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おもしろいロケットの科学(2)<ロケットの原理II>

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2019年(令和元年)10月1日

前回はロケットの推進原理や種類・分類についてお話をしました。また、構造上現代の大型ロケットの大半を占める“化学ロケット”に関しては詳細に調べてみました。

今月は、近年、大きな成果を上げ始めた“宇宙探査”の技術の中で、ますます重要な役割を担うことになりそうな各種“非化学ロケット”について詳細に勉強してみたいと思います。

[ロケットの原理-5]非化学ロケットエンジン

化学ロケットエンジンは、大きな推力を出すのに向きますが、長時間の連続運転ができないという欠点をもちます。近年、地上からの打ち上げや短期間の惑星間飛行など、大推力を必要とする場合を除き、非化学ロケットエンジンが重要な役割を果たすようになってきました。

現在、化学ロケットの欠点を補う、いろいろなエンジンが開発されていまが、すでに実用化の段階にあるのが、電気推進方式のイオンエンジンプラズマエンジンです。どちらも推力が小さいため、「低推力エンジン」と呼ばれています。イオンエンジンは“クーロン力によって推進剤を加速するタイプ”であり、プラズマエンジンは“熱エネルギーを運動エネルギーに変換タイプ”です。

<イオンエンジン>

系が加速する方向に静的な電場を作り、クーロン力によって推進剤を加速する静電加速型のエンジンです。イオンの加速を空間電位に頼っているので、宇宙機が帯電しないよう中和器を装備する必要があります。陽イオン源で推進剤を陽イオン化して電界の中に放出すると、正の電荷をもつ陽イオンは負電極にむかって加速運動を始めます。このとき機体は陽イオンが得た運動量の総和と同じ大きさで逆向きの運動量を得ます(すなわち、イオンの加速の反作用により機体が加速します)。イオン源の反対側にある負電極はグリッド状(グリッド電極)になっているため、加速された陽イオンのほとんどは負電極に衝突せず通過してゆきます。その後、機体の外部に放出された陽イオンと同等の電子を中和器から放出し、機体の電気的中性を保ちます。陽イオン源と電極・中和器は、機体の各部位の電位を維持するために電気的に接続されています。

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なお、推進剤としてはキセノンを用いる場合が多いようです。他にリチウムやビスマスを用いる形式もあります。また、高度数百km以下の低軌道を周回する衛星においては、希薄に存在する大気を吸気して、これを推進剤として利用する事が構想されています。

 

■「初代はやぶさ」のイオンエンジン

イオンエンジンは、はやぶさ計画の初号機「はやぶさ」にも搭載されていた電気推進方式を使った宇宙ロケットエンジンです。キセノンという気体をプラズマ化し、電気的に加速させ噴射し推進力を得る方式です。このエンジンの実用化に世界で初めて成功したのが日本で、2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されたことは有名です。その前にもNASAなどが実験的にいくつかの衛星や探査機に搭載されていましたが、メインの推進エンジンとして本格的の運用されたのは日本の「はやぶさ」が初めてでした。

イオンエンジンの特徴は、これまでの化学燃料を使ったエンジンとは異なり10倍ほどの燃費効率が良く、さらに長寿命です。長い時間航行が必要となる惑星探査機などには、画期的なエンジンで今後も広く利用される可能性があります。

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■イオンエンジンの推進力とは?

イオンエンジンは小型で低燃費、そして長寿命。まさに夢のエンジンとも言えるのですが、大きな欠点もあります。それは非常に出力が弱いということです。

搭載される探査機の重量にもよりますが、「はやぶさ2」の場合は重量が600キロにもなります。イオンエンジン1基あたり、この600キロの重量の期待を推進させるのに1時間で時速6センチにしかなりません。つまり、このエンジンの推力は人が息を吹いているようなモノとも言えます。

ただ、宇宙空間では地上のような空気抵抗もありませんので、エンジンを推進し続ければ続けるほど加速し、時間はかかりますがいずれは十分な加速が出来るようになります。

このように弱い推力のエンジンのため、現時点では重量の重い有人宇宙船などには利用出来ないエンジンでもあります。

■物語を演出した「はやぶさ」のイオンエンジン

初号機「はやぶさ」には4基のイオンエンジンが搭載されていましたが、帰還途中で4基中3基のエンジンが故障してほぼ航行不能に陥ってしまいました。原因は、航行中にイオンエンジン以外の姿勢制御エンジンが故障し、代わりにイオンエンジンを酷使したことでこちらにも支障をきたし作動しなくなったという事でした。

しかし、ある技術者が万が一の事を考え、4つのエンジンを繋ぐ回路(クロス回路)を造っておいたお陰で、残った1基のエンジンから他のエンジンに回路を繋げて推進力を得ることが出来たため、はやぶさは何とか無事に地球に帰還する事が出来たという逸話が残っています。

■「はやぶさ2」に搭載された改良型イオンエンジン

初号機「はやぶさ」の教訓を活かし、2号機の「はやぶさ2」には改良された新型のイオンエンジンが搭載されています。このエンジンはより長時間の運転に耐えられる設計であり、今回運転されたエンジンの稼働時間は約800時間で、これは前回の「はやぶさ」の時よりも2倍も長い時間運転出来ると言います。

今回のイオンエンジン運転は、目的地である小惑星「リュウグウ」の軌道に乗せ、リュウグウに追いつかせるための加速のためです。このエンジン運転は2018年の7月頃まで続けられ、少しずつ加速して行き小惑星リュウグウに到達させました。

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前回の「はやぶさ」の時は小惑星「イトカワ」に向かう途中に4基中2基のイオンエンジンが故障しましたが、今回は4基全てのエンジンが順調に動いています。加速には3基のイオンエンジンを使っているようですが、この3基のエンジンで約1年半の長期連続運転になります。最後まで問題が起こらず順調に運転出来る事を祈るばかりです。

このように弱い推力のエンジンのため、現時点では重量の重い有人宇宙船などには利用出来ないエンジンでもあります。

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<プラズマエンジン>

気体温度を上げると、気体の原子は、[-電気]の粒子と[+電気]のイオン粒子に分かれます。[+電気]の粒子と[-電気]の粒子の混在状態がプラズマです。プラズマエンジンは、推進剤ガスを電気放電によってプラズマにし、これを電磁的に加速して噴射するしくみになっています。

プラズマエンジンもイオン・エンジンと同様、推力は小さいが長時間働くことができます。人工衛星を高度の低い軌道から静止軌道へ移す時や、長時間にわたる軌道の制御などに適しています。

■電熱加速型

電気エネルギーで推進剤を加熱し、ノズルなどを用いて熱エネルギーを運動エネルギーに変換して推力を得る電熱加速型です。

DCアークジェット

放電により推進剤を直接プラズマ化、ガスを噴射します。

レジストジェット

推進剤を電熱器などによりガス化して噴射します。

■電磁加速型

ローレンツ力を用いているもののほか、電場と系の加速の方向が互いに異なるタイプの推進系は電磁加速型と呼ばれます。プラズマの性質を利用して加速するため、中和器が必要ありません。

磁場プラズマ力学推進器(MPD)/リチウムローレンツ力加速器(LiLFA)

プラズマ化したリチウムイオンをローレンツ力で加速します。

比推力可変型プラズマ推進機(VASIMR)

DCアークジェットよりもはるかに高いプラズマ温度を達成することが可能です。電熱加速のシステムとも、電磁加速のシステムであるともいえます。

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<原子力エンジン>

原子力エンジンは、ふつう原子炉の熱で液体水素などを高温のガスに変えて噴射するエンジンで、原理から見ると化学ロケットエンジンと同じ仕組みです。この原子力エンジンに使うウラン燃料は、1kg(大人握り拳)の大きさで、大きな熱を長時間発生します。機体を軽くすることができるという利点があります。

原子力エンジンの原子炉は、固体炉心型/液体炉心型/気体炉心型の3種類があります。現在作られているのは、固体炉心型原子力エンジンで、まもなく実用化される予定のようです。原子力エンジンは、化学ロケットよりもすぐれた推進性能が期待されています。

宇宙における原子力の利用にはいくつかの種類がありますが、近年NASAが開発を決めたのは「原子力ロケット」と呼ばれ、原子力を電力源ではなく、推進力として使うものです。

その仕組みは、臨界状態の原子炉の炉心に、液体水素などの推進剤を当て、その熱で超高温・高圧のガスにし、それを噴射するという単純なものです。こうした方法を「熱核ロケット」とも呼んでいます。

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熱核ロケットの最大の特長は効率がとてもよいところにあり、現在実用化されているような、燃料と酸化剤を燃やし、発生したガスを噴射する形式のロケットエンジンと比べ、2倍以上も効率(燃費)がよいと言われています。つまり同じ量の推進剤でも、より速いスピードを得ることができるということです。また推進剤も、液体水素が最も性能がよいものの、要は炉心に当ててガスになればよいので、ケロシンや水を使うこともできます。

逆に欠点としては、安全性の問題があります。宇宙用原子炉にも通じることですが、打上げ失敗すれば、放射性物質が撒き散らされる可能性があります。原子力電池(RTG)は強固なカプセルに入れたり、宇宙用原子炉も運用終了時には高軌道に捨てるなどして、少なくとも地上に被害が出ないような配慮が必要です。

しかし原子力ロケットはその仕組み上、炉心に当たって汚染されたガスを噴射することになるので、大気圏内で使うわけにはいかないし、地上で噴射試験をする場合にも細心の注意を払う必要があります。

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原子力ロケットはこれまで実用化されたことはありませんが、1950~70年代には米国とソ連でさかんに研究され、米国では「ナーヴァ」(NERVA)、ソ連では「RD-0410」といったエンジンが実際に造られ、噴射試験まで行われています。ソ連では有人月飛行用のロケットの上段エンジンとして、また米国でも、アポロ計画以降に計画されていた有人火星探査に使うことが考えられていましたが、いずれも実用化までに膨大な開発費が必要なことや、そもそも有人月・火星飛行計画が打ち切られ必要性がなくなったことなどから、実現することはありませんでした。しかし、有人宇宙探査計画の復活や超長航続距離が可能な大陸間弾道弾(原子力ICBM)実用化に向けて、再び、研究・開発が推進されているようです。

<その他の未来ロケットエンジン>

現在開発が進められているロケットエンジンの他に、理論上から考えられているロケットもいろいろあります。

宇宙を夢見る人たちの想像の世界を、科学の進歩が実現させました。近い将来、光子ロケットやラム・ロケットが、宇宙を航行する日を迎えるかもしれません。

■光子ロケット

物質と反物質を反応させ、光に変えて、それを噴射して進みます。光子ロケットは1935年にドイツのゼンガーによって提案されたシステムで、SF(科学小説)にもよく登場しますが、光子を完全に100%反射させる反射鏡や、強い光を発する発光体の開発など、技術的にはむずかしい問題が多く、実現の可能性はきわめて低いと思われます。

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■ラム・ロケット

恒星間に希薄(きはく)に存在している水素原子を集めて核融合を起こし、それを噴射して飛行します。1Gの加速ができ、長期間の噴射によって光の速度に近づけることができるため、恒星間飛行用として有望視されているシステムです。

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■核融合パルスロケット

小型の核融合物質を連続して爆発させ、その爆発力を反射プレートなどで受けて推進します。たとえば、連続爆発は毎秒200回にもおよびます。

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■レーザーロケット

レーザー基地からロケットにレーザーを送り、そのエネルギーで推進します。

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■太陽光ヨット

太陽から放射される光の圧力を利用して、海上のヨットのように宇宙を飛行しようという考えです。2010年に打上げられたJAXAの金星探査衛星「イカロス」で実証実験を行い、史上初の太陽帆航行が確認されました。

さらに、国際NPOの惑星協会が2019年6月に打ち上げたソーラーセイル実証機で、太陽からの光圧のみで推進する「ライトセイル2号」は史上2例目の成功となりました。帆はポリエステル製で4つの直角二等辺三角形で構成され、面積は32平方メートルです。打ち上げ時は3リットルの容積で軌道投入後に展開されました。

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太陽帆とは、ソーラー帆、ソーラーセイル、光帆とも呼ばれ、薄膜鏡を巨大な帆として、太陽などの恒星から発せられる光やイオンなどを反射することで宇宙船の推力に変える器具のことです。これを主な推進装置として用いる宇宙機は太陽帆船、太陽ヨットなどと呼ばれます。

化学ロケットや電気推進と比べ発生する推力は小さいものの、燃料を消費せずに加速が得られるという利点があります。現在は研究段階ですが、実用化すれば惑星間などの超長距離の移動が容易になります。

また、将来的な構想として、出発地から照射された強力なレーザーを帆に当てて推進力とする宇宙船も考案されています。

 

以上、今月は「非化学ロケット」について、その種類、推進原理などについて調べてみました。私たちがロケット基地やテレビ中継などで見る「力強く炎を噴射する」化学ロケットは、ほとんどが地球の重力圏の中だけの働きであり、一旦、宇宙に飛び出した後は、先端ロケット技術を駆使した「非化学ロケット」が主役になってきていることが、読者の皆様にもお分かりになったのではないでしょうか。

次回はロケットの航法、誘導方法、姿勢制御方法などについてお話をしたいと思います。

<参考・引用資料>

「NASAホームページ」

「JAXA・宇宙情報センター」ホームページ

「Wikipedia」

「宇宙の謎・宇宙開発の歴史」ホームページ

「トコトンやさしい宇宙ロケットの本」日刊工業新聞社