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地球科学と生命の誕生・進化(18)<人類の誕生と進化>

先月は、人類の祖先は、新第三紀(中新世から鮮新世)のおよそ700万年から500万年前にサルから分岐しましたが、その後の進化の過程で遭遇した厳しい地球環境・気候について調べてみました。そして、人類の祖先は氷期(氷河期)の厳しい環境を生き抜いてきたことがわかりました。また、地球の気候は「ミランコビッチ・サイクル」で説明される「氷期-間氷期」の繰り返しに影響されてきたこともわかりました。今月は、人類がどのように進化していったか、どのように地球上で生活圏を拡大していったかなどについてのお話になります。

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顕生代の代区分と紀区分の関係 (NeoMag 編集)

 

[人類の誕生と進化-1] 人類の誕生と二足歩行

今から6500万年前に霊長類が出現し、その後新生代の2800万~2400万年前の漸新世に、オナガザル上科(旧世界ザル)から、テナガザル、オランウータン、 ゴリラ、チンパンジー、ヒトなどの「類人猿(狭鼻猿類)」が分岐しました。そして約1300万年前に、ヒト科はオランウータン亜科とヒト亜科に、1000~650万年前にヒト亜科は ゴリラ族とヒト族に分岐し、やがて、約700~500万年前の中新世において、ヒト族がチンパンジー亜族 とヒト亜族に分岐しました。ヒト亜族とは、直立二足歩行をする方向へ進化したグループで、いわゆる「人類」のことです。すなわちこれが、人類の誕生です。

 

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霊長類の骨格の変遷と人類の二足歩行(コトバンク・霊長類より)

 

[人類の誕生と進化-2]最初の人類・ラミダス猿人

初期の人類は、脳の容積がまだ小さく「猿人」と呼ばれますが、尾がなく直立二足歩行だったと考えられています。最初期の人類は、中新世の700万~600万年前のアフリカ中部で発見された「サヘラントロプス属」です。ただし、頭骨しか見つかっておらず、その特徴から直立二足歩行をしていたとする説があるものの、必ずしも公式には認められていないようです。

その後、「アルディピテクス属」が出現しました。「アルディピテクス・ラミダス(ラミダス猿人)」はその一種で、約580万~440万年前のエチオピアに生息していました。こちらは、確実に直立二足歩行を行っていたと考えられています。ただし、足の指でものをつかめる構造になっていることから、樹上生活も行っていたらしいことが示峻されています。

 

1992年以降エチオピアで発見された諸化石から全身像などを復元した研究者グループによると、このラミダス猿人の「アルディ」は、人間という種族に属する最初の猿人だと認められた有名な化石人骨「ルーシー」より100万年以上も前に、直立歩行をしていた可能性があるといわれています。

「人類の最初の祖先」という地位は今やルーシーではなくアルディのものとなったわけですが、これは、人類の系図を表面的に書き換えるだけでは済みません。ルーシーの発見以来、人類の起源はサバナ(疎林と潅木を交えた熱帯草原地帯)にあるとされてきましたが、アルディは森林地帯に生息していたと見られます。さらに、科学者らはルーシーの骨格から、人類と他の類人猿の最後の共通祖先はチンパンジーに似たものだと判断していましたが、アルディの発見で、そうした判断は否定されることになりました。

 

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ラミダス猿人・アルディの復元図(WIRED JAPAN)

 

[人類の誕生と進化-3] 旧石器時代の人類

<アウストラロピテクス属>

觧新世の400万~200万年前には猿人「アウストラロピテクス属」が出現して南アフリカを含む東アフリカ一帯に生息していました。脳の容量は現生人類の35パーセント程度でチンパンジーと同じくらいですが、直立二足歩行を行い、食料として植物や小動物のはか、肉食獣の食べ残しをあさるなどしていたと考えられています。この属の仲間としては、アウストラロピテクス・アナメンシスや「アウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)」、アウストラロピテクス・アフリカヌスなどが知られています。「ルーシー」と呼ばれる有名な化石は、アウストラロピテクス・アファレンシスのものです。

<ホモ・ハビリス>

その後、240万年前ごろになると、最初期のホモ属(ヒト属)である「ホモ・ハビリス」が出現します。第四紀の始まりです。ホモ・ハビリスは猿人ではなく「原人」と呼ばれます。ホモ・ハビリスの脳 の容量は現生人類の半分程度にまでなりました。ホモ・ハビリスは、石器、すなわち道具を発明したことが顕著な特徴で、ここから「旧石器時代」が始まります。

<ホモ・エレクトス>

その後、「ホモ・エレクトス」>が出現しました。ホモ・エレクトスは現生人類の75パーセント程度の 大きな脳を持っていたようです。彼らは約50万年前にアフリカを出て、東はインドやインドネシア、中 国、西はシリア、イラクなどへ拡散したことが、化石の分布から分かっています。“出アフリカ”は、 第四紀の寒冷化によって生息地が乾燥化したことが直接的な原因であったと考えられています。有名な 「北京原人」「ジャワ原人」もこのホモ・エレクトスの亜種とされています。ホモ・エレクトスは第 四紀の更新世に繁栄しましたが、中東地域においては約20万年前に、その他の地域においても約7万年 前には絶滅しました。なお、ほかにホモ・エレクトスの亜種として、ドイツのハイデルベルグ近郊で発 見された、巨人(1.8m、100kg)で脳の大きな「ホモ・ハイデルベルケンシス」も有名です。

 

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人類の進化と脳の大きさの変遷(Science Portal)

 

<ネアンデルタール人とホモ・サピエンス>

東アフリカに残った原人のホモ・エレクトスから旧人「ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデル タール人)」新人「ホモ・サピエンス」の共通祖先が、更新世中期(チバニアン)の50万年前頃に分 岐しました。そして、約30万~20万年前に「現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)」が出現した と考えられています。現生人類は約20万年前のアフリカ人祖先集団に由来するという分子生物学的な推 定結果は、原生人類のアフリカ単一起源説を裏付けています。

現生人類の最古の化石は、エチオピアで発見された約20万年前のものですが、最近、モロッコで約 30万年前の最古の人類化石と考えられるものが発見されたとして話題になっています。ホモ・サピエン スは、約7万~5万年前に再びアフリカを出てヨーロッパからアジアに広がりました。ミトコンドリア DNAを用いた研究によれば、現生人類はアフリカ女性(この女性は“ミトコンドリア・イブ”とも呼 ばれる)の子孫であることが分かっており、この出アフリカ説とも一致します。

ホモ・サピエンスとほぼ同時期に、ヨーロッパを中心に西アジアから中央アジアにおいて、ネアンデ ルタール人が繁栄していました。ネアンデルタール人は、寒冷地に適応した体型で、非常仁頑丈な骨格 をしていました。また、脳容量は現生人類よりも大きかったことが分かっています。しかし、何らかの 理由により約4万~3万年前に絶滅してしまいました。これまでネアンデルタール人は、現生人類の祖 先だと考えられていましたが、現在では直系の祖先ではなく別の系統の絶滅した人類であると考えられ ています。

 

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人類の系統図(人類史マップ:日経ナショナルジオグラフィック社:NeoMag 編集)

 

[人類の誕生と進化-4]ホモ属(ヒト属)の進化と拡散

前項でもお話をしましたように、人類の進化の大きな流れは、猿人(アウストラロピテクス)→原人 (ホモ・エレクトス)→旧人(ホモ・ネアンデルターレンシスなど)→新人(ホモ・サピエンス)にな ります。

 

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人類の進化・頭蓋骨比較(国立科学博物館)

 

しかし、化石人類にはいろいろな種類があります。それらのほとんどは、現生人類にはつながらない、 子孫を残さずに絶滅してしまった種のようです。不思議なことに、こうした様々な人類はアフリカで誕 生して、世界に散らばっていったらしいのです。なぜアフリカだけが、新しい人類発祥の地になるのか はわかりません。ジャワ原人、北京原人などはアフリカに起源を持ち、アジアに進出して絶滅したホ モ・エレクトスの一種で、彼らが現在のインドネシア人、中国人の祖先というわけではありません。

最初のホモ属がいつころ登場したかもよくわかりません。どの人類化石をホモ属と認定するかにもか かっています。ホモ・ハビリスが確かにホモ属だとすると、200万年以上前にはホモ属がいたことにな ります。

 

<第1回目の出アフリカ>

ここで、もう一度、ホモ属の出現からの進化を復習してみましょう。

ホモ・エレクトスは180万年前頃に登場します。これが真正のホモ属です。その起源はよくわかりま せんが、ルーシーやアルディがその一員であったアウストラロピテクス・アファレンシスから出てきた という説が強いようです。ホモ・エレクトスになってはじめて人類はアフリカを出て(第1回目の出ア フリカ)、アジアでも繁栄しました。前にお話をしましたジャワ原人や北京原人たちです。ジャワ原人 はほんの数万年前まで生存していたという説もあります。一方ヨーロッパのエレクトスは、ホモ・ハイ デルベルゲンシスとなります。初期のホモ・エレクトスの脳容量は750cc~800cc程度ですが、後期には 110cc~1200ccにまで大きくなっています。

旧人は、現在の人類ではありませんが、ホモ・エレクトスよりは進化している化石人類です。ホモ・ ハイデルベルゲンシス、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)などが属します。ホ モ・ネアンデルターレンシスは、数万年前までは生存していた地域があります。その場所では、現生人 類(新人、ホモ・サピエンス)も同時にいた可能性が高いのです。二つの人類の関係、友好関係か敵対 関係か、または完全に無視し合っていたのかはわかりません。

 

<第2回目の出アフリカ>

現在のホモ・サピエンスも10万年ほど前にアフリカで誕生して、世界中に広がっていったようです (第2の出アフリカ)。つまり、現在の人類はアフリカに起源を持つ単一種ということになります。ヨー ロッパ人が「発見する」よりも前、ホモ・サピエンスは南アメリカの南端や太平洋の島々を発見して、 そこに住み着いていました。

 

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世界中に広がったホモ・サピエンス(生命科学 DOKIDOKI 研究室)

 

最近、ジブラルタル海峡を望むイベリア半島南端の洞窟からネアンデルタール人の遺跡が発見され、 ネアンデルタール人は2万8000~2万4000年前の最終氷期最寒冷期まで生き延びていたことが分かりま した。さらに、アフリカに残ったネグロイドを除く現生人類のゲノムには、ネアンデルタール人の遺伝 子が1~4パーセント程度混じっているという衝撃的な事実も明らかになりました。

こうした歴史を経て、最終氷期の終わりとともに、私たち人類の時代が訪れたのです。

 

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朝日新聞(2010.05.07)

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欧州におけるネアンデルタール人の分布

 

[人類の誕生と進化-5]アフリカ単一起源説

かつて、人類はそれぞれの地域で進化してきたと思われていました。例えば北京原人が中国人に、ネ アンデルタール人がヨーロッパ人にという具合です。これを「多地域起源説」といいます。しかし、前 項でも取り上げましたアフリカ女性の”ミトコンドリア・イブ”により、現在では現在の人類はすべて アフリカ起源で、アフリカを脱出したホモ・サピエンスが世界各地に散って、今日の様々な人種になっ たと考えられるようになりました。これを「アフリカ単一起源説」といいます。見かけ上、かなり異な るように見える現在の「人種」も、生物的には単一のホモ・サピエンスというものになります。したが って、他の化石人類は絶滅したという考えでもあります。

 

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ホモ・サピエンス(新人)の起源説(生命科学 DOKIDOKI 研究室:NeoMag 編集)

 


 

以上が今月のお話です。種々の化石の科学鑑定により、人類は約700~500万年前にサルから分岐した 二足歩行の猿人としてアフリカで出現したことがわかり、その後、原人、旧人、新人と進化しながら、 世界中に拡散していきました。先月もお話をしたように、人類の進化の時代はほとんどが氷期の時代だ ったようですが、その極寒の時代を生き延び、氷期の終焉と共に人類が地球上の覇者となっていったこ とがよくわかりました。次回は、“人類の繁栄の時代へ”ということで、各種文明の出現と発展についてのお話となります。

 

<参考・引用資料>

◆Web

「人類の進化」ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E9%A1%9E%E3%81%AE%E9%80%B2%E5%8C%96

「霊長類」コトバンク

https://kotobank.jp/word/%E9%9C%8A%E9%95%B7%E9%A1%9E-151308

「人間はどのように進化したの?」学研キッズネット

https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science210302/

「先史時代の世界(人類の起源・移動地図・年表)」比較ジェンダー史研究会

https://ch-gender.jp/wp/?page_id=5378

「アフリカを出た人類・・・・」朝日新聞 GLOBE 2021.12.14

https://globe.asahi.com/article/14501100

「人類進化の考古学―私たちホモ・サピエンス」名古屋大学 門脇研究室

https://www.num.nagoya- u.ac.jp/outline/staff/kadowaki/laboratory/research/human_evolution.html

「第3章 人類の起源と進化(1)」山賀 進の Web site

https://www.s-yamaga.jp/nanimono/seimei/jinrui-01.htm

「最古の「人類の祖先」はルーシーではなくアルディ(ラミダス猿人)」WIRED JAPAN

https://wired.jp/2009/10/02/%E6%9C%80%E5%8F%A4% E3%81%AE%E3%80%8C%E4%BA%BA%E9%A1%9E%E3%81%AE% E7%A5%96%E5%85%88%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%83%AB% E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%81%A7%E3%81%AF%E3 %81%AA%E3%81%8F%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%87/

「ゴリラたちから学ぶ〜人間の本質と未来の姿〜」Science Portal 2019.09.26

https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/sciencewindow/20190926_w01/#:~:text=%E7%8F%BE%E4%BB% A3%E4%BA%BA%E3%81%AE%E8%84%B3%E3%81%AE,40%E4%B8%87%E5%B9%B4%E5%89%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80 %82

「DNAで探る日本人のルーツ」生命科学 DOKIDOKI 研究室/テルモ生命科学館

https://www.terumozaidan.or.jp/labo/technology/10/index.htm

 

◆書籍

「DNA人類進化学」宝来聰著 岩波科学ライブラリー52

「46億年の地球史」 田近英一 著 発行元:三笠書房

「地球と生命の誕生と進化」 丸山茂徳 著 発行元:清水書院

「地球と生命の46億年史」 丸山茂徳 著 発行元:NHK出版

「地球生命誕生の謎」ガルゴー他 著 発行元:西村書店

「地球・惑星・生命」日本地球惑星科学連合 編 発行元:東京大学出版会

「生物はなぜ誕生したのか」ピーターウォード、他 発行元:河出書房新社

「人類史マップ」テルモピエバニ、他(著) 出版元:日経ナショナルジオグラフィック社