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地球科学と生命の誕生・進化(3)<生命の誕生・進化を助けた地球環境>

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旧年中はネオマグ製品の格別のお引き立てを賜りまして 誠に有難うございました
いよいよ日本でも「再生可能エネルギー」の本格的導入が始まり 特に洋上風力発電など高性能永久磁石への注目も年々高まっています このような環境下で “お客様の夢とアイデアの実現”を今まで以上に後押ししようと 社員一同張り切っております
本年もネオマグ製品のご愛顧をお願い申し上げると共に 引き続き NeoMag通信のご愛読もよろしくお願い申し上げます

先月号では<宇宙からきた地球の水>というテーマでお話をさせていただきました。その結果、「地球の水は火星と木星の間にあるスノーラインの木星側にある氷に覆われた微惑星がもたらしたものであり、なおかつ、その水の一部は地球の海洋を形成しますが、ほとんどは地球コアの外核に水素として取り込まれている」ことがわかりました。

今月は、「陸地と海洋の共存」、「原始地球が創った地磁気」および「微惑星由来の大気」という地球環境が生命の誕生と進化を守り、助けてきたというお話になります。

 

[生命の誕生・進化を助けた地球環境-1]陸地と海洋の共存

<水が創った大地>

地球は複数枚の「プレート」という硬い岩盤で覆われていて(次図)、プレートが隣のプレートの下に沈み込む場所を「沈みこみ帯」と呼びます。例えば、日本列島ではプレート同士で押しあうことによって地震が起きたり、高い山脈ができたりしています。

 

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大陸地殻の形成とプレートテクトニクス

 

また、沈みこみ帯には多数の火山があります。火山があるということは地下の岩石が融けてマグマが生まれているということなのです。これら一連の活動を「プレートテクトニクス」と呼びます。

沈みこみ帯では、長い間海底にあったために水を含んだ海洋地殻が沈み込み、地下で水を放出します。これによってマントルに水がもたらされます。これが融けることによって水を含んだマグマが生まれます(前図)。実はこの「水入りマグマ」が大陸地殻の形成に深く関わっているようなのです。

水を含んだマントルが浅いところで融けることによってシリカに富むマグマが発生し、それが地下で固まることで大陸地殻ができると考える研究者がいます。別の研究者は、発生したマグマがシリカに乏しくても、マグマ中の水の作用によって、地下で固まる際にシリカに富む岩石ができやすくなると考えています。いずれの説も、「大陸地殻ができるためには水が必要だ」ということを意味しています。

つまり、水は地球の生命を育むだけでなく「陸地」をも創ったと言えるのではないでしょうか。地球に水があることによって「陸と海」が誕生し、その多様な陸地の環境に適した多様な生物が進化した・・・そう考えると、水は地球の多様性の源なのかもしれません。

 

<2000mの深さで止まった海洋>

先月号でもお話をしましたように、巨人衝突(ジャイアント・インパクト)によって地球は大規模に溶融してマグマオーシャンが形成されました。地表は岩石蒸気(岩石が熱せられて蒸発し、高温のガスの状態で地球を取り巻いたもの)の大気に覆われていました。数千度という高温状態であったため、地球は宇宙空間に熱を放出して急速に冷却していきます。そして、大気の温度が十分に低下すると、鉱物が凝結して地表に雨を降らせます。

やがて、地表温度が400℃を下回ると地表に達した雨がたまり水深を増していきます。酸性の海水と海底岩石の反応が進み、海水は強酸性から弱酸性に変わっていきました。さらに、大気中の二酸化炭素が海水に溶け込み、Ca、Mg、Feと結合して炭酸塩の鉱物となり堆積していったのです。

また、徐々に大気中の二酸化炭素分圧が低下し、温室効果が弱まり海水の温度が100℃以下になり、その頃水深は2000mに達しました。

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ただし、水深2000mで済んだのは、氷惑星や氷隕石の衝突で持ち込まれた水の大半が地球深部のコアに水素の形で取り込まれたためです。その結果、地球はコア、マントル、地殻、海洋、大気を有する地球システムの中で、地球表層に陸地と海洋が共存する多様な環境が生まれました。

つまり、陸地を創ったのが海洋の水(前項)であり、陸地が海洋に覆われることを防いだのが地球の外核であったということになります。いずれにせよ、陸地と海洋が長い間共存できたという偶然が、生命の誕生と進化を加速した一つの要因と考えられるのです。

 

[生命の誕生・進化を助けた地球環境-2]地球磁場(地磁気)の存在

<地球磁場による磁気バリア>

地球は地磁気と呼ばれる磁気をもっているので、地球のまわりの宇宙空間には目に見えない「磁気バリア」ができています。太陽風プラズマや宇宙線などの電気を帯びた粒子は地磁気の影響を感じると動きが大きく変化するため、磁気バリアの中に入りにくくなっているのです。

地球の磁気バリアは、どんなに激しい太陽風が吹き付けても、絶対に直接地球に到達することができないほど強力なものです。この磁気バリアに守られた領域は「地球磁気圏」と呼ばれています、太陽風は、地上から3万km(静止軌道と呼ばれる高度付近)から10万kmくらいの位置で食い止められていて、その反対側の磁気圏は太陽風に吹き流されたような形をしていることがわかっています。

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太陽風から守る磁気バリア

 

地球の磁気バリアは、宇宙線と呼ばれるエネルギーの高い粒子が地球に直撃することも大幅に防いでくれます。私たちの住んでいる地上の環境は、「磁気バリア」と、後でお話をする「大気のバリア」という二重のバリアによって宇宙線から守られているのです、もし地球の磁気バリアがなかった場合、生命の誕生・進化が起きなかったか、または大きく遅れていたかもしれません。

 

<地球磁場の仕組み>

地球の中心部「内核」のまわりには、溶けた鉄の厚い層「外核」があります。この鉄が地球の自転などによって流れ動くことで電流が生じ、電磁石と同じ原理で地磁気が発生します。この仕組みは「地球ダイナモ作用」と呼ばれ、スーパーコンピューターを使って地球内部の動きを理解する研究が1990年代半ばから活発になってきました。

2017年2月、東工大の研究グループが「約45億年前の地球誕生直後から地球には磁場があった可能性が高い」とする研究成果をまとめました。この磁場のおかげで生命存在に必要な大気や海、さらに生命そのものも守られてきたと報告しています。研究論文はこの後英科学誌ネイチャーに掲載されました。

地球は誕生の最初の過程でマグマの海ができ、その後に重い液体の鉄がマグマ主成分のケイ素や酸素を取り込みながら中心部に集まって核(コア)を形成、外側には岩石成分のマントルができた、とされています。核には固体の内核と液体の外核があり、外核が対流するために磁場ができることが分かっていました。しかし内核と外核が分かれたのは約7億年前とされ、45億年前にさかのぼる地球誕生の直後から磁場があったかどうかなど、詳しいことは分かっていませんでした。

 

***東京工業大学・プレスリリース(2017年2月)より***

東京工業大学地球生命研究所の廣瀬敬(ひろせ けい)所長・教授らは、地球の内部の環境と同じ高温高圧条件をつくるために特殊な装置「超高圧発生用ダイアモンドアンビル装置」を活用。ケイ素と酸素を含む液体の鉄の変化などを地球内部の核に相当する気圧や温度条件の下で調べ解析した。

その結果、地球の核の上部で二酸化ケイ素が結晶化して液体の鉄から分離。残された液体の鉄が地球中心部に沈んで対流(組成対流)ができ、その結果磁場が形成されたという一連のメカニズムが分かった。この対流と磁場は地球誕生の直後から形成されていた可能性が高いことも明らかになったという。

 

研究グル−プは「地球の誕生直後から存在した磁場が太陽風を遮断して大気の散逸や海の水分の蒸発を防いだ可能性がある。また地球表層への強い紫外線照射も防いで生命の陸上への進出を可能にしたようだ」などとしている。

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地磁気と地球のダイナモ効果

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地球コアにおける結晶化と対流運動(東工大)

 

<外核が液体になった理由>

それではなぜ原始地球の外核が液体になったのでしょうか。

地球のコアは主に鉄でできていて、そのほかに軽い元素を多量に含んでいることが地震波の観測結果から明らかになっています。コアの密度が、100%鉄でできている場合に比べて10%ほど小さいのです。この密度の差は、軽元素をたくさん含んでいるから生ずるものです。

しかし、コアに含まれている軽元素を突き止めるのは簡単ではありません。その証拠に、60年以上議論が続いており、軽元素の候補は、S、Si、O、C、Hなどがありますが、論文数からS(硫黄)が最も有力だといわれていました。しかし、2014年1月、東京工業大学を中心とした研究グループから前項の発表を裏付けるような次のような重要な研究報告がされています。

 

***東京工業大学・プレスリリース(2014年1月)より***

「同研究グループは、マントル物質を地球深部に相当する超高圧・超高温環境下に置いた後、融解の痕跡の有無を大型放射光施設SPring-8(スプリングエイト)にて確認することにより、コア直上のマントルの融解温度は約3,600ケルビンであることを明らかにしました。マントル最下部は固体であるため、コア最上部の温度はそれ以下でなくてはなりません。これは、従来の見積りよりも少なくとも400ケルビン低いことになります。一方、そのような低い温度で、コア(外核)は液体でなければなりません。

それには外核に水素が重量にして0.6%(原子数換算で25%)程度含まれている必要があります。このような大量の水素は、地球形成期にマグマオーシャン中で金属鉄中に取り込まれた可能性が高いと考えられます。今回推定されたコア中の水素量は、水に換算すると地球全質量の1.6%(海水の約80倍)にあたり、地球はその形成時に大量の水を獲得していたことがわかります。今後のさらなる研究により、地球以外の天体の金属コアの組成、地球の水の起源、さらには太陽系外惑星の海水量推定などが大きく進むと期待されます。」

 

そして最近、「大容量高圧発生装置」と300万気圧をかけることができる「ダイヤモンドアンビルセル」によって、地球の中心部を超える超高圧高温環境を実現できるようになりました。この実験技術を用いて、マントルの融解温度を調べました。もしマントルの下のコアの温度がマントルの融解温度より高ければ、マントルは融けてマグマを作るはずです。しかし、コアと接するマントル最深部はほぼ固体です。つまり、コアの温度はマントルの融解温度よりも低くなければなりません。

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大容量高圧発生装置(愛媛大学)

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ダイヤモンドアンビルセル(東京工業大学)

 

ここからコアが何からできているかがわかります。純鉄の融解温度とコアの実際の温度を比較してみましょう。もしコアが純鉄でできていたら、外核(液体コア)は固体であるはずです。ところが実際は溶けています。従って、外核は純鉄ではないということです。では鉄に、酸素が入っているのでしょうか、それとも硫黄が入っているのでしょうか。検討してみると、それらが含まれている場合ではなく、外核が水素を含んでいる場合にだけ、外核は液体でいられるのです。外核が融解するためには、少なくとも24atom%の水素を含んでいなければなりません。

こうして東工大の研究グループは、「コアには水由来の水素が多く含まれていることと、コア外核が鉄と水素の液体化合物であること」を提唱するに至ったのです。その水素は、海の水の80倍に相当する量と考えられ、最近の理論予測(先月号参照)に近い値になっています。

 

[生命の誕生・進化を助けた地球環境-3]地球大気の存在

<酸素のない大気から>

空気がなければ、私たちは生きていけません。私たちの体は、大気中の酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出しています。では、大気中の酸素などは、地球が生まれたときからあったのでしょうか?

地球は、約46億年前に太陽の周りの塵や岩石がぶつかり、合体を繰り返して誕生しました。誕生したばかりの地球は「マグマオーシャン」と呼ばれるマグマに覆われた灼熱の世界で、岩石に含まれていた揮発性の物質が蒸発して最初の大気を作ったと考えられています。その後、微惑星衝突が繰り返され、大気の主成分は水蒸気(水)になり、残りは二酸化炭素、窒素、硫黄を含む気体などが含まれていました。地球が冷えてくるにつれて水蒸気は凝結して海を作り、二酸化炭素や硫黄を含む気体は海の中に溶け込みます。このころの大気の主成分は窒素で、私たちが生きていくのに必要な酸素はほとんどありませんでした。

大気中の酸素は、35億年前ぐらい前、海の中で植物のように光合成(二酸化炭素を吸って、酸素を吐き出す)を行なう生物(シアノバクテリア)が発生して、増加したと考えられています。現在のような大気濃度になったのは、4億年ぐらい前です。

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(a)マグマオーシャンに覆われていた形成期の地球

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(b)すでに海が存在していた後期天体集積期の地球

Sakuraba et al. (2021) Scientific Reports (出所:東工大Webサイト)

 

<大気は宇宙線のバリア>

大気は生物の生息に直接必要になっているだけではなく、有害な「宇宙線のバリア」となり地球上の生命の誕生と進化を守っています。

宇宙では、放射線帯の粒子以外にも、目に見えないエネルギーの高い粒子が飛びまわっています。このエネルギーの高い粒子は太陽系の外からやってきて、光やX線のように直進し、透過力が強いため「宇宙線」と呼ばれています。宇宙線の主な起源は、天の川銀河のどこかで100年に一度くらいの割合で発生している超新星の爆発によって加速された粒子だと考えられています。地球周辺の宇宙は無色透明の「宇宙線の雨」にいつもさらされているのです。

太陽風には複雑な磁場が含まれているために、宇宙線がまっすぐに飛んでくるのを妨げる働きをしています。つまり、宇宙線がやってくるのを防ぐバリアの働きがあるのです。また、地磁気も宇宙線のバリアとなっています。

 

第1の磁気バリアである太陽風、第2の磁気バリアである地磁気を通り越し、とうとう地球の大気まで突入してきたエネルギーの大きな一次宇宙線は大気中で原子核反応をおこし、次々にミューオンやニュートリノなどの他の粒子を生み出します。これは「空気(大気)シャワー」といわれる現象です。空気シャワーで生まれた様々な粒子は「二次宇宙線」とも呼ばれ、一次宇宙線のエネルギーを分散させる役目をしています。つまり、地球の大気は生命を宇宙線から守る第3のバリアとして役立っています。

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空気シャワーによる宇宙線バリア

 

<ひとこと>

小惑星や隕石からもたらされた水(水素)が地球のコアの中に取り込まれなかったならば、今でも地球表面はすべて海に覆われていることになり、水生動物や水生植物だけの世界かもしれません。また、地球誕生の直後から液体のコア外核が地磁気を創っていたことになれば、宇宙からきた水が、地球の生命誕生やその進化を促してくれたことになりそうです。さらに、地球の大気も私たちに呼吸をさせてくれているだけではなく、有害な宇宙線のバリアになってくれていることも改めて認識させられました。

 


 

以上今月は、“生命の誕生・進化を助けた地球環境”についてのお話をさせていただきました。来月は“地球の時代区分”、“生命の起源”、“原始生命の誕生”の予定です。

 

<参考・引用資料>

◆Web

・「地球コアに多くの水素が存在 〜地球誕生時に大量の水〜」東工大ニュース 2014.01.22

https://www.titech.ac.jp/news/2014/024753

・「地球コアに多くの水素が存在 -地球誕生時に大量の水-」京都大学プレスリリース 2014.01.17

https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2013_1/140117_2

・「地球のミステリー ~「陸」はなぜあるのか~」News Letter Geofield Vol.2 2018.02

https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1189152/Geofield2_compressed.pdf

・「地球にはなぜ磁気バリアがあるの?」宇宙天気50のなぜ 名古屋大学

https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/space_weather/6.html

・「地球には誕生直後から磁場があって大気や海も守る」Science Portal 2017.02.27

https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20170227_01/

・「できたての頃から地球には磁場が存在、コア組成も大きく変化」東工大プレスリリース 2017.02.23

https://www.titech.ac.jp/news/2017/037546

・「地球の大気はいつごろできたの?」地球温暖化50のなぜ 名古屋大学

https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/ondanka/3.html

・「地球の大気と海はマグマオーシャンと隕石の重爆撃で形成された、東工大が解明」マイナビニュース

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20211112-2185624/

・「おもしろい宇宙の科学(1)~(24)」ネオマグ通信バックナンバー

https://www.neomag.jp/mailmagazines/mailmag_index.html

◆書籍

・「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

・「46億年の地球史」田近英一 著 発行元:三笠書房

・「地球と生命の誕生と進化」 丸山茂徳 著 発行元:清水書院

・「地球生命誕生の謎」ガルゴー他 著 発行元:西村書店

・「地球・惑星・生命」日本地球惑星科学連合 編 東京大学出版会