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おもしろい宇宙の科学(21)<太陽系-その13(小惑星)>

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2019年(令和元年)5月1日

本日から新元号「令和」となります。記念すべきこの日も、「平成」から引き続き、NeoMag通信をお届けできることを、読者の皆様に心から感謝申し上げます。

NeoMag通信はこれからも“好奇心をそそる科学テーマ”を選びながら、最新の情報を皆様にお届けして行きたいと思います。

さて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月5日、小惑星「リュウグウ」(直径約900m)で人工クレーターを作る実験を行い、探査機「はやぶさ2」から分離した衝突装置(インパクター)が金属の塊をリュウグウに撃ち込んだと発表しました。そして、4月25日、リュウグウへの再接近観測を行って、クレーター作成成功を確認できました。詳細な日程はまだわかりませんが、次はいよいよ「地表下の岩石サンプル収集」のミッション実行へと移行します。「はやぶさ2」にはいつもワクワクさせられますね。

このように、小惑星探査の大きなプロジェクトが進行中ですので、今月は太陽系外縁から再度太陽に近い位置に戻り、現在JAXAの「はやぶさ2」が探査中の「リュウグウ」やNASAの「オシリス・レックス」が探査中の「ベンヌ」などの小惑星や小惑星帯について勉強してみたいと思います。

[小惑星-1]小惑星が集中する小惑星帯

小惑星は太陽系の広い範囲にありますが、特に多くの小惑星が集中する場所があります。それは火星軌道と木星軌道の間、2~3天文単位の範囲で、小惑星帯と呼ばれます。

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ここにある小惑星の多くは直径数km~数十kmほどで、軌道が推定されている小惑星は70万個以上あり、軌道の確定に貢献した人に、命名権があたえられます。

一般的には前図のように宇宙空間に岩石がびっしりと密集しているイメージで描かれることが多いのですが、実際の小惑星帯の大部分は空間です。宇宙船がゆうに素通りできるほどの空間があり、慎重に狙いをつけずに小惑星に到達するのはほとんど不可能であるといえるほど広大な規模に散開しています。

それでもなお、現在小惑星帯には何十万もの小惑星が発見されていて、その総数は数百万もあると推定されます。またそれ以外にも1個の準惑星逆行小惑星、何個ものメインベルト彗星彗星・小惑星遷移天体も存在します。小惑星帯にある天体のうちおよそ220個は直径が100kmを超え、中でも最も大きいのは「ケレス」であり、その直径はおよそ1,000kmです。小惑星帯内の全体の質量は地球の衛星である月の1/35程度の小さな質量となります。そしてその総量の1/3はケレスによって占められています。

その数の多さは非常に活発な環境形成に役立ち、そのために、小惑星同士の衝突は頻繁に起こります。

衝突は小惑星を新しい小惑星の「族」を形成するような多数の小さい断片にするか、それが低い相対速度で起こるならば2つの小惑星を接合する可能性もあります。50億年後には小惑星帯にある小惑星のほとんどは現在のものと同一ではなくなっていると考えられています。

[小惑星-2]太陽系創世記の情報を有する小惑星

太陽系が誕生した46億年前、原始太陽系星雲には直径数km~10km程度の微惑星が100億個もできたと言われています。この微惑星は互いに衝突と合体をくり返し、あるものは惑星にまで成長しました。

小惑星帯にある小惑星には、そのときに成長しきれず残ったものと、激しい衝突によって大きな天体が壊れてできたものがあると考えられています。

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小惑星の軌道の多くは木星や火星軌道の内側にありますが、まれに地球や太陽に近づくような長楕円軌道を回るものもあります。地球軌道の内側に入る小惑星は近地球型小惑星と呼ばれます。こうした天体にアポロ型天体などがあります。アポロ型天体の中には、かつての彗星がこの軌道におさまったと考えられるものも存在します。

小惑星は原始太陽系の情報を保持していると考えられるため、探査機で小惑星を調べ、サンプルを持ち帰るなどの試みによって原始太陽系の解明が期待されています。

[小惑星-3]小惑星探査

<ニア・シューメーカー>

2000年には、NASAの探査機「ニア・シューメーカー」が地球近傍小惑星「エロス」の観測を行い、その地表面がコンドライト隕石に似ていることを明らかにしました。地球でよく見つかるコンドライト隕石は、原始太陽系星雲の中で形成され、太陽系の原料になったと考えられているものです。

このミッションでは、エロスの大きさ、形状、質量、密度、組成、地表と内部の構造及び磁場の詳細な探査がおこなわれました。

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エロスとの遭遇に先立ち、「ニア・シューメーカー」は小惑星「マチルド」を接近飛行することになり、1997年6月27日、マチルドから2400kmの距離を接近通過しながら観測を行いました。

1998年1月、「ニア・シューメーカー」は地球スイングバイを終えてエロスに向かいました。そして2000年2月14日、エロスとのランデブーに成功し、小惑星の軌道に到着した最初の探査機となったのです。

その後、主に地表から20km~40kmの範囲の軌道を周回し、時には地表3kmの低空周回をしながら、エロスの形状、起伏に富んだ地表、地表を覆うレゴリス、溝や尾根といった地表の地形、そしてクレーターなど、計画をはるかに上回る16万枚以上の画像を撮影しました。

小惑星の地形図作成が完了した後、「ニア・シューメーカー」のエロスへの軟着陸が行われました。

元々、探査機は着陸用には設計されていませんでしたが、今後の小惑星探査ミッションのために、実験的に着陸を行うことになりました。成功する確率は1%以下だと言われていましたが、無事成功しました。

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<初代はやぶさ>

JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」は2003年5月に内之浦宇宙空間観測所よりM-Vロケット5号機で打ち上げられ、太陽周回軌道(他の惑星と同様に太陽を公転する軌道)に投入されました。その後、搭載する電気推進(イオンエンジン)で加速し、2004年5月にイオンエンジンを併用した地球スイングバイを行って、2005年9月には小惑星「イトカワ」とランデブーしました。約5か月の小惑星付近滞在中、カメラやレーダーなどによる科学観測を行いました。次に探査機本体が自律制御により降下・接地して、小惑星表面の試験片を採集することになっていました。その後、地球への帰還軌道に乗り、2007年夏に試料カプセルの大気圏再突入操作を行ってパラシュートで降下させる計画でしたが、降下・接地時の問題に起因する不具合から2005年12月に重大なトラブルが生じたことにより、帰還は2010年に延期されました。

2010年6月13日、サンプル容器が収められていたカプセルは、「はやぶさ」から切り離されて、パラシュートによって南オーストラリアのウーメラ砂漠に着陸し、翌14日16時8分に回収されました。はやぶさの本体は大気中で燃えて失われました。 カプセルは18日に日本に到着し、内容物の調査が進められ、11月16日にカプセル内から回収された岩石質微粒子の大半がイトカワのものと判断したと発表されました。

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小惑星からのサンプルリターン計画は国際的にも例が無かったのです。この計画は主に工学試験のためのミッションであり、各段階ごとに次のような実験の成果が認められるものでした。

  • イオンエンジンによる推進実験
  • イオンエンジンの長期連続稼動実験
  • イオンエンジンを併用しての地球スイングバイによる加速操作
  • 光学情報を利用した自律的な接近飛行制御と誘導
  • 小惑星の科学観測
  • 微小重力下の小惑星への着陸、および離脱
  • 小惑星サンプルの採取
  • サンプル収納カプセルの惑星間軌道から直接大気圏再突入・回収
  • 地表で小惑星のサンプル入手

はやぶさの地球帰還とカプセルの大気圏再突入、カプセルの一般公開、その後の採取物の解析などは日本を中心に社会的な関心を集めました。

<はやぶさ2>

JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」は「はやぶさ」の後継機で、炭素質からなるC型小惑星「リュウグウ」に着地、サンプルを採集、地球に持ち帰ることを目的に開発されました。これで太陽系の起源・進化と生命の原材料を解明しようと云うものです。前身の「はやぶさ」が探査したのは同じ小惑星帯にあるS型小惑星「イトカワ」でしたが、C型小惑星は、より始原的な天体で有機物や含水鉱物を多く含んでいると見られています。

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「はやぶさ2」は2014年12月3日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット26号機で打上げられ、小惑星リュウグウに2018年6月27日に到達しました。

打上げられてから地球の太陽周回軌道とほぼ同じ軌道で太陽を1周し、1年後に地球の近くに戻ってきました。そして2015年12月3日に地球をスイングバイしてリュウグウの軌道に近い軌道に入り、太陽を2周した後2018年夏にリュウグウに到着しました。

到着後はリュウグウが太陽周囲を1周する間、約18ヶ月間に渡り探査活動を続けます。そして2019年末までにリュウグウを出発、地球に向かいます。帰還は2020年末で、サンプルを収めたカプセルを海上で回収する計画です。

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「初代はやぶさ」からの主な改良点は

  • 地球との高速通信のため、Xバンド(8GHz)送受信にKaバンド(32GHz)通信系を追加し、高利得アンテナを改良、通信速度を8kb/secから32kb/secに早めた。
  • イオンエンジンの耐久性を増し、推力を8mNから10mNに増強した。(イオンエンジンは小惑星との往復飛行の軌道変更に使うもので、キセノンガスを使い、消費する推進剤の重量は化学推進の10分の1で済む。「はやぶさ」と同様「マイクロ波放電方式」で、「直流放電方式」で必要なカソー ドが不要。1万5千時間の耐久運転を実施済み。キセノンは60kgを搭載し使用する。)
  • 衝突装置を搭載、「りゅうぐう」表面に2kgの銅塊を衝突させ、人工クレーターを作り、地下の物質の採取を試みる。
  • 化学推進系を改良、配管からの燃料漏れをなくし、姿勢制御の信頼性を高めた。(化学推進系は姿勢制御と軌道の微調整に使うシステムで燃料/ヒドラジンと酸化剤/MON-3で推力を発生する2液式、推力20Nのスラスター12基が本体周囲に取り付けられている。推進剤は48kgを搭載する。)
  • 正確な着地のため、あらかじめ目標地点に発射・設置するターゲット・マーカー(TM)を3個から5個に増やした。(TMは直径10cm、弾まないように“お手玉”構造にし、表面は光をよく反射する素材にしてある。探査機はフラッシュを照射しTMを確認しながら降下・着地する。)
  • 姿勢制御装置(reaction wheel) を3台から4台に増やし、冗長性を増した。(はやぶさでは3台中2台が故障したのに対応したもの。)

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現在の「はやぶさ2」の状況は、皆様良くご存じのとおり、また文頭でもご紹介しましたように、ほとんどのミッションが順調に進行中です。このまま無事に大役を果たして帰還して欲しいものです。

<オシリス・レックス(OSIRIS-Rex)>

NASAの「オシリス・レックス」探査機は炭素を多く含んだC型小惑星「ベンヌ(Bennu)」に向かいました。

この小惑星は地球の海洋や生命の初期の兆候を含んでいると見られ、また同時に22世紀には地球に衝突する可能性がある危険な天体でもあります。「オシリス・レックス」はベンヌの物理的、化学的素性、さらに水分や有機物、貴金属成分を調査し、将来宇宙飛行の中継基地になり得るかを調べる計画です。

「オシリス・レックス」は米国東部夏時間(EDT)2016年9月8日にケープ・カナベラル(Cape Canaveral,Florida)からアトラスV411ロケット打上げられました。その後太陽を一周、2017年9月22日に地球の重力を利用・スイングバイして目標の小惑星ベンヌに進路を採り、2018年8月に到着しました。

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探査機はこれまでに10月1日と10月15日にベンヌに接近する飛行(AAM=Asteroid Approach Maneuver )を行なっていますが、2018年10月30日には3回目の接近飛行/AAM-3を行い、探査機とベンヌの相対速度を5.13m/秒に落としました。AAM-4は11月12日に実行され、これで探査機は12月3日にベンヌから20km位置に到着しました。

その後、クレーター形成はしないものの、「はやぶさ2」と同様、窒素ガス噴射で飛び散った地表のサンプルを収集することになっていますが、現在そのミッションに遅れが出ています。その理由は「はやぶさ2」のリュウグウと同様、ベンヌの地表面が予想以上に岩石が多く、タッチダウンの場所の選定が難しくなっているためです。

先月(2019年4月中旬)、オシリス・レックスのプロジェクトメンバーがJAXAを訪問して、「はやぶさ2」がリュウグウのタッチダウン場所を決定して、タッチダウンを成功させた行程とノウハウについて詳細に協議しました。どうやら、「はやぶさ2」の探査・制御技術がNASAの探査機にも生かされることになりそうです。

オシリス・レックスは2021年3月にベンヌを出発し、地球に向かい2年半後の2023年9月に帰還する予定です。サンプルを収めたカプセルは大気圏突入時に探査機から分離され、パラシュートでユタ州にある広大な国防軍演習地に降下、回収されます。採取したサンプルは75%をNASAで分析し残りの25%は広く世界中の科学者に提供されます。

[小惑星-4]地球に衝突する小惑星?!

小惑星探査機の使命は“宇宙・太陽系の科学的探査”だけではなく、もう一つの“将来の潜在的に危険な小惑星に人類が対処する方法を探る“という重要な使命を帯びています。

潜在的に危険な小惑星とは、地球近傍小惑星の中でも、特に地球に衝突する可能性が大きく、なおかつ衝突時に地球に与える影響が大きいと考えられる小惑星の分類です。英語名の"Potentially Hazardous Asteroid"の頭文字であるPHAが略称としてよく使われます。

ユージン・シューメーカーは、地球に衝突し、地球規模の災害おこす危険性がある小惑星を750~900個と見積もりました。マサチューセッツ大学で2000年に行われた理論計算では、少なくとも1000個以上と予測されましたが、その後、2012年の調査ではPHAは1331個登録されました。

恐竜を絶滅に追いこんだ小惑星の直径は約10kmです。しかし、わずか直径1kmほどの小惑星が衝突しても、全人口の10%は失われると試算されています。

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PHAの衝突リスクの測定の難易度はさまざまです。地球に接近するため、精密な測定をするには都合が良いのですが、地球に極端に接近すると、地球による重力によって軌道が曲がるため、その後の軌道を予測するのは難しくなります。また、小惑星が小さいと、ヤルコフスキー効果によって軌道が変化しやすくなります。前者の例は小惑星「アポフィス」、後者の例は「ゴレブカ」があります。あるいは、小さな小惑星であったり、地球軌道の内側で交差していると、観測が難しくなって長期間行方不明になる場合があります。「ヘルメス」は1937年に観測された後、2003年に再発見されるまで66年間も行方不明でした。

また、PHAは地球とよく似た軌道を持つため、小惑星探査機を送り込むには都合の良い対象です。「はやぶさ」が探査したイトカワ、「はやぶさ2」のリュウグウ、「オシリス・レックス」のベンヌは、いずれもPHAです。ただし、ニア・シューメーカーが軟着陸したエロスはPHAではありませんでした。

欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げを予定している、小惑星に物体をぶつけて軌道を変える実験を行う「ドン・キホーテ」では、2個の候補のうち1つにPHAの「アポフィス」が選ばれています。

以上のように、「令和」の最初のNeoMag通信は「小惑星」と「小惑星探査」についてのお話となりました。日本の「はやぶさ2」のミッションはまだまだ残っています。これからも、「はやぶさ2」から目が離せない状況が続きますね。

次回は、「彗星」について勉強してみたいと思います。

<参考・引用資料>

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「NASAホームページ」

「JAXA」ホームページ

「Wikipedia」小惑星探査