989年に、トリトンの表面で窒素を噴出する少数の間欠泉と、それに付随する表面から 8kmの高さにまで達する塵の噴煙を観測しました。そのためトリトンは、地球、イオおよびエンケラドゥスと共に、ある種の活発な噴火活動が観測されている太陽系内でも数少ない天体の1つであるとされています。

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観測されている全ての間欠泉は、トリトンの太陽直下点に近い南緯50度から57度の領域内に存在しています。このことは、トリトンが太陽から大きく離れているためとても微弱ではあるものの、太陽からの熱が極めて重要であることを示しています。トリトンの表面はおそらく暗い基質の上に半透明の凍った窒素の層から成り、一種の「固体の温室効果」を生み出すと考えられています。太陽からの放射は表面の薄い氷床を通過し、地上から噴出するのに十分なガス圧が蓄積するまで表面下の窒素を徐々に加熱して蒸発させています。そして、周囲の表面温度 37Kよりも温度が4K上回ると、観測された高さの噴出を駆動する可能性があるとされています。一般的にこうした地質活動は「氷の火山」と呼ばれていますが、この窒素のプルーム活動は、問題となっている天体の内部熱に駆動されるトリトンの大規模な氷の火山の噴火や、他の天体の火山活動とは異なります。これと同様に火星の二酸化炭素の間欠泉は、季節が春になる度に噴出すると考えられています。

 

以上で惑星「海王星」についてのお話は終了です。地球からも遠く、普段、あまり話題にならない地味な天体ですが、その観測の歴史は長く、またいつか世界的な発見と話題が生まれるかもしれません。

次回は準惑星「冥王星」について勉強してみましょう。

<参考・引用資料>

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「NASAホームページ」、「JAXAホームページ」

「Wikipedia」海王星