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次世代自動車の検証(7)<EVのCO2排出量と消費電力>

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昨年(2021年)8月、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第1作業部会報告の中で、今まで「過去の地球温暖化は100年あたりで約1℃となっている」としてきたことは間違いで、都市熱(都市バイアス)を考慮すると100年あたり0.41℃に過ぎず、実際の温暖化の量は半分以下であった」というConolly論文を取り上げています。つまり、IPCCは都市熱も地球温暖化に算入してしまうという間違いを冒していたということになります。

NeoMag通信では、前回のテーマ「地球温暖化と温室効果ガスの検証」の中で、IPCC報告の前に、いち早くこのことをお伝えしていました。

この報告は、今後、「温室効果ガス・CO2の温暖化に与える影響」が再度議論されなければならない重要な科学的方向性を示唆しています。・・・とはいうものの、果たして「脱炭素/カーボンニュートラル」に向けて全速力で走り出した国際政治や国際経済が簡単にブレーキを踏むでしょうか。

現実は、脱炭素のためのEV化の動きは止められないようです。本稿では温暖化に与えるCO2の影響の議論は一旦横に置かせていただき、「EVはどれだけのCO2量を減らせるか」、「EV化にはどれだけの電力が必要か」の検証をしてゆきたいと思います。

 

[EVのCO2排出量と消費電力-1]EVとエンジン車のCO2排出量(マツダ論文)

商品が作成され、それが使用され、最後に廃棄されるまでの間に排出されるCO2を算出して、管理する 手法としてLCA( ライフサイクルアセスメント)があります。

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この算出手法は国際標準化機構(ISO)で規格化されていますが、精度の高い結果を得ようとすると、それなりの基礎データが必要ですし、多くの資材で構成されている自動車の算定をしようとしても簡単ではありません。一例として、電気自動車とガソリンエンジン車を比較し、どのようなレベルが現状では理想的なCO2削減になるのか試算したデータを、マツダが「電気自動車と内燃機関搭載車のライフサイクルでのCO2排出量」の論文で公表しています。

この中ではEVに搭載するバッテリーが大きいとその製造時に発生したCO2を自動車がどれだけ走っても内燃機関の自動車よりも削減できないが、適切な大きさのバッテリーを選ぶと9万Kmくらいの走行距離で、電気自動車のCO2発生の総量が少なくなる、さらにのバッテリーの劣化があり、16万Kmで交換するとほぼ同等になると説明しています。

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[EVのCO2排出量と消費電力-2]EVとエンジン車のCO2排出量(再検証記事)

前項の論文は自動車メーカー・マツダとして、EVよりも内燃機関が有利になるような恣意的データを使っているのではないかと反論し、前提条件を精査し、日本の電力事情を考慮したデータが EVsmartBlogで公表されています。このデータでは2500ccのマツダ3とテスラモデル3のEPA燃費を比較して計算しています。

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バッテリー製造時のCO2排出量は上記の日本の電源構成データをもとにして、2種設定し、比較しています。また、世界中のテスラを対象にした調査から、現在のバッテリー技術では、廃車するまでバッテリー交換は不要としています。この結果の中で、75kWh級のバッテリー搭載車でも、9万Km走ればEVのCO2排出総量が少なくなると結論付けしています。 ただし、この比較データの内燃機関がより燃費の良い1500ccとか、ディーゼルにするとEVが有利になるレベルはなかなか難しそうです。さらに、ハイブリッド車の燃費を適用すると、EVが有利になるレベルはあるのかと疑問が湧いてきます。ただし、ハイブリッド車はエンジン車と比べて走行時(消費時)の燃費が良く、CO2の排出も少ないと考えますが、モーターやバッテリーなど、エンジン車に比べると多くの付加機器を搭載しているため、製造時のCO2排出量は間違いなく大きく、一段の検証が必要になります。

 

当然ながら、今後、国内の電力の再生可能エネルギーの利用が進めば、EVの方が明らかに有利になってきます。マツダが公表しているデータでも、欧州のEVのCO2排出量が少ないのはこのためです。

ただ平均14万Km(廃車までの走行距離)の利用が行われる計算でも、実際には少ない走行距離で廃車になる場合も少なくありませんから、一概に判断できるものではありません。 このような議論に対し、電池をクリーンエネルギーだけで製造しているからEVは絶対的にクリーンだと発表するメーカーもあるようです。ただ、自社はクリーンエネルギーだと言っても、自社ですべての電気を作ったのではなく、クリーンだと言われる電気を集めて買ったものを使う場合がほとんどのようです。この場合、クリーン化の本質的な努力ではなく、金でかき集めたことになり、ほんとうの意味でのクリーンなCO2削減になるのか疑問です。

いずれにしても、CO2を発生しない電源(再生可能エネルギー、原子力等)の比率が十分高くならなければ、EVのCO2削減効果は簡単には得られないということです。

 

次表は、「EVとガソリン車の走行距離とCO2排出量の関係」をEVsmartBlogが再計算したデータです。赤色の部分が「ガソリン車の方が排出量の少ない走行距離領域」、緑色の部分が「EVの方が排出量の少ない走行距離領域」となります。バッテリーの製造時に発生するCO2の排出量を「最大:106kg-CO2eq/kWh」と「平均:84kg-CO2eq/kWh」の2種類としました。走行時のガソリン車の燃費は「マツダ3」のEPA推定値15.3km/L、EVの電費は「テスラモデル3ロングレンジ」EPA値6.19km/kWhを基準としています。

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[EVのCO2排出量と消費電力-3]EVが必要とする電力

日本の自動車保有台数は2020年末で、乗用車が6,220万台、トラックが1,430万台、バスが20万台で約7,700万台です。ここで、すべての乗用車がEVとなる前提で計算してみましょう。

乗用車の年間走行距離の平均が約1万?、1日では約27kmとなります。

前回のテーマでお話をしましたように、EVの平均電費を6.0km/kWhとすると、27 / 6 = 4.5kWh/台 の電力が必要となる計算です。日本では6,220万台の乗用車が走行していますから、6,220万 x 4.5kWh = 27,990万kWh すなわち、1日約2.8億kWhの電力がEV用に必要となってきます。充電を夜間電力中心に行うとしても、この程度の電力供給アップは必要でしょう。

原発1基分が約100万kW(0.01億kW)の出力ですから、1日あたり2,400万kWh(0.24億kWh)の発電能力となり、2.8億kWh / 0.24億kWh = 11.67 ということで、少なくとも原発12基分、火力発電所なら24基分が必要となります。

日本の1日当たりの発電量は現在28億kWh/日程度のようですから、2.8億kWh / 28億kWh = 0.1となり、発電量を約10%増強するための発電所を建設する必要がありそうです。10%は大した数値ではないように見えますが、この発電所増強は火力発電所というわけにはゆかないでしょう。原発の再稼働ならともかく、再生エネルギーですべて賄うことにすると簡単ではありません。前テーマでもお話をしましたように、政府のグリーン成長戦略でもある「洋上風力発電所」を中心に原発12基分、または火力発電所24基分に相当する電力を増強するしかないかもしれません。

ここで参考までですが、もし、トラック・バスを含めた全自動車のEV化をすると、そのバッテリー容量から推測すると、恐らく、さらに同程度の発電所増強が必要となりそうです。つまり、20%の増強ということになります。

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[EVのCO2排出量と消費電力-4]充電インフラの整備

11月号でもお話をしましたように、自宅で満充電をしても、外出先での追加充電(急速充電)が必ず必要になってきます。急速充電はその名の通りスピード重視の充電ですが、EV用の急速充電器は非常に高価なため、個人で導入することは難しく、街中に整備されたものを利用することになります。

主な設置場所として、高速道のSA及びPA、商業施設などの駐車場、自動車販売店などの公共性の高い場所が中心です。ただし、現在の急速充電器の大半は20~50kW出力であり、充電時間30分ルールやEV複数台数の充電を考慮すると、十分な充電量が確保できないばかりか、大きな充電渋滞を引き起こしかねません。したがって、最低でも90kW以上の急速充電器の大規模設置が不可欠となります。

欧州ではすでに350kW級のEV充電設備が100か所以上に設置されています。また米国、中国でも同様の規模のEV充電設備の拡充が始まっています。

一般の急速充電器は3相200Vの電源を使っているようですが、商用電源でこれだけの電力がいくつもまとまって流れると電力会社の一般的な柱上トランスはほぼ全力運用の状態でも間に合わなくなるでしょう。また、大出力の複数の急速充電器を設置するとなると、高圧受電して需要家側で必要な電圧に 変換する必要がありそうです。そのためには受電設備(キュービクル)の設置場所の確保保守点検の対応なども必要です。

 

EV充電器の設備状況によって電力会社の配電網の強化も必要となり、電力料金への影響も考えられます。配電網だけでなく、負荷変動の大きい再生可能エネルギーの発電が増加すると、広範囲で電力の融通が必須になり、現在の送電網は対応できなくなることは間違いありません。現状でも太陽光発電の電力を送る送電線が足りないので、発電した電気を受け取れない事例が国内で発生しています。 本来なら優先して利用すべき再生可能エネルギーは安定供給には難がありますから、安定した電力供給のためには原発や火力発電所がバックアップ電源として使われることになりそうです。

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[EVのCO2排出量と消費電力-5]電力の需要と発電量のバランス

新たな発電には再生可能エネルギーの利用を主体に考えられ、その多くの部分は太陽光発電や風力発電によると想定できますが、太陽光発電は晴天の日中に限られ、発電は集中した時間に行われ、電気の利用時間と合わないことが多くようです。また、現在、英国や欧州で問題になっていますが、風力発電も風次第であり、季節変動、日変動、時間変動によって発電量が左右されます。

発電能力は足りても、必要な時の電力が不足する時や、発電しても利用できない状態が発生します。EVは利用しない夜間の充電が主体になる可能性がありますが、その時、太陽光発電はできず、 他の発電に頼る必要があります。昼間の電気を電池に充電し、夜間に自動車へ再充電することも理屈上は考えられますが、電池の費用を考慮すると当面現実的ではないでしょう。 現在は夜間の電力に余剰が発生する時に充電すれば電気料金も安価にできる合理的なシステムになっていますが、EVの普及が進めば、夜間の電力が不足する可能性があります。 そうなると、夜間の電気料金を昼間よりも高価に設定し、需要の平準化に誘導する必要が出るかもしれません。 電気料金の体系が変わると、安価な夜の電気料金を利用している電気温水器などの稼働時間の変更も必要になるかもしれません。電力の需要に対応してリアルタイムに料金を細かく変化させるような契約も発生するかもしれません。夜間の電力料金 上昇が起これば、EVの充電コストに影響が出るだけでなく、電力会社が推奨している給湯器の電力コストにも影響してきます。

CO2対策のため、太陽電池の設置拡大をすすめれば夜の電力確保が問題になりそうです。一方、昼間のピーク電力に対して夜間の電力消費は少なく、夜間にEVの充電の電力供給能力は可能であるという意見があります。1日の電力使用量の変化のデータが下記のグラフのデータが公表されています。これを見ると、「ピーク電力に近い電力の24時間継続供給ができること」と「現在の発電インフラを使用すること」が前提であれば、2019年のピーク電力と21時~翌朝5時までの8時間の平均夜間電力の差は約0.5億kWであり、8時間で4億kWhとなり、EV用の1日2.8億kWhを賄うことは十分可能と思えます。しかし、もし可能であったとしても、クリーンなEVを充電するのは、できる限りクリーンな電力を利用すべきでしょうから、この方法のように、現状の電力供給体制でEVを増大させることは大きな問題となってきます。

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[EVのCO2排出量と消費電力-5]まとめ

現在走行している乗用車をすべてEVに変えても、国内電力の増強は10%程度で済みそうなことがわかりました(全自動車なら20%)。また、夜間充電が中心であれば、現行の電力供給体制でもなんとかなりそうです。

しかし、EVに切り替える本来の目的はCO2排出量の削減ですから、充電用電力もCO2を排出しない電力が求められます。

一方、現在の世界の電力資源構成やバッテリー技術では、EVのライフサイクルの中で、CO2の積算排出量がガソリン車やディーゼル車より減少する条件は、「走行距離が欧州で7万km以上、日本では9万km以上になること」になってしまい、EV化でCO2を減らすことは思ったより簡単ではないことがわかりました。

そうはいっても、EV化と脱炭素を推進せざるをえない世界の流れです。そのためには「再生可能エネルギーの拡大(大規模洋上風力発電の実用化)」、「バックアップ電源としての原発の再稼働」、「安全・高性能バッテリーの実用化」、「急速充電インフラの整備」、「国内送電網の強化」等が必須となってきます。

 

以上今回は、EVのCO2排出量と消費電力についてお話をさせていただきました。次回も引き続きEV関連の情報をお伝えいたします。

 

<参考・引用資料>

「IPCC第1作業部会(WG1)報告書」気象庁ホームページ

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/index.html

「IPCC報告の論点(32):都市熱を取除くと地球温暖化は半分になる」アゴラ 2021.12.02

https://agora-web.jp/archives/2054140.html

「循環・廃棄物のまめ知識」国立環境研究所ホームページ

https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/20070702.htm

「Estimation of CO2 Emissions of Internal Combustion Engine Vehicle and Battery Electric Vehicle Using LCA」Ryuji Kawamoto(Mazda Motor Corporation),et al.

https://www.mdpi.com/2071-1050/11/9/2690

「環境への取り組み:LCA(ライフサイクルアセスメント)」マツダ株式会社

https://www.mazda.com/ja/csr/environment/lca/

「電気自動車のCO2排出量はトータルで見てもガソリン車より少ない」EVsmartブログ 2020.03.26

https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/ev-global-life-cycle-co2-emissions-less-than-ice/

「電気自動車(EV)は本当に環境にやさしいのか」アゴラ 2021.11.08

https://cigs.canon/article/20211116_6364.html

「そんなに急いで電気自動車にしますか: 電気自動車は地球にやさしい?」武智伸三著 電子書籍

「自動車保有台数」(社)日本自動車工業会/JAMA

https://www.jama.or.jp/industry/four_wheeled/four_wheeled_3t1.html

「自動車の使用実態」国土交通省ホームページ

https://www.mlit.go.jp/jidosha/iinkai/seibi/5th/5-2.pdf

「最大電力発生日における 1 日の電気の使われ方の推移」電気事業連合会

https://www.fepc.or.jp/smp/enterprise/jigyou/japan/index.html