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おもしろい宇宙の科学(22)<太陽系-その14(彗星)>

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」はリュウグウ地表下の岩石採取のためのクレーター作成に成功して、次のステップに進む方針が決まれば、いよいよ6月末~7月のうちに再度タッチダウン・サンプル採取に挑戦します。再び私たちは、遠い宇宙での壮大な実況中継をみることができそうです。

今月は時々地球上に明るい尾を引きながら現れる「彗星」について調べてみました。

[彗星-1]よごれた雪だるま

夜空にぼんやりと輝き、地球に近づくとほうきのような長い尾をひく彗星は、その姿から「ほうき星」とも呼ばれます。

彗星の主成分は水(氷)で、表面に砂がついた「汚れた雪だるま」にたとえられます。太陽に近づくと、その熱で彗星本体(核)の表面が少しずつとけて崩壊します。そのときに本体の氷が蒸発し、ガスと塵も一緒に表面から放出されます。その結果、彗星の本体がぼんやりとした淡い光に包まれるように輝いて見えます。これは「コマ」と呼ばれます。

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コマは密度がとても薄く、最も濃い部分でも、地球大気の1000万分のしかありません。核の大きさは数~数十kmですが、コマは直径10万~100万km にもなります。太陽直径が約140万km なので、とても大きいことがわかります。

さらに、本体から放出されたガスと塵がほうきのように見える「尾」を作ります。彗星の尾は、その成分と見え方から大きく2種類に分けられます。一つは、ガスが作る「イオンの尾(または、プラズマの尾)」です。放出された電気を帯びたガス(イオン)は、太陽風に流されて太陽とは反対の方向に細長く伸びます。もう一つは、塵が作る「ダストの尾(または、塵の尾)」です。放出された塵は、太陽の光の圧力(光圧)を受けて太陽とは反対の方向に伸びますが、塵のサイズによって圧力の受け方が異なるために、彗星の軌道面に広がった幅のある尾になり、イオンの尾とは異なる様子になります。一部の粒の大きな塵は、彗星と同じように彗星の軌道を周回し続けます。これが流星群のもとになるのです。

 

このような彗星のコマや尾が目立って観測され始めるのは、彗星が太陽からおよそ1天文単位前後、つまり地球の軌道程度まで近づいてからです。彗星が太陽に近づくほど本体から放出されるガスや塵の量が多くなるため、コマは明るくなり、尾も明るく長く伸びます。しかし、太陽に近づいた際に、どの程度明るくなるか、地球からどのように見えるかは、彗星本体のサイズや表面の状態、成分、さらに地球との位置関係によっても異なるため、正確な予測は難しいのです。

[彗星-2] 短周期彗星と長周期彗星

太陽の周りを何年かけて一周するかによって彗星を2種類に分類できます。周期が200年より短いものを短周期彗星、それ以上の周期のものと、太陽に一度だけ近づくが二度と近よらないものを長周期彗星と呼びます。また短周期彗星の中でも、ハレー彗星のようにふつうの惑星と逆向きに公転するような逆行軌道をもつものをハレータイプ、テンペル彗星など惑星と同じ向きに公転する順行軌道のものを木星族タイプと呼びます。

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[彗星-3]彗星のふるさと

惑星とは異なる公転軌道をもつ彗星は、一体どこからやってくるのでしょうか。彗星の供給源としては、「オールトの雲」「エッジワース・カイパーベルト」の2つが考えられています。

太陽系創成期には、原始太陽系円盤に存在していた微惑星が合体して惑星が作られたと考えられています。また、太陽から遠い場所にあった氷と塵は、混在して氷微惑星となりました。この氷微惑星のうち、大きく成長した惑星によって太陽系の外側へと散らされたものがオールトの雲に、海王星より外側の領域で惑星の成長途中で取り残されたものがエッジワース・カイパーベルトになったと考えられています。

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オールトの雲は、太陽系の外側・太陽から数万天文単位付近をぐるりと大きく球殻状に取り囲む氷微惑星の集まりで、長周期彗星はここからやってくると考えられています。エッジワース・カイパーベルトは、氷微惑星が海王星軌道の外側にほぼ黄道面に沿った軌道で分布している場所で、短周期彗星はここからやってくると考えられています。いずれも、それぞれの場所にある氷微惑星が何らかの原因(惑星の引力)で軌道を変え太陽系の内側へ向かう軌道に変化し、やがて太陽に近づいて「コマ」や「尾」を持つ彗星へと姿を変えるのです。

このように太陽から遠く離れた冷たい場所をふるさととする彗星は、太陽系が生まれた頃の惑星形成時の情報をそのまま閉じ込めて、太陽に向かって進んでくるのです。

[彗星-4]ハレー彗星

ハレー彗星は約75年周期で地球に接近する短周期彗星です。公転周期は75.3年で、多くの周期彗星の中で最初に知られた彗星であり、古来多くの文献に記録されています。前回は1986年2月に回帰し、次回は2061年夏に出現すると考えられています。

彗星はいつも見えるわけではありません。太陽に近づくと明るく輝くため、日没後か日の出前に見ることができます。

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ハレー彗星の核は約8km×8km×16kmの大きさでジャガイモのような不定形をしています。核の密度は0.1 - 0.25g/cm3と推定されています。核の表面は非常に暗い色をしており、光の反射係数・アルベドは約0.04と非常に小さい値です。

探査機ジオットによる調査では、彗星核表面には炭素が多く存在することが明らかになっている。核から放出された物質の組成(体積比)は、水(氷)が80%、一酸化炭素が10%、メタンとアンモニアの混合物が2.5%などとなっており、他に炭化水素や鉄、ナトリウムなどが微量に含まれます。またシアンガスもわずかに含まれています。

ハレー彗星から放出された物質は、5月のみずがめ座η(エータ)流星群および10月のオリオン座流星群の流星物質となっていると考えられています。

次図左は1986年、欧州宇宙機関(ESA)の探査機ジオットがとらえたバレー彗星の核の姿です。核は長さ15km、幅8kmで表面にはクレーターや丘らしいものが見えます。太陽を向いた面からは、ちりやガスを噴き出していました。

次図右はNASAの宇宙探査機・スターダストが撮影したヴィルド第2彗星(81P/Wild)の核の姿です。画像は短時間露出と長時間露出の画像を合成したものです。

この彗星は周期6.41年で太陽の周りを公転する短周期彗星で、1978年1月6日、スイスの天文学者パウル・ヴィルトによって発見されました。

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[彗星-5]生命の起源に関係か?

第3章でも述べましたように、彗星の起源は、海王星の外側にある小惑星帯や、その外側にあるオールトの雲にあるらしいといわれています。それらの小天体は、太陽系の創成期に取り残された惑星の原材料だと考えられています。

2004年には、工藤・藤川彗星の尾に大量の炭素が含まれていることがわかりました。炭素は生命になくてはならない物質です。したがって、生命の起源を明らかにする天体として、近年、小惑星と共に彗星が大いに注目されています。

 

<彗星探査機フィラエ>

欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査・着陸機「フィラエ(Philae)」が2014年11月に着陸を果たした彗星の奇妙な外観は、地球外微生物の存在で説明できるとの新説が2015年7月、天文学者チームから発表されました。

氷の湖を覆う黒い外殻、底が平らのクレーター、表面に点在する大きな岩など、凍った塵の塊である67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の特徴の多くは、微生物の存在と「整合する」ものだということです。

英カーディフ大学のマックス・ウォリス氏は、英王立天文学会(RAS)が発表した声明で、ESAの彗星周回探査機「ロゼッタ(Rosetta)」によるこれまでの観測は、67P彗星が「凍り付いた不活発な天体ではなく、地形上の変化が維持されている」ことを示していると述べています。実際、秒速32.9キロで太陽方向に突進している67P彗星は「地球上の北極や南極より、微生物の生存に適しているかもしれない」と言っています。

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ウォリス氏と共同研究者の英バッキンガム大学宇宙生物学研究センターのチャンドラウィクラマシンゲ氏の研究チームは、英ウェールズスランデュドゥノで開かれた2015年7月のRAS年次会議で、この新説を発表しました。

研究チームは、複雑な有機物質がロゼッタで検出されたことを「生命の証拠」として指摘して、この有機物質が、67Pの表面を驚くほど超暗黒で低反射にしていると述べています。

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また、ウィクラマシンゲ氏は、67P彗星のガス噴出が「太陽から十分に離れていて、表面の昇華を起こせない距離」から始まったと発表しました。これは、彗星の表面下に存在する微生物が高圧ガスのポケットを形成し、これが上部の氷を割ることで、有機粒子が放出されることを示唆していると述べています。さらに、割れ目がふさがれたり岩が動かされたりした痕跡が、岩だらけの彗星表面にみられることや、「再供給される必要がある」有機物の覆いなどにも言及しました。

 

<近日点通過が近づくにつれ微生物が活発に>

観測される特徴は「すべて、67Pが宇宙を公転する間、活動的な微生物を維持可能な期間に、太陽からの熱を受けつつ固まりになる氷と有機物質の混合物に整合する」と声明は述べています。

研究チームによると、微生物は、67Pに生息地をつくるのに液体の水を用いている可能性があるということです。宇宙を旅する67P彗星が太陽に接近する暖かい期間には、この水が氷の割れ目から染み出して「雪」になります。不凍性の塩を含む生命体は、このような状況に適応するのを特に得意としていて、中には、マイナス40度の低温状態で活動できるものもいるということです。彗星表面の太陽光に照らされている領域は、67P彗星が太陽から約5億キロの距離にある時点ですでにこの温度に達しており、弱いガス噴流を放出していました。

 

太陽の周りの楕円軌道を周回している彗星が、太陽に接近して熱を受けると、昇華と呼ばれる固体から気体への状態変化プロセスが起き、これによって彗星に見事な尾が形成されます。67Pが太陽に接近する近日点通過に近づくにつれ、「微生物はますます活動的になるはずだ」と研究チームは述べています。

 

以上、今月は「彗星」について調べてみました。太陽の周りを惑星とは異なる公転軌道で「凍ったり、溶けたり」しながら回る彗星は、派手な天体ショーを見せてくれるだけでなく、生命の起源についての証拠を運んでいるようですね。

次回は、あまり馴染みのない惑星ですが、「系外惑星」について調べてみましょう。

<参考・引用資料>

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「NASAホームページ」

「JAXA」ホームページ

「ESA」ホームページ

「Wikipedia」彗星

「AFP/BBNEWS」ホームページ