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おもしろいロケットの科学(5)<地球からの脱出>

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2020年(令和2年)1月1日

明けましておめでとうございます。本年も、弊社は “お客様の夢とアイデアの実現”をモットーに頑張る所存です。引き続き NeoMag製品およびNeoMag通信のご愛読をよろしくお願い申し上げます。

NeoMag通信も“宇宙の謎”や“宇宙探査”のお話から“ロケットの科学”へと進んでまいりました。そこで、間もなく宇宙、ロケットから離れ、“次のおもしろいテーマ”に移ろうと考えています。

今まで、読者の皆様が普段“不思議に思っていること”または“できればもう少し詳しく知りたいこと”などをNeoMag通信は取り上げてまいりました。次のテーマも同様なコンセプトで選定中ですので、どうかご期待ください。

なお、帰還中のはやぶさ2の動向などの“宇宙”や“宇宙探査”の特別なニュースについては、その都度、弊社トップページの[宇宙速報]などで引き続きお知らせする予定です。

[地球からの脱出-1]ロケットの打ち上げ方向と地球の自転速度

人工衛星などを地球の軌道に投入するためには、非常に大きなスピードが必要になります。そのスピードを少しでも稼ぐために、地球の自転方向である東側に向けて打ち上げを行います。

地球は1日に1回転(自転)していますが、この回転の方向は、西から東に向けて回転しています(太陽が東から西に動いてみえるのはこのためです)。また、その時の地表の速度は、北極や南極に近いほど遅く、赤道に近いほど速くなっています。

JAXAが打ち上げを行っている種子島宇宙センターを例にあげますと、種子島センターは北緯約30度に位置し、そこでの自転の速度は秒速約400メートルにもなります。つまり、ロケットを打ち上げる場合、東側に打ち上げることによって、地球の自転速度を有効に利用することができ、エネルギー的に効率がよくなります。結果として、同じロケットでも、より重い人工衛星を打ち上げることができます。

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ちなみに、真西に打ち上げる場合の人工衛星の質量は、真東に打ち上げる時のほぼ2分の1の物しか打ち上げられなくなってしまいます。それほど地球の自転速度は、打ち上げる人工衛星の質量に影響しているわけです。このようにして打ち上げられた人工衛星は、一般的には地球を西から東に回る軌道に投入されることになります。

しかしながら、人工衛星はそれぞれの目的を持って打ち上げられ、かつその目的を達成するために適した軌道に投入されます。したがってすべての人工衛星が必ずしも東側に向けて打ち上げられているわけではありません。地球観測衛星は全地球を効率的に観測するため、投入される軌道は、地球の北極と南極上空を通る、ほぼ縦に回る軌道(極軌道)に投入されますが、この場合は、南に向けてロケットを打ち上げます。また、通信衛星や気象衛星は常に真上に見えるような軌道をとります。

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[地球からの脱出-2]ロケットの打ち上げ方向と軌道傾斜角

発射台から飛び立ったロケットは徐々に向きを変えながら、ある方向に向けて飛び去って行きます。いったいどっちの方向をめざせばいいのでしょうか。それは、目標とする衛星の軌道傾斜角によって決まってきます。

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目標とする軌道傾斜角に特に注文がない場合には、前項の説明のように、真東に向かって打ち上げると自転のスピードを最大限利用できるので最も有利です。たとえば鹿児島県内之浦にある発射場から打ち上げる場合を考えてみますと、この発射場の位置、北緯31度から真東に打ち上げた場合、地球上の軌道直下点を結んだ線は、前図のように北緯31度と南緯31度を挟む波打つような曲線になります。それは衛星の軌道面が、地球の中心を通るような面になっていなければならないからですが、ちょっと考えれば納得できます。真東ではなく、打上げ後にロケットを向ける方角をもっと南向きにすればするほど、途中で軌道を意識的に曲げないかぎり、ロケットの飛翔経路の軌道傾斜角は大きくなっていきます。

真南をめざすという極端な場合を想定すると、それは北極と南極の上空を通る「極軌道」になります。ところが、たとえば内之浦の真南には種子島があり、そのはるか南にもインドネシアの島々が横だわっているというような制限があり、ロケットの安全に特に気を配りたい時や、打上げ直後に陸の頭上を飛びたくないような時には、自由にどっちの方向に打ち上げてもいいというわけにはいきません。

そこで、内之浦から極軌道に乗せる場合では、安全性を見て北から右回りに150度くらいの方角にひとまず打ち上げて、途中から軌道を曲げて目標の軌道傾斜角を実現するのです。この軌道を横に曲げる操作を「ドッグーレッグ」と呼んでいます。 このようにいろいろなことに気をつかって、発射方位は決められています。

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[地球からの脱出-3]ロケットの速度と軌道

地表で水平方向に物体を投げてみる。もし、地球が平面で果てしなく続き、重力が地表に向かって働くのなら、どんなに初速度が大きくても物体はいずれ地上に落ちてしまいます。これは、次図のように、重力加速度により物体の速度ベクトルが最終的には地表に向かうことによります。

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しかし、実際には地球は球体であり、重力はその中心に向かいます。このため、次図のA点から水平に投射した物体は、初速度の大きさによりp1→ p2→ p3と段々遠くまで届くようになり、ある速度になるともとの投射点に戻り、あとは繰り返して地球を周回するようになる。つまり、物体は地球の人工衛星になったのであり、この周回軌跡を軌道(orbit)と呼びます。このときの軌道の形は円軌道です。

また、このとき速度を「第一宇宙速度」といい、“約7.9km/s”です。

初速度をさらに大きくしていくと軌道は楕円になり、ある速度になると物体は放物線を描き、周回して再び同じ点に戻ることはなく、地球の引力を脱出します。この時の速度を「第二宇宙速度(脱出速度)」といい、“約11.2km/s”です。

さらに初速度を大きくして、第二宇宙速度以上の速度になると、軌道は双曲線を描き脱出軌道をとります。そして、“16.7km/s”以上になりますと太陽系の外へ向かいます。この速度を「第三宇宙速度」と呼びます。なお、物体の地表からの高度を大きくすると、円軌道に達する速度も地球を脱出する速度も、上記の地表すれすれの速度より小さくて済みます。

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[地球からの脱出-4]脱出の条件と軌道制御

前項でもお話しましたように、人工衛星を軌道にのせるには7.9km/s(第一宇宙速度)以上の打出し速度が必要です。この打出し速度を増加させてゆくと、軌道はどんどん長い楕円形になり、11.2km/sを越えると、重力の影響を振り切って地球に戻ってこなくなります。

さらにスピードを上げ16.7km/sに達すると、太陽系の外へ飛び出します。これらの速度は地球の表面から直接打ち上げる時の速度です。

探査機を軌道にのせる時に必要な打出し速度は、その時の高度により異なり、高い高度から打ち上げる時はより少ない打出し速度ですみます。

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惑星探査機は地球を脱出すると、目的の惑星に向かう軌道にのります。探査機の軌道は厳密には地球、太陽、火星、木星等の重力の影響を受けます。しかし、例えば探査機が地球の近くにいる時は、他の星の重力の影響に比べて地球の重力の影響が断然大きいため、他の星の重力の影響を考えなくても大体の軌道は計算できます。

そして地球の重力の影響が小さくなってくると、今度は太陽の重力の影響が大きくなってきます。この辺では太陽の重力の影響だけを考慮します。そして今度はたとえば探査機が火星の近くまで来たら火星の重力の影響だけを考えます。

このように探査機の近くの惑星の重力の影響だけを考えて、軌道を連結していけば目的の星までの軌道が比較的簡単に計算できるのです。この簡略化した計算方法を「円錐曲線接続法」と呼んでいます。なお、その惑星の重力が及ぶ範囲をその惑星の「影響圏」と呼びます。たとえば地球の重力の影響圏は約92万5千kmです。“地球の重力圏を脱出する”というのは、およそこの距離を超えることをいいます。

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以上、今月はロケット発射を成功させるための方位などの設定、人工衛星になるための速度、地球や太陽からの脱出速度・軌道などについて調べてみました。

次回は“おもしろいロケットの科学”の最終章となる予定で、惑星探査機の“軌道、省エネ航法”などについてお話をしたいと思います。

<参考・引用資料>

「NASAホームページ」

「JAXA・宇宙情報センター」ホームページ

「Wikipedia」

「宇宙の謎・宇宙開発の歴史」ホームページ

「トコトンやさしい宇宙ロケットの本」日刊工業新聞社